チロルより

Satoshi Tsuruta 2019.08.18

2019年秋冬のスタートにふさわしく、今回はメンズ/ウイメンズともに取り扱う新ブランドを紹介します。

Tsurutaです。


二コラ・ゲスキエールやミウッチャ・プラダの元で経験を積んだ南チロル地方ドロミテ出身の若いデザイナー、アンドレアス・ステイナー(Andreas Steiner)により立ち上げられたブランド<RIER(リア)>。2019年秋冬、インターナショナルギャラリー ビームスではそのデビューコレクションをバイイングしてきました。



イタリア、オーストリア、フランスの伝統的なテクニックを用いて、「チロリアンパンク」を標榜し独自の世界を築きあげる<RIER>。「チロリアン」は自らのルーツや地方の伝統を、「パンク」は既成概念へのカウンターを、それぞれ意味します。


伝統的なハンドメイドのテクニックを用いながらも、紡ぎ上げる世界観はあくまでシャープなものです。
写真のベルトはチロリアンの伝統的な装飾に用いられる刺繍や型押しをモチーフにしながらも、モノクロの配色やナローな幅が現代的な見え方を演出しています。ちなみにコバに打ち込まれた白いステッチは、孔雀の羽根の根本(もっとも固い部分)をつなぎ合わせながらベルトを縫っていくという、非常に手間と時間を要する手法で美しく仕上げられています。

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ローデンコートはオーストリア~イタリアの北部にまたがるチロル地方に起源をもつコートです。19世紀の半ばごろに生まれたコートは、当時貴族の狩猟用であった、とされています。れっきとしたクラシックアイテムですが、ファッション目線では1970~80年代にかけて流行したので、50代以上の方にとっては懐かしいアイテムかもしれません。


背面の高い位置から裾にかけて、かなりの長さがある深めのインバーテッドプリーツ。元々は運動量確保のためでしょうが、機能性抜きで見ても動きの中で美しいAラインのエレガントなシルエットが生まれます。裾広がりのラインはまさに今の気分、注目のシルエットです。


また、肩付けにも特長が。マチがとられた肩山と、縫い付けられていない脇下。フローティングショルダーと呼ばれる、通気性や運動量のためのこのディテールはローデンコート独特のものです。


最も古典的なローデンコートには脱脂処理しないままの羊毛(天然の撥水性)で織り上げた生地に強い圧力をかけ縮絨させた「ローデンクロス」が用いられるのですが、<RIER>のコートには老舗ローデンコートメーカーのそれよりも、やや軽くしなやかな素材が使われています。この高品質な天然ウール100%の素材は、南チロル地方で名高いMoessmer社のもので、深みのあるグリーンは<RIER>の現代的かつ伝統的なローデンコートによくマッチしています。


他にも、軽くて暖かいボイルドウールを使ったチロリアンジャケット(現地ではWALKER JACKET=散歩に出かけるときに気軽に羽織れるような、と呼ぶそう)も展開しています。このあたりも80年代に日本で流行したアイテムですが、テーピングを含めたオールブラックの配色が現代的で個性的です。


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実は<RIER>のアイテム、入荷早々すでに多くのお客様にお買い上げいただいています。7月の終わりから8月にかけて猛暑の東京で、ローデンコートやチロリアンジャケットが何着も売れたのです。店頭で接客を担当しながら、非常に興味深く思っていました。

<RIER>は若いブランドです。
まだ始まったばかりのコレクションです。
期待の超新星、とメディアが騒いだわけでもありません。

購入される方が、それぞれにバラバラなのです。20代の方、50代の方。<RIER>というブランドをご存知の方、ご存知ない方。ローデンコートに代表されるチロリアンスタイルを体験済の方、未経験の方。ある意味でインターナショナルギャラリー ビームスらしい、多種多様なお客様に「これ、いいですね」という声をいただきました。

シンプルに「自分の目と感性で選ぶことができる」お客様の心へ、<RIER>のコレクションは“たしかに”届いたのです。
品質が良い。それもあるでしょう。
伝統的なモチーフである。それもあるでしょう。
懐かしくて新しい。それもあるでしょう。


成熟の先にある多様化が叫ばれる現在のファッションシーンにおいて、こういった目の肥えたお客様はお店の財産でもあります。情報でもブランドでもなく「単純にモノで選ぶ」お客様。
だからこそ、僕らには「いいものはいい」とシンプルに言えるような服をセレクトし販売し続ける責務があるとも言えます。

<RIER>のコレクションはメンズ/ウイメンズともにバイイングしてきました。
ローデンコートやチロリアンジャケットはオーストリア製、職人によるハンドメイドのレザーベルトやニットはイタリア製。求められる品質に応じて、生産国をきっちりと使い分ける真摯な姿勢も感じられます。

ぜひ、店頭にその魅力に触れていただきたいと思います。



Tsuruta