文・トロピカル松村
そこそこ近所だったにも関わらず、ずっと存在を知らなかった老舗サンドイッチ屋があった。その店は世田谷・上野毛の「アンクルサムズ」という。何度か通りかかっていて、目にしていたのになぜか触手に触れていなかったのだ。実はこの店の存在を知ったのは自分も関わらせていただいている『POPEYE Web』の年下ライター町田絵理さんの取材記事がきっかけ。『POPEYE Web』エディトリアルディレクター宮本賢くんにも「てっきりトロ松さんの行きつけだと思っていました」と言われる始末。悔しい。
とにもかくにもボクはこの「アンクルサムズ」が大好きだ。店前の看板に“SINCE1977”と書かれているのを見るたびに「POPEYEの一つ年下かぁなんて」自分のことのように誇らしくなっている。初めて行ったときは、確かオリーブというサンドイッチを注文した。昔からあるメニューらしく、ほうれん草とコンビーフを挟んだもの。もちろん名前に引っ張られた。ちなみにポパイもあり、それはほうれん草とベーコンを挟んでいる。
なぜ好きなのか、というと自分が好きな年代にできた老舗だから、というのもあるが、この店に“知られざるサーフスポット”っぽさを感じているからでもある。サーフスポットといっても街に波が立つわけでもなく、つまりは海を感じられる場所を指している。海を感じられる場所というとカリフォルニアテイストや、ビーチコンセプトなんかが分かりやすいが、そういうものではない。
サンドイッチを持ってきてくれたママがぼくにこう言ったのだ。「昔はあんたみたいなサーファーがこの店の前にずらーっと並んでたんだよ!あたしだってピチピチだったんだから」と。この日を境にボクはこの店と外観に昔のサーファーの群像を浮かべられるようになった。いろんな種類のサンドイッチが食べられる、ということが珍しかった当時に、アメリカを感じるならここだ、と多くのサーファーが集ったのだろう。通ってみなければわからない、誰も知らないサーフスポットを見つけたような気分になった。
シティサーファーたるもの、街でも自分なりに海が感じられるこういう店をひとつやふたつはストックに入れておくといい。ノーサーフな日も海気分を味わえるから。なんて、同業者に教わったボクがエラそうに言っても全然格好がつかないのだが。
最後にひとつ宣伝を。私が尊敬する井出幸亮さんが編集長を務める雑誌『サブシークエンス』の12月13日発売号の「MY PLACE MY STYLE」というページにこの「アンクルサムズ」とボクのポートレートを載せていただいた。〈ビズビム〉各店や「蔦屋書店」などにあるので、ぜひ本を目にする機会があれば手に取って見てほしい。
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トロピカル松村
TROPICAL MATSUMURA
1988年生まれ。兵庫県芦屋市出身。
サーフィン雑誌編集者を経て、フリーライターに。日本のサーフィンサウンドを集めた本『MY NIPPON SURFING SOUNDS(銀河出版)』の著者。主な仕事にジーンズブランド〈CRT〉のディレクション、『昭和40年男』のWebディレクション、『POPEYE Web』の編集執筆などがある。昭和西海岸ブーム期の私設博物館「さんかくなみ」を2025年7月にクローズ。