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思わず身体が乗り出すフロアキラーな音楽


こんにちは。


台風が過ぎ去ってまた天候が回復し、暑い日々が続きそうですね。

そういえば、先日渋谷のVISIONで行われたMNDSGNのJapanツアーに行ってきました。






MNDSGNはライブ+DJセットで、昨年リリースされた一番新しいアルバム『Rare Pleasure』の楽曲は勿論、過去の作品や更には未発表音源も流していてフロア全体がすごく盛り上がっていました。

私も久しぶりのオールナイトイベントだったので、とても楽しかったです◎



VISIONのクロージングが9月頭に迫っていますが、ラストウィークの9/1(木)には今の場所での最後の<Stones Throw>のイベントがあります。2018年の<Stones Throw>のJapanツアーと同様、BEAMS RECORDSでもお馴染みのJ.RoccとKnxwledgeが今回も日本に来てくれるようです。

日本からはDJ MUROさんやDJ KOCOさんといった豪華なラインナップ、、あの空間で楽しめる機会はもう無いので、是非気になる方はチェックしてみてください~




さて今回は、『思わず身体が乗り出すフロアキラーな音楽』と題して、PICK UPにてまとめた作品をご紹介したいと思います。


ヒップホップなどのサンプリング・ネタでも知られるファンク、レアグルーヴ、ソウルをはじめ、和モノなどフロアで映えそうなグルーヴィーな音楽を厳選しました。DJで流すのも良いですし、お家で気分を上げたい時のBGMとしても楽しめるかと思います。



まず最初に紹介するのは、ヒップホップカルチャーの誕生を描いた1983年に公開された映画『Wild Style』のサウンドトラックのなかでも特にアンセムとして知られる「Wild Style Theme Rap」の復刻盤です。




【7"】Wild Style / Wild Style Theme <Mr Bongo>
価格:¥3,080(税込)
商品番号:29-67-0105-526



パンク/ニューウェーブシーンや、ディスコ・カルチャーなどが邂逅する70年代後半~80年代初頭にNYの音楽シーンを盛り上げていたバンド Blongieのギタリスト、Chris Steinがプロデュースを手掛けていて、あの4人のMCと2人のDJスタイルの伝説的グループ"The Cold Crush Brothers"の一員で、ラッパー/MCのパイオニアの一人として語られるGrandmaster Cazによる鮮烈なラップが駆け巡ります。

今聴いても古びることのないその当時の熱気や、空気感が一瞬で感じられる永遠のクラシックです。ジャケットも当時唯一存在していたという国内盤の7インチのアートワークをそのまま復刻していて、なかなかファンには堪らない仕様ですね。



実は『Wild Style』は今年で世界初上映から40周年。この40年の歴史を記念して9/2(金)からヒューマントラストシネマ渋谷をはじめとする映画館で『Wild Style』が上映されるようです。ヒップホップカルチャー好きなら必ず見ておきたい本作。


私は高校時代に所属していたダンス部のOBさんに教えてもらい、DVDを借りて部室のTVで初めて見ました! 当時のNYのストリートの風景や人々を見て熱狂したのを覚えています。映画館で見れるのはなかなか無い機会だと思うので、どうぞお見逃しなく…。




続いては、冒頭に紹介した<Stones Throw>のイベントにも出演するDJ MUROさんによる企画で実現した1枚。



【7"】服部克久 / 「幸福号出帆」より 二人だけの海 / ラヴ・ステッピン Selected by MURO <日本コロムビア / HMV Record Shop>
価格:¥2,200(税込)
商品番号:29-03-0297-500



MUROさんの持つ膨大なアナログ音源が聴くことが出来るTOKYO FMで放送されているミッドナイトDJ MIXショー『KING of DIGGIN'』のHMV record shop 新宿ALTAでのポップアップショップの開催を記念したコラボレーションの企画盤です。


