REPORT2016.4.14
REPORT2016.4.14
ARC'TERYX
ARRO 22 & MANTIS 26 Special
02ARC'TERYX × BEAMS
02ARC'TERYX × BEAMS
極限に挑むアルピニスト、またクライミングやバックカントリースキーに興じるアウトドアマンだけでなく、こだわり派のファッションユーザーからも絶大な支持を得る<ARC’TERYX(アークテリクス)>。なかでも確固たる人気を誇るロングセラーのバックパックである「アロー22」をベースとして、BEAMS では40周年を記念したスペシャルメイクアップを実現。別注を担当したバイヤー廣沢 慶とともにそのバックグラウンドを紐解きながら、同じくアニバーサリーモデルとして登場の「マンティス26」の魅力に触れる。(文/いくら直幸)
カナダの玄関口であるバンクーバーを対岸に臨み、北にはロッククライミングの聖地と知られるスコーミッシュ、少し足を伸ばせばアウトドアスポーツの楽園と呼ばれるウィスラーも。そんな大都市と雄大な自然に囲まれるカナダ・ノースバンクーバーにて、クライミング用ハーネスの製造販売メーカーとして1989年に設立されたロック・ソリッド社。その後、’91年に<ARC’TERYX>へと社名変更し、本格ギアからテクニカルウェア、バッグまでを有するトータルアウトドアブランドへと成長を遂げている。それでも「地球上の最高の素材、最高の技術、そして革新的なデザイン」というコンセプトは現在まで変わることなく、すべてのプロダクトに息づく。
カナダの<ARC’TERYX>本社を訪れるたび、スコーミッシュやウィスラーといった周辺のアウトドアフィールドに繰り出すことも多いバイヤー廣沢。この日は現地スタッフのジャスティンにアテンドを依頼。巨大な岩がいたるところに転がる森を歩きながら、現地のクライミングスポットを訪ねる。
「BEAMS で最初にセレクトしたのは1998年のこと。すでにアウトドア業界では高く評価されていたものの、当時はまだ一般的な知名度はほとんどありませんでした。奇しくもアロー22のデビューも’98年で、発売と同時にバイイングして以来、途切れることなく取り扱い続けています」。そして今ではブランドを代表するバックパックへと成長、ファッションメディアでの露出も手伝い、現在進行形で愛用者が増えている。
だが、なぜに「アロー22」は、これほどまでにファッションユーザーにも受け入れられるのだろう? 理由は、製品の出自からうかがい知ることができる。<ARC'TERYX>には自転車通勤のスタッフが多く、その大半がマウンテンバイク。本社の裏手にはトレイルが用意され、社内にはシャワールームまで完備と、会社という日常の都市生活と非日常のアウトドアフィールドを手軽に行き来できる環境が整う。そして「アロー22」を手掛け、今やレジェンドの域に達しているハウスデザイナー、ダン・ジャクソンもマウンテンバイクとスケートボードを日々の足としており、自らの通勤用に「アロー22」を開発したという。また、この地域は年間を通して雨降りが非常に多いため、防水コーティングの素材、同社が発明したウォータータイトジッパーの採用は、毎日の通勤においても不可欠だった。つまり、そもそもがアウトドア専用ではなく、通勤=シティユースも視野に入れ、双方に対応するリベラルなバックパックとして開発された同社としては稀有なアイテムでもあるのだ。
さらにバイヤー廣沢はこう加える。「初めてアローを見たときのインパクトは、未だに忘れられません。モードなエッセンスも感じさせる先進的なデザイン、独創的なフォルム、既成概念を壊すマテリアルの組み合わせ、すべてが新しいエポックメイキングなモデルであり、アウトドア業界全体に衝撃が走りました。それだけでなく、従来とは明らかに異なる “アウトドア然としていないルックス” は、見た目を重視するアパレルブランドにまで影響を与えた。なので、背景や機能性はさて置き、ファッションアイテムとして選ばれていることも納得できます。ウンチクうんぬんに関係なく、純粋に格好いい。やはり人々を惹きつける基本であり、これに以上に強い原動力はない。発売から20年近く経っても古臭い印象はなく、色あせない唯一無二の存在感。常に人気が絶えないのも当然です」
ノースバンクーバーからクルマで1時間ほど、眼前に広がるのはロッククライミングの聖地と名高いスコーミッシュの雄大な景色。岩山だけでなく、悠久の森と豊かな水をたたえる大自然が日常の傍にある。このロケーションが気に入り、スコーミッシュに暮らす<ARC’TERYX>のスタッフも多い。
BEAMS が抱く特別な思い入れ15年もの構想が実った40周年モデル
アウトドアパックの新たなスタイルと価値観を築き上げた「アロー22」の功績は偉大。しかし何を隠そう、一度は生産中止にひんした過去が。過酷な環境下での使用を大前提とするアウトドア製品は、さらなるファンクションやコンフォート性を求め、常に進化を求めることが命題。そうした観点では、ひと昔前に開発された「アロー22」は時代遅れの旧式であり、現在であればより良いマテリアルが手に入り、より効率的な構造で生産できる。新型へのシフトは、生まれながらの運命のようなものだ。だが、いつまでも衰えない圧倒的な支持、何より BEAMS の熱い思い入れと一貫した取り扱いが酌量され、異例ともいえる存続が決定した。「長年、ブランドとプロダクトと真摯に向き合い、その姿勢が認められたことは我々にとっても誇りです」
40周年アイテムに抜擢した背景には、こうした特別な思い入れ、またブランドの革新性を象徴するプロダクトへのリスペクトがある。「本来はプロユースでもあるギアとしてのバックパックを、街でいっそうスタイリッシュに背負う。そのため、都会的なイメージを連想させる彩色として BEAMS がキーカラーに据えているネイビーブルーを採用しました。実は、今回のスペシャルメイクアップを最初に打診したのは2000年頃のこと。様々な事情から困難を極め、正直な話、一度は諦めた企画だったのです。しかし40周年を飾るにふさわしいプロダクトとして3年前から再交渉を重ね、15年以上の構想期間を経てようやく実現に漕ぎ着けました」
特徴的な流線フォルムに、落ち着いたマットブラック&モダンなネイビーブルーが相まって、洗練の佇まいを見せる「アロー22」。一方、アイコンである始祖鳥のロゴ刺繍をボディと同色のブラックで馴染ませ、アクセントになるロイヤルブルーのジッパーを際立たせた「マンティス26」。都市生活にフィットするシックなカラーリングで彩ったスペシャルモデルは、休日のカジュアルスタイル、またダン・ジャクソンよろしく自転車通勤のビジネスバッグとしても。もちろん完成された高い機能性は余すことなく継承しているため、キャンプやトレッキングといったアクティビティでも頼りになる。街のオンロードと大自然のオフロード、またライフスタイルのオン&オフ。このバックパックはそうした垣根を越え、シーンに縛られることなく日々を目いっぱい楽しむアナタに捧げる逸品なのだ。
アウトドア業界に止まらずファッションの世界にも与えた衝撃