銭湯のススメ。
銭湯のススメ。

銭湯のススメ。

牛乳石鹼共進社株式会社とコラボレーション

PROJECT
銭湯のススメ。
PARTNER
牛乳石鹼共進社
YEAR
2019

『銭湯のススメ。』は、新宿「ビームス ジャパン」を中心に、ユニークかつ多彩なコンテンツで日本の古き良き銭湯文化を発信するイベントを実施。店頭では“牛乳石鹼カウブランド橙箱(だいだいばこ)”を含む限定アイテムの発売を行うほか、オリジナリティに富む東京都の銭湯とその楽しみ方を提案する情報誌を配布。また、イラストレーター・長場雄が描き下ろしたスペシャルな暖簾で約550にも及ぶ都内の全銭湯をジャックし、スタンプラリーも実施。東上野の「寿湯」では期間中、銭湯絵師・田中みずきの手によって『銭湯のススメ。』仕様の壁画が描かれるなど、様々な場所やコトと連動。

Order

液体石鹸の売上と比較し減少傾向にある「カウブランド」の固形石鹸の売上拡大のためプロモーション施策の設計。プロジェクトスタート時はコラボレーショングッズなどプロダクト開発を中心に、固形石鹸そのものを知らない若年層に対してブランド認知を広げるプロモーション手段をイメージ。

Issue

カウブランドの固形石鹸の認知を拡大する上で、プロダクト軸のプロモーション施策だけでは話題になりづらいと考え、生産背景や使われる場面などブランドの「ストーリー」に紐づいたコト軸でのプロモーション手段を企画しました。そこで、固形石鹸がよく使われ日本が誇る大衆文化「銭湯」をコアコンセプトに設定し、コミュニケーションを設計していきました。

Ideas

若年層だけでなく幅広い層に固形石鹸の魅力を伝えつつ、SNS上でのバズの起点とするべく約550の銭湯を巻き込み、「銭湯のススメ。」の暖簾でジャック、銭湯を巡回していただくスタンプラリーを開催。さらに銭湯の魅力を伝えるためのプリントメディアやグッズを同時販売。さらに、ブランドの顔であるカウブランドの固形石鹸をビームスカラーにアレンジしています。

VOICE

  • 相田高史
  • ディレクター

ビームスらしいプロダクト開発を中心に若い人に固形石鹸の価値を再認知させたい、というのが当初のイメージでした。確かにプロダクトアウトでコンテンツをバズらせるのは僕たちの方法論のひとつです。でも日本を代表する牛乳石鹼の文化的価値を考えた時、単純にプロダクトをつくるだけではなく、「コト軸」のムーブメントを起こしたいという思いが強くなっていきました。そこで何気なく提案させていただいたのが「銭湯」というキーワードだったのですが、その際に、実はもともと牛乳石鹼は銭湯への卸を主流にしていたという話を伺ったんです。さらに、すごいペースで銭湯がなくなっていっているという事実も教えていただきました。もともとビームス ジャパンとして銭湯のような庶民文化として受け継がれてきた「コミュニケーションの場」に注目していました。みんな裸になって湯船につかるという日本独自のコミュニケーション文化、そうした無形の文化を若い層に受け継いでいくのはビームスがやるべきことだと思ったし、なにより牛乳石鹼の会長さんが「銭湯を守っていきたい」という強い気持ちをお持ちだったのです。ここから一気にプロジェクトが加速しました。東京都浴場組合に相談し、銭湯を巻き込んだスタンプラリーとイベントを企画したのです。約550軒という店舗数を聞いて少し不安でしたが、組合の方が協力してくださって実現することができました。この企画は、狙い以上の結果をもたらしました。実際銭湯に若い人が増えたり、銭湯がフォトスポットとなりたくさんの方がSNSで発信したりと、企画がどんどん1人歩きしていったのです。
さらにもうひとつ、このプロジェクトの核になったのが、オレンジのパッケージの牛乳石鹼の開発でした。そもそも牛乳石鹼のような「ずっと大切に守り続けられてきた価値」に対して、若い人は訳もなくハードルを感じることが多い。そうした「普遍の価値」に対し、ビームスがちょっと手を加えることで「本当の面白さ」を伝えたかったんです。でも、なんとなくおしゃれにするだけでは絶対に成功しない。そのソリューションやデザインの背景にあるストーリーに筋が通っていなければ、お客様に本質的な部分は理解されないものなんです。このアイテムが中心にあることで、他のグッズ開発も含め、あらゆるコミュニケーションにビシッと一本筋が通りました。結果的にプロダクトそのものではなく、「コミュニケーションデザイン」が評価されてグッドデザイン賞をいただくことができたのです。
案件に携わる時には、まずお互いの「共通項」を探すことに一番時間を割きます。プロジェクトの核になる「テーマ」をどう引き出せるかが最大の仕事なんです。企業の歴史を伺う中でアイデアを膨らませていくことも多いですね。今回は「銭湯」という共通項を通して、お互いゴールがはっきりと見えていました。「この企画を展開したら若い人の中で自然にバズが起き、結果的に牛乳石鹼という名前が認知されるはず」と。だから僕たちは牛乳石鹼さんが大切にしてきたものを尊重しながらも、僕たち自身がワクワクできるようなコンテンツを次々に作ることができたんです。どんな案件においても、ゴールを共有した上で、お互いの企業の熱量を感じ、信頼し合って、楽しみながらプロジェクトを組み立てていく、というのが成功の秘訣かもしれません。 僕たちは「世の中に今起きていること」にいつもアンテナを張っています。ファッションだけではなくあらゆるジャンルに興味を持つことで、新たな視点が生まれる。「今光が当たってないところに、どうやって光を当てたら面白くなるか」を楽しみながら考えられることが、ビームスのプロデュース力の強さなんです。

