#4

CONVERSATION

TSUGUMI WATARI
(STYLIST / TW DESIGNER)

CONVERSATION#4TSUGUMI WATARI

CONVERSATION

#4

TSUGUMI 
WATARI

(STYLIST / TW DESIGNER)

写真 ・ 聞き手 = luka / 琉花(写真家/モデル)

〈ビームス ボーイ〉のモノづくりの背景にはいろんなことがあります。
プレッピーだったり、ユニフォームだったり、ワークウェアに古着。
そんな背景を今気になる人と話すことで深掘りしていく連載企画。
第四回目のテーマは 〈ビームス ボーイ〉の服作りにも欠かせない
“ベーシック”について。ゲストは色気あるルックを得意としながら、
トラッドにも詳しいスタイリストの亘つぐみさん。
聞き手は〈ビームス ボーイ〉のシーズンルックを手がけた
フォトグラファーのlukaさん。2人が語ったベーシックとは?

〈ビームス ボーイ〉のモノづくりの背景にはいろんなことがあります。
プレッピーだったり、ユニフォームだったり、ワークウェアに古着。
そんな背景を今気になる人と話すことで深掘りしていく連載企画。
第四回目のテーマは 〈ビームス ボーイ〉の服作りにも欠かせない
“ベーシック”について。ゲストは色気あるルックを得意としながら、
トラッドにも詳しいスタイリストの亘つぐみさん。
聞き手は〈ビームス ボーイ〉のシーズンルックを手がけた
フォトグラファーのlukaさん。2人が語ったベーシックとは?

CONVERSATION #4
TSUGUMI WATARI

無意識に着ていたトラッド。
それが自分のルーツだった。

亘さん(以下、亘) : 今までの対談はおさらいというか、全部読ませて頂きました。

琉花さん(以下、琉花) : 毎回みんなそれぞれテーマがあったんです。

亘 : ボーイッシュだったり、ヴィンテージだったり。

琉花 : そうです。つぐみさんにはベーシックについて伺いたくて。トラッドとかも流行った当時着ていらっしゃいましたか?

亘 : ある。というかちょうどその世代(笑)。中学生ぐらいの頃だったかな。〈クルーズ〉ってヨットがマークになってるブランドがあったの、〈ヴァン〉とかの時代で。それがラフォーレ原宿の交差点の角のビルの2階にあって。でもちょっと〈ヴァン〉より高くて、なかなか手が出なくてみたいなね。だけどそこの服がどうしても欲しくて友達からそれを奪ったりしてたの、私(笑)。男の子だったんだけれど、その子はすごいおしゃれで。高校生のお姉ちゃんがいて、その人が滅茶苦茶ませていた服好きで、友達はお姉ちゃんからお下がりをもらっていたの。それを私が奪うみたいなね。

琉花 : (笑)。アイテム的にはどんなものだったのでしょうか?

亘 : 私が狙ってたのはシェットランドのカーディガン、丸首の。前立てが貝ボタンになってて、それを外すと裏側にグログランのテープがついてるわけ。今でいう〈トム ブラウン〉みたいな感じかな。

琉花 : 裏打ちしてある感じがということですか?

亘 : そうそう。それが普通のクルーネックだったんだけど、他にないからどうしても欲しくて。それを奪い取ったのをいまだに覚えているわね(笑)。

琉花 : つぐみさんの中学生の頃ってトラッドが全盛だったのでしょうか?

亘 : だったと思います。だからその頃に〈ヴァン〉とか〈クルーズ〉にちょっと目が行って、私が高校生になった頃は〈ビギ〉とか〈ニコル〉とか。

琉花 : DCブランドが流行ってた時代ですね。

亘 : そう。それからはそっちにいって。

琉花 : もともと幼少期からファッションに興味があったのでしょうか?

亘 : ありました。小学生の頃からかな。親がというか、何故か従姉妹がうちに住んでいて、文化服装学院に通っていて、毎日毎日宿題で洋服を作っていたから、それを私は横目で見ていて。いつも私の服を作ってくれて。でもだんだん、自分が着たい服を作ってほしくなって、「そういうのじゃなくてこういうのが良い」みたいな。そんなことを言うようになっていたのが小学校4年生ぐらいかな。

琉花 : 早い(笑)!

