さらばBCBG

Satoshi Tsuruta 2018.11.19


Comment allez-vous?


こんにちはTsurutaです。
今回は(も?)やや長文です。

インターナショナルギャラリー ビームスで力を入れてバイイングしているジャンルに「フレンチクラシックスタイル」と分類できるものがあります。それらのアイテム(ブランド)群は勿論フランスをベースに展開・生産されているものが多いのですが、なかにはフランス国外にある工場を稼働させて作られているものも…。当然「Made in France」=「フレンチスタイル」というほど単純ではありません。

そもそもレーベル発足以来、インターナショナルギャラリー ビームスとフランスは切っても切れない関係にありました。当時からParisはモードの都でしたから。一方で、兄弟レーベルであるビームスFも1980年代には「フレンチスタイル」とは親和性の高い品揃えをしていました。厳密に言うならば「アメリカンカルチャーの洗礼を受けたフランス人の着こなし」=「フレンチアイビー」ということです。これはイタリアンファッションの大ブーム以前。勿論、1978年生まれの僕は当事者ではありません。


ARTUMES & Co.
カラー:CHECK
価格:¥100,000+税
商品番号:23-16-0423-819


その後、時代とともにロンドンファッションやイタリアンクラシックの大きな波が寄せては返していきました。


大きな流れのなかで時代が変わろうともインターナショナルギャラリー ビームスでは常にフランスを意識した品揃えを店内の一画で続けてきました。パリモードのブランドに限らず、クラシックアイテムも同様に取り扱ってきました。メゾンブランドの下請けとして稼働するフランスのファクトリー製アイテム(パンツ、シャツ、シューズなど)はある意味で、その時代時代のクラシックアイテムよりもむしろ古典的であったと言えます。これは当然といえば当然です。一流モードの根底には必ずクラシックの血が流れているはずなので。



ARTUMES & Co.
カラー:BROWN
価格:¥58,000+税
商品番号:23-32-0323-819



ARTUMES & Co.
カラー:BEIGE/BROWN
価格:¥47,500+税
商品番号:23-06-0096-819

今やフランス人すらも失ってしまった「フランスらしさ」を紹介していくことは、世界中からファッションの粋をキャッチする当レーベルの変わらぬスタンスでもあります。ただ、ここで誤解のないように言わなければならないのは「僕らはフランスらしいアイテムを買い付けてくることはあっても、フレンチスタイルそのものを目指している訳ではない」ということ。

回りくどいですね(笑)。

ここで「じゃあフレンチスタイルって、何?」ということになります。

例えば1980年代に日本人が見た「フレンチスタイル」は映画や音楽、洋雑誌etcもしくは現地へ行って買い付けをしてきた洋服屋の体験談の中にしかなかったはずです。「お洒落なパリジャンはみんな○○なんだよ」「この配色はフランスっぽい(もしくは、ぽくない)」「サン=ジェルマン=デ=プレ辺りでは××が流行っている」など。実際にそんな恰好した人を5人しか見ていなかったとしても、それが見た当人にとって特別カッコよく印象に残ったのであれば「パリではみんな~」ということにしてしまっていただけです。


「フランス人はみんなネイビーの革靴を履いている」
「黒スエードのモンクストラップはフレンチスタイルだ」

そんなワケありません。実際に履いているのはパリ人口の2%以下だと思います。いや、もっと少ないかも(笑)。

「フランス人はネクタイにディンプルを作らない」

これは実際に60%くらいはいそうです。
でもそれは日本人と大差のない割合だと思います。


現在であればインターネットを通じて世界中の情報を駆使して、もう少し精度の高い事実確認ができそうです。しかし。
この時代が間違いだったと言っているわけではありません。むしろ逆です。今の時代から思い返してみたときに「みんな、すごくロマンチックだった」のです。情報が少なかった分だけ遠い異国のファッションに夢を見ていたのだと思います。この幻想を含めてファッションだと僕は思っています。事実確認ばかりが先行し、もはや幻想を許されなくなったファッションは冷え切ったフレンチフライのように味気ないものです。



THUILLIER
カラー:PINK/BLUE
価格:¥32,000+税
商品番号:23-11-0897-815



THUILLIER
価格:¥33,000+税
商品番号:23-11-0899-815


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僕らが想うパリファッションの中には勿論、左岸/右岸があり、エルメスとアルニスがあり、レノマがありケンゾーがありシャルベがありジバンシィがありディオールがありルイヴィトンがありJ.Mウエストンがありオールドイングランドがあります。しかしフレンチスタイルには英国(サヴィルロウ)やアメリカ(アイビー)の様な「典型的な、決定的な何か」がありそうでありません。個別のアイテムというよりも「こなし」や「雰囲気」で語られることの方が多いと思います。「フレンチアイビー」という言葉も、1950~60年代のフランス映画に登場するパリジャンたちが(アメリカ人とも自分たち日本人とも違うムードで)ボタンダウンシャツを着こなす姿に憧れた1980年代の日本人が苦し紛れにつけた名前だったのでしょうか。


