2010年のクリスマスキャンペーンは現代美術作家の須田悦弘(すだ よしひろ)氏をフィーチャーし、木彫と彩色による作品"チューリップ"を用いたインスタレーションをモチーフに、ショッピングバッグや店頭ディスプレイなど様々なシーンを彩ります。



一見すると"本物"と見まごうほどの完成度の美しい作品は、見る人に驚きと感動を呼び起こします。完全なハンドメイドによる圧倒的なリアリティーが、逆に現実を深く見つめ直すきっかけを誘発し、香り、質感、色彩など、様々な記憶や感覚を刺激します。
BEAMSからのプレゼントは"一輪の赤いチューリップのような"作品に触れるきっかけでしかありませんが、作家と作品からのメッセージを受け止めて頂ければ、きっと非日常的で豊かな知覚体験をすることができるでしょう。
今回のショッピングバッグのデザインは、作家の表現作法に大きな感銘を受け、それに倣うようコンセプトを組み立てています。
作家はチューリップや雑草など自然の植物をモチーフに、木と彩色により本物と見まごう程の彫刻に仕上げます。その彫刻は日常の空間にさりげなく据え置かれ、場と一体となり「作品」は完成します。あまりに自然に配された彫刻は、時には気付かれないこともあるそうですが、ひとたびその事態を把握した瞬間、空間は充実した気配に満たされてゆくのです。
バッグのデザインをする上で注意したのが彫刻の忠実な再現。実物のサイズ感や独特の浮遊感、そして木に施された彩色の温かさや、背景の壁のトーンなど、実際の感じ方により近づくよう、印刷で再現しました。
「チューリップ」があしらわれたクリスマスバッグはおそらく違和感なく街中に溶け込んでゆくことでしょう。そこで誰かがその「アート」に気づいたとしたら、さまざまな感覚や記憶が呼び覚まされるでしょう。
自然、時間、人、空間…、作品に向き合うゆっくりとした営みの中には、新たな発見があるかも知れません。
Art Director : 豊永 政史
今回のBEAMING ARTSでは須田悦弘さんへのインタビューを行うとともに、#002の津田直さんとの対談もご用意させていただきました。