亘 : そうなの。親には小さい頃からタータンチェックのプリーツのミニスカートとか、そういうのを穿かされていたの。たぶんそこでベーシックを埋め込まれたんだと思います。でもその頃はミニスカートを穿くのが嫌で。子供はパンツが見えるぐらいの方が可愛いって言われていたんだけど(笑)、だんだん小学4年生ぐらいになってくるともう年頃だし嫌で。膝上ぐらいの丈の巻きスカートがどうしても穿きたくて。従姉妹に「お願いだからこういうの作って!」って頼んで作ってもらったら、嬉しくて。それを毎日穿いてた気がします。

琉花 : その頃はトラッドだという意識はなく、親にこれを着なさいといわれて着てた感じですか?

亘 : そうです。でもそれがあとになって考えると自分のルーツになっていったんだと思います。気がついたのは随分あとですけどね。そのあとは世代だったんでボディコンでしたし(笑)。

琉花 : (笑)。服に興味を持った頃、情報収集はどんなところからされていましたか?

亘 : 中学生のときは友達だったかなぁ。正確にいうとさっきの男友達のお姉さんがませてたから、その子が全部教えてくれて。それがすべてだったから、私は。高校生になってからは雑誌。

琉花 : どんな雑誌を読まれていたんですか?

亘 : あの頃ってなんだろう? 『アンアン』とかかな。

琉花 : 前回、神保町の古書店「マグニフ」の中武さんに見せてもらいましたが、トラッドな服は『オリーブ』とか、『アンアン』が強かったとちょうど聞きました。

亘 : あとは『メンズグラブ』とかもよく読んでました。『ポパイ』とか、『ホットドッグ』も。

琉花 : 男性誌も読まれていたんですね!

亘 : そうなの。本屋さんに行くのが楽しみで、前もって予約したり。とにかく雑誌しか情報がないから、本屋に行かなきゃって。

販売員から海外ブランドのPR、
異色のキャリアを経てスタイリストに。

琉花 : 若い頃から服好きだったつぐみさんがスタイリストになったきっかけは何だったのでしょうか?

亘 : 実は私、伊勢丹に就職してたんですよ。本当はウィメンズの服が良かったんだけど、なぜかメンズに配属されて。しかもそれがトラッドショップだったの。そこには新宿二丁目の人がよく買いに来てくれたのね。

琉花 : 確かに近いですしね。

亘 : いろいろ質問されたのよ。それできちんと答えられないと「あなたから買えないわ」とか言われて。それがすごく悔しくて、トラッドについてちゃんと勉強して。生地のこととかも細かくて「このチェックなんて言うの?」とか聞いてくるわけなの。タッターソールにウィンドウペンとかチェック柄にもいろいろ名前があって。そういうのも聞かれたら答えられるように勉強して、いろいろと覚えて。そこでさらにトラッドに詳しくなったのかな。本もたくさん読んだし。

琉花 : お店に立っているときは、どんな格好をされていましたか?

亘 : それが制服だったのよ。制服を着なきゃいけないんだけど、普通に着るのが嫌でちょっとアレンジしたりして。すると、上司に怒られて(笑)。毎週1回だけ朝礼があって、身だしなみチェックみたいなのがあったの。

琉花 : 学校みたいですね。どうアレンジをされていたのですか?

亘 : スカートを短くしたり、アクセサリーとかもたくさんつけていて。いつも指輪をたくさんつけていたら、両手の指に2つだけにしなさいという決まりができちゃったの。それまで決まりなんてなかったのに(笑)。

琉花 : 伊勢丹で働かれてからスタイリストになられたのはなにかきっかけがあったのでしょうか?

亘 : なったのは30歳になってからで。伊勢丹の後に〈ヴァレンティノ〉にプレスで入って。そこで外部の人と接するようになってから刺激されて、「へー、こんな楽しい仕事があるんだ、おもしろそう!」と思って。〈ヴァレンティノ〉を辞めて、スタイリストになったんです。

琉花 : 誰かのアシスタントとかにつかれたのですか?

亘 : いえ、 自分で。

琉花 : すごい! 

