昼も夜も忙しく過ごしている人が、もっとも自分らしくいられる時間。限られた時間だから好きなことや大切なことに向き合えるし、普段出会えない人と交流が生まれたり。そんな豊かなライフスタイルを自然と楽しんでいる人たちをフォーカスした連載「朝活」。第18回は医者の内田宙司さん。2020年の6月に、横須賀市の湘南国際村に内田宙司整形外科を開業しました。目指しているのは、医療とデザインの相乗効果。毎朝、同じ作業を繰り返すことで、その感覚とアイデアを研ぎ澄ませています。

Photo_Ayumi Yamamoto /
Interview & Text_Masayuki Ozawa[MANUSKRIPT]

単調な作業をずっと繰り返すことで、
思考がクリアになり、アイデアが生まれる


Q:朝の過ごし方について教えてください。

朝は6時に起きて、前の晩の寝る前に乾燥機にかけていた洗濯物を取り出す作業から始まります。畳んでいる間にお風呂を沸かし、ゴミを捨てた後にお風呂に入る。夜に寝るのは12時頃です。本当に、毎朝同じことを繰り返すだけ。ルーティーンワークがあるとベンチマークというか、自分のいろいろなことが見えてきます。体調の小さな変化に気付いたり、体との情報交換ができる。その間に、仕事のことやそれ以外も含めて、生活に関わるあらゆる事を自然にあれこれ考えています。単調な作業の繰り返しの方が考えがまとまるんですよね。


Q:どうして同じことをしようと思ったのですか?


根っからの性格ですね。学生の頃から、一歩目を右足で踏み出すと気分がいいとか、通学時に遊歩道の目地を踏まずに歩いてみるとか、自分なりのルールを決めて生きてきました。しかし、同じことをしたいのではなく、新しいことをするアイデアを練るために単調な作業をくり返している感じです。運動でも同じことを嫌がらず実直に続けていれば、その先に面白いことが見えてくる。例えば白い三角巾を畳んでいると、白である必要はないなと思い、じゃあ殺菌効果のある藍染めで作ってみようと思いついたり。あくまで経験則ですが、常に変化を求めるには、ベーシックな動作が大事になります。


Q:朝活の続きを教えて下さい。


8時には家を出て、車で5分ほど離れた病院に一番乗りで出勤しています。まず音楽をかけ、掃除をし、中庭にスツールを並べ、やかんに貯めた水を加湿器に入れ、パソコンや医療機器を立ち上げ、電子カルテの準備しています。出社したスタッフが仕事モードに入りやすい環境を作るためでもありますが、自分をコントロールするためでもある。人がいると気を遣ってしまう性格なので、わざと自分と向き合う一人の時間を作っています。患者さんや治療のことはもちろん、自分が作っているウエアやデザインなど、医療に良い影響を及ぼすと信じているすべてのことについて考えています。

医療とデザインとの繋がりを知る
きっかけになる空間を作りたい


Q:一見では病院と思えない、素敵な建築です。そして内田さんのセンスとこだわりを感じる空間です。インスピレーションはどこから得ていますか?

自分がここに居たいと思える空間で働いたり生活する事が、自分の感情を安定させモチベーションを高める事に繋がると感じています。建物のデザインは自宅と同じ、新素材研究所の建築家、榊田倫之さんにお願いしました。すごくフラットでシンプルな設計です。僕は小さな頃からものに興味がありました。車もバイクも自転車も、あとはCI(コーポレート・アイデンティティ)が好きで、ひたすらロゴを描いていました。美大で教育を受けたことはないので詳しいことはわかりませんが、直感的な「好き」を大事にしています。例えば医療器具の収納や、看護師が使う鑷子(ピンセット)を入れる台車は、それ専用のものがありますが、工具用のロッカーやワゴンが使えるんじゃないかって考えて、それを実行することがとても楽しいです。


Q:マニュアル通りに病院を作ろう、という発想では思いつかないことばかりですね。


デザインの語源の一つに、物事を改善するという意味があります。あるものをそのまま使うだけでなく、使う場所や視点を変えて使ってみたりと、物事を流用するのが好きかもしれません。それは20年くらい前に読んだ『BRUTUS』の「どうせならデザイナーズ病院」という特集の影響も大きい。日本には作家の作品を点在しているような病院はあっても、空間全体で見ると陳腐に見えてしまう。でも海外にはお城の形をしたCTがある小児科があったり、心臓のオブジェが光っている循環器の病院があったり。メディカルウエアにもデザインが入っていて、こういう環境で働きたい、と思ったんですね。一つ一つを自分の好きなものに囲まれるのは、心の平穏に繋がります。


Q:病院として、目指しているかたちはなんですか?


とにかく患者さんがリラックスできる空間です。それは人と人の距離感もそうだし、環境もそう。待っているだけで具合が悪くなるような病院にはしたくありません。そして患者さんと医者の間には信頼関係がないと成り立たない。この先生が言うなら、と患者さんに思ってもらえるために、置いてあるものすべてが信頼のとっかかかりになって欲しいと思っています。例えばアーティストの神山隆二さんに作って頂いた「Be GOOD」の作品ですが、入り口にネオン管がある病院っていかがわしいイメージがありますよね? あと院内で販売はできませんが、ジェリー鵜飼さんに描いてもらったロゴを使ったスウェットなど、自分でデザインしたメディカルウェアやグッズもそう。こういうことをすると本業をおろそかにしているように思われがちですが「Be GOOD=いい子でいてね」、つまり「早く治してね」というメッセージを込めています。医療がデザインと繋がっていることを伝えるために何をできるか、朝はそれを考える時間でもあります。根底には患者さんをサポートしたいという信念がありますから、その気持ちは必ず伝わると確信しています。


Q:休日の朝はどうしていますか?


いつもと同じように乾燥機から洗濯物を取り出してきれいに畳んで朝風呂に入ります。その後は趣味の部屋でパソコンの前に座り、子供が起きるまでは新しいプロダクトのデザインについて考えたりしています。

パーカ ¥6,300(+tax)<ビーミング by ビームス>、 パンツ ¥7,200(+tax)<ビーミング by ビームス>

内田 宙司
HIROSHI UCHIDA


1969年生まれ。聖マリアンナ医科大学を卒業後、大学院で筋生理学を学ぶ。整形外科のさまざまな症例や研究に携わりながら、いくつかのクリニックを経て、2020年に内田宙司整形外科(https://u-h-seikei.com/)を開業。地域に信頼されるホームドクターを目指しつつ、メディカルウェアなどをデザインを手がけるなど、医療とデザインとアートを結びつけている。日本でも有数のスターウォーズコレクターとしても有名。
Instagram:@goodskywalker

内田 宙司
HIROSHI UCHIDA


1969年生まれ。聖マリアンナ医科大学を卒業後、大学院で筋生理学を学ぶ。整形外科のさまざまな症例や研究に携わりながら、いくつかのクリニックを経て、2020年に内田宙司整形外科(https://u-h-seikei.com/)を開業。地域に信頼されるホームドクターを目指しつつ、メディカルウェアなどをデザインを手がけるなど、医療とデザインとアートを結びつけている。日本でも有数のスターウォーズコレクターとしても有名。
Instagram:@goodskywalker

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