出会えた好きを大切に。

    COLUMN & ESSAY

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    漫画・エッセイ
    飽きない恋人/村田倫子

    「エッセイ:『好き』をおいかけて。」vol.1

    RINKO MURATA
    テキスト:村田倫子 編集:野村由芽

    Oct 02.2020

    わたしは依存している。
    そう、あなたに、カレーに……
    こんな骨抜きになるなんてあの時は思いもしなかったわ。

    出会いはかれこれ、5年前。
    私は知らなかったのだ、カレーの本性を……。

    初めて“外食”して食べたカレーは下北沢で人気の「スープカレー」だった。
    どろりとしたルゥはどこにも見当たらない。
    シャバっとした香り豊かなスープ。
    茶色のイメージを払拭する色とりどりの野菜の山。
    新しい「カレー」の美味しいの雪崩。

    やっとカレーの違う一面を垣間見た瞬間。私は初めて恋に落ちた。

    学校の給食時、男の子がおかわり戦争に首ったけのあのカレー。
    実家にて、2日目までは得意げに、その後もニュアンスで表情を変えては何日も食卓に居座り続けるカレー。

    当時、固形のルゥに支配された“みんな大好きでしょ?”な王道はもうお腹いっぱい。
    世の中には魅惑的な飲食店で飽和状態。友人とは映えるカフェ飯を食べたいし、がっつりお腹をご機嫌にするならば肉を食べたい。家でも十分に美味しいスタメンカレーをわざわざお店で食べるという選択肢はなかった。

    しかし、外の世界はブルーオーシャン。未熟な私を待ち受けていたのはスパイスの魔法だった。

    「カレーを食べる」という訳語は
    「さて、今日は和洋折衷どれにしようか」くらいに抽象的で自由だ。

    みんな大好き欧風カレー
    北海道が産んだスープカレー
    大阪発祥、自由の旋風が吹き荒れるスパイスカレー
    こってりな旨味が体を温める北インドのカレー
    健康的な定食スタイルの南インドのカレー
    出汁が効いた彩り豊かなスリランカのカレー

    国の文化、日本独自の進化、文化と自由の融合……
    スパイスの掛け合わせで無限に広がるカレーの奥ゆき。

    特に面白いのは、最近主流になってきている“スパイスカレー”。
    その人の解釈で、それぞれ異なる風味と香りが宿る。
    潔く一皿で提供されるカレーは、作り手の自由のキャンバスだ。
    真っ白のキャンバスにオーナーの人生や想いが紡がれている。それが“スパイスカレー”。
    そのため、店によってモチーフである「カレー」の表現は全く異なる。
    同じ香水でも纏う人によって立ち昇る香りが変わるように。

    ほとんどの日本人は抱いているだろう「インドカレー=ナン」の方程式もカレーを知るにつれて覆った。
    ナンを作るにはタンドールという大きな専用の焼き釜が必要。それを持っている家庭はごく稀である。実はナンはインド人にとってお祝いごとや外食をするときの、ちょっとした贅沢品という立ち位置。

    北インドの主流は全粒粉を水と塩で練って薄くのばして焼いたクレープみたいなパン“チャパティー”。
    南インドではお米が主食だ。

    カレーを軸に広がる世界。
    知らないってもったいない。
    出会うって楽しい。

    日々新しい表情を魅せてくるカレーは妙に色っぽい。
    まんまと毎回どきりとしちゃう。

    必ず気付きと発見がある刺激的な食事の時間。

    実は私の基本気質は飽き性。何かに対する熱量の源がおそらく人より乏しい。何かに脇目もふらず夢中に愛情を注ぐ“オタク”が尊いと思うし、心底羨ましい。
    ここ数年カレーと付き合っているけれど、一見一途に見えてずっとカレー界で浮気しているのだ。

    さまざさなタイプと可能性を孕んだ“カレー”。
    デートの度に、新しいエンターテイメントを提供してくれる恋人。
    そりゃ、飽きることなんて一生ないわ。

    PROFILE

    RINKO MURATA村田倫子

    1992年10月23日生まれ、千葉県出身のモデル。ファッション雑誌をはじめ、テレビ・ラジオ・広告・大型ファッションイベントへの出演など幅広く活動している。自身初のスタイルブック「りんこーで」は発売から1週間で緊急増刷となり、各種SNSのフォロワー数も急上昇中。趣味であるカレー屋巡りのWEB連載企画「カレーときどき村田倫子」では自らコラムの執筆も行ない、ファッションだけにとどまらず、そのライフスタイルでも注目を集めている。

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