綿から育て、綿から学ぶ、
ビーミングの試み。 Growing Cotton Story in Wakayama

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2022年、〈B:MING by BEAMS〉が綿花から育て、オリジナル商品を生み出すプロジェクトがスタートした。
カットソーの産地、和歌山県を舞台に、環境のことを考える様々なひとたちが手と手を取り合った、未来へ向けた取り組みとは?

Photo / Masao Takahashi Text / Masashi Katsuma

環境を考えた先のこと。

私たちが普段着ているコットンのTシャツ。実は、たった1枚のTシャツを作るのに、ひとが口にする約5年分の水が使われているという。それを聞くだけで、いかに環境に影響を与えているかは想像に難くない。しかし、日本国内では気候や湿度の関係で、綿花を育てることは非常に困難を極める。当然輸入に頼ることになるが、いつ、どこで、誰が作ったのかが不明瞭な生地では品質や安全性に不安も…。〈ビーミング by ビームス〉は、安心して選べる洋服を作り続けたい、という思いから、モノづくりの背景を可視化させるため、綿花栽培から商品化を実現する“綿花プロジェクト”をスタートした。その発起人である〈ビーミング by ビームス〉のディレクター村口 良と、綿花畑のある和歌山へと足を運んだ。

「自分がディレクターに就任したのが、〈ビーミング by ビームス〉のブランド設立10年目のタイミングで。環境のこと、SDGSやエシカル、サステナブルという言葉が、様々な業界で当たり前に言われるようになっているなか、これから先を見据えたときに、ビーミングとしてビームスとして、洋服屋として、一体何ができるんだろう? ということをずっと考えていました。そして自分に子供ができたこともあり、こどもたちには安全安心なものを着てほしいという思いも含めて、企画チームに相談したんです。それで“一度会ってほしいひとがいる”と紹介してもらったのが、今回のプロジェクトで尽力をいただいているFCプランニングオフィスの野田倫生さんで。野田さんとは、そもそも“綿花を育てたい”という大きな話がスタートではなく、使われない洋服だったり、生機(布生地)のまま残っている生地のリサイクルについてのお話を聞いて。そういったサステナブルなことをビーミングに取り込めないか? と考えたのが綿花プロジェクトに至ったきっかけでした。」

全員が童心へ帰った綿花栽培。

効率よりも、環境に良いことを優先すればどうしても人員や商品の金額などコスト面に関わってくる。しかし、村口の未来への想いはさらに高まっていくことに。

「“欲を言えば、自分たちが育てた綿花を糸にして実際にモノを作ることができるなら、売り場のスタッフたちも自信を持って商品を販売できるんだろうな”という話をしたところ、野田さんが“それじゃあ、やりましょうよ!”という、夢のような話になって。ありがたいことに、その考えに賛同いただいた美和繊維工業の風神さんが、野菜や果物を育てていた農場を提供してくださって。野田さん、風神さん以外にも協力いただいた会社は数社に及びます。」

長年に渡り綿に関わるベテランたちの心を動かし、関わるひとたち全員が童心に帰るようにスタートした綿花プロジェクト。綿花の産地で有名なインドやロサンゼルスなどとは真逆に、四季があり湿気の多い日本で綿花を育てる、ということはこれまであまり考えられていなかったことである。当然、このプロジェクトに関わる全員が初めての挑戦だった。畑を耕すことからスタートし、種を蒔き、雑草などの手入れをし、およそ3ヶ月かけて開花。それから綿花(コットンボール)に成長し、晴れて収穫となる。この間約8ヶ月。ご存じのとおり、和歌山は台風による被害が懸念される地域。その心配をよそに、立派なコットンボールが実ったのだ。

「みんなで本やインターネットで調べながら、“どうやってするのだろう”と試行錯誤して。開花したときは、少年のようにみんなで喜びましたね。紡績(綿を糸にする)の大正紡績さんや、風神さんのニッター(糸を編んで生地にする)、染工(洗いをかけて生地を滑らかにする)のフジボウテキスタイルさんといった、和歌山が誇る産業の方たちと交流をもち、洋服ができるまでの過程を勉強できて、環境にも良いことができる。僕たち洋服屋が川下だとすると、本来はあまり関わりのない川上の方たちと作り上げた、という事実が自分にとってもビームスにとっても非常に大きなことですよね」

明日に、そしてもっと先の未来へ繋がる種。

様々なひとの思いがこもったコットンボールの収穫後には、ジンニングという綿から種を取る作業が必要となる。この工程を経ないと、糸にはできないからだ。国内で唯一少ない、ジンニングのマシンを所有する大阪・阪南市の大正紡績へ収穫したワタは進み、手作業で少しずつ投入することで、綿と種が分離してゆく。そして落ちた種は、翌年に育つ綿花の種となる。

「落ちてきた種を見た瞬間に、僕たちが考えていた未来って、こういうことだったんだ!と実感しましたね。みんなで時間をかけて育てた綿花が糸になろうとするのと同時に、その種は来年に繋がるということ。
このプロジェクトがスタートするもっと前はあまり意識していなかったけれど、洋服をつかう責任、つくる責任について考えるきっかけを、自分たちが育てた綿から教わったようで、すごく嬉しかったですね。」

種と分離した〈ビーミング by ビームス〉のコットンは、紡績することで糸に、その糸を編むことで生機となり、最終的にフジボウテキスタイルでの特殊な洗い加工を経て、ようやく製品化できる生地となる。はじめての綿花プロジェクトで収穫したコットンは約80キログラム。これをオーガニックコットンとブレンドして、おおよそ、800~1000枚分のTシャツに使われるコットン量に。MADE in JAPANにこだわったシリーズ〈SIMPLE YET〉のロングスリーブTシャツは、この綿花プロジェクトで育ったコットンを使用し商品化したもの。数々の工程や時間を経て、なにより環境について考えるひとのチカラが結集することで完成した、みんなで作り上げたこのTシャツをきっかけに、プロジェクトのスタートから思い描いた明るい未来が見えたのだ。これがゴールではなく、これからも栽培した綿花をものづくりに活かすべく〈ビーミング by ビームス〉、そして村口たちの未来への挑戦は続いてゆく。

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