カルチャーは現象。誰かと何かが出合って、
気づいたらいつもそこにあった。
世界各地で生まれる新たな息吹を、
BEAMS的な視点で捉えて、育みたい。
きっと、そこにまた新たなカルチャーが
生まれるから。

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HAL JINUSHIが贈る、平凡な日常への“マイルドパンチ”。

今年24歳を迎えた若き写真家のHAL JINUSHIによる、アートショー“マイルドパンチ”が「ビームスT 原宿」で開催中。パノラマコラージュと呼ばれる、複数の写真を使用した作品の展示をはじめ、スケーターでもある彼に欠かせないスケートボードのデッキ、Tシャツやフーディなどのアパレルグッズも数多くラインナップされています。そんな注目の展示をより一層楽しんでもらうべく、ユースカルチャーを体現するHALのこれまでの歩みを紐解いていきます。

profile

HAL JINUSHI (写真家)

1998年、東京都生まれ。写真家の父とデザイナーの母を持つ。中学時代にスケートボードとフィルムカメラに出会い、スケーターの仲間たちと<convenience crew>を結成。その後、19歳でサンフランシスコへ渡米し、写真技術を学ぶ。22歳で帰国し、HALの名で本格的に写真家としての活動をスタート。定期的に個展やアートエキシビジョンを開催している。

写真とスケートボードとの出会い。

ー 現在のHALさんを形成する上で欠かせない、スケートボードと写真。その出会いからお聞きできますか?

HAL 中学生のとき、スケートをしていた一つ年上の先輩に吉祥寺の「INSTANT」というスケートショップに連れて行ってもらったんです。そこでスケートボードに魅了されて、それ以来どっぷりとハマっちゃいましたね。最初は下手だったんですけど、だんだん同級生のスケーター仲間も増えてきて。とにかく友達と滑っている日々が楽しかったから、毎日のようにスケートをしていました。

ー 写真を撮り始めたのもその頃からですか?

HAL 家に父のカメラが沢山置いてあるような環境だったので、自然と写真に興味を持つようになって。実際に自分で撮り始めたのは中学のときで、最初はスケーターの仲間を撮ったりして遊んでましたね。あとは、『WHEEL』っていうスケートボード雑誌には、結構影響を受けました。

ー 『WHEEL』は日本のスケートボード専門誌の草分け的な存在ですよね。現在は『Sb』という名で発行を続けていますが、HALさんの世代だとリアルタイムでは廃刊になっていたんじゃないですか?

HAL はい、完全に後追いで。それこそ父親がその編集長と仲が良くて、家に何冊も『WHEEL』があったんです。そこに掲載されていたスケートボードのグラビア写真を見たときに、こういう写真を自分で撮れたら最高だろうなって思ったんですよね。スケーターが最もかっこよく見える写真が何枚もページングされていて、ワクワクしたのを覚えています。

ー その頃の原体験が、写真とスケートボードを結びつけるきっかけになっていたんですね。そして、高校を卒業してサンフランシスコへ留学されましたよね。

HAL 高校を卒業してからも、しばらくは漠然とスケートボードをする日々を過ごしていたんです。日本でくすぶっているくらいなら海外でも行った方がいいのかなと思って。あとは、その頃によく『PIER 7』や『Penal Code 100a』みたいなサンフランシスコをテーマにしたスケートビデオを見ていて、スケーターなら誰しもが憧れるあの急勾配の坂を一度味わってみたくなって。そんな軽い気持ちで、なんのあてもなくサンフランシスコへ渡ったんです。

ー サンフランシスコではどのような生活を送っていたんですか?

HAL 現地に着いてからすぐに友達もできて、基本的にはスケートボード三昧の日々を送っていました。ただ、それだけだと時間を持て余すので、現地の専門学校にも通うことにしたんです。

ー 現地の学校に通われてみて、いかがでしたか?

HAL 一応卒業はしましたけど、なにを学んだのかと言われれば、難しいですね。結局サボってばっかりでしたし。僕自身、多動症な傾向もあってか、好きなことを座学で学ぶのが体質的に合わなかったんです。自分が好きなように撮影するのが一番自然体だなって思いました。

ー 芸術や写真の世界では、独学で活躍されている方も沢山いますしね。

HAL それで一時はサンフランシスコにあるフォトグラファーが所属するエージェンシーに入ろうかと考えていたこともありました。でも、一度日本で自分のやり残したこととかをやっておきたいって思って、2年半ほどで帰国することにしたんです。

“写真”とは言い切れない作品。

ー 帰国後は東京を拠点に活動していくようになると。

HAL そうですね。生活自体は帰国してからもそこまで大きくは変わらず、新作のZINEをつくったりしながら、バイトをして生活していました。それで、過去に撮った写真が溜まってきた頃に、知り合いに紹介してもらったギャラリーから、展示をしてみないかと提案されたんです。それが代官山の「AL」というギャラリーで。でもそのときは準備の方法や展示の仕方もわからなくて、いま思えばかなり粗い展示でしたね(笑)。

ー 記念すべき初の個展ですね。それから少しずつ個展の機会も増えていきますよね。

HAL 展示をすることで新しい発見や人との出会いが増え、そうした波がまた次の機会を生んでくれて。「4K GALLERY」や「SALT AND PEPPER」などでも開催することができました。あとは会社を経営している人や仲の良いスケートショップの人が僕の作品を買ってくれたり。好きで撮っていた写真や作品がどんどん広がっていく様を目の当たりにして、少し不思議な気分でしたね。

ー HALさんといえばパノラマコラージュの作品を思い浮かべる方も多いと思います。この手法にたどり着くまでの経緯を教えてもらえますか?

