昨シーズンの観客数は史上最多の2668万人を記録するなど、日本のプロ野球は大きな盛り上がりを見せている。今シーズンもペナントレースは中盤戦へと差しかかり、勢いに乗るチームがあれば、低空飛行が続くチームもあり。優勝争いも何となく見えてきた今、仕事終わりに各界の野球好きに集まってもらい、プロ野球談議に興じてもらった。ときに飛び交う厳しくも熱いトークも、深すぎる愛情あってこそ。だからこそ、プロ野球は永遠に不滅なのです!
野球ラバーの紹介と偏愛グッズ。
— Profile & Their Beloved Baseball Gear
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片貝俊さん/スタイリスト/ドラゴンズファン
Instagram:@katakaishun
愛知県出身。父親は72年にドラゴンズにドラフト2位で入団した片貝義明。父親の影響で高校まで野球をやっていたが、最後の大会では一回戦負け。高校野球も好きで予選から観る。ドラフトの日は仕事を休む。
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今日のスタイリングのポイント
「今日着てきたのは〈Supreme (シュプリーム) 〉のベースボールシャツです。もったいなくて普段は着てないんですけど、今日は特別に着てきました。ドアラの耳のカチューシャと合わせたところがポイントです。かわいいです。」
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片貝さんの偏愛グッズ
「この『甲子園!名将・馬淵語録』は松井秀喜の5連続敬遠をやって、甲子園優勝も果たした明徳義塾の馬淵史郎監督の指導者人生を語った本です。名著ですね。馬淵監督が好きで、YouTubeでも関連動画をよく見てます。中日は関係ないですけど。ドアラのポシェットは、中日の収入にちょっとは協力しないといけないなと思って買いました。使ったことはないです」
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山本プロ野球さん/芸人(お笑いコンビ シカゴ実業)/阪神ファン
Instagram:@cj_yamapro_tdf
兵庫県出身。父親が阪神ファンで、負けると機嫌が悪くなるし、テレビのチャンネル権も奪われるので、あまりいい思い出はなかったけれど、気づいたら自分もファンに。吉本芸人が所属する草野球チーム「上方ホンキッキーズ」に所属。
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今日のスタイリングのポイント
「スタジャンとGショックは阪神の公式グッズです。靴下はただの虎柄ですね。全体的にチームカラーの黄色を取り入れたコーディネートにしています。普段からこの感じで、このスタジャンを着て渋谷とか歩いてます。全然恥ずかしくないですよ。恥ずかしいわけないじゃないですか」
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山本さんの偏愛グッズ
「2016年とか17年あたりかな。マテオ、ドリス、メンデスという助っ人外国人選手がいて、みんなドレッドだったんです。当時めっちゃ好きで、ユニフォームを着ていました。このカップは草野球仲間のニッポンの社長の辻が、僕があまりにも好きだったから、写真を貼ってつくってくれたんです。黄色のドレッドは虎ドレッドといって、ハロウィンの時期に無料で配っていたやつで、これをかぶって応援してます。マテオのお面はファンからもらったやつで、使い道はまったくないです」
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大曽根崚太さん/ビームス T 原宿/阪神ファン
Instagram:@zoneryo
茨城県出身。学生時代はサッカー部。大阪出身で家族全員が阪神ファンという奥さまとの出会いを経て、半ば強制的に虎ファンになったが、徐々にハマっていき、いまや阪神戦を観るために家族旅行を企画するほどに。
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今日のスタイリングのポイント
「下に着たロンTは〈KEBOZ(ケボズ)〉です。野球をテーマにしているブランドで、阪神カラーの黄色があったので、買いました。その上に着ているのは、村上(頌樹)選手の2023年最優秀防御率を記念してつくられたTシャツです。この年は日本一にもなったので、めっちゃいい思い出です」
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大曽根さんの偏愛グッズ
「阪神のユニフォームです。子どもが2人いて、家族全員ぶん揃ってます。上の娘はこれを着て試合を観に行っていますね。29は元阪神の井川(慶)投手の背番号です。高校が一緒で、僕が高校生のときに学校に来たんですよ。そういう思い出もあるし、サイズもいいので、下の子がもう少し大きくなったら着せようと思って、メルカリでゲットしました」
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藤ヶ谷貴大さん/ビームス 新宿/ロッテファン
Instagram:@ogyaaan
千葉県出身。ロッテファンになったのは小学4年のとき。初めて観に行った千葉マリンスタジアムのライトスタンドの盛り上がりが忘れられなくて。石垣島で行われる春季キャンプは、必ず仕事を休みにして観に行っている。
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今日のスタイリングのポイント
「今日のコーディネートはシアトルマリナーズに全振りしています。ロッテファンですけど、マリナーズも好きなんです。もともとニューヨークヤンキースにいたロビンソン・カノという選手が好きで、彼がマリナーズに行った頃から好きになって。シューズも公式のものとかではなく、マリナーズの色に勝手に染めています」
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藤ヶ谷さんの偏愛グッズ
「毎年ロッテの石垣キャンプに行っているのですが、そのときに選手からTシャツにサインをしてもらっています。キャンプだとけっこうサインはもらいやすいんですよ。ソフトバンクとかだと人気の選手はサイン待ちで並んだりするんでしょうけど、ロッテの場合はそこまで。個人的にお気に入りは髙部瑛斗のサインです。背番号の38が書いてあります」
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今年のロッテは違う?