  • 佐野明政
  • プロデューサー

「ブランドコラボレーション」というスタイルはかなり前からビームスが得意としていた方法論です。自らのブランド内だけではなく、別のブランドとセッションをすることで、相乗効果を狙ったコミュニケーションを設計する。ブランドコラボは、オープンイノベーションの走りといってもいいですよね。今回も当初は固形石鹸の認知を拡大することが最大の目的だったので、打ち合わせではお互いのブランドバリューをうまく使って若い人たちに石鹸を販売するためにはどうしたらいいか、割と直接的なアイデアを広げていきました。クライアントも僕たちも互いにアイデアをたくさん出しましたが、なかなかピンとくるものは出てきませんでした。実際に企画が走り出したのは、ふとしたきっかけで「銭湯」という共通項が見つかったからですね。担当の方は「とにかく新しいこと、今までやったことのないような面白いことを仕掛けたい」という意思を強くお持ちだったので、直接的ではない、角度の違った視点からのコミュニケーションコンセプトを聞いて「それは面白い!」と強く共感していただき、そこからプロジェクトの展開が一気にスピードアップしました。
僕がプロデュースの仕事に関わる時に最も大切にしていることは「相手に伝わるまで、何度でも伝え続ける」ということ。特に新しいソリューションを生み出す時は、ほとんどの場合初めてのチャレンジになるわけだからなかなか理解が進まないのは当然だし、曖昧なまま進めていていつの間にか目的がブレてしまうこともある。だから最初に共有した目的と伝えるべきテーマを、僕はしつこいくらいに伝え続けるようにしています。
代々受け継がれてきた牛乳石鹼の箱の色を変えるアイデアも、大きな反響を得られて大成功をもたらしましたが、クライアントとしてはかなり難しい決断だったと思います。大切なブランドの「顔」ですからね。それを最終的に判断いただけたのは、「絶対にやるべき」というディレクターの熱量はもちろんですが、実際のところご理解いただくまで裏で何度も粘り強く交渉を繰り返したからだと思っています。「コミュニケーションの核になる企画だから、絶対に必要だし、インパクトを考えると今年やることに意味があります。絶対にやりましょう!」と。
とにかくプロジェクトやそれに関わる人々に、真摯に向き合い続ける「気持ち」が大切だと思っています。だから僕はクライアントのどんな疑問や不安に対しても、とにかく素早く打ち返すようにしています。どんなプロジェクトでもオールドスクールでアナログなコミュニケーションを繰り返すのが僕たちのスタイルなんですね。ただし、そのためには、常に「ゴール」と「やるべき意味」、何よりその企業が「大切にしてきたカルチャー」を心の底から理解しておかなければいけない。ご一緒させていただく企業は、僕たちが今まで知らなかった世界で活躍されていることが多いから、いつでも一から勉強させていただいています。それはとても大変ですが、20年以上に渡ってビームスでさまざまなプロジェクトを経験してきた今でも日々新たな気づきがあるし、プロデュースという仕事の最も楽しい部分でもありますね。
それともうひとつ、僕がとても大事にしていることがあります。それは「約束したことを、絶対に最後までやり抜く」ということ。実はこれ、社長の設楽の言葉なのですが、どんな小さな約束でも、やっぱり「やり切る」ということがなによりも重要だと思っています。たとえそれが飲み会の席での言葉だったとしても、約束は約束ですから、絶対に実行するべきなんです。どれだけ素晴らしいアイデアや斬新なソリューションを思いついたとしても、中途半端に終わってしまったら何の意味も持たないですからね。

OUTPUT