亘 : でも本当に全然仕事になんて来なかったし、誰も知っている人なんていないから、すごく時間がかかったんですけどね。ちょっとずつ、ちょっとずつで。

琉花 : あんまりいらっしゃらないタイプだったのではないでしょうか? スタイリストのアシスタントにつかず、販売員やプレスとして働いた後にスタイリストを始めるって。

亘 : 確かに。でもスタイリストになる前にいろいろ聞いたのよね。プレスルームにはスタイリストとか編集の人とか来るじゃない? だけど聞けば聞くほどアシスタントをやっても大変だなと。営業に行ったほうが良いですかね? って聞いたら「営業に行っても仕事なんてくれないよ」って言われたり。これは地道にやるしかないんだなと思って。

琉花 : そのときはどういう仕事から始めていかれたのでしょうか?

亘 : 当時『デューン』という雑誌があって、初期はそこでスタイリングをしてました。だけど『デューン』は良くて3か月に1回。間が空くと6か月に1回しか出なくて。けれど本当に好きなことをやらせてくれたし、好きなテーマとかでページを作れた。あと海外にも連れていってもらって、外国人カメラマンとも撮影ができたり、現地のプレスにも足を運べたからいろいろと良い経験ができて。でも海外ではできるのに、日本ではできないことも多かったのね。だから日本のプレスのあり方とかに全然納得がいってなかった。今もそうだけど、他ブランドとか古着とかをミックスしてスタイリングをするのがNGだったの。私が〈ヴァレンティノ〉のプレスルームにいたときは企画を聞いて、本当に良いと思えばバンバン貸し出ししていたし、「ミックスしてもいいですよ」みたいなこともやってたんだけど。いざ自分がスタイリストになると、「それとそれは貸せません」とか、すごくいろいろ言われて。すごく腹立たしいなと思いながらも一生懸命戦いながらやっていましたね。

琉花 : プレスとしてのご経験があるから余計にそう感じてしまいそうですね。その頃、得意というか好きなスタイルはどのようなものだったのでしょうか?

亘 : 基本的に好きな感じというのは今と変わらないと思います。攻めている感じ、その中に女性らしさというかセクシーな感じが混ざっているような。エレガントというよりは攻めている女性っぽさみたいなのが好きで。

琉花 : 最初につぐみさんがスタイリストとしてブレイクしたなって思った出来事はありますか? 

亘 : 仕事が来るようになったきっかけは、UAなんですよね。UAをよく撮影していたMOTOKOというフォトグラファーがいて。彼女とは別の雑誌で仕事をしていたんだけど、そのときに「一回会ってみない?」って誘われて。UAがお子さんを産んで、活動を再開する頃に一緒に仕事し始めて。そしたら急にいろんなところから仕事が来るようになって、そこで世の中をまた改めて知ったというか。今も勉強中なんだけどね(笑)。

琉花 : UAさんとはどういう仕事が多かったんですか?

亘 : アルバムのジャケット撮影とか、そういうのでずっと一緒にやってましたね。台湾に行ったり、八丈島に行ったり。虎と一緒にも撮影したし、めっちゃ思い出があります。

琉花 : 虎と一緒! 濃い思い出がたくさんありそうですね。

亘 : ヤギが臭いってことを知ったし、虎が臭いってことも知ったし。すっごい臭いのよ(笑)。

琉花 : (笑)。つぐみさんは色々と服も手がけていますが、その頃からスタイリストと並行して、洋服作りというか、衣装を作ったりもされていたんですか?

亘 : 衣装は作ってましたね。でも私自身は作れないから、作れる人に声をかけて一緒に製作してました。ディレクションですね。そこからだんだんと仕事が広がっていったという感じです。

夫に背中を押されて作り始めた、
タイムレスをテーマにした
ベーシックなウェア。

琉花 : そのようなご経験が今のつぐみさんのブランド〈トゥ〉にも繋がっていったんですか?

