昼も夜も忙しく過ごしている人が、もっとも自分らしくいられる時間。限られた時間だからこそ、好きなことや大切なことに向き合えるし、普段出会えない人と交流が生まれたり、ライフスタイルが豊かになります。そんな「朝活」を自然と楽しんでいる人たちをフォーカスした<B:MING by BEAMS>の連載企画。第12回はスタイリストの小林 新さん。多くの人にとって不安ばかりが募った自粛期間中を、仕事が再開した時のための“インプットの時間”とポジティブに捉えました。映画観賞をルーティーンにすることで、朝の大切さに気づいたそう。

Photo_Ayumi Yamamoto / Interview & Text_Masayuki Ozawa

繰り返されるニュースを見続けるより
糧になる映画を観ていた方がいい


Q:コロナによる自粛中は、どう過ごされていましたか?

「スタイリストとして独立して約15年になりますが、これほど時間ができたことはありませんでした。心に余裕ができたと同時に、撮影ができない日々が続いたことで、自分の表現が出来ないことの辛さみたいなことも同時知ることができました。でも、これは僕に限った話ではなく、みんなが同じラインに並んだと解釈しています。だから時間を持て余すよりも、仕事が再開した時に多くのことをアウトプットできるためのインプットに充てたいと思うように。そのためには、慌ただしく過ぎていた今までを見直して、補充する時間と割り切って考えましたね。」


Q:そのインプットが映画観賞だったんですね。


「もちろん、写真集を見たり、好きな家具や雑貨を調べたり、Instagramの新しい仕事用のアカウントを開設したり。またこの家がリフォーム中で、スケルトン状態だった時には記念に作品撮りもしました。コロナが落ち着いて撮影するとなった時に「あの人にお願いしたい」と選ばれる人になるためには、常に何かを発信し続けることも大切だと思いました。映画を見始めたのは、やはり一日を無駄に使いたくなかったから。自粛期間に入る前から、僕ほど家に早く帰るスタイリストっていないと思っていました(笑)ファッションや広告業界の人って、夜が遅くて生活が不規則なイメージがありますが、僕は要領は悪くないほうだと思うし、遅くまでダラダラと仕事するのは好きじゃない。だから寝るのも早いんですよ。すると朝は愛猫のフクに起こされることもあり、5時台には目が覚めちゃって。繰り返されるコロナ関連のニュースを見続けても得もないと思ったから、映画でも観た方が良いなって。」


Q:映画は最初は自分の仕事に役立つものを?


「この自粛期間中に観た中でも気に入っている『裏切りのサーカス』や『鑑定士と顔のない依頼人』とか、トム・フォードが監督した『シングルマン』などは、スタイリストとして仕事の糧になるかどうかで選んでいると思います。あの服装が好きとか、部屋の感じが参考になるとか。でも、朝の映画が習慣になってからは、チョイスの幅も広がりました。例えば仕事で触れ合う若いモデルやクリエイター、アシスタントたちから情報収集することも多いです。40代になると価値観が凝り固まってしまいがちだから、彼らの世代の感覚を、映画を通じて知れることがすごく楽しい。僕は生活すべてが仕事に直結すると考えるタイプなので。」

好きなものに囲まれた空間で
ビフォー10の時間を充実させる


Q:観た映画が仕事に活かされている実感はありますか?

「もちろんあります。映画の人物像をテーマにした撮影を考えて、それをロケーションやスタイリングで表現することもある。また現場のコミュニケーションツールとしても蓄えになっています。映画って知っているかより観たという経験が大事。それが面白くなかったとしても、面白くなかったと言える方がいい。仕事の被写体はモデルだけでなく俳優さんも多いので、撮影では自然と映画の話になることが多いです。引き出しが多いほど会話は盛り上がるし、現場のいい雰囲気作りに繋がります。」


Q:映画はどんな環境で観ていますか?


「基本的に何でも格好から入るタイプですから、自分が映画を観ている姿を俯瞰して見たときを想像して、様になっている状態を作っている方が落ち着きます。だから汚い部屋で過ごすよりはきれいに整えていたいし、僕はパジャマで寝るので、起きたら家着に着替えるようにしています。コーヒーや和茶のときもありますが、朝は紅茶を淹れることが多いです。」

「この家にある家具や雑貨も、最近になって集めたわけではなく、スタイリストとして独立してから15年の間でちょっとずつ、ちょっとずつ、旅先や骨董市などでそろえてきたものばかり。夫婦お互いの趣味が集まっているから、愛着もあります。有名なデザイナーの名品より、ここにしかないものに惹かれるタイプ。服も時計も、ヴィンテージやアンティークが好きですし。それこそ10年くらい前までは、基本的に服屋には服しか売っていませんでした。それがいつの間にか服があって、コーヒーが飲めて、食器を扱って、ファッションライフスタイルがセットになったじゃないですか。自分の生活もそうなっている感じです。」


Q:最後に、小林さんにとって朝活の魅力とは?


「よりよい一日のためにあるみたいな感じですよね。若い頃は朝がなく、昼から一日が始まっていたように思います。夜を楽しむと必然的に朝はなくなってしまうから。でも歳を重ねて、朝がない生活は決してハッピーではないと感じるようになりました。朝6時に起きれば、午前中は6時間。そこで出来ることってたくさんあります。多くの人が考える自分の時間って、仕事が終わってからじゃないですか。でも僕からしたら仕事が始まる前。6時から映画を観て、終わってからゆっくり朝食をとってもまだ9時とかですから。アフター5よりもビフォー10の過ごし方が大切です。」

小林 新
ARATA KOBAYASHI


1978年生まれ。神奈川県出身。タレントやミュージシャンの衣装や広告のスタイリングを中心に活動中。雑誌『Pen』や『UOMO』など同世代の男性をターゲットにしたファッション、カルチャー誌でも、自身の好きなヴィンテージやアンティークから広がる世界観を表現している。
Instagram:@stylist_arata_kobayashi

小林 新
ARATA KOBAYASHI


1978年生まれ。神奈川県出身。タレントやミュージシャンの衣装や広告のスタイリングを中心に活動中。雑誌『Pen』や『UOMO』など同世代の男性をターゲットにしたファッション、カルチャー誌でも、自身の好きなヴィンテージやアンティークから広がる世界観を表現している。
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