やきなおしぜねれいしょん

Satoshi Tsuruta 2018.02.16

ショップには連日のように新商品が入荷しています。店内の一部には秋冬のセール品も置いてありますが、いよいよ2018年春夏シーズンが本格的に幕開けです。


当店ではメンズだけで(規模の大小含め)常時100前後のブランドを取扱いしております。2005年に旧店舗(1FとB1F)から現在の店舗(2F)へリニューアルしたときに掲げたコンセプトは「洗練された混沌」です。まったく異なる価値観を持ったブランド同士が隣り合わせに陳列されることで生まれる刺激を追求したショップというわけです。


クラシックなスーツの隣に破壊的なクリエーション。モノトーンアイテムの隣に極彩色のプリントアイテム。8万円のレザージャケットの隣に13万円のコットンシャツ。

といった具合です。


1981年のレーベル発足以来、インターナショナルな感覚で世界中からトレンドをピックアップしてきた当店ですが「長い間続けているからこそ」出会う刺激があります。それは新たな世代の足音、ニュージェネレーションの気配です。

1995年に衝撃の新世代デザイナーとして登場したRAF SIMONS。そんな彼のキャリアも既に20年超え。JIL SANDERからDior、Calvin Kleinまで幾つものトップブランドで独創的なクリエーションを発揮してきたRAFは今や完全にビッグネームのスターデザイナー。

今回(2018年春夏)のコレクションも最高に刺激的で独自の世界観に溢れた素晴らしい内容です。














ビニール傘、提灯(ちょうちん)といったジャポニズム要素を随所に散りばめながらも、暗い雲に覆われた空から酸性雨が降りしきる退廃的なメトロポリスの世界観は、映画『ブレードランナー』さながら。ごった煮のサイバー・パンク・ワールドを独自のサイズバランスやレイヤードルックで見事に表現しています。変則的なシルエット、意外性のある素材の組合せに伝説のグラフィックデザイナー・Peter Savilleのアートワークがミックスされることで、予想以上の化学反応が生まれました。





店内ではRAF SIMONSのコレクションをジョージ・ナカシマのベンチにレイアウト。RAFもナカシマの家具をいくつも所有しているそうです。ちなみにこのベンチ、通常施される上塗りをせず、無垢のまま仕上げて貰った当店の別注品です。(店内用什器の為、非売品です)13年前、店舗リニューアルの搬入作業中に香川の桜製作所から届いた大きな段ボールを開けてみたら、このベンチが出てきたときの衝撃を今も覚えています。


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そして2018年、衝撃のニューカマーNAMACHEKO(ナマチェコ)の登場です。


NAMACHEKOは、イラクのクルド地区で生まれ、幼少期にスウェーデンに移住した兄妹Dilan LurrとLezan Lurrによって立ち上げられました。実際のデビューシーズンは2017年秋冬ですが、そのデビューコレクションをパリのコンセプトストアThe Broken Armが青田買い。世界エクスクルーシブで展開した為、市場にはほとんど出回ることなく幻に近いコレクションとなりました。

そして2018年春夏、インターナショナルギャラリー ビームスは彼らの2回目のコレクションをバイイングしています。パリの手狭なショウルームは各国のバイヤーやファッション関係者でかなりの盛況ぶりだったようで、彼らの注目度の高さが伺えます。











デビューシーズンからこれほど注目を集めるブランドも珍しいでしょう。ショップに届いたアイテムを見てみると、実にオリジナリティあふれる仕上がり。ロウカット(切りっぱなし)で処理されたエッジ部分やグラデーション状にペイントされたパーツ使い、全体的にはソリッドな印象であるにも関わらずマザー・オブ・パールやリアルホーンといった古典的な素材のボタンが付いていたり…。アイテムの各部分を実際に手に取り、試着したり、チェックしたりするうちに、自分自身が若いころ(20年前とか)に服を見ていた時の感覚が呼び戻されたような気になってきました。つまり、彼らの作る服は「洋服を見慣れた目にも新鮮に映った」のです。






今のファッションなんて過去の焼き直しでしょ?

そんなシラケた声もよく聞こえてきます。半分は正解で半分は的外れだと、僕は思います。トレンドのサイクルを2周、3周と体験しながら歳を重ねるうち、若いころは大好きだったファッションにすっかり心が動かなくなっている自分に気付く人も多いでしょう。ファッションに限らず、音楽でも映画でも全部が同じように感じられてしまう。これは「大人になる」という過程の中でオマケのように必ず付いてくる「変化」です。

確かに焼き直しファッションは溢れています。
しかしそうでないものが確かに存在します。



NAMACHEKOをバックアップするのはRAF SIMONSがデビュー当初のアイテムを生産していた工場だそうです。こういった一流の生産背景でアイテムを作ることができるデザイナーはごく一部に限られています。新人でありながら異例のバックアップを受け、世界の注目を集めるNAMACHEKO。これはアントワープ王立アカデミーのリンダ・ロッパ女史をして「あなたには教えることがなにもない」と言わしめたデビュー前のRAF SIMONSとオーバーラップする部分でもあります。破格の才能や輝きは、自分がそうであると宣言するよりも前に、まずは他人によって発見されるものです。

確かにNAMACHEKOにはRAF SIMONSで働いていたパタンナーやPRスタッフが集まっているそうです。しかし、これはNAMACHEKOのクリエイションがRAFのクリエイションの焼き直しである事を意味するものではありません。

NAMACHEKOにはオリジナリティがあります。初期衝動が感じられます。現在のメンズファッションにおいてシルエットやフォルムの新しさを追求する探究心があります。仮にそれが何周目の体験であろうとも、僕の目にはそう映りました。特定の年代のリバイバルだ、焼き直しだと早合点でトレンドを総括してしまう前に、目の前にある「服」を触って、着て、感じてみるべきです。


人生に於いて同じ日なんて一日たりともない。


あるとしたらそれは錯覚です。

コーヒーの味。通勤路の景色。風の音。
20年前の1日と今日が同じであるはずがありません。

感覚を研ぎ澄ませばファッションはまだまだ面白くなります。混沌の先にある世界に僕らの手は今にも届いてしまいそうです。




Tsuruta