――ペナントレース前半戦がまもなく終わります。まずは推しチームの現状についてどう見ているか、聞かせてください。
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藤ヶ谷
ロッテファン界隈ではよく言うワードがあって、「今年は違う」っていうのがあるんです。毎年のように言っているんですけど、今年の開幕3連戦がソフトバンク戦で全試合逆転勝ちして、本当に今年は違うぞって。
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山本
たしかに違いそう。
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藤ヶ谷
そうなんです。で、何だかんだで失速しつつ、また上がったりするのがいつものパターンで、去年はそれで3位だったんですけど、今年はもう下がっちゃって。全然上がってこない。
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片貝
ロッテね……
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藤ヶ谷
本当に打てなくて。
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山本
外国人があんまり打ってないですね。
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藤ヶ谷
ポランコ、ソトがもうまったく機能してなくて……
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片貝
ソトって、元横浜のソトですよね。
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藤ヶ谷
去年は2割6分9厘で、ホームランが21本で、88打点ぐらいですか。今年は全然打てなくて、チームとしてはもうだいぶあきらめかけてはいるんですけど。
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山本
早いですよ(笑)。
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大曽根
まだ交流戦もあるし。
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藤ヶ谷
交流戦でどこまで持ち越せるかというのと、藤原恭大にも期待したいですね。毎年若手がいいところで出てきてはケガをして……。規定に乗っかる選手もほとんどいない状況だったんですが、今年は彼がちょっといい感じ。
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片貝
レギュラーで出てるの?
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藤ヶ谷
はい。もともと足も速くて守備もいいんですよ。今年はそのへんの1.5軍ぐらいだった選手がちょろちょろ結果を残し始めたので、そこにも期待して、あとは静観です。
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大曽根
早々と静観(笑)。どうしたら立て直せるって思う?
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藤ヶ谷
ロッテは外人を打順に並べちゃうんですよ。3番、4番とか、4番、5番とか、ポランコ、ソトって並べちゃう。個人的には3番、6番もしくは7番ぐらいで、離してほしい。
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片貝
そこまで考えたことはなかったな。
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藤ヶ谷
横浜にいたときのソトって、だいたい6番か7番だったじゃないですか。4番、5番でランナーを返せなかったのをソトが打ったりしてくれて、それなりに活躍できていたわけですよ。
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大曽根
分析がすごいね(笑)。あとで藤ヶ谷のインスタを見てほしいですけど、ちょっとロッテ愛が強すぎて、毎年キャンプにも行ってるんですよ。
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藤ヶ谷
石垣島に1週間ぐらい行きます。
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大曽根
一緒に働いたことがあるんですけど、働く軸が野球になってるもんね。
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藤ヶ谷
2月のキャンプのときは絶対に休むと決めていて、その時期はお店も休みを取りやすいんです。キャンプに行ってから自分のシーズンも始まるみたいな。
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片貝
素晴らしい人生ですね。本当に素晴らしい!
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強くても弱くても、阪神は楽しい
――阪神タイガースはどうですか? 昨年はリーグ2位になって、今シーズンも好調です。
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山本
今年はバッターがいいですよね。育ちました。1番近本光司、2番中野拓夢、3番森下翔太、4番佐藤輝明。2番以外全員ドラフト1位なんですよ。5番大山悠輔もドラフト1位なので。
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大曽根
よくぞ順調に伸びてくれましたよね。
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片貝
大山はFA説があったじゃないですか。
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山本
ありました。
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片貝
でも、行かないだろうね。何か好きそうじゃないですか。
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大曽根
それもけっこう賛否があって。鳥谷(敬)のインタビューとかを見ていると、「野球界のために行ってほしかった」「阪神から巨人がタブーみたいなのをなくしたほうが今後の野球界にとってはよかった」とか、鳥谷っぽい考えですよね。でも、残ってくれたおかげで、だいぶ打線はいい。
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山本
助かりますね。中野が去年2割2分ぐらいだったんですよ。これがやっぱり3割打ってくれたことによって、近本も(四球で)歩かせられへんとか、全体的によくなりましたね。
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大曽根
僕は阪神の暗黒時代をよく知らないんですよ。生粋の阪神ファンである奥さんのお父さんと会話するために阪神の試合を見始めて、そこから好きになったので、ここ3~4年しか見てないんです。
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山本
2003年まで。星野(仙一)監督に変わるまでは弱かった。
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片貝
その前の監督って誰ですか?
