アマガンセットからシティへ戻り、メンズのマーケットウィークの展示会やショウルームのアポイントを慌ただしく回った。通常であれば他都市に移動して、現地ブランドや工場との商談やマーケットリサーチをするというのが常なのだが、今回はニューヨークに留まった。クリスのオフィス兼スタジオのあるブルックリンネイビーヤードで<ピルグリム サーフ+サプライ>のコレクションに関する重要な打ち合わせがあったからだ。
ブルックリンネイビーヤードはマンハッタンから見てハドソン川の対岸にあるアメリカ海軍の造船場の跡地だ。1966年にニューヨーク市が買収してからはしばらく廃墟のようになっていたのだけれど、今は多くのアーティスロフトだったり、様々なスタートアップ企業、縫製工場、映画の制作会社、<ピルグリム サーフ+サプライ>のようなブランドなどが集まるクリエイティブスポットとなっている場所だ。ここ数年でさらに開発が進み、現在<ピルグリム サーフ+サプライ>のオフィスが入っているビルディング77やその周りには人気のベーグル店だったり、ブリュワリー、コーヒーロースター、レストラン、ナチュラルワイン専門店が入るなどブルックリンを代表するランドマークとなってきている。
今回の打ち合わせは、<ピルグリム サーフ+サプライ>のウィメンズコレクションについてだった。クリスたちは2015年のローンチに向けてコレクションを進行していて、ウィメンズにおけるクリエイティブディレクションの方向性に対してフィードバックが欲しいということだった。僕たちも協業に大きく関わってくることなので、ウィメンズの目線で、的確な感想や情報を伝えることが重要だと考え、当時の<ビームス ボーイ>のディレクター須藤に同行してもらいクリスのもとを訪れた。コレクションはクリスが表現したい世界観がギュッと詰まった、とても良いコレクションだった。しかし、日本の市場を考えるとサイズやちょっとしたデザインディテールなど仕様の調整や、商品構成に肉付けをすることでもっと良いコレクションになると感じたし、メンズとの整合性もより強固になるだろうと思ったので、率直にフィードバックを伝えた。議論を重ねに重ね、最終的にクリスも僕たちも協業のためには共にコレクションを作っていくことが必要で、それがブランドの正しい成長につながるだろうという結論に至った。協業に向けたプロジェクトチームの結成がされて、土台が少しずつ固まり始めた。
