昼も夜も忙しく過ごしている人が、もっとも自分らしくいられる時間。限られた時間だから好きなことや大切なことに向き合えるし、普段出会えない人と交流が生まれたり。そんな豊かなライフスタイルを自然と楽しんでいる人たちをフォーカスした連載「朝活」。 第8回は、地元静岡で焙煎所を構えるイフニコーヒーの松葉正和さん。<B:MING by BEAMS>を始め、全国のカフェからセレクトショップなどファッション関係からのコーヒー豆のオーダーを受けつつ、オリジナル商品を開発し、これからのコーヒー文化を育てています。

Photo_Ayumi Yamamoto/ Edit & Text_Masayuki Ozawa

新鮮なコーヒーを届けるために、同じ朝がスタート

Q:松葉さんは毎日、どんな朝を過ごしていますか?

「起きるのはだいたい6時頃です。犬の散歩をして、家でコーヒーを飲みます。朝ごはんは食べません。なんとなく2杯くらい飲んで、少し目が覚めたら車を15分くらい走らせて仕事へ行きます。出社時間はだいたい平均して7時くらいには来ています。焙煎量が多い日は、コーヒー豆の仕分けとか仕込みで2時間以上があっという間に過ぎてしまいます。毎日出荷があるので、17時頃までにスタッフ皆で作業を終えて配送業者に渡すのが一日の基本的なスケジュールです。僕はその後、21時くらいまで湧いた企画のアイデアをノートに書き溜める作業をしています。夜も割と遅くまで仕事をしていて、コーヒーのことを考えていると時間を忘れてしまいます」


Q:随分と朝早くから作業をしているんですね。


「作り置きを絶対にしないようにしていて、発注を頂いてから焙煎するようにしています。なるべく焙煎したてを提供したい。イフニコーヒー始める前の若い頃、僕は焙煎の鮮度の大切さを教わりました。例えば日本やアメリカの場合、おいしいコーヒーに対して「その豆はどこ産?」とか「〜〜農園の豆だね」という会話になるんですが、中東やヨーロッパだと銘柄よりも「それいつ焙煎したやつ?」ってなるんです。だからなるべく出荷日が焙煎日であるように、鮮度を大事にしたいんです。そのために地道な作業を毎日繰り返している感じですね」


Q:コーヒーの味にこだわりはありますか?


「“まずくないコーヒー”が好きです。美味しいコーヒーって、人の感覚は千差万別ですから、自分の好みやこだわりは考えません。イフニコーヒーのオリジナルは4種類の豆をブレンドしていますが、20年前から変わらず生活の中の“普通のコーヒー”を意識して作っています。おしゃべりしていて、気がついたら飲み終えていて「あ、もう一杯ください」みたいな感じが理想。主張の強い味や銘柄はもちろん話題になりますが、僕にとってコーヒーは、脇役のような存在でありたい。あと、こだわっているのはパッケージでイフニコーヒーであることが目立たないようにしています。服でも、ブランドで選ぶよりも自分で良いなと思った服がビームスさんの服である方がいいじゃないですか」

朝に飲むなら、薄くてカフェインの強いコーヒーが好き

Q:その中で、朝の寝起きに向いているコーヒーはどんな味ですか?

「これには2通りの考え方があって、結論からいうと濃いのも薄いのもどっちも僕にとってはいいんです。焙煎って、時間をかけて豆を焼くほど水分と一緒にカフェインが飛んでいきやすい。だから濃ければ濃いほど実はカフェインが少なかったりするんです。だから夜に飲んでも寝つきが悪くなかったりする。それだと理屈では朝はさっぱりしたアメリカンの方が、脳が活性化するんですが、”受験勉強の時は濃いコーヒーで目を覚ます”なんて昔から言われていると、濃い味でも先入観でパキっと目が覚めたりしちゃうんです」

「僕自身は、朝は薄めでカフェインが強めのやつを。仕事の途中から少し濃いめにすることが多いです。おそらく他所のコーヒー店ってシンプルなストレートが良いとか言うけれど、疲れたら砂糖もミルクも入れちゃうし、結構適当。朝コーヒーを飲む時も、ドリップポッドやスケールとか家に置いていないので、やかんでお湯を沸かしてそのまま淹れてしまいます。こういう仕事をしていると、お湯の温度や抽出の時間とか、いつ何時もこだわっていそうに思われますが、その時々の気分で美味しさの感じ方は違うからバラバラ。むしろ豆さえ新鮮であれば、コーヒーはどれも美味しいと思っています。一緒に食べて相性が良いのはチョコレート。カカオもコーヒーも赤道直下の国で作られているじゃないですか。その昔はホットチョコレートがとても高級で、その味を再現するためにコーヒーに砂糖やミルクを入れていたそうです。つまりコーヒーってチョコレートを目指して進化してきた歴史があるくらい。お互いがコクと甘味を補っている良い関係性ですね」


Q:朝、一人でコーヒーを飲むときに何を考えていますか?


「何も考えずにぼうっとして、飲み終わりになって「さて、今日は何しようかな」って自問する感じですかね。でもその日一日の仕事の内容を考えられるって、すごくありがたいことだと思っています。普通に生活できることへの感謝、焙煎できることへの感謝です。イフニは、発注先が理想とする味を作るのが仕事だから、必要とされないと豆を焼くことがなくなります。だから朝にコーヒーを飲むことは、普通で居られることに感謝している時間なのかもしれません」

松葉正和
MASAKAZU MATSUBA


学生時代にコーヒーの味に魅了され、世界各地で様々なコーヒー文化や焙煎に触れ、2001年に静岡の地元にイフニコーヒーをオープン。IFNiとは現在のモロッコの国名であり、「infinity」や「eternal」の語源になった言葉で、変わらないことを続けていきたい意味が込められている。現在はスリッパ工場の跡地に拠点を構え、コーヒーの焙煎から卸、販売所として活動を広げている。フィルターやドリッパーなど器具の開発や、珈琲羊羹やカフェインフリーのコーヒーグラノーラやコーヒーシロップなど、新しい世界を広げている。
Instagram:@ifniroastingandco

松葉正和
MASAKAZU MATSUBA


学生時代にコーヒーの味に魅了され、世界各地で様々なコーヒー文化や焙煎に触れ、2001年に静岡の地元にイフニコーヒーをオープン。IFNiとは現在のモロッコの国名であり、「infinity」や「eternal」の語源になった言葉で、変わらないことを続けていきたい意味が込められている。現在はスリッパ工場の跡地に拠点を構え、コーヒーの焙煎から卸、販売所として活動を広げている。フィルターやドリッパーなど器具の開発や、珈琲羊羹やカフェインフリーのコーヒーグラノーラやコーヒーシロップなど、新しい世界を広げている。
Instagram:@ifniroastingandco

お気に入り