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山本
ノムさん(野村克也)です。
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片貝
ノムさんのときも勝てず?
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山本
終わっていましたよ。F1セブンといって、1番から7番まで足が速い選手をとにかく並べるだけ。
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大曽根
そういう弱かった時代を知らないんですよ。ここ3年ぐらいめっちゃ楽しい時期ですよね。
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藤ヶ谷
強いと毎日が楽しいんですよ。
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山本
でも、弱いは弱いで楽しくないですか。
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藤ヶ谷
チーム成績は本当にどうでもよくなりますよね。個人タイトルだけ。
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大曽根
奥さんの実家が全員阪神ファンなので、去年日本一になったときに泣いていたんですよ。声も出さずに涙がツーって流れるのを見たとき、感動しましたね。それだけ思いが入るものなんだなって。
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山本
日本シリーズでも優勝したというのがやっぱり印象深かったですよね。それこそ2005年はロッテに「33-4」(日本シリーズにてロッテと阪神が戦った4試合の点数を合算した数字。阪神の屈辱的大敗としていまだに語り継がれている)をやられて。その前の2003年もソフトバンクにボコボコにやられて。日本シリーズはまったく勝てないイメージだったので、なおさらうれしかったですね。
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藤ヶ谷
今年も優勝狙えますよね。
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山本
めちゃくちゃ狙えると思います。1軍がやっぱり育ちました。佐藤選手は三振が減ったし、森下選手もよくなって。
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大曽根
若手がいいですね。
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山本
そう。若手がどんどん上がってきていて、それこそ今年のドラ1の伊原選手も上がってきていて。
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大曽根
めっちゃ頑張ってる。
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藤ヶ谷
門別(啓人)とかも。
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大曽根
去年はキャンプでめちゃよくて、前の岡田(彰布)監督がこれは隠しておかなきゃいけないと言って。どれだけ隠すんだよというぐらい隠していましたもんね。
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山本
とにかく今年の阪神は巨人にめっぽう強い。これが気持ちいいですね。最初に3タテして、5連勝ぐらいしたんですよね。東京ドーム5連勝とかもしたんですよ。それが史上初みたいな。巨人をボコボコにしているうちはずっと気持ちいいですね。
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大曽根
しかもいいところで、巨人キラーと言われている森下が3試合連続でホームランを打って。
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山本
森下はいい選手ですよ。
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できれば勝とうよ、ドラゴンズ
――中日ドラゴンズはどうなんですか?
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片貝
弱いですよ。中日は落合(博満)さんのときはめちゃくちゃ強くて。
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山本
めっちゃ強かったですね。
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片貝
めっちゃ強かった。落合さんから変わって、もうずっと弱いわけですよ……
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藤ヶ谷
監督って次が高木(守道)でしたっけ。
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片貝
高木さん、谷繁(元信)さん、森(繁和)さん、与田(剛)さん、立浪(和義)さん。で、今の井上さん(一樹)までもうずっと弱い。よく「絶対勝つぞ」みたいなことを言う人がいるじゃないですか。何を考えているんだと(笑)。
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大曽根
勝てないってことですか(笑)。
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片貝
「できれば勝つぞ」ぐらいでいいんですよ。ただ、今季はまだ同一カードで3連敗をしたことがなくて、常に1勝2敗ぐらいで進んでいて、それだけで十分です。
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山本
ここ数年の中日はネットでの話題に事欠かないですよね。
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片貝
立浪の米騒動もあったし。
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藤ヶ谷
ご飯の食べ過ぎで動きが鈍くなったから、米を食うなってやつですね。
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片貝
あとはしゃべるなとか。
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山本
笑うなもありました。
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片貝
戦う顔をしてないとか、バトルフェイス京田(現在は横浜に所属する京田陽太が立浪監督から「戦う顔をしていない」という理由で試合中に交代・二軍降格を告げられたことがネタ化)とか、立浪さんはいろいろあった。いろいろあったけど、古くさい立浪さんのやり方が俺は好きなんです。
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藤ヶ谷
中日っぽいですね。
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山本
中日ってそういうイメージですからね。
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片貝
そうですよ。今は弱いけれども、できれば勝ちたいというぐらいの気持ちでいつも見ています。先週ハマスタに行ったんですけど、「できれば勝とうよ、ドラゴンズ」ぐらいの気持ちで見守っていました。
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大曽根
どうしたら強くなると思いますか?
