ファッションとサステナブルの新しい価値観
環境省による「使用済衣類回収のシステム構築に関するモデル実証事業」に採択されたことをきっかけにはじまった、ビームスが目指す循環型ファッションへの取り組み。そのプロセスを追った中編では、「ビームス工房」の新井、「ビームス ライフ 横浜」スタッフの合田を中心としたリメイク企画の現場へ潜入! 回収した衣類のピックアップから実際のリメイクに至るまでを、2人の想いとともに紹介します。
リメイク、いよいよスタート!リメイク、いよいよスタート!

回収品が集まる、サーキュラーセンターで服選び回収品が集まる、サーキュラーセンターで服選び
ビームスの店舗に設置した〈PASSTO〉で回収した服の行先を追って、新井と合田とともに向かったのは、「ECOMMIT 東京サーキュラーセンター」。現在全国に8箇所あるECOMMIT社の物流拠点やサーキュラーセンターの中でも、最大規模の施設です。ここに集められた衣類の中から、今回の企画でリメイクする服を選ぶわけですが、まずはサーキュラーセンターのことをよりよく知るため、ECOMMITの広報の寛司絢子さん、事業開発部の宮野愛美さんによる見学ツアーがおこなわれました。






〈PASSTO〉やアパレルブランドの店頭で回収された衣類は年間約1万3,000tにのぼります。それらはすべて、「リユース・リセール、」「リサイクル、」「その他独自のルートで必要な人々へ届ける、」といった3種に選別されます。その選別をおこなうのが、「プロピッカー」と呼ばれる選別のプロであるスタッフ。彼らは、1時間に200kgという速さで、状態や種類ごとに123品目に分類しているのだそう。このような選別を経て、リユース・リサイクル率、CO2削減量などのデータを算出するといった先進的なDX・自動化を図ることで独自の循環スキームを構築していることも、この「東京サーキュラーセンター」の強みです。
おもしろい!

そして選別現場を見学させてもらって印象的だったのが、プロピッカーの皆さんが楽しそうに働いていたこと。服好きのスタッフが多く、瞬時に服の価値を見分けるその目利き力には脱帽。彼らの確かな選別によって、異物や廃棄となるものはほとんど発生しないというのも納得です。ますますビームスとの協働に期待が膨らみます。
そんなサーキュレーターセンターの取り組みに、新井と合田も興味津々の様子。今回は、プロピッカーの皆さんによる選りすぐりのアイテムから、2人でリメイクのベースとなる古着をピックアップしました。
新井:初めての試みですし、どのくらいの規模でどんなものがあるかもわからなかったので、ベーシックでリメイクしやすいもの以外には特に具体的なイメージを持たず、あとはサーキュラーセンターに行ってから決めようと思っていました。楽しかったですね。実際の回収品には、思っていた以上にイタリアや日本の高級ブランドも多く、しかもとても状態がよかったことに驚きました。
合田:今回リメイクする服のターゲットが自分の世代なので、シンプルに「私だったらこう着たい」という自分の直感に頼り、選びました。新鮮な感覚でしたし、想像力がどんどん膨らんできて、楽しかったです。
ABOUT ECOMMIT
捨てない社会をかなえるために

- ECOMMIT 東京サーキュラーセンターとは?
- 衣料品回収サービス〈PASSTO〉の運営、そして回収品の選別・再流通のインフラを目指す循環商社〈ECOMMIT〉による、最大規模の「東京サーキュラーセンター」。同社の回収拠点は現在全国で約6,000箇所にのぼり、年間回収量は約12,000tにも及ぶなか、東京サーキュラーセンターでは、DX・自動化を取り入れたフラッグシップ拠点として、より進化した循環スキームを構築し、“捨てない社会をかなえる”ための変革に取り組む。
「ビームス工房」で、いよいよリメイクがスタート!「ビームス工房」で、いよいよリメイクがスタート!

服のピックアップが終わり、いよいよリメイクがはじまります。今回は11月に開催するイベントでの展示を前提に、6体のスタイリングを作るためのアイテムを20点ほどピックアップ。ターゲットは、合田と同世代の女性ということで、そのコンセプトや、現段階でのリメイクアイデアについて話を聞きました。
新井:20代から30代の、古着ミックスが好きな層にターゲットを設定しました。今の若い世代の人たちは、選択肢が広く、いろんなファッションを楽しむ傾向があります。そこで、合田さんにヒアリングをしたり、彼女のSNSで好きなブランドなどをチェックするなどして、彼女が欲しいものや着たいものをイメージしました。
合田:ECOMMITサーキュラーセンターには、ベーシックなものからデザイン性のあるものまで、さまざまな服がありました。ジャケットなどメンズのアイテムも多く、それをいかにレディースに落とし込むかというところではとても迷ったのですが、新井さんの力を借りて、順調に進んだと思います。
実際にどんなリメイクを施すのか、その技法やスタイリングについては2人のこだわりのポイントがあり、それぞれの持ち味も発揮できたようです。
合田:裾を切ってダメージ感を出しつつ、穴を開けて裏から2種類の布を張ったパンツや、ボタンを変えたりポケットを外すなどのアレンジを加えたジャケットは、個人的にもとても気に入っています。
新井:パンツの裏から張った布は、廃盤になったオーダー用生地のサンプルの中から選んだものです。すごく上質な生地が揃っているので、サンプル帳とはいえ廃盤だから処分するのはもったいないと思っていたので、ここでようやく活用できました。
合田:スタイリングにおいては、自分が着たいというのはもちろんですが、クラシックな部分もありつつ、トレンドをしっかり押さえているというのを大事にしています。私がメンズセクションの担当ということもあってメンズ服が好きなので、ちょっと強みのある、芯のある女性像を感じさせるようなスタイルを目指しました。私の世代でも支持されている、ベラ・ハディッドなどの海外モデルをイメージしています。途中経過を店舗のスタッフのみんなに見てもらったところ、「買いたい」という声をもらえました!
新井:私は感性よりもロジックで考えるタイプなので、徹底的なマーケティングリサーチと蓄積された経験値からものを作ったり判断しています。ですので、今回合田さんが持っている感覚的なものを全部吸い上げて、それを私がロジカルに合理化して進めるというのは、一番よいやり方だったのではないかと思っています。
リメイクは、一見すると斬新なアイデアで、手の込んだ技術だと思われがちですが、実はシンプルな技法であるということも、今回のリメイクで大切にしたことだと新井さんは言います。
新井:なるべく多くの人ができるリメイクにしたいと考えていました。「ジーパン何枚解体して作るの?」みたいなことはしません(笑)。奇をてらったり、あまりにも複雑なものだとリメイクへのハードルが上がってしまうので、ちょっと習えばできるぐらいのスキルで、センスよく表現できるように心がけました。生地補修やほつれ加工、ペインティングなどは、実は比較的シンプルな技法なんです。服のお直しだけではなく、こういったアイデアやテクニックをお客様に提供し、それを真似してご自身でリメイクを楽しめるようなプロデュースを、ビームス工房としてできればいいなと思っています。






