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年々スケールアップしていく、「TOKYO ART BOOK FAIR(以下、TABF)」二週に渡って開催される2025年の今年、「ビームス カルチャート」はWeek1:12月11日(木)~12月14日(日)に参加します。気になる中身は、〈TOKYO CULTUART by BEAMS(トーキョー カルチャート by ビームス)〉をはじめとした、ビームスのアート・カルチャーを扱うレーベルのアートブックや関連商品を販売するスペシャルブースの展開に加え、アーティスト3名によるZINEの販売とその場で描かれる即興似顔絵(以顔絵)。その二人目は、どこかがおかしい昔のテレビアニメ的な作品を生み出すアーティストの水野健一郎さん。全てが一筋縄ではいかない、そのユニークな個性がちょっとでも伝われば、このインタビューの本望です。
アーティスト・映像作家
大学の工学部中退後、「バンタンデザイン研究所」を経てセツ・モードセミナー卒業。バグったようなテレビアニメ的世界観を再構築し、ドローイングやペインティング、アニメーションなどさまざまなメディアで表現する。
Instagram:@kenichiromizuno_works
水野さんの作風から、『TABF』の会場でどんな以顔絵を描くのか興味アリアリです。
水野 実は、似顔絵を描くのが苦手です。というのも、似ている部分を強調しすぎると相手に喜んでもらえないのではないかとか、逆に全然似ていない可愛らしい顔を描くのも違うなと思って。プロの似顔絵の方にはコミカルに特徴を強調するタイプの方もいますが、僕が目指すものとは違うと感じていました。そんな時、ふとしたときにお酒の席で友達をエイリアンっぽく描いたことがあって。それがきっかけで「エイリアン以顔絵」を始めました。当初のコンセプトは、その文言通り「あなたに寄生しているエイリアン」です。
その人をただエイリアン化するのとは違うんですね。
水野 寄生しているエイリアンなので、本人に似ている必要はありません。虫のようなもの、微生物、顔だか何だかわからないようなものを描いていました。しかし、顔を見て描くため、どうしても少し似てしまうんですよ。でも、似ているほうが相手には喜んでもらえているように感じました。そこから「似せてもいいんじゃないか」という方向にだんだんシフトしていき、「似てもいいし、似なくてもいいし」という自由なスタンスになりました。
絶妙なポジションを築いてきたと(笑)。
水野 こんな自由に描ける似顔絵は他にないですからね。我ながら、いい発明をしたと思っています(笑)。あと、色紙に描くことも決まっています。
色紙、ですか?
水野 「色紙」は乱暴に言ってしまうと、すごくダサいものじゃないですか。色紙が飾られているだけで、どんなおしゃれな部屋も台無しにしてしまうような。色紙そのものにはもっと本格的な在り方があると思いますが、僕は色紙を「俗っぽいサブカルチャー的な、おまけのような存在」と位置づけています。あえてこの色紙を、一般の人たちとアートをつなぐ「架け橋」的な存在として、自身の以顔絵制作に使っています。
中身も媒体も水野さん独自の世界観が詰め込まれていて、これはファンには喜ばれますね。
水野 そうだとうれしいですね。以顔絵を描くときは、もう高校時代のアートに出合う前の意識で描いています。これが芸術なのかアートなのかと問われると困りますが、こういうコンセプトも含めてひっくるめて言うと、アートとして扱ってもいいのかなとは思っています。
販売されるZINEについても、教えてください。
水野 オリジナルのアニメ『NININ』の設定資料集です。この『NININ』は少しずつバージョンアップしています。この設定資料集は、ある意味色紙に近いというか、高校時代の感覚でつくっているところがあります。フォーマットは、『ガンダム』や『イデオン』といった1980年前後に放映された、当時の設定資料集の形式を踏襲しています。自分でやってみて分かったんですが、コピー用紙にホッチキスで留められるのは40枚ちょっとが限度で、実際のアニメの設定資料集と同じくらいの枚数になっています(笑)。
このアニメはどこで観られるんですか?
水野 実際にはありません。僕の頭の中に設定だけあって、これをベースに絵を描いています。というか、そもそも絵を描くために、この設定資料集をつくっています。
以顔絵のお話でも感じましたが、すごく遠回りして絵を描いているんですね。
水野 そうですね。何を描くかという時、描く内容を自分で考えると面白くない。驚きがないんです。小さい頃からアニメが好きで観ていましたが、昔のアニメって、作画が割と下手な時期や、動きが急に不自然になっているシーンとか普通にあったんです。そこから、プロのアニメーターではない自分がアニメーションをつくれば、必ず「下手なコマ」が生まれ、「上手く描けてないけど、なんか面白い」絵が生まれるだろう、という期待があります。
キャラクターもいっぱいいますね。
水野 登場人物が増えたり減ったりと、これまでにいくつもアップデートしてきています。主人公のエミリオ・エステバンは、初期は「しっかりした25歳で会社勤め」のビジュアルでしたが、このバージョンでは「石を拾う生活をしている引きこもりの25歳」(写真で指さしているキャラクター)に変わっています。
ちょっと、一体何があったんですか?(笑)
水野 子供の姿のエミリオと引きこもりの25歳のエミリオは、同一人物です。寄生するエイリアンによって人生をやり直し、素晴らしい人間に再成長させられる(寄生するための教育し直し)という話なんです。タイトルの『NININ』は、二人羽織の「ににん」や荷人(ににん)という意味合いで、主人公はエイリアンを背負うような形で旅をしています。
『NININ』は、どんなストーリーなんですか?
