作者が仕掛けた「罠の集積」
インターネットで購入、捕獲された生命体は、日常に投下される。それは動物をはじめ、植物、果物、魚、虫と多岐に渡り、あらゆる場所を実験場として使用し、撮影が終わるまで一時的に挿入される。この行為は「仕掛け」と呼ばれ、それぞれの生息地とは関係なく、脈絡のない野蛮で美しい空間を現実の中で、意図的に引き出す為に行われる。
鍵となる生物は、実際予測できない動きで、我々人間を不安にさせる。構図の中には不可思議な人工物を配置し、その意味と意味の過剰なアンバランスさにより「何の写真か」という名目は、明瞭ではなくなる。この為、通常一枚で完結したように見える写真が、混沌と混乱という独自のハーモニーを持ち、集合体の本になることで、より一層複雑に重層化する。
とある時点で生物学に興味が派生していったという大野が、先端テクノロジーを駆使しておこなわれる遺伝子工学や、現代消費社会において利用される生物・植物を、日常空間から切り離し、巧みな組み合わせで次々と配してゆく。
ちなみに白いイチゴは希少な突然変異種から人為的に開発されたもの。それぞれの生物が持つ隠された意志、プログラミングされた遺伝子の縦横無尽な方向性に驚きを見出したことからタイトルは付けられた。
Simon Karlstetterの推挙によりJapan Photo Award 2016を受賞。
■大野真人(おおのまこと)
千葉県生まれ。写真家。インターネット上で購入、捕獲した「生命体」を日常に投下し、一時的に混沌とした空間を設置。
写真によって採集するという手法により、野蛮さと美しさを湛えた作品を発表している。
2016年KG+KYOTOGRAPHIE(京都)、LA ART BOOK FAIR(ロサンゼルス)、2015年Beirut Photo Fair(レバノン共和国)選出など。
東京から生み出されるアート、デザイン、カルチャーなど、混沌とした東京らしさを通じて現代の日本文化を世界に発信しています。
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商品番号:58-81-0889-032