12人の迷える日本人

Satoshi Tsuruta 2016.11.30


もう20年くらい前の話です。


授業にはろくに出席せず
図書館の視聴覚コーナーで
映画ばかり観ているようなダメ学生だった僕は
そこで今も心に残るような沢山の名画に出会いました。


ヒッチコックやキューブリック、チャップリンなどの作品に
笑い、震え、感動したのもその時期です。


それら名画の中で当時18~9歳の僕が
「こんなに面白い映画があるのか!」
驚嘆した1本があります。


「12人の怒れる男」('57)です。


名画中の名画なのでご覧になった方も多いでしょう。


ネタバレにならないようにあらすじだけを書きますと…。


父親殺しの容疑で裁判にかけられた18歳の少年は
黒人街のスラム育ち。
陪審員を務める12人の男たちは
裁判で提出された証拠をもとに「有罪」に意見が傾いているのですが

ひとりだけ「無罪」を主張する(ヘンリー・フォンダ演ずる)陪審員8番に
「もう一度話し合おう」と説得され…。


1対11という圧倒的不利の状況から事態は動き始めます。


この映画、まず法廷のシーンが全くありません。
本編の99%は12人の男たちが

議論を交わす陪審員室の中で進んでいくという、
いわゆる「密室劇」になっているのです。


最小限の装置でこれだけの面白い映画を撮ってしまうのですから
監督のシドニー・ルメットは勿論
脚本や俳優陣の
演技が素晴らしいということ。


アメリカの陪審員制度が抱える問題についても鋭く切り込んでいきます。


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そしてこの映画には見所がもうひとつ。


これは大人になってから何度か(テレビやレンタルなどで)
この映画を見直すうちに気づいたことですが…。


舞台は1950年代のアメリカ。
陪審員室に集まった12人の男たちは
当然のように皆スーツにネクタイ姿。

当時の「大人」はこれが当たり前でした。



先日行われたプレス内覧会の会場より
インターナショナルギャラリー ビームス
2017春夏シーズンのブース。


室内が非常に暑いのでそのほとんどは
上着を脱いで
シャツにネクタイという出で立ち。


自然とシャツ&タイに目が向いてしまいます。


当時のアメリカなので
タイはナローなものを着けているのですが
シャツの襟型。
これについては皆、バラバラです。


12人の中でも比較的多いのがレギュラーカラー。
ヘンリー・フォンダもレギュラーカラーにナローなタイ。
タイバーの位置がヘソに近いくらい低く
彼のスラッとしたキャラに不思議なマッチングを見せています。


軽薄な性格の広告マンはお洒落な男の設定なのか
小さめのラウンドカラー。


冷静で知的な眼鏡の男性はタブカラー。


体育教師でアメフトのコーチをやっている男に至っては
ポロシャツにネクタイ。


といった具合です。




物語が進むにつれて
11人の男たちが
なぜ
「有罪」に傾いていたのかが
徐々に明らかになっていきます。


黒人への差別。
息子との確執。
野球の試合。
個人的な事情や信条が作用して
それぞれの主張を生み出しているのです。


キャスティングや脚本の妙が
見事にそれぞれの人物像を作り上げており
20歳そこそこの僕は90分以上の間
退屈どころか手に汗を握りっぱなしだったことを
覚えています。



人間はそれぞれに主義、主張、性格や顔立ち、
体型の差があり、
それがあって当たり前です。


それらを総称して「個性」と呼ぶならば
それに寄り添う服だって千差万別。


十人十色。
いや十二人十二色?



2016秋冬のコレクションより

左からタブ、レギュラー、ラウンドカラー。

インターナショナルギャラリー ビームスでは
バリエーション豊富に
シャツの襟型をご用意しています。
新型のレギュラーカラーやタブカラーのバランスを
色々なコーディネートで
是非お楽しみください。

中には
久しぶりのレギュラーカラーに
戸惑う方もいらっしゃるかもしれません。
ただし、20年前までは普通のものとして
品揃えのショップには並んでいたものです。

自分らしいバランスで着てみてください。


ファッションは
裁判と違って
有罪・無罪の判決がないのです。



答えはいつだって自分自身のなかに。




Tsuruta


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是非こちら(↓)の特集もご覧ください。
http://www.beams.co.jp/feature/161114/