昼も夜も忙しく過ごしている人が、もっとも自分らしくいられる時間。限られた時間だからこそ、好きなことや大切なことに向き合えるし、普段出会えない人と交流が生まれたり、ライフスタイルが豊かになります。そんな「朝活」を自然と楽しんでいる人たちをフォーカスした<B:MING by BEAMS>の連載企画。第11回は文筆家の甲斐みのりさん。ときめいたお菓子をつい擬人化してしまい、愛でながら食べてしまう“朝おやつ”に密着しました。

Photo_Ayumi Yamamoto / Edit & Text_Masayuki Ozawa

朝から好きな気持ちで満たされると、
1日がストレスなく過ごせる


Q:甲斐さんが「朝おやつ」を初めた理由を教えてください?

「皆さんが好きなアイドルや好きな俳優さんを愛でるように「可愛い」、「渋くて格好いい」とお菓子を擬人化して見てしまうんです。だから好きなお菓子に出会ったら買わずに、食べずにいられない欲求からどんどん買うようになって。もはや普通の生活では消費しきれないので、自分で買ったお菓子を”朝おやつ”と名前をつけて食べるようになりました。いつも9時から10時の間に仕事場に来て、ひとり、朝おやつをしています。お菓子が好きすぎて、ひとときでも良い舞台に立たせてあげたい気持ちが生まれ、会話するように接しています。」


Q:どうして朝、食べることにしたのですか?


「低血圧なので、夜よりは朝、ちょっと甘いものを食べることはいいじゃないかとか、なんとも自分に都合のいい解釈です。でも目覚めた時に「あのお菓子を食べられる!」と思ったら寝起きもよくなります。楽しいことをしたり、美味しいものを食べて、朝から好きな気持ちで満たされると、1日がストレスなく過ごせることに気が付いて、もう10年以上続いている習慣になりました。」




「ライターの仕事を始めたばかりの頃、朝早い取材がすごく苦手だったんです。憂鬱に感じてしまい、すると体調も悪くなって、お世話になっている編集さんに相談したら「ベッドの脇にチョコレートを置いて、まずそれをかじりなさい」と言われて。食卓の上に甘いものを置く習慣ができました。科学的根拠があるかは分かりませんが、朝、甘いものを摂取することによって調子が良くなったり、目覚めが良くなったり、機敏になるようになった感覚はあります。」


Q:食べる、以外に続けている行為はありますか?


「10年くらい前にSNSを始める前から写真に撮って記録していました。おそらく好きなアイドルや、自分の子供を撮るのと、あまり変わらない気持ちだと思います。好きなお菓子をなるべく可愛く撮って記録したい思いが常にあって、お皿との組み合わせや、撮る角度をどうしようとか、パッケージが一緒に入った方が可愛いかなとか、いろいろ考えるのが楽しくなりました。」

美味しいものが好きではなく、
美味しくものを食べるのが好き


Q:「お菓子」と「おやつ」ってイメージ違うなって思うんですけど。なんか、そこに違いってありますか?

「お菓子はそのもの単体を指しているのに対して、おやつは食べる行為そのものだと思っています。美味しさは人それぞれ感じ方が違いますが、私の脳は、目で見てときめいたものは美味しく感じられるようにできているから。どんな味でもありがたく受け入れて、生まれて来てくれてありがとうという気持ちで食べるのが好き。私は、美味しいものが好きではなくて、美味しくものを食べるのが好きなんです。どんな空間で、誰と一緒に、どうやって食べるか、そういう事でおいしく食べられると思っていて。朝おやつはその一環で、ときめきながら甘いものを食べると、その日1日が豊かになるんです。」


Q:自分の中で擬人化できる、ときめきを覚える定義はどういうところにありますか?


「根本的に可愛らしいものが好きです。私の好きな可愛さとは、ちょっと健気というか、世界の中心で目立つわけではないけど、こけし屋さんのように昔から長年地方で愛されていて、何十年と積み重ねた時間の中から自然と可愛らしさが芽生えるものってありますよね。おじいちゃん、おばあちゃんを可愛らしく感じるように。私が食べたこのピーチが乗ったケーキも、何十年も人気の名品です。あとは、やっぱり仕事場や住まいの近所にあるおいしいものを見つけるのが好きです。遠くからのお取り寄せや旅先で買う行為も楽しいけれど、毎日通えるお店や毎日食べても飽きないお菓子に惹かれます。」


Q:愛らしいものを感じる甲斐さんの原点はどこにあるのでしょうか?


