文・トロピカル松村
写真・甕川友寛
つい最近まで’70~’80年代の西海岸ブーム期をテーマにした入場無料の私設博物館を営んでいたボク、トロピカル松村(通称・トロ松)にとって短丈のボードショーツは、アイデンティティとさえ言える。そんな自分に対するメッセージなのか、なぜか最近インスタグラムを開くと、「大人の短いショーツ、あれまじでやめたほうがいいです!」と知らない人が言っているリールがあがってくるようになった。余計なお世話じゃい、と思いながらも内心ちょっぴり不安になってしまうボク……。ただこの現象、実は今に始まったことでもない。
あれは2006年の夏だった。その頃からすでに‘70年代のサーフスタイルに夢中になっていた18歳のボクは、かつてのサーファーを真似てどこでもお構いなしに短丈のボードショーツで出歩くようになっていた。ところが神戸・三宮のアーケード街で、同い年くらいの女子高生4人組とすれ違ったときに事件がおこった。彼女たちはそれまで盛り上がって歩いていたのに、ボクとすれ違うときに一瞬黙って、通り過ぎたら手を叩いて大爆笑したのだ。思い返すとそのときもコノヤロー、という気持ちと、やっぱり不安になった自分がいた。もしかするとこのことを機に、無駄な反骨精神が芽生え、20年以上も短丈のボードショーツにこだわり続けてしまっているのかもしれない。ただ言わせてほしい、サーフィンは今でもシングルフィンやツインフィンといった’70年代式のサーフボードが当たり前に使われている文化。そもそもクラシック志向が根強いわけで、そんなサーフボードに海水浴の学生が穿くようなブカブカのボードショーツなんかを合わせていたら、そっちのほうが違和感ありあり。つまりサーファーは短丈ショーツが得意な人種なのである。
ちなみに海でも街でも活躍しているボクのお気に入りは、カリフォルニアで’70年代に人気を博した〈KANVAS BY KATIN〉のもの。キャンバス地と編み上げ紐の組み合わせが特徴的で、2、3年前に引退してしまったが日系カリフォルニアンのサト・ヒューズさんが長年ハンドメイドで作り続けていた。探せば当時より少し丈が長めの現行物が手に入るが、できることなら裾のワッペンを外して裾上げし、改めて貼り直して穿いてもらいたい。ボクはそうして穿いている。
話は変わり、先日〈S2O〉というテニスファッションのブランドから〈FILA〉とコラボしたクールなショーツが発売されたのを知り、ディレクターの増井くんに「欲しいんだけど」とメールを送信。すると「トロ松さんには長いですよ」と返信が。画像を見て長丈であることは把握していたが、おかげで目を覚まさせられた。ボクはどこぞの女子高生4人組か、リールの小僧に実はカッコいいと思われたいのか、いまだに短丈をやめるかどうかの論争をたまに頭の中で繰り広げているのである。
2006年、18歳バンコクにて。ナイトマーケットで買ったこのメーカー不明のボードショーツで帰国後に笑われた。今から思えばただボーイズサイズだっただけかも。
2025年、8月終わりの海水浴。海の家が貸し切りだった。
-
トロピカル松村
TROPICAL MATSUMURA
1988年生まれ。兵庫県芦屋市出身。
サーフィン雑誌編集者を経て、フリーライターに。日本のサーフィンサウンドを集めた本『MY NIPPON SURFING SOUNDS(銀河出版)』の著者。主な仕事にジーンズブランド〈CRT〉のディレクション、『昭和40年男』のWebディレクション、『POPEYE Web』の編集執筆などがある。昭和西海岸ブーム期の私設博物館「さんかくなみ」を2025年7月にクローズ。
CRT(シーアールティ)
Official Website: https://crt-jeans.com/
Instagram: https://www.instagram.com/crt_jeans/