フジテレビ『ミュージックフェア』、TBS系列『ザ・ベストテン』『日曜特集・新世界紀行』とかなり懐かしい名前が並びますが、これらのテレビ・ラジオ番組、ドラマ、アニメ、映画、CMなどの音楽や音楽監督を数多く担当してきた音楽家 服部克久氏が作曲・アレンジした、三島由紀夫原作の映画『幸福号出帆』のサウンドトラックより2曲が収録されています。



和製Barry Whiteともいえそうなただただメロウなサウンドは、ヤマタツや吉田美奈子らを支えたギタリスト 松木恒秀や、土方隆行といった名プレイヤー陣が演奏しているのも納得のクオリティ。



余談ですが、服部氏は東京ポップスオーケストラを結成したメンバーで、そこではヤマタツの楽曲も演奏していたそう。


2017年のラジオでの2人の対談では、ヤマタツが「服部先生にオケをお願いすると、毎回予想を上回るのが楽しい。先生のオケは緩急がある」と称賛していて、これに対して服部氏は「若い頃は書きすぎちゃうけど、どうやって厚いものを薄くするか。メリハリがないと人間の生き方もそうだけど、つまらないもんね!」と答えています。(音楽ナタリー参照)

メリハリ、、人間の生き方もそうだけどというように、音楽だけでなく普段の生活にも通じる話ですね。興味深いです。




続きまして、この黒人女性のジャケット見たことある方もいらっしゃるのではないでしょうか。


DJやソウルマニアの間で究極のコレクターズアイテムとなっている作品で、70~80年代にシカゴ南部で活躍していたバンド Tomorrow's Peopleによる唯一のアルバム『Open Soul』からの7インチ・シングルです。




【7"】Tomorrow's People / Open Soul T-Groove Edit<P-VINE>
価格:¥2,420(税込)
商品番号:29-67-0075-538




A面にはUKのソウルチャートで1位を獲得した経歴も持つ日本人リミキサー、T-GROOVE氏が20分に及ぶ原曲を、もし1976年にシングルカットされていたらこんな風になっていたかな?と妄想をしながら、よりDJユースなサウンドにリエディットした名曲「Open Soul」、


B面には唸るようなベースラインと、しなやかな管楽器のメロディ、スウィートなコーラスを挟みながら緩やかに響くヴォーカルが心地良いアルバム収録曲「It Ain't Fair」を収録しています。


より使い勝手の良い仕様にアレンジされた「Open Soul」は、まさにフロアの絶頂の時間、深夜の2:00~3:00頃に流れてきたら、踊らずにはいられないようなグングンと高まっていくグルーヴ感が堪りません。



シカゴの人気カルトパーティー『SOUL IN THE HOLE』のレジデントで、シカゴから世界を股にかけて活躍してきたカリスマDJ/コレクター Sader Baharが、10年間探し続けたという話もあるほどの本作は、DJはもちろん、やはりソウル~ファンク好きだったら手元に持っておきたい1枚ですね。




続いては、1980年代当時にファンクラブまで存在していたというサンパウロのブレイク・ダンスグループ、Electric Boogiesによる唯一の作品となる7インチ。




【7"】Electric Boogies / Break Mandrake <Vampisoul>
価格:¥2,200(税込)
商品番号:29-67-0137-526



これまで多くの南米ラテン音楽の発掘・再発を手がけてきたスペインのレーベル<Vampiresoul>からの再発です。


ラップやスクラッチを取り入れながら、丁度先述で紹介した『Wild Style』のようなNYのヒップホップ音源にインスパイアされたのであろう、オールドスクール・ラップ~エレクトロ・ファンクを展開していきます。



「Break Mandrake」はフロアをがっつり盛り上げたい本格的なパーティーやイベントに、「Electric Boogies」はラウンジ的な雰囲気の緩いパーティーなどに流すのもハマりそうです。

