
フジロックが日本を代表する野外フェスとしての地位は、“世界一クリーンなフェス”を体現するために、来場者たちの主体性によって築かれてきました。どうしても“環境を大切にしよう!”とか“エコな生活を!”と言われると一歩引いてしまいがち。でも、フジロックはそれを声高らかに叫ぶようなことはしません。来場者たちの行動をデザインするような工夫がなされているんです。それでは、代表的な取り組みをいくつか紹介します。

1998年から導入されている「ごみゼロナビゲーション」。これは、会場内でボランティアスタッフが来場者にごみの分別やリサイクルを呼びかける仕組みです。設置場所は全部で20箇所以上。来場者が自然とごみの分別に気を使うように会場がデザインされています。ごみは7つに分別。初めてフジロックに来る人もちゃんと案内があるので迷うことはありません。そして、きちんと分別されたごみは、それぞれリサイクルされます。ペットボトルは入場ゲートで配布するごみ袋に、紙コップは仮設トイレで使うトイレットペーパーに、会場内での食事に使われる割り箸、竹串、木製カトラリーは建築資材にというように、ごみ箱が終わりではなく、そこからさらに循環するようになっています。
ごみゼロナビゲーションと同時に、会場内入場ゲートではごみ袋の配布もスタート。このごみ袋は、前回回収されたペットボトルをリサイクルしたもの。ごみ袋ではありますが、一時的に雨を凌いだり、地面に座るときのレジャーシート代わりにしたり、会場で汚れた洗濯物を入れたりと、いろんな用途で使われています。BEAMSもこの取り組みに賛同。ごみ袋にはBEAMSのロゴが入っています。

1999年に誕生した「NGOヴィレッジ」。ここは、来場者に向けて社会の課題や地球の問題を投げかけ、ともに解決への一歩を踏み出す場所です。欧米の野外フェスなんかでは、すでに当たり前のように社会変革を目指すNGOのブースやオーガニックショップが軒を連ねているなか、日本はなかなか遅れ気味。今年のテーマは「ローカルSDGs」。会場である新潟県湯沢町も人口減少や少子高齢化に加え、コロナ禍での観光需要の減少など、様々な課題に直面しています。フジロックもそんな課題に対し、「ローカルSDGs」の考え方をテーマに、社会のあり方を見つめ直し持続可能な地域への変化を生み出しています。


会場内を回遊する全長1.4kmからなる「苗場ボードウォーク」。地元やボランティアの方々と手作りし始めたのが2002年。以降、毎年延べ300人を越えるボランティアの方々や地元苗場の方たちと共に整備を行ってきました。重機やケミカル材を一切用いず、自然の木材と人の力だけでコツコツと年月をかけて築いてきた“100%オーガニック”な木道。写真(中・下)は、今年からできた「みどり橋」。これまでは丸太で作られた仮設の橋で毎年架け直していましたが、クラウドファンディングにより、フジロックのときだけでなく通年で使えるように生まれ変わりました。夜のライトアップもムードがあっておすすめです。

2005年からは、NEW POWER GEARプロジェクトがスタート。これは、天ぷら油の廃油を利用したバイオディーゼル燃料や太陽光などのクリーンエネルギーを利用することで、CO2の削減を目指す取り組み。現在はFIELD OF HEAVEN、AVALONフィールド、キッズランドなど、会場内の一部のエリアの電源などに賄われています。天ぷら油を利用することで、香ばしい匂いのする発電装置。このおかげで、気分が悪くなるどころか、お腹が空くようになったスタッフもいるとか!? 身体にも地球にも健康的なシステムというわけです。
この他にも、苗場の森の間伐材などを活用した「フジロック・ペーパー」の制作や、飲食エリアで使用する割り箸をすべて新潟県産材に切り替えるなど、フジロックとして、より環境にやさしく、より健全でクリーンなフェスにするための施策を行っているのです。このように、“自然と音楽の共生”をスローガンに、音楽だけでなく、環境保全や社会貢献を通してフェスを盛り上げるフジロックの姿勢に共感したからこそ、BEAMSはサポートすることを決めたのです。
DESIGN_UND (face & shinknownsuke)

