#001 2008.12.01-25 Report

大庭大介 ただよう光の網の中へ

刻々変化する光が留められた平面。その変化の理由は、視線と光、平面の位置が絶え間なく動くためだ。絵画とみる人、そして光の位置の関係により浮かび上がるイメージそのものを彼はつくっているともいえるだろう。

特殊なアクリル絵の具で彼は、まず光彩のラインを、そして次に波をつくり、さらにその上に刷毛目で一つ一つ、格子状のグリッドをつくっていく。それは運動の軌跡であり、反復と差異であり、必然と偶然の織物である。そうしてできたフラジャイルな平面を、今このときしかない光の中で、条件のなかで、あなたがみるこの奇蹟。そうした体験ができる作品なのである。

彼はこれまで、映画のワンシーンや取材にいった樹海や五色沼といった聖地の写真をモチーフにして、同様の手法で絵画を描いて来たのであるが、それらもそのモチーフ(主題)そのものというよりは、その場にある雰囲気、光の不可思議さをこそ、描いて来たともいえるだろう。

そういう意味では彼は一貫して、人に光と物質を通じてイメージと出会わせる体験そのものをつくってきたのであり、そうした体験のかけがえなさこそが、今の時代に実感として必要なのかもしれない。

Text: Yuu Itoh
Photo: Keizo Kioku

UROBOROS (spectrum)
180×180cm
acrylic on cotton and wood panel
2008年
所蔵:有沢敬太
UROBOROS (woods)
220×180cm
acrylic on cotton and wood panel
2008年

2階から階下に下りる時に目に入る正面の壁には、1800×1800の大作が掛けられていました。そのアクリル絵の具を使った絵画は、見る人が動く度に虹色に輝く表面の表情が変わり、移動しながら見つめることで映像のように動きを感じることさえありました。
普段は単なる白壁が立ち上がる場所から、強い光がフロアを照らすかのように配された美しい作品は、美というものの持つ分かりやすく単純な力強さで主張していました。

Photo : Ryosuke Kikuchi
Styling: Ayaka Endo

大庭大介 DAISUKE OHBA

http://daisukeohba.blogspot.com/

1981年
静岡県生まれ
2003年
第1回現代美術コンクール入賞
2004年
シェル美術賞入選
2005年
京都造形芸術大学美術・工芸学科洋画コース総合造形卒業
2007年
東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修了

主な個展

2006年
「LABYRINTH」magical, ARTROOM(東京) / art project room ART ZONE(京都)

主なグループ展

2005年
「混沌から躍り出る星たち2005」ギャルリオーブ(京都)/ スパイラルガーデン(東京)
2007年
「Oコレクションによる空想美術館(デザインと魂)」ト−キョ−ワンダーサイト本郷(東京)
「イリュージョンの楽園」MA2 ギャラリー(東京)
「ART AWARD TOKYO2007」行幸地下ギャラリー(東京)
2008年
「THE ECHO-The exhibition of Japanese Next Generation-」ZAIM(横浜)
「Japan Now」Inter Alia Art Company(韓国)
「vivid material」東京芸術大学(東京)
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