昼も夜も忙しく過ごしている人が、もっとも自分らしくいられる時間。限られた時間だから好きなことや大切なことに向き合えるし、普段出会えない人と交流が生まれたり。そんな豊かなライフスタイルを自然と楽しんでいる人たちをフォーカスした連載「朝活」。第10回は、スタンプアーティストの大嶋奈都子さん。彼女の作品のインスピレーションは、おじさんのちょっとした自然な仕草やユニークな動き。その観察を、毎朝続けているそうです。

Photo_Ayumi Yamamoto / Edit & Text_Masayuki Ozawa

おじさんは待っていてくれない。
寝坊するとチャンスを逃した気がするんです。


Q:「おじさん」を描くようになったきっかけを教えてください。

「美大生の時からマンウォッチングやイラストルポなど、とにかく人間観察が好きでした。その時は若い人も女性もイラストの対象でしたが、だんだんジャンルが絞られて、まずはサラリーマンへ辿り着きました。満員電車に押し込まれているサラリーマンって、スーツとか革靴とか、仕草とかが一見同じに似えて、まるでスタンプを押しているみたいに思ったんです。でもよく見ると全員が微妙にちょっとずつ違っている、その個性が面白いなと思うようになりました。」

「卒業制作で「おじさん」のスタンプを押した大きな背景紙を展示したんですが、それは自分なりに納得がいきませんでしたので、卒業してから自分で個展「396種類の『おじさんスタンプ』」を展示しました。その後、リクルートが主催する第七回グラフィック「1_WALL」に「TOKYO SALARYMAN STAMP」という作品名で出展し、最終選考まで残ることができたんです。その後はアルバイトをしたり企業に勤めながら、夜な夜な絵を描いてはイベントに出展したり個展を開く生活を送っていました。」


Q:それが朝に観察するようになったのは?


「しばらくダブルワークを続けていましたが、だんだん副業というかイラストのお仕事が増えてなかなか寝られない夜が続いて。本業のお仕事が忙しい時期とタイミングが被ると、両方に迷惑をかけてしまうので、思い切って本業をやめます、と。そしてフリーになりました。独立してからはほぼ毎日、健康のために公園をお散歩していたんです。するとおじさんがいっぱいいるなと気づき始め、そこから毎朝、公園で人間観察をするようになったんです。」


Q:公園で見る「おじさん」はどこに魅力を感じますか?


「生まれたてのおじさんとでも言うのでしょうか。満員電車にもさらされていない、フレッシュさがありますよね。後はジョギングしていたり、健康志向の高い方が多いので、なんとなくポジティブな感じがするんです。それから私もランニングをするようになりました。約2kmのランニングコースを1周するくらいですが、気になった人が居たら立ち止まって見続けたり、写真をこっそり撮ったりしています。だいたい9時頃に公園に行ってますが、おじさん同士がゾロゾロと集まり、ワイワイしている光景をみるとほっこりします。退職して時間に余裕ができて、そこから新たに友達ができたんだなとか、想像すると胸がキュンとします。」

仕草や着こなしなどの、絶妙なズレに惹かれます

Q:お気に入りの「おじさん」の仕草はありますか?

「まず座り方が独特ですよね。なぜかストレッチしながら座っている人も多いです。本当に不思議な動きをする方がいっぱいで。そういうところに出る人となりを拾ってイラストにする感じです。例えばおじさんが梅の木を撮影するのも、両手で携帯を持っていたり、老眼で体を反りながら携帯の画面を離して見る絶妙な距離感が面白いなって思って見ています。あとは服装も、ポケットがいっぱいあったり、サイズが大きかったりピチピチだったり。あとは着ている服がすごく古かったり。この前、昔の瀬古(利彦)さんのランニングTシャツを着て走っているおじさんを見かけて、現代的でないところに哀愁を感じました。どこかに感じる自分とのズレに惹かれます。」


Q:観察を続けるモチベーションを維持するものは?


「フリーランスになってからは基本的に仕事は家だし、時間に決まりがないので、簡単に昼夜が逆転しちゃうんです。私、もともと夜型で、朝はどちらかというと苦手だったので、今も毎日お尻をペンペン叩いて無理やり起きています。おじさんは待っていてくれません。朝は早く行動して、夕方過ぎになると寝ちゃったりするので、それに合わせていると自然と生活のリズムが整えられるようになりました。それに、寝坊するとチャンスを逃した気がするんです。いつどこで出会えるかわからない一期一会を大切に、なるべくたくさんストックしておきたい。お仕事の時は頂いたお題に合わせて選んでいる時、なんだか選抜メンバーを決めるプロデューサーになった感覚になります。想像で描くこともできますが、手元に素材があると、この部分をもうちょっと似せようとか、この特徴をもう少し細かく描いてみようとか、個性を拾いやすいです。」


Q:今日はおじさんたちとどんな会話を?


「梅が散ってしまいましたね、とか世田谷はワンちゃんが多いですねとか。あと小学校の同級生に私も知っている有名なグラフィックデザイナーがいた話で少し盛り上がりました。私、基本的におじいちゃん子だったので、話すのが好きなんです。子供の頃におじいちゃんに会いに行くと絵が好きな子だからと言って、いつも紙とペンを用意してくれました。あと、私は3人兄弟の末っ子ですが、常にお互いをいじり合っている家庭で育ちました。なんでも笑いに昇華させたい意識が強いところも「おじさん」を描き続ける理由の一つかもしれません。SNSやイベントで作品を発表した時に「こういうおじさん、いるよね」と笑ってもらえるのが嬉しくて、明日の朝も素敵なおじさんを見つけようって励みになります。」

※掲載している写真は、すべて撮影許可を頂いているものです

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大嶋 奈都子
NATSUKO OSHIMA


スタンプアーティスト/イラストレーター。同じように見えて、実はそれぞれ個性的なおじさんたちを観察した「おじさんスタンプ」の制作がライフワーク。国内外のスタンプのワークショップや展示に多数参加する一方で、書籍や似顔絵などのイラストも制作。
Instagram:@natsukooshima

大嶋 奈都子
NATSUKO OSHIMA


スタンプアーティスト/イラストレーター。同じように見えて、実はそれぞれ個性的なおじさんたちを観察した「おじさんスタンプ」の制作がライフワーク。国内外のスタンプのワークショップや展示に多数参加する一方で、書籍や似顔絵などのイラストも制作。
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