必然のナイフ・エッジ・カレス

Satoshi Tsuruta 2016.11.11


「Shabby(シャビー)」

これは英語で
「(衣服など)着古した、みすぼらしい、粗末な」

などを意味する形容詞です。


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インターナショナルギャラリー ビームスの店内に
新しく特設コーナーができました。




そのコーナーを僕らは
「SHABBY SNAPPY」と呼ぶことにしました。
「Snappy」は英語の形容詞で
「洒落た、粋な、格好いい」などを意味します。


一見、相反するような
単語が二つ並んでいますが…。


そもそも
みすぼらしいものが
ファッションとして取り上げられ始めたのは
いつごろからなのでしょうか…?


すぐに思い浮かぶのは
「黒の衝撃」と呼ばれた1982年の事件。


パリのファッション・ウィークで発表された
日本人デザイナーによる
全身黒ずくめのコレクションは
世界に文字通り「衝撃」を与えました。


ご存じコム デ ギャルソンの
パリデビューコレクションは
多くのジャーナリストから
賛否両論を書き立てられ大いに物議を醸しました。


全身を覆い隠すような「黒」という不吉な色。
さらには「スイスチーズのようだ」
とも評された
セーターは
あちこちに
虫食いとも破れとも見えるような
穴が開けられていたのです。


煌(きら)びやかで優雅であることが
当然だと思われていた
当時のファッション界は
この黒ずくめの洋服を
同時期にパリデビューを果たした
もう一人の東洋人デザイナー
山本耀司氏のコレクションと並べて
「貧困者風だ」と揶揄しました。

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次に思い浮かぶのは
マルタン・マルジェラ。

彼を含む
当時のアントワープ出身のデザイナーたちは
王立アカデミーで学ぶ多感な時期に
件の「貧困者風」コレクションを
リアルタイムで目撃しており
当然、多大な影響を受けています。

マルジェラが1980年代後半の
デビュー当時から掲げていた
「反モード」の精神は
古着の解体・再構築や
カビや白ペンキで衣服を汚す、といった
前衛表現となって
90年代に再びモード界を揺さぶります。

そしていま。
2016年。

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まずはコーナーをのぞいてみましょう。




AS65(アーエッセセイチンクエ)のリメイクモッズパーカ。
外側のSHABBYな感じと
内側のゴージャスなリアルファーのコントラスト。




CHILDREN OF THE DISCORDANCEのパッチワークデニム。
古着のデニムをアーティな感性で再構築しています。




MIYASHITA TAKAHIRO THE SOLOISTのスエードジャケット。
見慣れたアイテムをここまで斬新にアレンジする感覚は
もはや天才的だと言えます。
破壊的なクリエイションと偏執的なまでのディテールへの執着。
そして完成度。





以前、本ブログでもご紹介した
Coutellerie&Bijouxのアクセサリー。




FRANK LEDERのジャケットは極厚の鹿革製。
植物エキス等を使い自然な方法で染められており
野生動物がそもそも持っている個体差を生かしているので
あちこちに傷や破れ(銃弾の跡など)があり
それをデザインとしてそのまま提示しています。




新進ブランドASHLEY ROWE(アシュリー ロウ)は
テキサスの女性デザイナーが発信するユニセックスコレクション。
MADE in USAのデニムアイテムは
大胆なカットオフと
着物のようなカッティングが特徴。
新規ブランドながら早くも人気です。




洋服好きの玄人も唸らせる7×7(セブン バイ セブン)。
このコートのライニングは古着のカシミアのセーターを
パッチワークで繋ぎ合わせたもの。
裏返して見るとかなりの迫力です。




コンチョベルトあれこれ。
パッチワークやリメイクのアイテムと
好相性のアクセントとして。




こちらも以前ブログで紹介したパッチワークシャツ。
ANTONIO MARRASのコレクションピースです。



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ボロボロ。くたくた。


ここで、ふと思い出したのはある写真。


英国王室御用達の写真家として、
A・ヘップバーン主演の映画
「マイ フェア レディ」の衣装デザイナーとして、
20世紀屈指のダンディとして、
皆様ご存じセシル・ビートン。


写真集「The wardrobe of Cecil Beaton」のなかに
ボロボロのセーターを着て写っているビートンがいます。


華やかなドレスアップスタイルからスポーツアイテムの着こなしまで
彼はまさに「歩くエレガンス」。
そう思っていたある時
この写真を見た僕は相当に衝撃を受けたことを覚えています。


英国王室に出入りしている人が穴だらけのセーターなんて!

コムデギャルソンのデビューよりもはるか昔、1945年のことです。


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街を行く人のジーンズの膝が老若男女問わず
気軽に破れ始めてからもう2年くらいは経ちますか。


いまや当たり前のように破れている服。つぎはぎの服。


たかがファッションと言えばファッション。

しかし、穴あきやつぎはぎはやはり反抗でありメッセージ。

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前回のブログでは
スーツを紹介しておきながら
今度は穴あきの話かよ…と
思う方もいらっしゃるでしょうか。

僕らにとって
「Shabby」と「Snappy」は
同じことを意味します。
相反するものだとは
考えていません。


スーツにしても穴あき服にしても
着るためには「意志」が必要であり
「意志」を持つためには
「知性」や「優しさ」が不可欠かもしれません。


いま、ジェントルマンにこそ、穴あき服?


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およそ10年ごとに繰り返しやって来る戦争や不景気や退屈。


混沌とするファッションを横目に見なが
自分の意志で時代を切り開いてゆくような気骨溢れる「ボロい服」たち。



「Shabby」で「Snappy」なコーナーにて
皆様のご来店をお待ちいたしております。





Tsuruta