さまざまな糸、ボタン、生地などリメイクのアイデアが詰まった「ビームス工房」。「ビームス工房」に入ってからお直し技術を覚えたとは思えない新井の軽やかな手さばきで、ボタンが付け替えられた服はあっという間に印象が変わりました。合田も初めてペイントリメイクにチャレンジ!! ペイントやステンシルも、意外と簡単にできるリメイクのアイデアであることを実感したようです。
ABOUT 「ビームス工房」
「ビームス工房」について

- ビームスが長く培ってきたファッションに対する知見で、スタッフがコンシェルジュとしてお客様一人ひとりに最適な修理、ケア、リメイク、カスタムを提案する修理専門の店舗。横浜の工房では高い専門技術をもつ衣服修理の職人も常駐しており、お客様がオンラインショップで購入したパンツやジャケットの寸法補正等をご要望に合わせて柔軟にお直しいただけます。
ファッション × サステナブルの思考で大切にしたいことファッション × サステナブルの思考で大切にしたいこと

今回のプロジェクトではサステナブルという観点から、回収品をリメイクするということにフォーカスを当てていますが、リメイクが楽しい、古着が好き、といったファッションを楽しむ視点が前提にあってこそ成立するということを2人が教えてくれました。それが自然と「ビームスらしい」ファッションの循環につながってくるのではないでしょうか。

- I THINK...
A.新井:私が地元のセレクトショップでアルバイトをしていた90年代、〈マルタン・マルジェラ〉の「再構築」のコレクションや、〈ヘルムート・ラング〉の「ペイントデニム」などに代表されるような、ファッションが流行っていたことを、今回の取り組みに向き合う中で思い出しました。古着を解体したり、既存の服に新たな加工を施すなどして、ファッションに新たな価値を与えるようなものづくりは、自分たちがおこなうリメイク概念にも通じているような気がしています。あれから30年経ち、もう高級な服は必要ないし、気に入った女性ものもなかなか着られない。そこで、自分のエッセンスを加えて服を着るというのが、ファッションを楽しむ次のステージではないかと考えたんです。それが結果、サステナブルな思考や活動につながっているということ。今回のターゲット層がサステナブルを求めている世代ということではなく、手頃だから古着を買って、でもそこに今っぽいエッセンスを加えて着たいという感覚なんじゃないかな。

A.合田:まさに新井さんの言う通りだと思います。若い世代の間では「ディグる」と言われていますが、いろんな古着の倉庫に行ったりして、いかに安くよいものをゲットできるかということをしている人が多いです。そこから自分でリメイクしてものを長く大切に着続けることも、ファッションの楽しさですよね。流行りとしてではなく、身近な自分ごととして捉えて楽しむことで、自然とサステナブルな行為につながっていけばよいと思います。

Profile

- 新井 俊祐
社内ベンチャーにてビームスの内製修理事業の立ち上げ責任者であり、20年以上のアパレル業界での経験を持つ。元々はビームスでの販売職からキャリアをスタートし、その後独立してブランド運営やOEMメーカーの営業を経験。ビームス内でオリジナル商品企画に長らく従事し、新規事業として〈SARTO BEAMS〉を立ち上げた後、「ビームス工房」事業と合流。洋服の修理やリメイクを通じた新たなビジネスモデルの構築に取り組んでいる。
合田 紗良
「ビームス ライフ 横浜」のスタッフで、今回のリメイクプロジェクトのターゲット層として参加。メンズセクションを担当しており、クラシックとトレンドを融合させた強みのあるスタイルを得意としている。幼少期から手芸やミシンに親しんできた経験を持ち、ファッションへの深い理解と感性を活かしている。
- 新井 俊祐
次回は「ビームス ライフ 横浜」でのイベントの様子をお届け!!次回は「ビームス ライフ 横浜」でのイベントの様子をお届け!!
ちょっとした視点の転換で、ファッションはもっと楽しくなる。そしてそれが自然と、自分や環境にとってよい循環につながる。ビームスの活動がそんなきっかけになるように、今回の実践がまもなくお披露目イベントを迎えます。最終回となる次回は、「ビームス ライフ 横浜」でおこなわれるたリメイクアイテムの展示とワークショップのレポートをお届けします。お客様とのコミュニケーションを通した、ビームスらしい循環型ファッションの展望を探ります。