「子どもの頃からお菓子の包み紙にときめいていました。缶とか包装紙とか箱とかリボンとを集めだしたのが原点ですね。そこからそれを包んであるお菓子そのものに気持ちが向くようになりました。そして、お菓子そのものが好きになったら、旅や町歩きが好きになっていきました。色々な場所に行けばもっと色々なお菓子が食べられる!って、好奇心がどんどん膨らんでいったというか、育っていった感覚はあります。」


Q:朝、食べることで新しい気づきはありましたか?


「ケーキなどの生菓子は心にちょっと余裕がある時で、焼き菓子はちょっと急いでいる時とか、自分の心の状態を知るのにも役立っているかもしれません。あと、私は静岡の出身ということもあり、お茶が大好きなんです。だからお菓子とお茶をどう組み合わせるかも楽しみの一つです。今日は普通に紅茶でしたが、ハーブティーのときもあれば、コーヒーもあれば、和紅茶もあります。時間のある時は茶葉のブレンドを楽しんでいます。また、洋菓子やさんはバレンタインやクリスマスの時期に華やかになりますし、和菓子やさんには二十四節気があります。お菓子やさんに行くと季節の移ろいを教えてもらえるので「あ、そろそろ衣替えかな」とか思うこともあります。」

【WEAR ITEM】
コート ¥17,000(+tax)<ビーミング by ビームス>、 ワンピース ¥8,900(+tax)<ビーミング by ビームス>、 ハット ¥4,500(+tax)<ビーミング by ビームス>

撮影協力

こけしや

「京都に住んでいた頃から好きで、東京へ行った時はいつも寄っていました。鈴木信太郎さんのパッケージはお土産にも喜ばれます。ショートケーキのような洋菓子は2階にある喫茶室で食べ、焼き菓子を買って帰ってと、使い分けを楽しんでいます。かつては松本清張さんなど昭和の文豪達が通っていた、文化人のサロンみたいな場所。今日食べたピーチ入りのケーキ「ソレイユ」も昭和の古き良き洋菓子という存在。缶詰めから出て来たような桃がすごく懐かしくて好き。それから、こけし屋さんの魅力といえば、ケーキが200円台から買えること。」

こけし屋



東京都杉並区西荻南3-14-6
Tel:03-3334-5111
9:00〜22:00 火曜休
http://www.kokeshiya.com/


こけし屋



東京都杉並区西荻南3-14-6
Tel:03-3334-5111
9:00〜22:00 火曜休
http://www.kokeshiya.com/


鉢の木 阿佐ヶ谷本店


「今日は「招きもち」と「あさがやの並木」という和風マドレーヌと「こけしミルク」の3種類を撮影しました。阿佐ヶ谷の駅前にあるお菓子屋さんで、いつも賑わっています。数年前に、お年を召した方だけでなく、これからの若い世代にも食べてもらいたいと考え、昔ながらの和菓子をパッケージを含めてリニューアルしたそう。可愛いし、食べてみたらすごく美味しくて。招き餅も自分にとってはパンみたいな存在です。あんサンドのような感じで毎日食べられる、飽きがこないお菓子ですね。」

鉢の木 阿佐ヶ谷本店



東京都杉並区阿佐ヶ谷2-15-4
Tel:03-3311-6917
9:00〜19:30 不定休
http://www.hachinoki.com/


鉢の木 阿佐ヶ谷本店



東京都杉並区阿佐ヶ谷2-15-4
Tel:03-3311-6917
9:00〜19:30 不定休
http://www.hachinoki.com/

甲斐みのり
MINORI KAI


文筆家。旅、散歩、お菓子やパン、手みやげ、クラシックホテル、雑貨や暮らしなどを主な題材に、書籍、雑誌、webなどに執筆。宮崎県国富町など、さまざまな土地の観光案内冊子も手がける。著書は『アイスの旅』『お菓子の包み紙』『地元パン手帖』など多数。
http://www.loule.net
Instagram:@minori_loule

甲斐みのり
MINORI KAI


文筆家。旅、散歩、お菓子やパン、手みやげ、クラシックホテル、雑貨や暮らしなどを主な題材に、書籍、雑誌、webなどに執筆。宮崎県国富町など、さまざまな土地の観光案内冊子も手がける。著書は『アイスの旅』『お菓子の包み紙』『地元パン手帖』など多数。
http://www.loule.net
Instagram:@minori_loule

お気に入り