亘 : いや、それとはまた全然違うのよね。〈トゥ〉は始めて4年目だから本当にここ最近のことで。洋服を自分で作るようになるなんて全然1ミリも思っていなかった。デザイナーって大変じゃないですか、常に追われてるし。絶対にそれは嫌だと思っていたから避けてきたんですけど(笑)。私は服が好きだし、執着する癖もあって、好きだと同じものを満足するまで、とことん追求しちゃうんですよ。私は水着とかボディースーツとかが大好きなんだけど、日本では好きなものが売っているところがなくて、海外に行くたびにいつも買ってきていたのね。ところが外国人と日本人の体型が違うから、お尻の大きさと足の太さが合わなくて。なんか着心地悪いなと思いながらもまた買うの繰り返しで。そしたら夫が「自分で作ったらいいんじゃない?」って背中を叩いてくれたんですよね。それで作るようになったんです。

琉花 : タイムレスというテーマだったり、シンプルなデザインで流行に左右されない服作りというのは、どこか考え方が〈ビームス ボーイ〉にも似てるなと思いました。

亘 : 結局私はデザイナーではないから、次から次へと洋服を作り出すことはできないし、スタイリストでもあるから、自分が着たい服とかそういう気分はあるので、その着たい服をスタイリングしてコーディネートするのは良いと思ったの。だからそれを作りたいという気持ちから生まれたのが〈トゥ〉なんです。あとはみんなが持っている服に合わせられる服。1回着たら終わりというのは嫌いなので。持ってる服に何でも合わせられるというのが好きだし、そういうベーシックな服が一番飽きなくて、結果重宝するから。そういう服を作りたいなと思ってます。

琉花 : そう考えるようになった経緯が知りたいです。つぐみさんってセクシーな服も好きだし、メンズのストリートウェアも好きで着ていらっしゃるじゃないですか。でも〈トゥ〉ではベーシックなものを作っている。つぐみさんにとってベーシックってどういうものですか?

亘 : さっきも言ったように私は女性として、女性らしい服装が好きなんです。それは自分が高校生の頃に観た映画から受けた衝撃からなんですけど。その中で強烈に残っている女性像というのが『グロリア』って知ってる? アメリカのインディ映画の父って言われてるジョン・カサヴェテスが監督した作品で、主演は彼の妻のジーナ・ローランス。その映画のジーナをずっと追い求めている気がするんですよね。すごいタイトスカートにヒールを履いてトレンチをさらっと着るみたいなのが大好きですし、あるときはパンツルックでTシャツだけ着てジャケットを着るみたいなの。そういう雰囲気の女性がすごく好きです。

琉花 : 1980年の映画なんですね。

亘 : そう。リメイクもあるけど、私は昔の方が好き。あとは『郵便配達は二度ベルを鳴らす』も好きですね。ジェシカ・ラングとジャック・ニコルソンが共演している映画でそのときのジェシカ・ラングの服装も大好き。

琉花 : どちらもタイトルもポスターも素敵なんですね。

亘 : 良い映画なんですよ、すごく。ちなみに『グロリア』のジーナ・ローランズの衣装は〈エマニュエル・ウンガロ〉が手がけているんですよ。あとは、『モア』。60年代のイビザが舞台の映画なんですけど、女の子の服装が可愛すぎて。悲しいけど『モア』もすごくいい映画ですよ。

琉花 : 映画にかなり影響を受けていらっしゃるんですね。

亘 : それぞれ系統は違うんだけど、かっこよくて可愛くてセクシーな女の人が出てきて、服もまた良かったから。『グロリア』はトレンチコートにヒールを履いているジーナが、拳銃をぶっぱなしたりするからかっこいいんですよね。洋服自体はトラッドというか、ベーシックだけど、着こなしがいいんです。本当に観てほしい!

琉花 : 最近の映画で着こなしがかっこいいと思った作品はありますか? ドラマでもいいんですが。

亘 : 今の服も素敵だしかっこいいとも思うけど、私はちょっと昔の服を見ると可愛いなって思えていて。最近、観てる韓国のドラマなんだけど、『貞淑なお仕事』というのがあって。たぶん韓国の1990年頃の時代設定らしいんだけど、私にしてみると格好が日本の1970年代ぐらいの服装なの。韓国の90年代って、日本の70年代後半ぐらいの感じと被るというか。自分がその頃高校生ぐらいだったから、お母さんや従姉妹が着てた服みたいな感じで可愛いの。今の〈ミュウミュウ〉とかのムードにも似ていて、それもあるのかもしれないけれど。そのドラマ自体もおもしろいんだけど、どちらかというと服が本当に可愛くて、服ばっかり見てます。「こういうのかわいいな」とか「小花柄が良いな」とか、そうやって服を考えたりして。でも〈トゥ〉で小花柄、どうやって取り入れたら良いのかなとか。そうやってずっと頭の中で巡らせてると夜も眠れなくなってます(笑)。

琉花 : 完全に今の気分は1970年代なんですね。ジーナではないですが、男性のトラッドな洋服を女性らしく見せるコツってありますか? 例えばボタンダウンシャツにチノパンみたいな格好のときは、どうやって女性らしさを出すとか?

