アンドロイドはファッションの夢を見るか?

Satoshi Tsuruta 2017.11.14

2049年。
アメリカ西海岸。

大停電や食糧不足、電子記録の破壊、
労働力として製造された
レプリカント(人造人間)たちの反乱など
度重なる混乱を経て
近未来のロサンゼルスは
荒廃の一途を辿っていた…。

いきなり何の話だ、って?
今年一番の話題作
「ブレードランナー2049」です。
1982年公開のカルト映画
「ブレードランナー」の続編が、
35年の歳月を経て
映画ファンが待ちわびた作品として
先日より公開されました。

前作において監督リドリー・スコットが描いた
退廃的未来予想図(?)はその後に現実社会にも
大きな影響を与えた、と言われています。
個人的にも20年前に観た
「ブレードランナー」の世界から
かなりの衝撃を受けた記憶があります。
さらに時代を重ねるにしたがって
1980年代当時は遠い未来の寓話に過ぎなかった
複製技術や電子頭脳も
2017年時点ではいよいよ現実味のあるものとして
僕らの生きる世界を取り囲んでいます。


そんな話題作「ブレードランナー2049」。
先日、劇場へ観に行ってきました。

本作の主演は
「ラ・ラ ランド」での演技も話題になった
ライアン・ゴズリング。

ロサンゼルス市警に勤務するKは
反乱を起こす可能性のある旧式レプリカントを
解任(要は処刑)するという任務に就いており、
その職業の呼び名が「ブレードランナー」。

で、そのライアン・ゴズリング扮するKという男。
彼は襟元にボアが付いた
緑のレザーライダース(膝下丈!)に身を包み、
空飛ぶ自動車(プジョー製!)に乗って
レプリカント狩りに出かけていくのですが…。

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で、今日のお題は襟ボア付きのジャケット。

無理矢理感も多少ある気がしますが
まぁ、一旦最後までお付き合いください(笑)。

襟元にボア/ファー素材が付いたアウターは
昨年から引き続き注目アイテムです。


勿論、当店にも
様々なバリエーションが出揃っています。


CMMNSWDN(コモンスウェーデン)の
レザーライダースジャケット。


厚手のカウレザー素材に
取り外しできる襟ボアが付いています。



COACH(コーチ)のレザーライダース。


純白のボアが眩しい一着。



OUR REGACY(アワーレガシー)の
ファー付きデッキジャケット。


元々は蛍光イエローだったナイロン素材に
顔料を乗せて黒っぽく仕上げています。
サイバーパンクっぽい一品。

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劇中で目にする2049年のロサンゼルスは
新宿の歌舞伎町をさらに何倍も猥雑にしたような
「ごった煮」の世界として描かれています。

そこにうごめく人間(レプリカント含む)たちは
人種も職業も服装も実に多種多様。
貧富の格差もかなり大きい様子。

映画を観ていて思ったことがあります。

「2049年の世界も衣服に関しては
今とあまり変わっていないな」
ということ。

ま、SFなんですけど。


確かに合成食料と新型レプリカントの製造で
世界を牛耳っているウォレス社のスタッフたちは
所謂「近未来的」な衣服に身を包んでいます。
ピエール・カルダンやハーディ・エイミスが
1960年代に打ち出したような「近未来服」に。

しかし、大半の人間達はいまだに
「20世紀的な」衣服のまま。

ゴズリングのレザージャケットに関しては
なんなら1970年代調に見えたりします。

彼が恋人として一緒に暮らしているのは
ホログラフで実体化するAI(人工知能)の
女の子、ジョイ。
彼女の衣装のなかにも
ウエストサイドストーリーみたいな
1950年代風が出てきたりします。

レトロなものとハイパーなものとが
混在するカオス。

ブレードランナーの世界観のあちこちに
登場するこの「レトロ」感。

世界は破壊され
食べ物は人工食になり
樹木は枯れ果て
恋人がバーチャルになっても
プレスリーやシナトラを懐かしみながら
ウイスキーを飲む。


実にアメリカ的、とも言える視点ですが
日本人の僕にも分からなくはない。

ダウンロード全盛の音楽業界にあって
落ち目のCDを横目に見ながら
売上が伸ばしているというレコード。

スニーカーやナイロンといったスポーツウェアが
ストリートやハイファッション界で流行する一方
クラシックなディテールのスーツが復権する
という重衣料業界の傾向。

不思議と言えば不思議。
当然と言えば当然。


いや、というよりもむしろ
技術革新が進み無機質が有機質を
覆い隠してしまいそうになると
人間は必ず「懐かしさ」に回帰しようと
するのではないでしょうか?


よくよく考えてみると
スリーピースのスーツにハットをかぶり
ワイヤレスのイヤホンを使って
歩きながら電話をしたり
パッチワークジャケットに
フレアパンツを穿いた格好なのに
腕時計に話しかけながら
目的地までの経路を検索したり。

これって既に
プチ・ブレードランナー的ですよね??



TONSURE(トンシュア―)の
ファー付きジップブルゾン


テディベアの公式素材として知られる
「シュタイフ」社のフェイクファーが
スナップボタンで取り付けられています。



QUATROCCHI(クアトロッキ)の
シープスキンB-3ジャケット



ハードなフライトジャケットをモチーフにしつつ
イタリア製らしい洗練された仕上がり。


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少し前のニュースですが
あのGUCCI社のマルコ・ビッザーリCEOが
「今後一切のファーアイテムの製造を廃止する」
と発表して話題になりました。

また、クローン技術を利用して
(分子レベルまで同じ構造の)
牛の皮革を人工的に作るという
研究も進んでいるようです。

最近ではマイクロファイバー素材の
人工スエードで作った
衣服やバッグが人気です。
これはもう十分に未来の技術だと言えます。

しかしそれを更に大きく上回る
想像もつかないような未来が
いずれやって来るのかもしれません。

いや、やってきます。
それはもう確実に。

その頃には
ファッションの果たす役割が
どのように変わっているのでしょうか?
みんなどのような服を
着ているのでしょうか?


意外と1930年代ルックとか
ビクトリアンスタイルが
大流行していたりして。

で。

そんな服を人工知能搭載の自販機で買えたり。



みなさんはどう思いますか?



Tsuruta