Ziploc × BEAMS COUTURE
<Ziploc>を身に付けられるアイテムへ
BEAMSのデッドストック商品などを、古着やリボンなどを取り混ぜながらひとつひとつ丁寧な手仕事によりアップサイクルし、個性豊かな一点物のアイテムへ蘇らせるブランド<BEAMS COUTURE>と<Ziploc>とのスペシャルなコラボレーションが実現。<Ziploc>のフリーザーバッグが持つ魅力はそのままに、<BEAMS COUTURE>ならではのアイディアと巧みなハンドワークで、<Ziploc>を身に付けられるアイテムへと生まれ変わらせました
BEAMS COUTUREからの企画提案により、同レーベルのアップサイクルというコンセプトに基づき「使い捨て」のイメージがあるジップロックのフリーザーバッグを「繰り返し身につけられるファッションアイテム」にリメイクしました。
ジップロック製品の用途がキッチンを超え、持ち運びや整理収納といった生活のあらゆる場面で活躍するライフスタイルブランドとしてのイメージ訴求を目指す旭化成ホームプロダクツ様によるブランド戦略を受け、トレンド感や驚きを演出する商品の企画とコミュニケーションプランを、BEAMS COUTUREのチームが担いました。
プロダクト制作については、ジップロックブランドが本来持つ清潔感や信頼感を踏襲しつつ、BEAMS COUTUREのブランドフィロソフィーに準じて、リメイクなどの手法で新たな価値や楽しみ方を提案しました。さらにポップアップショップやデジタルコンテンツなど「話題化」のためのコミュニケーションプランを設計し、コンセプトを最大限に表現できるクリエイターをアサインしてコミュニケーション用のビジュアルまで完成させました。
ビームスクチュールで実現したジップロックとのコラボレーションですが、実際はブランドを立ち上げる前から動いていた企画なんです。当時透明の素材なんかがトレンドだったこともありましたが、そもそもジップロックは機能的なプロダクトとしても素晴らしい上にとてもかわいいし、これでプロダクトをデザインしたら面白いんじゃないかと思いついたんです。ただ、どこに連絡すればいいのかわからず、最初は旭化成さんのお客様センターに問い合わせさせていただきました(笑)。そこではやりたいことがうまく伝わらず、ちょっと諦めかけていたのですが、久保田に「そんなにやりたいのなら、あきらめずにもう一度チャレンジしてみたほうがいい」と背中を押してもらったんです。そうしてあらゆるルートを使って旭化成さんを紹介していただくことができました。ただ、旭化成さんとしては、ジップロックのロゴを借りてプロダクト開発したいというような問い合わせが多く、基本的にはこうしたお話を断っているということだったんですね。けれど私たちは単にロゴを使った商品を開発したいのではなくて、ビームスクチュールというブランドの「アップサイクル」というコンセプトのもとに、ジップロックというモチーフにまたひとつ違った価値を付加することができるんじゃないかと考えていたのです。いろいろ説明するよりも、実際にサンプルを見ていただけたら理解していただけるのではないかと思い、すぐにトートバックを作ってもう一度旭化成さんに会いに行きました。それを見た担当の方が「とてもいいですね!」と共感してしただき、ようやくコラボレーションが実現できたんです。もちろんジップロックは多くの人に愛され続けている大切なブランドなので、そのブランドイメージを傷つけるようなことはできませんし、基本的には食べ物を入れるものなので清潔感を失ってはいけないなど、細かなレギュレーションを共有しながら慎重にクリエイティブを進めていきました。もちろんプロモーションにもこだわりましたね。このプロダクトをどういうイメージで伝え、どうバズらせるかを考えたんです。最終的にクチュールのクリエイティブディレクターを務める神田恵介さんのアイデアで女優の永野芽郁さんを主役にムービーを制作しました。それも展示会から1ヶ月くらいで。このスピード感でであの完成度が実現できたのは、今考えても驚きです(笑)。
