マカロニかスパゲッティか。

Satoshi Tsuruta 2016.09.16


マカロニかスパゲッティか、それが問題だ。


本題に入る前に映画の話を少し。


19世紀後半のアメリカにおける
西部開拓時代を舞台にしたもので
1
950年代ごろまでのハリウッド黄金時代を支えた
「ウエスタン」という映画ジャンルがあります。


ジョン・ウェインであり
ロバート・ミッチャムであり
シェーン!カームバーック!」のアレ、
ですね。


ウエスタン映画は
1960~70年代にかけて
アメリカ西部から遠く離れた
イタリアやスペインでも多く作られました。
そう、イタリア産の西部劇
マカロニウエスタンです。


ちなみに「マカロニウエスタン」とは和製英語で
欧米では一般的に
「スパゲッティウエスタン」と呼ぶそうです。


そして1960年代に量産された
マカロニウエスタンの中でも
一際異彩を放つ作品に
殺しが静かにやってくる」('68)が
あります。


そもそもマカロニウエスタン自体が
本場アメリカの西部劇に比べて
残酷なシーンや不条理な展開が多いのですが
その中でもこの作品はまさに問題作。

まずは冒頭のシーン。
太陽が照りつける荒野ではなく
雪が舞い散る銀世界から始まる時点で
ウエスタンの常識をいきなり覆してくれます。

ちなみにクエンティン・タランティーノの最新作
「ヘイトフルエイト」('15)にも見られる
銀世界と西部劇の組み合わせは勿論
この作品へのオマージュ。
「ジャンゴ」('12)からもわかる通り
彼はマカロニウエスタン好きを公言しています。


そしてやっと本題へ。


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イタリア人デザイナーAntonio Marrasの
2016-17秋冬コレクションは
「ウエスタン」をテーマにしています。

コレクションルックをひとつひとつ見ていくと
ウエスタンブーツや
フリンジをあしらったブルゾン、
ウエスタンヨークの付いたジャケットなどが登場し
確かに「ウエスタン」なアイテムが随所に見られます。

しかし。


Antonio Marrasによる「ウエスタン」は
やはりどこか「マカロニ」
つまりMarras
流に洗練された
ウエスタンスタイルに仕上がっているのです



パッチワークシャツ¥98,000(+税)
※こちらのシャツはすべてハンドメイドのため
パッチワークの柄行きは1点1点異なります。
コーデュロイパンツ¥43,500(+抜)




ジャケット¥119,000(+税)



カーディガン¥58,000(+税)
※実際の取り扱いは写真の色違い(ボルドー系)です。

ベルベットやコーデュロイといった起毛素材使い。
彼が得意とするボールドなカラーリング。
本格的なテーラードアイテム。
正統派カウボーイルックの男臭さは完全に消え去り
洗練されたエレガンスが立ち上っています。


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一方で「殺しが静かにやってくる」の主人公
ジャン=ルイ・トランティニャン演じる
喋らない殺し屋・サイレンスも
たっぷりとした黒い毛皮に身を包み
テンガロンの代わりにロングブリムのハットをかぶって
一面の銀世界を馬に乗って進みます。


この風景はアメリカの西部劇では
ほとんど考えられないようなものです。


国が変わるとこうも変わるのか
ということは
カリフォルニアロールを例に挙げるまでもなく
よくあることといえばそうですが。



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Antonio Marrasの故郷・サルディーニャ島でも
1960~70年代に西部劇が作られていたそうです。
少年Antonioの目にはその風景が焼き付いていたのでしょうか。




ショーの最後にはハンドメイドで作られた
刺繍入りのパッチワークシャツを身に付けた
モデルたちが登場。
圧巻のフィナーレです。




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ちなみにこの映画の原題は
「The Great Silence」。


直訳すると「大いなる沈黙」とか
そういった感じなのでしょうが
「殺しが静かにやってくる」。
これは翻訳者のセンスが発揮された
抜群にかっこいい邦題です。


故郷で撮影されたイタリア風西部劇に想いを馳せ
アメリカンなディテールを散りばめながらも
洗練されたヨーロピアンスタイルを見事に作り上げた
Antonio Marras。
彼もまた「優れた翻訳者」のひとりです。


マカロニかスパゲッティか、
それはもはや問題ではない。




Tsuruta