ちなみにオリジナルは近年100-200ドル位の相場とのこと。この再発のタイミングでゲットしておく価値は大いにあると思います。




そして最後にご紹介するのは、先日最新作『A Wonderful Letter』をリリースし、冒頭でも来日イベントがあるとご紹介したアメリカ西海岸のターンテーブリスト集団"Beat Junkies"の重鎮 J.Rocc。


ソウルやファンク、ジャズ、ラテン・ミュージックといった自身の引き出しを元に、ヒップホップやハウスをはじめブロークン・ビーツやダウンビートなど、ボーダーレスで自由度の高い音楽表現を続けているDJ Spinna。


2人のコラボ・7インチです。




【7"】J.Rocc / Dj Spinna / 17 Days / Don't Play Me <All Right Fresh>
価格:¥2,970(税込)
商品番号:29-67-0095-526

A面には、J.Roccによる、Princeが1984年のシングル「When Doves Cry」のB面として発表した楽曲「17 Days」のライブ音源を使用したアップビートなファンクにリワークしたトラック。




B面にはDJ Spinnaによる、1998年に発表されたPrinceのアコースティック・アルバム『The Truth』に収録されていた「Don't Play Me」を、骨太なビートが格別なオールドスクール・ヒップホップにアレンジさせたトラックを収録しています。




2人そろってPrinceの楽曲をリワークするというコンセプトが興味深いですね。



Princeのあのリズミカルで、美しいヴォーカルや卓越としたサウンドの魅力はそのままに、いかに2人のスタイルを落とし込んでいくかという点において、本作はとても素晴らしい形に仕上がっているのではないかと思います。




Princeに対する熱い敬意が感じられると同時に、私自身もまたこうしてこの文章を書いている間に、Princeのアルバムを聴き直したくなっているところです。






またまた余談ですが、Princeのアルバムだと私は、以前BEAMS RECORDSで働かれていた柳さんにオススメしていただき知った『The Rainbow Children』を一番聴いているかもしれません。




ジャズ、ソウル、アフロ、ファンク、ゴスペル、ブルースといったPrinceの作品では、ブラックミュージックの要素が実に際立った作品で、プログレめいた質感を持つ1枚です。アルバムの最後の曲「Last December」は何度聴いても心に迫るものがあります…。





ついつい長くなってしまいましたが、ご紹介は以上になります。


最後までご覧頂き、ありがとうございました!








店頭では、ビームスのクラブポイントが通常の2倍となるキャンペーンが明日8/17まで行われています。


是非お気軽にお立ち寄りください~


















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アフリカンルーツのリズムと時間感覚

ヒップホップやR&B、ソウル、ファンク、ブルース、ジャズなど、アフリカ系アメリカ人の方々が生み出してきた音楽の影響力は周知の通り計り知れませんね。そんなブラックミュージックの魅力はこのブログ上では書き尽くせないほどありますが、ほんの一部分でも改めて共有することで、皆様と深められるものがあれば良いなと思っています。


今回は”リズム”という観点から。裏拍の多用や、拍を伸ばして、アクセントの位置を変えていくシンコペーション。ビートを後ろに引っ張ることで独特のゆるさを生むレイドバック。これと似たもので、Questloveが叩いたD’angeloの『Voodoo』やJ Dillaで有名な、”ズレ”をあえて作ることで独特の快感を生むドランクビート。



こちらは、Slum Village による不朽の名作『Fantastic, Vol. 2』のリリースから20年を記念し、現行メンバーであるT3とYoung RJが、ヒップホップのインスト・カバー作で知られるUKのビッグ・バンド、Abstract Orchestraとタッグを組んだスペシャル・プロジェクト!


