滞英日記

2017.09.25

8月30日(水)晴れのち雨

 前の晩から一睡もせず、朝5時頃にタクシーを拾って品川駅へ。品川から羽田空港国際線ターミナルまでの所要時間が思いのほか短くて済み、空港で時間を持て余してしまった。まぁいつもギリギリなのでこのくらい余裕がある方がまだましである。久しぶりのロンドン、というか海外自体が久々だ。機内では二回の食事以外は眠って過ごした。完徹だと飛行機だろうがどこだろうがよく寝られる。同日午後、ロンドン・ヒースロー空港着。パディントン駅までのヒースロー・エクスプレスは空いていて快適である。パディントン駅でオイスターカードを購入し、チューブでベイカー・ストリート駅下車。冷たい雨の中、しばらく歩いてホテルに到着した。折りたたみ傘を持参していて助かった。

 ナイツブリッジにある老舗百貨店「ハーヴィー・ニコルズ」で8月31日より行われる弊社のポップアップストアのレセプション・パーティーのため、ロンドンに来た。パーティーでのDJを依頼されたのである。この日は夕方から写真撮影。一度、ハーヴィー・ニコルズに立ち寄り、夕食はチャイニーズ・フードにした。男三人だったからか炭水化物祭りであった。


8月31日(木)概ね晴れ

 朝、チューブと地上線を乗り継いでロンドン北東部のダルストンに向かう。インターネット・ラジオ「NTS」で1時間のDJミックスの収録である。これをブッキングしてくれたのは、ハーヴィー・ニコルズのレセプション・パーティーでも一緒にDJをすることになっていたThrowing Shadeという女性DJ/プロデューサーだ。日本でも人気のレーベル<Ninja Tune>からリリースもしていて、昨年10月、東京で一緒にDJをしたのが縁で今回のブッキングと相成った。彼女はNTSに番組を持っていて、その枠のゲスト・セレクターとして呼んでいただいたのだ。弊社UKオフィスの日野くんと待ち合わせて10時にダルストン・スクエアに行くと、彼女のボーイフレンドのニコラスがお出迎え。ニコラスは<NICHOLAS DALEY>のデザイナーである。ほどなくしてThrowing Shadeも合流し、すぐ近くのNTSのスタジオに移動。日本のアーティストの曲を中心にした選曲で1時間のミックスを録音した。ちなみにこのときのプレイは、現在NTSのアーカイヴにて聴取可能である。収録を終えて、近くの「Cafe OTO」で昼食。カフェだが、レコードやCD(アヴァンギャルドやワールドミュージック系が多い)も扱っていて、ライブも頻繁に行われている。料理はペルシアン・インスパイアド・フードで自分好みの味。

 夜に行われたハーヴィー・ニコルズでのレセプション・パーティーは、大勢の方に足を運んでいただいた。仙台木地製作所の佐藤康広さんによるこけし作りの実演があり、興味津々といった面持ちで眺める人が後を絶たなかった(私もこけし作りは初めて見た)。Throwing ShadeとのDJも楽しい時間であった。本ポップアップストアは、日本のファッションやプロダクトをコンパクトに紹介するものなのだが、それなりに日本のそうしたものが定着しているロンドン(たとえば、雰囲気のいい雑貨屋などで扱っているのは日本製文具だったりする)では、物珍しさではなく、純粋にそれを気にいるかどうかが売れる、売れないに関係している。そういった傾向もあってか、価格が高いからといって売れないということはなかった印象だ。レセプション終了後、SOHOのチャイナタウンで中華。人数に対して明らかに注文する品数が多く、残ってしまった料理は日野くんのアシスタントの三宅くんなどがお持ち帰り。ホテルに戻って少し仕事をしたのち、就寝。


9月1日(金)晴れ

 早朝に目覚めたタイミングで毎週配信しているメールニュースの校正をやって、二度寝。この日はSOHOエリアのレコード屋をリサーチするつもりでいたが、その前に「ナショナル・ギャラリー」で往年の名作絵画を堪能した。ロンドンのレコード店は、中古盤についてはスリーヴだけが棚にあって、本体(レコード盤)はレジの後ろなんかに別に置かれていることがほとんど。今回、とある店で7インチ(のスリーヴ)を数枚まとめてレジに持っていったら、「ごめん、どうやってもこの二枚だけ中身が見つからないのよね……」ということがあった。残念だけれど仕方がない。SOHOのレコード店は、どこも老若男女入り混じって賑わっている。ただ話をするだけに来ている人もいて、コミュニティとしての機能も垣間見れた。レコード屋以外にいくつか気になる店があったのだけれど、時間が足りなくてこの日は断念。一度ホテルに戻って、夜は再びSOHO。ヌーヴェル・キュイジーヌといった風情のビストロへ。ステーキが出てきたが、頼まないとフレンチマスタードはついてこない(頼んだ)。


9月2日(土)晴れ

 日中、SOHO再訪。今風の清潔感とクラフトっぽさのある店構えでレバノン料理を出す「HUMMUS BROS.」にて、フムス、ファラフェルとピタパンの昼食を摂る。リーズナブルで美味しい。あとから調べたら、ロンドンに数店舗を構えているようで、今年はじめのTimeout UKの記事「The 100 best cheap eats in London」にて15位と、かなり上位に入っている。昼食後は前日に気になっていたテキスタイルの店へ。ビンテージから最近のものまで、様々な生地を計り売りしてくれるのだが、テキスタイルだけでなく、ボタン、糸、リボン、糸巻きといったアイテムも充実していてとにかく楽しい。ロンドンでは服飾関連の学生にも人気だそうだ。全体にちょっとフレンチっぽい雰囲気の品揃えなのに、パンク崩れみたいな女の子の店員がいたり、BGMがB-52’sだったりというのがロンドンっぽくて余計に好印象であった。持ち時間ギリギリまで店内を見て、いくつか買い物をしたのち、ハーヴィー・ニコルズへ。

 この日のハーヴィー・ニコルズのポップアップストアは、いらしたお客様にドリンクサービスがあったり、先のこけしの実演もあったりと最初の週末らしく特別な催しがあった。私もこの日は店内でDJをやることになっていたのだが、先方の手違いでターンテーブルの用意を忘れていて、どこかからターンテーブル調達してきてもらった結果、予定時刻より1時間ほど遅れてプレイを開始することになった。レセプションの日とは内容を変えて、日本人アーティストの楽曲だけで2時間ほど。閉店後はコヴェント・ガーデンのホテル(わりと新し目の)の下方階を使ったレストランで会食だったが、疲れからか終盤一瞬寝落ちしてしまった。ホテル帰着後、パッキングして就寝。


9月3日(日)晴れときどき曇り

 ホテル前にタクシーを手配してもらい、朝8時30分にヒースロー空港に向け出発。渋滞もなくスムースであった。ヒースローでは、羽田空港でOKだったバゲッジの重量は厳しくチェックされ、中のレコードを少し手荷物に移し替えたり、また手荷物検査も同様に羽田で特になにもいわれなかったものがサイズ的な問題で没収されたり(洗顔フォーム)と、テロ対策が厳重に行われていることを実感せずにはおけない。機内の時間は行きと同様、食事を除いてほぼ睡眠に充て、4日(月)朝に羽田空港着。数日ぶりの東京は雨降りだった。


(メディア向けメールニュース「BEAMS NEWS」Vol.390掲載のコラムに加筆)