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片貝
やっぱり練習が足りてないんでしょうか。落合さんが就任したときって、外からの補強はほぼしないで、今の戦力を10%上げれば勝つ自信があると言っていて。実際、むちゃくちゃ練習して強くなったんですよ。
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藤ヶ谷
やばかったですよね。守備の名手といわれた井端(弘和)とかも落合監督の地獄のノックを受けてましたよね。
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片貝
守備練習にバッティングのコツが詰まっているというのが落合さんの理論。すごく練習させたんですよ。あの頃は本当に強かったですね。だから、今もとにかく練習なんですよ。あとは気持ちが大事。何事も最後はやっぱり気持ちだと思っているので。
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山本
古いタイプですね(笑)。ところで、中日ってなんか細身の外人を採りますよね。
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片貝
中日は外国人をハズしてばっかり。アキーノ(メジャー通算41本塁打という経歴を引っさげて来日。大砲候補として期待されたが、わずか1年で退団)とか本当に記憶にない。
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藤ヶ谷
アキーノ、最初やばいなと思ったんですけどね。WBC日本代表との試合でホームランを打ったんですよね。
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片貝
打ったんです。あの侍ジャパンに勝ったのは唯一中日だけなんです。
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藤ヶ谷
あれを見て、アキーノやばいなと思ったんですけど、全然結果出してくれなかった(笑)。
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山本
その感じでいうと、台湾のワン・ボーロンも。
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藤ヶ谷
そうですよね、4割打者という触れ込みで。
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山本
台湾で4割打ってたんですよ。
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藤ヶ谷
2年連続で4割。
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片貝
それはすごいな。
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山本
それで日ハムに来たんですけど、全然あかん。
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藤ヶ谷
最後は育成契約でしたもん。
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片貝
やっぱり練習が足りないんじゃないかな。もっと素振りしないと(笑)
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野球がある日は毎日楽しい!
――プロ野球好きでよかったことはなんですか?
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大曽根
僕のファン歴はまだ3年ぐらいですけど、奥さんの実家を含めて、家族みんなで応援できるっていうのは楽しいですね。あと、けっこういろいろなところも行ったりとかしていて。試合のチケットを取ったついでに旅行をしたりするんです。夏は高校野球を見たり、ここで交流戦があるから福岡に行こうとか、広島に行こうとか、ライフスタイルの中に組み込んで家族行事として楽しめるのはいいですね。
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片貝
旅行と野球がセットになっているのはいいですよね。
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大曽根
スタジアム飯とかもありますし、アウェーの空気感ってやっぱり全然違うから、それを実際に体感してみるのはおすすめです。
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片貝
自分は小さい頃から野球をやっていて、なんかうまくいかなかったこともあって、やっているときは楽しくなかったんです。正直、野球を楽しめるようになったのは大人になってからですね。高校野球を見て、何なら予選から見て、プロ野球のキャンプのライブを見て、ドラフトの日は仕事を休んで。野球がある日は毎日楽しいです。今日の座談会は月曜じゃないですか。これが火曜日だったら来てないですもんね。野球観ないといけないから。
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藤ヶ谷
その気持ちわかります。僕はこのあいだ部署が変わって土日休みになっちゃったんですよ。店舗スタッフだったときは絶対カード頭は行けるように火金休みを希望して見に行っていたから、球場に行く回数が減ったのがちょっと悩みです。
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山本
僕は相方も阪神ファンなんですよ。2人で野球クイズをやるだけのライブとかに出たりするんですけど、巨人ファンの後輩とかと一緒に東京ドームに試合を見に行ったりして、ほんまに一喜一憂したりしています。シーズンが始まれば毎日のように試合があるし、生活の中にこんな楽しいことがあるなんてほんま幸せですよ。プロ野球、最高です!
Venue
走攻酒 / SOKOSHU
〒153-0051 東京都目黒区上目黒3丁目6-1 神谷ビル 4F
インスタグラム:@sokoshu
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Photo : Yuichi Sugita
Design : Toshiya Saito
Text:Masayuki Sawada
Edit : MANUSKRIPT