などなど、彼らが独自に発展させ、生まれたリズムというのは多く存在します。また、リズムが時間の経過の中で成立することを思うと、その時間の概念自体を変容させてしまう点も我々を驚かせてきたと思います。最近ではChris Daveなどが多用する、異なるBPMから同じ音の長さ(時間)になるものを抽出して、耳の錯覚を起こさせるポリリズムの一種、メトリックモデュレーションがその一つと私は捉えています。



Robert Glasperの新作アルバム『Fuck Yo Feelings』は、Chris Dave、Derrick Hodgeを中心に多くのミュージシャンとのセッションを収録しています。


昔の代表例で言うと、James Brown(以降"JB"と表記)にもあります。例えば名曲「Please Please Please」について。メインのコール・アンド・レスポンスが終わると一瞬全体の演奏が止まり、その後JBの声だけ再び歌い出し、再び全体の演奏に戻ります。今となってはあまり驚きませんが、当時はそのタイム感の正確さ、そもそも音が突然全部止まってまた何事もなかったように始まるということ自体に世間が驚いたそうです。また、彼のライブ映像は音楽好きなら一度は観たことがあると思います。彼を筆頭に、バンドメンバーも多くを緻密に繰り返します。それはギターの1フレーズから、曲の展開だけでなく、パフォーマンスも(終盤になると突然膝をつき、マントを掛けられながら退場しようとするも、途中でマントを振り払ってまたマイクスタンドのところに戻る、その動作を何度も繰り返すのは有名ですね)。それを見(聴き)続けていると時間の感覚がだんだんわからなくなってきて、なんともたとえようのない高揚感がやってくるのを感じます。


ここで、彼らのルーツであるアフリカ人による音楽の話になりますが、西アフリカの民族楽器ジャンべは聴いたことがあるでしょうか。複数の人々がジャンべを同時に叩くのですが(違う種類の打楽器のことも多々あります)それぞれが違うリズムを叩いて、その中で共通項が生まれたり(融合したり)、離れたりを複雑に繰り返します。これによって、一種の錯覚を起こしているかのような気持ちよさを感じてきます。ポイントは一瞬でそう感じるわけではないところですね。あくまで時間の経過とともにそのように感じてきます。1人が5連符と3連符が交互に聴こえるように鳴らすことも多々あります。


このようなアフリカ人のリズム感覚については、遡ると19世紀後半には既にイギリス人の探検家がそのことについて綴っている資料が残っているほど、現代に至るまで多くの専門家が研究を続けてきたそうです。その中で、1980年代初頭に研究者のアラン・メリアム、そしてロバート・カウフマンが、アフリカの時間観念が違うからではという見解を示しており、これは先述の例をある種総括しているようです。※あくまで西洋音楽の立場から見ているものなので、厳密にはアジアのルーツ音楽なども、国独自のリズム感覚という意味で同じことが言えます(菊地成孔氏はこれを訛りと表現しています)。JBらがどれだけアフリカ音楽のルーツを知っていて、自覚的にこれをやっていたのかはわかりませんが、素晴らしいところは白人のポップスの中にその要素を組み合わせてきたことです。そしてこれは、冒頭に述べたシンコペーションや、ポリリズム、さらにはグルーヴ、スウィングの話とも繋がる興味深い話だと思います。


私も音楽をやっている身として、彼らのリズムを真似しようとするのですが、それが非常に難しいことを日々痛感します。では彼らがそれを生まれながらに身につけていたかといえば、確かに教会音楽であったゴスペルが現在R&Bやファンクに受け継がれているように、上述のJBやD’angelo、Chris Daveなど、多くのミュージシャン達が教会に通って下地を身につけていたということは周知の事実ですので、そうとも言えるのですが、とはいえ、やはり努力の賜物としか思えません。彼らのような複雑なズレを生み出すには正確なリズム感(≒タイム感)なしには不可能だからです。そして複数のリズムを同時に感じていくスキルも必要です。実際にChris Daveはテクノを再現した、無機質なほど正確で力加減もほとんど変わらないようなドラムを叩いたりもしており、それを交互に組み合わせたりしています。アフリカ系の人々がこれまでにアメリカで受けてきた辛い出来事を思うと、あくまで一個人の意見ですが、私としては彼らにとってリズムというのはアフリカ人としての財産であり、矜恃を示すようなものの一部とも思えてしまい、やはり尊敬の念を感じざるを得ません。