第1弾のプロジェクトは、ジップロックの本国のアメリカでも話題になりました。アメリカのジョンソン社の人が、出勤のときにエレベーターのモニターに流れる映像を見てそのままアメリカでも販売することになり、本国の大きなニュースでも取り上げていただきました。さらに今度は駅の置き傘レンタルの会社から、この傘を使いたいというオファーもあります。クリエイティブの力だけで世界にも、私たちの日常の風景にもブランドが広がっていったのです。
ビームスはいろんな業種の方々と一緒にもの作りをできる可能性を秘めた会社です。服を作るだけではなく、いろんなカルチャーと関わりながら、それを具体的な形にすることができる。ジップロックのプロジェクトも、もともとあるものを視点を変えてみたことで、新しい価値を生み出すことができたし、それが結果的に大きなバズを起こしました。世の中にありそうでなかった、誰かをワクワクさせるプロダクトを提案できたんです。私の信条は、「実現したいことがあるなら、どんどん行動する」こと。だからなるべく自分が現場に行き、相手と真正面から話がしたいんです。デスクであれこれ考えるよりも相手と話をした方が可能性が広がりやすいから。だから何か面白いことをひらめくと、すぐにでも見に行きたくなってしまうんです。
ジップロックのコラボレーションでは当初、交渉がなかなかうまく行かずに水上が諦めムードになっていた時に、僕は「諦めないで何回もアタックしてみよう」と伝えました。もともと僕はビームスのメンズを担当していたのですが、そこのセクションで叩き込まれた「諦めない気持ち」は、それこそビームスの伝統みたいなもの。誰かが諦めそうになっても、別の誰かが声を掛ける。そのビームスらしい熱い想いが伝わったのかもしれないですね。特にジップロックのプロジェクトの場合は、旭化成の方々に単なるファッションとしてのプロダクト作りではなく、「アップサイクル」というきちんとしたコンセプトを元に、ジップロックというブランド価値の将来も考えた上でものづくりをしたいというビームスらしい考え方にも共感していただけたんだと思っています。
ビームスクチュールというブランドもスタートこそ小さく始まりましたが、回を重ねるごとにどんどん面白くなっています。さらに最近はSDGs的な世の中の流れもあり、ブランドコンセプトに強く共感するお客さまが増え、特別な勢いを感じています。特にジップロックの第2弾が発売されたときに、大きな反響をいただいたにも関わらず、販売数が全然足らなかった。ブランド自体の成長速度に、クチュールのものづくりのタームが追いついていなかったんですね。そういうニーズにすべて応えていきたいと思いつつも、量産してしまうとクチュールの良さが失われてしまうという懸念もありますが、少しずつたくさんのお客さまに届けられるようにしなきゃいけない。それに、こうした企業の方々と一緒に進めていくプロジェクトの場合は、旭化成の方々にも新しいアイデアやものづくりを一緒に楽しんでいただきながら、ジップロックのブランド価値を向上させるお手伝いをしたい、という想いが大前提としてあります。だからこそ関わる人たちすべてがハッピーになるような関係を構築することがなによりも重要なんです。
単純にブランドや企業とコラボレーションしてプロダクトを作るだけでではなく、相互のブランディングを含めたコミュニケーションのコンセプト作りとか、ビームスに求められている機能がここ数年ずいぶん変化してきました。僕はもともとメンズ部門からレディース部門に異動になったんですが、レディースでは「自分が着たらどう思うか」という考え方はできません。だから常に、他のメンバーがそれぞれの能力を存分に発揮できるような座組や場を作るにはどうしたらいいかを考えるようにしています。水上のようにビームスの中に星の数ほど存在する個性的なディレクターたちやりたいことを、どれだけ実現できる環境を整えるか、という作業です。ブランドそれぞれに特等があり、お互いに譲れない部分も多い企業とのコラボレーションやプロデュースという観点からいえば、絶対必要な考え方だと思っています。
ビームスには水上をはじめ「絶対に面白いことやってやるぞ!」という人たちのパワーがとにかくすごいんです。それぞれのディレクターに与えられた自由度が高いから、それがビームスらしいワクワクするようなアイデアに繋がっているんです。そんな風に圧倒的に行動力のある人が、どんどんプロジェクトを前に前にと始めていく。だからいつも新しく、面白いことが生まれ続けているんです。