プリントの意味なんて知らなくていい

上川路 俊輔 2018.04.13




UL(ウルトラライト)という言葉をご存知ですか?


世界中でリーズナブルに販売されているあのメーカーのダウンが浮かぶかもしれませんが、ここでのウルトラライトはまた別の話です。


ULとはアウトドア業界、登山を楽しむ人たちの中の一つの考え方、スタイルのことで

その名の通り出来る限り軽量・軽装備で山に向かうという考え方です。

2000年ごろにアメリカのトレッキング周りの人達の中で生まれ、日本では2010年ごろから広まっている様です。


日本にULのスタイルを持ち込んだとされる土屋智哉さんは


  • 「シンプルで軽い道具によるハイキング」
  • 「自然とのつながりに重きをおくハイキング」

これが核心だと思っています。


と定義されています。


軽装備で山に入る事で普段に自分に近くなり、より山も身近になる。繋がりが強まると言った事でしょうか。

休みの日に手ぶらで街に出ると何とも言えない解放感が有りますし、身軽でいつも見えない景色が見える様な気がしませんか?

本格的な山登りは未経験の僕はそんな感覚なのかな、と想像します。


そんなULが日本に持ち込まれた2010年の日本の流行語大賞には「断捨離」が入っています。

またこの5年後くらいには「ミニマリスト」や「ノームコア」などの言葉が広がり始めたりと非常に時流にあったタイミングで日本に広まったようですね。

ULはこの5年間ほどで一種のトレンドとしてアウトドア業界を席巻していたようです。



そんな流れが、2010〜2015年の日本のファッションにも影響を及ぼす中、アートディレクターであり、このプリントを描いたアーティストでもあるジェリー鵜飼氏は

2013年にスタイリストの石川顕氏、アーティストの神山隆二氏とUH(ウルトラヘビー)というユニットを作っています。



ULに対してのUH。強烈なアンチテーゼを感じるネーミングですが、UHのキャプテンである石川顕氏はこう説明します。


「流行りのULウルトラライト原理主義への嫌みでもないし、最新アウトドアギアへのカウンターパンチでもないんです。

ましてや都会生活のすすめでもない。自分のことは自分で決めたいのです」

「味気ないタイベックシートに絵をデザインし,悪戯描きしたものを敷いたり眺めたり。いざという時の備えたり。

ただコットンドレスシャツを着て汚れ仕事していたいとか、重いウールコートで暖を取りたいということです。

汚れて愛せないというなら気分のいい色に塗ったり、シルクスクリーンで生き返らせることもいいでしょう。いい気持ちなら。

それが理由で他のモノすべてを軽量化してもかまわないのですし、逆に最先端というのも台無しにしても問題ありません。

ようはそこにいる為のちょうどいいスペックなんです。重い想いという意味です。」


と説明しています。

ULそのものは良いが、そのスタイル(ここで言うところのスペック)を本当に自分で選んでいるか?

自身のスタイルの選択を流れに委ねてないか?そんな警鐘の様な「重い想い」を感じます。



UL((ウルトラライト)はアウトドア業界の言葉ですが、例えば「パンク」や「ロック」が音楽の形容詞を越えて使われるように、

UH(ウルトラヘビー)はアウトドアを越えて使える感覚の言葉であるような気がします。



そんな重い想いを持ったジェリー鵜飼氏の描くこのプリントを改めて見てみます。



世界中誰もが知っている絵画「最後の晩餐」がモチーフなのは一目瞭然ですね。


キリストはここでワインとパンを自身の血と肉として与えたとされます。


一方、このプリントではテーブルにわざわざクロスを引いて実はキャンプでよく作られる料理でもあるピザを楽しんでいます。

バーナーなども置かれ、アウトドアのマインドを感じます。まさにウルトラヘビーなスタイルですね。



身を削って分け与える元ネタのシリアスなシーンとは異なり、一つのピザをみんなでシェアして楽しそうに見えませんか?

元々の設定とはだいぶ異なる世界を見せてくれています。


このプリントはUHとしてではなくジェリー鵜飼さん個人での作品なのでむやみにリンクさせるのは違うのかもしれませんが、

こういった誰もが知ってる絵画を極端なパロディで表現することで、既成概念に囚われず「きちんと自分で選んでる?」「自分で楽しくしてる?」といった

メッセージを柔らかく、でもしっかり伝えているTシャツのような気がします。


多分、考え過ぎですけどね(笑)



Tシャツのプリントの意味なんて知らなくても、なんとなく気に入って着てるならそれでいいのは当たり前ですし、

ブランド薀蓄や生地の知識などを調べて着るのも楽しいです。


もしくは、こんな感じでその服を見て、自分勝手に想像や考えを膨らませていくのも洋服の楽しみ方の一つですよね。

そんな事を改めて考えたりさせてくれたTシャツでした。


もうあんまり在庫無いんですが、自店には少しだけ在庫集めてますので。気になって頂いた方がいらっしゃれば

是非お店にいらして下さい。





こんな長文を最後まで見て下さった方、ありがとうございます。

今回からブログを始めましたビームスライツ渋谷店の上川路(カミカワジ)と申します。

渋谷ヒカリエ4階におりますので遊びに来て下さいね。


お待ちしてます。