文・トロピカル松村
写真・甕川友寛
自分以上に存在を知っておいてほしいアンダーグラウンドヒーローがいる。その男の名はタケシサスケという。漢字で武士左典と書く。本名だ。写真が彼の2024年の近影。共に古いサーフボードで海に行ったり、ディスコに踊りに行ったりする盟友で、年齢は少し年上のお兄さん。ボクが運営していた昭和西海岸ブーム期の博物館「さんかくなみ(現在は閉業)」に多くのアイテムを提供してくれた存在でもある。
出会いは2008年頃。まさかのmixi(かつてのSNS)で発見したサスケさんは、当時20代前半にしてすでに70~80sのサーフ&ディスコスタイルを極めまくっているのがネット越しにでもわかった。あまりにも気になった二十歳のボクは何度もラブコールし、関西から夜行バスに乗って会いに行くことに。六本木の佐世保バーガー前で待ち合わせしていると、彼はめちゃくちゃ甘いマスクで、ロン毛のレイヤーカット、ピチピチサイズの紺のファーラー・ホップサックパンツに、〈LACOSTE〉のポロシャツをタックインしてやってきた。すでに情報量が多すぎると思うが、付き合ってほしい。彼はマジで情報量が多いから仕方がないのだ。
サスケさんに連れられ、今は無き飯倉片町交差点脇の踊り場「SOUL SONIC BOOGIE」で行われていた80sサーファーディスコナイトへ着くと、入り口付近からアンジェラ・ボフィルの『サムシングあなた』が聴こえてきた。これが東京のサーフスタイルか!と大興奮したのを覚えている。ボクたちが店内に入ると、踊っていた超年上の人たちの空気が一変したのがわかった。サスケさんは映画『サタデー・ナイト・フィーバー』のジョン・トラボルタのごとくの注目度と常連っぷりで(キャラは全然違うけど)、ボクはすぐ大勢の人から「君がサスケの関西版だね! 話は聞いてるよ」と声をかけられた。しかもサスケさんは、その当時でもおよそ30年前となるサーファーダンスを完全にマスターしていて、どの曲でもクールに踊り、フロアを先導していた。亡きDJ NIKAIDO氏がAORなナイスナンバー、アメリカの『風のマジック』をかけ、「関西でこんなんかかりませんよ!」とウカれるボクを「こっちじゃ普通だよ」とサスケさんは軽くあしらった。サーファーダンスだろうが、パラパラだろうが、イケてるヤツは気だるく踊る。“ドヤさ”と踊らない。その自分とは正反対の脱力したサスケスタイルにも心底ヤラれた夜だった。
サスケさんと初めて会った日のフロアの写真。
手前の女性が雑誌『明星』を見るようなまなざしを送っている気がする。
出会いの日の話をするだけで何千字もいってしまいそうなので早めに割愛する。とにかく、朝はサーフィン、夜はディスコ、の当時の遊び方をここまで今も再現し続けている人を僕はサスケさんの他に知らない。どんな世界にも隠れたすごいヤツがいるわけだが、そんなアンダーグラウンドヒーローは総じて自分で発信をしないから、彼の情報を箇条書きで30個ほどここに残しておくことにする。ただ、あくまでボクの知っている書ける限りの情報であるということもお忘れなく。彼は現場主義者なので、その他の情報は本人にお会いしたときに引き出してみてほしい。
1.口癖は「イェーイ!」「当時スタイルでしょ」「全然ダメだよ」など。
2.当時スタイルの横浜元町プールと、南房総の海で蓄積した色の黒さが尋常じゃない。
3.両親が超高感度サーフ&ディスコフリークだった。
4.普段は映画『蘇る金狼』の松田優作のごとく、その存在を隠すサラリーマン。
5.小学生の卒業文集でグラムロックへのアツい想いを綴っていた。
6.リーバイスのピケジャケットにドジャースのヘルメットを被った小学生だった。
7.服のサイジングがいつもピッチリ。無論当時スタイル。
8.AORやウエストコーストサウンドは若い頃にとことん聴き込んだ。
9.建造物や時計など、スペーシーデザインに惹かれやすい。
10.六本木ディスコ「キサナドゥ」「ナバーナ」のDJ ATOM氏とAKIRA氏を師に持つDJ。
11.幼少期から60sサイケ、グループサウンズ、ゴーゴーにも憧れがあった。
12.東京在住。伊豆出身で行きつけ店は、親族が経営する富士「glam.」だった。
13.10代の頃、ルノー・トゥインゴで、エンスト覚悟で伊豆から六本木に通っていた。
14.70sサーフボードのコレクションも凄いが、90sアルメリックがクイーバー。
15.フィンのことをスケッグといい、リーシュのことをパワーコードという。
16.最初はトロピカル松村のことを「生態系を狂わす存在」と避けていた。
17.当時の六本木ディスコの、各年代各店舗の選曲がなぜかわかる。
18.スケベなのは苦手。お上品スタイル。
19.スイーツ男子。
20.イケメン。
21.年上の友達がめちゃくちゃ多い。
22.ムスクの良い匂いがする。匂い好き。
23.辛いもの苦手。
24.いつもサーフワックスを塗り終わったあと、ワックスの匂いを嗅ぐ癖がある。
25.初期クラブカルチャーにもむちゃくちゃ詳しい。
26.意外と新しいものも好き。
27.タバレスの『愛のディスコティック』はオリジナル派。
28.ドゥービーブラザーズ『ロング・トレイン・ランニン』もオリジナル派。
29.渋谷「or」と、六本木「MAHARAJA ANNEX」でレギュラーDJをしている。
30.一応インスタグラムのアカウントを持っている。 @sasuke.1116
サスケさんと、最近の推し活、DJビリー北村さん(右)と。
このルックスでサーファーなんだから、やっぱりめちゃくちゃかっこいい。
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トロピカル松村
TROPICAL MATSUMURA
1988年生まれ。兵庫県芦屋市出身。
サーフィン雑誌編集者を経て、フリーライターに。日本のサーフィンサウンドを集めた本『MY NIPPON SURFING SOUNDS(銀河出版)』の著者。主な仕事にジーンズブランド〈CRT〉のディレクション、『昭和40年男』のWebディレクション、『POPEYE Web』の編集執筆などがある。昭和西海岸ブーム期の私設博物館「さんかくなみ」を2025年7月にクローズ。