出会えた好きを大切に。

    COLUMN & ESSAY

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    調査隊コラム
    石山蓮華のマイペースな電線愛に教わる、 長いスパンで幸せに生きるコツ

    「調査隊コラム:好きなものの愛し方は人の数だけ。」vol.2

    RENGE ISHIYAMA
    インタビュー・テキスト:松井友里 撮影:小林真梨子 編集:野村由芽

    Oct 16.2020

    人とは違うものを「好き」でいる人には、その人だからこそ見えている世界があります。子どもの頃からタレントとして活動し、『ZIP!』などのレポーターを務めたのち、事務所を辞めて電線愛好家・文筆家・俳優として活動する石山蓮華さんは、肩書の最初に「電線愛好家」と入っているほど電線を愛する人です。

    電線をあらゆる角度で褒めそやす「好き」の熱量こそ高けれど、その姿勢に焦りはなく、あくまでも自分のペースを大切にしながら生きていくために好きなものと併走しているような穏やかな印象を受ける石山蓮華さん。『出会えた好きを大切に。』調査隊コラム2回目となる今回、好きなものと出会うことは、自分の人生のリズムをつくることだと教わった気がしました。

     

    <もくじ>

    P1:
    ・電線が相手なら基本的には迷惑がかかりませんから。どんなに愛しても、電線には心がないので……(笑)。
    ・知識量と愛の強さはイコールではないと思うんですよね。
    P2:
    ・人に伝えるために生み出した言葉は、自分がものを見るときにも返ってくるので、ものの見方が豊かになる。
    ・自分のペースで発信しないと、疲れてしまいます。
    ・長い時間をかけていけば、「逃げた」と思わずに、まったく違う分野で自分の好きなことを見つけることもできるんじゃないか。
    P3:
    ・石山蓮華さんが読者から集まった「好き」を形にするためのお悩みに答える

     

    電線が相手なら基本的には迷惑がかかりませんから。どんなに愛しても、電線には心がないので……(笑)。

    無類の電線好きである石山蓮華さんは、どうして「電線」に注目するようになったのでしょう? その発見は、小学生の頃にさかのぼります。

    石山:子どもの頃から観察をすることが好きで。赤羽の街を眺めていたときに、路地で電線が重なり合う様子を見て、生き物みたいだ! と思ったんです。

    思い返せば5歳の頃、『もののけ姫』に出てくるタタリ神を見て、「線がうねっているこの生き物やばい」と思ってから、なんとなく「うねる線と生き物」というのが個人的にぐっと来るものの一つになっていたんですよ。それからはずっと、うっすらと電線に興味を持ち続けていました。

     

    石山蓮華さんと電柱

     

    石山:好きになる相手が生き物や人間だと、自分との間に関係性が生まれることで、相手に迷惑をかけるかもしれない……と思ってしまって、どこかエンジンを加速しきれない部分があるんです。でも電線についてはそれがないこともよかったのかも。高校生の頃に一眼レフカメラを手に入れて写真に撮り始めるようになったのですが、どれだけ見つめても、撮りたい部分をひたすらクローズアップしても、一方的に愛を伝えても、電線が相手なら基本的には迷惑がかかりませんから。どんなに愛しても、電線には心がないので……(笑)。

     

    知識量と愛の強さはイコールではないと思うんですよね。

    専門家、研究家、マニア、オタク……など、何かを愛して、突き詰めようとする人を表す言葉はさまざまにありますが、石山さんは「電線愛好家」を名乗っています。「愛好家」という言葉には、どんな気持ちを込めているのでしょうか。

    石山:専門家も研究家も、マニアもオタクも、向き合う対象に対して、一定以上詳しいという前提が言葉自体に含まれていると思うんです。でも「愛好家」というのは、好きでさえいれば完結します。私も、電線について詳しくなりたい気持ちはもちろんありますし、そのために本を読んだり、展示会に見学へ行ったりと、勉強しているけれど、私より詳しい人はたくさんいる世界ですし、詳しさよりも「愛でる」ことを大切にしていきたいんです。

    電線好きとして表に出ると、「これ知ってる?」と電線に関する知識を聞かれる場面がたびたびあるのですが、「えー、知らなかった!」となることもしょっちゅうあるんです。でも、「知っている」とか「知らない」というのは、そのときのただの「状態」のようなものだと思っていて。「好き」という気持ちの先に、自分の知りたい範囲で知識がついてくればいいと、私は思います。知識量と愛の強さはイコールではないと思うんですよね。

     

     

     

    好きな分野について、自分よりも豊富な知識を持つ人がいたとき、自分の「好き」に自信がなくなってしまったり、比べてしまったことがある人も、少なくないかもしれませんが、知識よりも愛を伝えることに重きを置く石山さん。自分自身で楽しむだけではなく、魅力を広く知ってもらいたいと考えて活動するのはなぜでしょう。

    石山:「電線の何がいいんですか?」と聞かれることがあると、「もったいない!!!!」と思うんです。馬鹿にしているわけじゃなくて、自分の中のお節介な気持ちが湧いてきてしまって。電線って、自分からは「ここがいいんですよね!」なんて発信しないじゃないですか。だから私が電線のいい部分を説明して、面白さを知ってもらえたら、電線はどこにでもあるので、みんなが勝手に電線の写真をアップしてくれるようになると思うんですよ。そうしたらこっちは、電線のいい写真の永久機関を得ることになるので、しめたものですよねえ(笑)。

     

     石山蓮華さんのInstagramより「#いい電線」

     

     

     

    子どもの頃から芸能界にいた石山蓮華さんが得たまなざし。超競争社会でも人と比べずに、自分のペースで発信することが疲れないコツ。

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    PROFILE

    RENGE ISHIYAMA石山蓮華

    電線愛好家・文筆家・俳優。 電線愛好家としてテレビ番組や、TBSラジオ「アフター6ジャンクション」「能町みね子のTOOMUCH LOVER」などに出演するほか、日本電線工業会「電線の日」スペシャルコンテンツの監修、オリジナルDVD『電線礼讃』のプロデュース・出演を務める。 主な出演作に映画『思い出のマーニー』、舞台『五反田怪団』(作・演出:前田司郎)、『遠野物語-奇ッ怪 其ノ参-』(作・演出:前川知大)、川谷絵音ソロプロジェクト『独特な人』、NTV「ZIP!」など。ライターとして「ホンシェルジュ」「Rolling StoneJapan」「月刊電設資材」に連載中。

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