水野 主人公たちは「デスティニーランド」という脳内に広がる世界に召喚されます。エイリアンを背負っていくうちに合体し、変形して最終的にヒコウタイになって、「レディースゾーン」(女性しかいないゾーン)へと飛んでいきます。ちなみに、「デスティニーランド」は男性しかいない世界です。
すごく端折っていただいたとは思いますが、世界観の解説だけで途方もなく時間がかかりそうですね。
水野 実は、AC部さんと都築潤さんをゲストにこの設定資料集を説明するだけのイベントをやったことがあるんですよ。3時間ぐらい資料説明するだけのイベントを。
ははは。最高ですね。
水野 自分が制作に向かうときは、「アニメーションをつくるんだ」という高校の時の気持ちでいます。アートはアートを意識した時点でもうアートじゃないからです。アートに憧れて始めるのはいいけど、好きなアートを真似るだけでは「アートっぽいかっこいいもの」で終わってしまう。だから、つくるときはできるだけアートというものを意識したくないんです。そこで高校の時の意識に戻る、純粋にアニメーションをつくるという方向に自分を持っていくためのものが、この設定資料集でもあります。絵を描くために、アニメの内容を考えるということで、だいぶ遠回りをしていますね(笑)。
その自覚はあるぞと(笑)。
水野 ただ、資料集のボリュームが増えるにつれて、これだけでも作品として成立しないかと思うようになりました。この過程で生まれるものは、自分の中から自然に出てくるものなので、それを作品にできたらと。
今まで聞いていて感じたのは、いわゆるZINEの様相とは別ということですね。
水野 結果としてZINEのある場所に置いてもらっているだけで、ZINEらしいかどうかっていうのは、重要じゃないですね。それぞれが自分の美意識でZINEをつくっているはずなので、いわゆるZINEの持つ雰囲気に寄せることはしません。
確かにこの設定資料集が『TABF』に置いてあったら、インパクトが強いですね。
水野 おしゃれな部屋に色紙があると台無しになるように、『TABF』というおしゃれな現場にこれがあると台無しになっちゃうんじゃないか、ということも考えています。こういうものがないと、かっこいいだけのものになっちゃうので、あえてそれを崩すような役割を果たせるかなと。
あと、「オススメのZINE3冊を持ってきてください」と伝えたら、それは無理です、と(笑)。
水野 何度か買ったりはしたことはあります。けど、ZINEは繊細なつくりだったりして、ちょっとうまく管理できないんですよ。元々、家がもう足の踏み場もないくらいになっちゃっているので、その中にZINEを置いたらもう終わりですよ。本棚に入れようとしても、無理やり詰め込もうとすると見えなくなっちゃいそうだし、壊しそうだしで、もうZINEは持たない方がいいということになりました。そういうくだらない理由です(笑)。
『TABF』では、どんな展開を期待していますか?
水野 この設定資料集を起点に、コラボレーションができたらいいなと思います。「この設定で物語を作ってみませんか?」「短編アニメーションをつくってみませんか?」といったように、外部の人たちがこの設定を元に動いていったら面白いなと思います。昔は全て自分でアニメーションもつくりたいと思っていましたが、今は僕が描かなくてもいいかなという気持ちもあります。誰か本格的なアニメーターの人がつくってくれたら嬉しいですね。
なるほど。『NININ』の壮大な世界観について解説を聞けば聞くほど、そういうことも実現しそうですね。
水野 販売する最新バージョンでは、新たな設定がいくつか加わります。その一つがエミリオくんが出会う新しいグループです。『NININ』では異なる性格の人たちとの旅での出会いを通じて成長していくんですが、エミリオくんは最初に出会ったグループよりも、道中で新しく出会ったグループのビジュアルのかっこよさに衝撃を受けるんです。そして、それをかっこいいと感じるその「美的センス」が体の造形に影響してきます。この二つのグループのビジュアルを最新の設定資料集には追加しますけど、顔も体も頭の中では完璧にイメージできてはいるものの、実際にはまだ筆を動かしていないという…。あと「デスティニーランド」と「レディースゾーン」の関係でいえば、まず球体があって、その内側が「デスティニーランド」で、その中心に「レディースゾーン」があるんですけど……
…という感じで、“スイッチ”の入った水野さんのストーリー解説が取材後も続いたのでした。続きは『TABF』の会場で!
『TOKYO ART BOOK FAIR 2025』情報はこちら
カルチャーは現象。誰かと何かが出合って、
気づいたらいつもそこにあった。
世界各地で生まれる新たな息吹を、
BEAMS的な視点で捉えて、育みたい。
きっと、そこにまた新たなカルチャーが
生まれるから。