亘 : ひとつはアクセサリーで見せるというのもあると思いますけど、あとはやっぱり雰囲気だと思う。その人自身の。まったく化粧っ気がなくても素敵な人は素敵だと思うし。

琉花 : 化粧っ気がなくて、自分に自信が持てない人はどうすればいいんでしょう(笑)?

亘 : ちょっとお化粧して整えてもらって(笑)。トラッドの服って女性は難しいって思うみたいで、どう着たら良いかわからないとか、どう可愛く着るの?みたいな、そういう質問をよく聞きます。チノパンだったら、ウィメンズではなくて数サイズ大きいメンズのものをあえて穿いて、ちょっとゆったり落とすみたいな崩し方をしてみたり、逆にシャツは着やすいようにわりとフィットする普通サイズにする。今なら短丈のニットとかを合わせるとより可愛く着こなせるんじゃないかなと思います。

シャツを着こなせている人はおしゃれだし、
セクシーだと思う

琉花 : なるほど。もし、つぐみさんが今トラッドな格好をするとしたら、どんなスタイリングをしますか?

亘 : 私って結構トラッドな格好してるんですよ。最近もよく着ているメンズのシャツに、ウールの生地を使ったおじさんみたいなスラックスを穿いてるし。今だったらその上にアーガイルのセーターを着るかな。結局、トラッドとかベーシックなものがすごく好きなんですよ。

琉花 : トラッドなものでもつぐみさんにとっては古いとか、今っぽくないという感覚もないんですね。

亘 : まったくないです。トラッドって永遠に着られる普遍的なものだと思ってるし。琉花ちゃんだって、今着ているのはラムウールのクルーネックセーターでしょう? それもトラッドのベーシックなセーターなんですよ。何気なく着ていて可愛い。

琉花 : 全部スウェットに見えるって言われたりしてるんですが(笑)。

亘 : (笑)。トラッドに興味はあったりする?

琉花 : ベーシックなものに興味はあるんですけど。基本的に無地のものばかり着てしまいます。

亘 : 意外と無地も多いんですよ、トラッドは。あとチェックとかもあるけど。すごく似合うと思う。トラッドな格好にネックレスとか、ピアスだけしていても女性らしいし、すごくキュートだと思います。

琉花 : そもそもベーシックってかなり範囲が広いと思うんですが、つぐみさんにとってベーシックなアイテムだったらこれっていうのはなんでしょうか?

亘 : Tシャツでしょ、デニムでしょ、あとボタンダウンシャツ。ポロシャツ、クルーネックのセーター、Vネックのセーター、スウェット……。

琉花 : 多いんですね(笑)。

亘 : 多いか(笑)。悩ましいけど、シャツとデニムとTシャツかな。

琉花 : それさえあれば軸が完成すると。

亘 : やっぱり一番着てますから。特にシャツは本当に大事というか、持ってると便利だし、1枚で着ても可愛いし、何かの上に重ねて着ても可愛い。私、シャツの着こなしが素敵だと、男性も女性もセクシーに感じちゃうんですよね。おしゃれに着こなしているとすごく素敵って思う。どんなシャツでも良いんですけどね、それが例えシワシワのシャツだったとしても。自分の物にして着こなせてると、おしゃれだし、セクシーだと思う。

女性が自由に生きてると思える
ベーシックウェアを作りたい

琉花 : ベーシックアイテムをそのまま着るのではなく、どうアレンジするかみたいなところが結構大事かなと思っていて、ベーシック=つまんないとか、地味みたいな風に感じたりもして。

亘 : ベーシックは逆に可愛いと思うんですけどね。そこで先ほども話したけれどサイズ感。女の人はちょっと大きいか、ちょっと小さいものを選んだ方が可愛いと思います。物によってだけど。ニットだったら2サイズぐらい大きいのを選んでストンとしたデニムを穿いたり、タイトスカートを穿いても可愛いと思うし。逆に子供用のシェットランドセーターみたいな小さいニットにちょっとルーズなパンツを合わせても可愛いと思います。

琉花 : つぐみさんはキャリアが長いのに例えば若い方に人気の韓国のことも詳しかったり、いろんな世代の女の子を見てますよね?