グラフィックはアートユニット「UND」が担当。描かれたキャラクターは、マスクやバンダナを着用しソーシャルディスタンスを保つことで、“コロナ禍で開催する特別なフジロック”を表現しています。
フジロックの運営スタッフが着用しているスタッフTシャツはBEAMSがプロデュースしています。今回はサステナブルシフトにチャレンジし、BEAMSがお付き合いのある複数のメーカーから、さまざまな理由で廃棄予定だったTシャツを集めて、スタッフTシャツにアップサイクル(※アップサイクル分が不足したサイズなど一部新品を使用)。デザインはSHINKNOWNSUKEとfaceのアートユニット「UND」が手がけています。カラー(全10色)によっては数枚しかないなど、取材陣も探すのが難しいくらい。不揃いでバリエーション豊かなスタッフTシャツが会場を彩っていました。
ここでは、「ごみゼロナビゲーション」をメインに担当しているNPO団体「iPledge(アイプレッジ)」で、実際にコアスタッフとして働いているメンバーを直撃。どんな人たちがフジロックをサポートしているのか。その片鱗を覗いてみましょう!
- 名前 : AYAKA(17)出身 : 東京都フジロック歴 : 2年
仕事内容 : 常に会場内を回ってボランティアスタッフがスムーズに動けるようヘルプ&サポートすること
参加した経緯 : 先輩スタッフの姿に感銘を受けて。無償の労働だけどかっこいい。いろんな人の協力があって成り立っていて、それを直接体感できるのが醍醐味
フジロックのいいところ : 出演者も来場者も環境に対する意識が高いこと。
- 名前 : HITOMI(18)出身 : 愛知県フジロック歴 : 1年
仕事内容 : 来場者に直接声をかけてゴミの分別を呼びかけること
参加した経緯 : 以前から環境問題に興味があり、実際に体験してみたいと思ったから。とくにiPledgeは同じ価値観を持つ同世代が多いのも魅力的
フジロックのいいところ : 他のフェスとは違って、国内外からいろんな人たちが来るので、その多様性を感じてほしい。
- 名前 : KARIN(20)出身 : 東京都フジロック歴 : 1年
仕事内容 : 各ごみステーションの担当者をとりまとめるボランティアコーディネーター
参加した経緯 : 以前、ビーチのごみ分別に参加したときにサポートしてくれた先輩スタッフがとても輝いて見えて、自分も何かひとつのことをやり遂げたいと思ったから
フジロックのいいところ : みんな優しくて、自然と分別してくれるムードができている。
- 名前 : KOBATAN(19)出身 : 東京都フジロック歴 : 3年
仕事内容 : 本部運営のコアスタッフとして、ボランティアスタッフの受付や稼働時間を管理
いつものフジロックとの違い : 例年より来場者が少ないだけでなく層も違って、初めての人が多い印象
フジロックのいいところ : 音楽だけじゃない。環境問題を考えるきっかけになる場所。フェスという非日常で得た感覚を日常にも持ち帰って欲しい。
- 名前 : TAKUMI(21)出身 : 千葉県フジロック歴 : 1年
仕事内容 : 来場者にゴミの分別を呼びかけること。あくまで来場者に分別してもらうことが大事
参加した経緯 : 環境問題に興味があり、現在自身でイベントを企画中。その参考になればという思いから
フジロックのいいところ : 音楽やフードだけでなく環境について考えるきっかけが散りばめられている
好きなアーティスト : 手嶌葵、King Gnu
- 名前 : SHUN-CHAN(43)出身 : 東京フジロック歴 : 10年
仕事内容 : コアスタッフの食事まわりを全面サポート
フジロックの変遷 : 海外の方がすごく増えた。とくにアジア圏。他のフェスに比べてゴミの分別に対する意識が高く、海外の人が写真を撮っていくほど
ひと言 : 分別は他のフェスでも続けてほしい。それによって少しずつだけど世界は変わっていくから。
"From Festival To Your Life!!"