BLOW UP

Satoshi Tsuruta 2017.03.05

初めに断っておきますが
これは単なるロマン主義や
ノスタルジーの話では
ありません。


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今では
音楽もダウンロードして
入手するのが
一般的な時代になりましたが
一昔前はレコードという「モノ」を
通して手に入れることが
普通でした。

70年代後半生まれの僕にとっても
それは例外ではなく
新しいレコード(CD)を
袋に入れて持ち帰るときの
高揚感といったらありませんでした。

早く聴きたくてしかたがないので
バッグやポケットの中には
いつもポータブルCDプレイヤーを
持ち歩いていて
レコード屋からの帰り道、
さっそく開封して
電車の中でヘッドフォンを通して聴きながら
ライナーノーツを読み耽る、
というのが日課でした。

僕はこの「ライナーノーツ」という
読み物(媒体)がとても好きで
期待値の高いアーティストのアルバムは
多少高くても出来るだけ国内版を
購入していました。
音楽そのものと同じくらい
音楽ライターのモノの見方・考え方に
興味があった、と言えます。
なんなら、僕のこの
回りくどくて、分析的で、
その上ちょっとねじ曲がった文章は
こういった音楽評論に
多分に影響を受けているのだと
最近になって思います。

そして、
僕にとってレコードを買う
という行為に付属してくる
大きなオマケ、というのが
ライナーノーツ以外に
もうひとつあって…。


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ニューヨークに拠点を移し
先日のコレクションウィークでも
話題の的となった
RAF SIMONS。
彼についてはもういまさら
詳しく書き立てる事もないかと思います。

Calvin Kleinの初コレクションでは
群衆の期待を、いい意味で
予想通りに裏切ってみせた(?)
RAF SIMONS。

2016年6月。
廃墟と化したイタリアの古い駅を会場に
彼が発表した2017年春夏のコレクションは
アメリカの写真家
Robert Mapplethorpeとの
コラボレーションでした。



RAF SIMONS 2017春夏のキャンペーン広告より。

ランウェイには
Mapplethorpeさながら、
カーリーヘアのモデルたちが
モノトーンのオーバーサイズシャツを
今にも脱げてしまうんじゃないか?
というほど不安定な羽織り方で登場。

ルックのなかから
象徴的なものをピックアップして
見てみましょう。



シャツ ¥103,250(+税)



シャツ ¥107,450(+税)



シャツ ¥110,600(+税)


Mapplethorpeの写真が
大胆に配されたそれらのシャツを
計算し尽したかのように
不安定なレイヤードルックでスタイリングし、
アンバランスの上に
奇跡的なバランスを保っています。
(ちなみにRAFはいつも
自分自身でショウのスタイリングを手がけます)


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ライナーノーツと同じくらい
僕が楽しみにしていたもの、
それはレコードのジャケット。
表紙がカッコよければ
視聴できなくても買ってしまう
いわゆる「ジャケ買い」で
成功も失敗も経験しました。

ちなみに僕が大好きな
レコードジャケットの上位に
Patti Smithの1975年作品「HORSES」が
挙げられます。

ロック史に残る
この素晴らしいカバー写真で
若き「パンクの女王」=Patti Smithは
(まるで男物のような)白シャツに
タイトなブラックジーンズを穿いて
見る者すべてを射るような
まっすぐな視線を
こちらに投げかけています。

この撮影の日。
いつもより寝坊したPattiは
ステージで普段着ている服に着替えて
現場へ向かいました。
自然光で撮影されたこの写真が
必要とする角度まで陽が動き、
いよいよシャッターチャンスが訪れようとした
その時。

この撮影を担当した写真家は
Pattiが着ていた黒い上着を
脱ぐように指示したと言います。
指示されたPattiは「それ」を脱ぎ
さり気なく肩に引っかけました。


そして、シャッターの音。


この写真家こそ
Robert Mapplethorpeです。
彼はPattiのルームメイトでもありました。

当時を回想して
Pattiは次のように語っています。
「彼はシャツの白さが気に入ったのよ。
わたしは(フランク)シナトラ風に
ジャケットを肩に引っかけたわ。」


ちなみにこの写真で
Pattiが着ている白いシャツは
肘の下の位置で
袖が大胆にカットオフされています。

10年ほど前に
当店で取り扱っていた
ANN DEMEULEMEESTERの
コレクションに袖を肘下でカットオフした
白シャツがありました。
彼女にとってのミューズもまた
Patti Smithだったのです。

そのシャツを僕が即購入したことは
言うまでもありません。


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インターナショナルギャラリー ビームスには
RAF SIMONSの最新コレクションが
届いています。





ランウェイでアイコニックな存在感を放っていた
オーバーサイズシャツも勿論、
バイイングしています。




また、2017春夏コレクションの
バックステージの様子を
オフィシャルのフォトでご紹介しています。

明治通り沿いの
ウインドウディスプレイも
RAF SIMONS×Robert Mapplethorpe。



SONIC YOUTHが1988年に発表した
インディ時代の最後を飾る2枚組大作
「DAYDREAM NATION」のレコジャケで
Gerhard Richterを知り、
JOY DIVISIONの1979年のデビュー作
「UNKNOWN PLEASURES」で
Peter Savilleを知り、
THE ROLLING STONESが
サザンロックを深堀りした
1971年の「STICKY FINGERS」で
Andy Warholを知る、ということ。

アーティストの目を通して
アーティストを知る、ということ。

RAF SIMONSにとってすら
それらの感覚はきっと
僕らと同じであったに違いありません。

ちなみに20年以上前。
Robert Mapplethorpeの写真を
キャンペーンに使用した
ファッションデザイナーがいました。

HELMUT LANGです。

彼は
RAF SIMONSが敬愛する
デザイナーのひとりでもあります。




いつだって僕らは
互いに影響を与え合いながら
生きています。

RAFのデビューコレクションが
日本の高校生からインスパイアされた
スクールルックであったこと。

Patti Smithが
ジャケットを肩にかける瞬間、
心にシナトラを思い描いたこと。

ANN DEMEULEMEESTERが
白シャツの袖をカットしたこと。

日本人の高校生だった僕が
RAF SIMONSのコレクションに
シビレたこと。


感じること。
行動すること。
その瞬間をとらえること。

そこに上下関係はありません。

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その撮影の日。
いつもより寝坊した彼女は
ステージで普段着ている服に着替えて
現場へ向かいました。
自然光で撮影されたこの写真が
必要とする角度まで陽が動き、
いよいよシャッターチャンスが訪れようとした
その時。

その撮影を担当した写真家は
彼女が着ていた黒い上着を
脱ぐように指示したと言います。
指示された彼女は「それ」を脱ぎ
さり気なく肩に引っかけました。


そして、ふたたびシャッターの音。


そのシャッターを切ったのは
Mapplethorpeでも
RAF SIMONSでもなく
「あなた自身」でした。



Tsuruta