先日、ショップの営業時間前にパリブランドEditions M.Rのデザイナー・マシューとミーティングをする機会がありました。

前身ブランドのMELINDA GLOSS時代から数えるとかれこれ8年ほどの間、彼のクリエイションを買い付けていることになります。7年ほど前には彼と共に食事(もんじゃ焼き、お好み焼き!)をする機会もありました。彼はParis生まれのParis育ち、生粋のパリジャンということになります。

Editions M.R
価格:¥104,500+税
商品番号:23-19-0718-402

その朝ショップに現れたマシューの着こなしを見て、その場にいたビームススタッフは皆「チェックのコートが似合ってるなぁ~」と感心しきり。彼が自分のファッションブランドをスタートさせたきっかけは「メゾン○○という名前のブランドを巷では沢山見かけるけど、ほんとに(メゾンという名にふさわしい)フランスらしさを体現しているブランドが殆どない事に気付いたから、じゃあ自分で始めようと思ったんだ」と言っています。

彼の話を聞く中で度々出てくる、あるキーワードがありました。「ノンシャラン(nonchalant)」=無頓着、のんき、投げやりな様を表す言葉です。確かにマシューの着こなしはノンシャランそのもの。黒い丸首のハイゲージニットの上に(まるでガウンを羽織るように)チェックのコートを着て、水色に近いくらい色落ちしたブルーデニムを適当にロールアップ、色褪せた黒スエードのベルジャンシューズを素足でスリッパみたいに履いていました。バサバサの長い髪も無精髭も適当そのもの。無造作に見えるためのロールアップ幅を緻密に研究する真面目な日本人とは正反対の「ノンシャラン」ぶり。


Editions M.R
価格:¥96,500+税
商品番号:23-16-0456-402

なぜ、こんなにも堂々とのんきに肩の力を抜いて自分らしくいられるのか?
マシューは大きな旧家の生まれです。裕福さ、育ちの良さのせいもあるでしょう。また、若いころに哲学に夢中だったという彼は人間の価値が外見よりも内面によって決まる事を知っているでしょう。知性や親切さといった内面に磨きをかけているという自負があるからこそ、堂々とのんきに、無造作に、頓着することなく、下着とガウンを着るかのようにセーターとコートを着る事ができるのでしょう。

Editions M.R
カラー:BURGUNDY
価格:¥32,800+税
商品番号:23-45-0282-402



僕はマシューに質問してみました。


「Editions M.Rの服は、まるで古いフランス映画の登場人物が着ている服のように、なんてことない、だけどカフェでお茶している様子やコートの襟を立てて歩くパリの街並みが見えてくるような魅力があると思うんだけど、東京という街にはEditions M.Rの洋服はどのように映えるかな?」
マシューは答えます。
「パリで僕が作る服を着てくれるのも年配の人からスケボーを担いだ若者まで多種多様なんだ。東京は多種多様なミックス感の強い街なんだから自分らしく自由に着てもらえれば、きっとOKさ。政令があって建物の規格が決まっているパリに比べたら、新しさの隣に古い物が隣接するダイナミックな東京の街並みに、むしろ嫉妬するくらいだよ」

僕の質問の前半は素直な気持ちでした。
後半はカマをかけた感じです。

そう、いまや東京(日本)だって世界中の人が憧れる街のひとつになったのです。1980年代と違って、もはや海外コンプレックスに悩まされる必要はありません。フランス人が作る服を自分らしく素敵に着こなすことができるほど日本人は成熟しています。本を読み、音楽や映画を愉しみ、アートに触れ、よく食べ、笑い、自国の文化に興味を持ち、隣人を愛することが出来るならば、きっと着こなしだって(フランス人から見ても)素敵になるはずです。

日本にも「粋(いき)」や「乙(おつ)」という「chic(シック)」や「nonchalant(ノンシャラン)」に負けないくらい素晴らしい価値観があります。

「僕らはフランスらしいアイテムを買い付けてくることはあっても、フレンチスタイルそのものを目指している訳ではない」

いま、僕が思うのはそういうことです。




Tsuruta