HAL サンフランシスコにいるときに立ち寄った書店で見つけた、デイヴィッド・ホックニーの作品集から影響を受けたものなんです。彼は日本にいた頃から、実家にあった画集をよく見ていた大好きな作家で。『Cameraworks』という作品集にフォトコラージュが掲載されていて、初めて見た時は「どうやってやってるんだろう」って衝撃を受けましたね。同時に、物事へのアプローチの仕方にルールなんてなくて、人それぞれなんだってことを実感して、感動もしました。ずっと一枚絵の写真を撮りためていたんですけど、それから自分なりのアレンジを加えながら試行錯誤して今にいたります。

ー 制作する際は、撮る前に完成系のイメージを持って撮影するのか、無計画に撮影した後にコラージュしてつくりあげていくのか、どちらなのでしょうか?

HAL どちらもありますね。ふとしたときにこの景色をパノラマにしたら面白いかもと、狙いを定めて何枚もシャッターを切ることもあるし、何気なく撮った写真が結果的にパノラマコラージュにしてみたらいいときもある。写真としてどうかというよりも、そうした手間をかける工程や作業している時間が好きだったりするんですよね。もしかしたら僕の作品って“写真”と言い切れないのかもしれないなと、感じることもあります。

ー 一般的な写真に比べて、グラフィック的な要素が強いかもしれないですね。ちなみに、他にも影響を受けたアーティストはいますか?

HAL 自分は写真を撮ることを生業にしながらも写真家然としたタイプではないので、影響を受けた人って実はあまりいなくて。どちらかというと、音楽や小説からの影響が色濃いかもしれないです。そうした分野でいうと、みうらじゅんと中島らもは一番好きなアーティスト。みうらじゅんは表現者としても本当に痛快な人で、中島らもは酔っ払った帰り道に彼のラジオを聴くと泣けてくるんです。もし今も生きていたら、絶対に仲良くなれただろうなとか考えたりしますね。

ー HALさんの部屋の机にもそうした方々含め、沢山の小説が置かれていますね。

HAL 昔は活字が苦手で、最近ようやくちゃんと読めるようになったんですよ。村上春樹とか村上龍も好きだし、とにかく色々な本を読んでいます。最近はノートに言葉を書き留めるようにもしていて。自分の頭の中に浮かんだ物語や設定、言葉を書き出していくと、次の作品や展示のヒントになることがあるんです。後で見返すとなんだこれってなることもあるんですけど(笑)。ZINEをつくるときにも、写真と同じくらい言葉も載せています。

作品とともに成長していける。

ー 現在「ビームスT 原宿」で開催中のアートショーについてのお話も聞かせてください。タイトルの“マイルドパンチ”という言葉には、どんな想いを込められたのでしょうか?

HAL 展示のタイトルをどうしようか悩んでいたときに友達と話していたら、不意に“平凡パンチ”ってフレーズが出てきたんです。その言葉がずっと頭に残っていて、調べたら昔の雑誌のタイトルだったみたいで。さすがにそのままは使えないので、全部カタカナにしてマイルドパンチなら意味もそんなに変わっていないし、今の自分の気分にも合っているかなと思ってこのタイトルにしました。後付けですけど、平和ボケしている現代へのカウンター的なメッセージにもなるのかなって。

ー 作品や展示に意味を持たせないのは普段からですか?

HAL 昔から自分が撮った写真や作品に意味を持たせるのがあまり好きじゃないんですよね。もちろん狙いとか意図があったりする作品もあるんですけど、あくまで観る人の感性に委ねたい想いの方が強くて。だから過去の展示も割と“untitled”とかで発表していたんです。ただある時、画廊を切り盛りするおばさんに「“untitled”にも“無題”という意味があるのよ」って言われて、ハッとしちゃって。この世界ではフランクなものでも図らずとも意味を持ってしまうんだって気付かされたんです。

ー 今回の展示では、どんなところに注目してもらいたいですか?

HAL これまではパノラマ風にコラージュした写真をキャンバスに貼り付けた作品ばかりでした。今回は作品の形に合わせた額縁を制作して、ちょっとした工夫を凝らしています。そうした作品の成長を見て欲しいし、新しい発見を観に来てくれた人と一緒に共有できたら嬉しいです。

ー 話を聞いていて、作品とともにHALさん自身も成長されているように感じました。

HAL それはあるかもしれないですね。初めの頃は本当になにも考えずに無我夢中につくり続けていた作品が、少しずつ自分の手から離れていくことで、新しい視点が加わっていくので。根本的なマインドは変わることなく、環境や価値観が少しずつ変化していくことで、僕自身も大人になっている気がします。

ー 作品の展示以外にも、スケートデッキやアパレルもリリースされます。

HAL スケートボードは昔から好きなので、やっぱり自分の作品がプリントされたデッキをつくれたのは嬉しかったですね。服もあれだけの種類をつくれることはないですし。街中で自分の作品が施された服やデッキを見かけたらきっと嬉しいだろうなって思います。

INFORMATION

HAL JINUSHI “マイルドパンチ”

会期:2022年1月14日(金)~2022年1月23日(日)

場所:ビームスT 原宿


カルチャーは現象。誰かと何かが出合って、
気づいたらいつもそこにあった。
世界各地で生まれる新たな息吹を、
BEAMS的な視点で捉えて、育みたい。
きっと、そこにまた新たなカルチャーが
生まれるから。

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