亘 : 女の子が好きだから(笑)。

琉花 : その守備範囲の広さというか、自分の年代の流行りとかだけじゃなく色々と見るというのはやっぱり大事だと思いますか?

亘 : 一つのことに留まりたくないし、良いものは良いじゃないですか。楽しめるものは楽しみたい。年齢が上なんだからいい加減にしなさいなんて言われるけど、でもそんなの関係ないし(笑)。楽しいと思うことはきっとみんな一緒だと思うから、そうやって幅広く楽しみを共有できたら良いなと思って。なので今のブランドも女性を解放したいし、自信を持ってもらいたいので、ちょっと露出の激しい服を作ってます。

琉花 : それはボディスーツですか?

亘 : はい。男性によっては「あれ着ちゃいけない」「これ着ちゃいけない」という人もいるじゃないですか。だからそういうのにとらわれずに自由に生きてるという、「私はなんでも自由なのよ」という風に思ってもらいたくて作ったんです。露出はしてるんですけど決して見えすぎるような服にはしてないと思うので。あくまでもベーシックだし、健康的で可愛く見える露出の仕方にはこだわってます。それが少しでも着てる人ならちょっとは感じてくれるかなと思ってるんだけど、でも着ないと分からないかな。

表参道と明治通りの交差点付近に店を構えていたトラッドブランド。ヨットのロゴがポイント。

1948年、石津謙介氏によって創業。1960年代に日本にアイビーを広め、日本式アメトラスタイルの礎を築いた超重要ブランド。

DC はデザイナーズ&キャラクターズの略称。1980年代に日本国内で広くブームになったブランドの総称。

1957年にイタリア・ローマで創業したブランド。2025年リゾートコレクションからアレッサンドロ・ミケーレがクリエイティブディレクターに就任。

1993年に創刊した日本の伝説的ファッション雑誌。2008年に休刊し、2011年に『リベルタン / デューン』として復刊した。

大阪府出身のミュージシャン。1995年『HORIZON』でデビュー。『情熱』『悲しみジョニー』『ミルクティー』などヒット曲多数。

2021年春夏、スタイリスト・亘つぐみ氏がプロデュースするボディウェアブランドとしてスタート。“女性を解放させる、自由に個性を活かせるシンプルなデザイン”をテーマとして掲げている。

PROFILE

亘つぐみ

東京生まれ。シンプルで女性らしく、エレガントでセクシーなスタイリングに定評。『ヴォーグ』『エル』『ハーズ』etc......の雑誌、写真集、広告やCM、映画・ドラマ、ビジュアル制作、ディレクション、ファッションショー、ブランドプロデュースなどその活動分野は多岐にわたる。著書『女らしさはけせない』では女性らしく輝き続ける方法を伝授。2021年春、自身がディレクションするボディウェアブランド〈トゥ〉がデビュー。さらに、2023年春に“大人の遊び着”をテーマに毎月提案型のワンアウトフィットブランド〈タイムレスウーマン〉もデビューし、女性を解放させるデザインを発信し続けている。

Instagram:  

@tsugumiw

  /  

@tw2021twtw

luka / 琉花

1998年、東京都出身。モデル・琉花としても、広告・雑誌・MVなど幅広く活動。写真家としても意欲的に活動しており、広告撮影、ZINE製作の他、個展『VOYAGE 2014-2017』『VOYAGE-Iceland 2019-』を開催。2024年2月、旅先で撮影した写真を用いたトップスをメインとしたアパレルブランド・VOYAGEを始動

Photographer: luka
/ Creative Director: Kunichi Nomura (TRIPSTER)
/ Web Director: Masahiro Murayama (maam.)
Editor: Masato Shinmura
/ Project Manager: Satoshi Miyazaki (PADDLE)