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ビームスが思う理想の男性像

"MR_BEAMS"とは、ファッションをきちんと理解しながらも、
自分の価値観で服を選べる
"スタイルをもった人"のこと。
と同時に、決して独りよがりではなく、
周りのみんなからも「ステキですね」と思われる、
そのスタイルに"ポジティブなマインドがこもった人"のこと。

今回立ち上げたオウンドメディア#MR_BEAMSには、
私たちビームスが考える理想の大人の男性像と、
そんな理想の彼が着ているであろうステキな服、
そしてMR_BEAMSになるために必要な
洋服にまつわるポジティブな情報がギュッと詰め込まれています。

本メディアを通じて、服の魅力に触れていただいた皆様に、
ステキで明るい未来が訪れますように……。

ドラゴンへの未知(または志望遊戯)②

a fashion odyssey | 鶴田啓の視点

ドラゴンへの未知(または志望遊戯)②

 

「暗黙知」。

例えば職人(仕立屋、左官屋、料理人などすべての技術職)の世界には、個人が保有するコツや勘などの感覚的な知識=「暗黙知」を代々受け継いでいく文化があり、「暗黙知」の共有や継承は古いのれんを持つ老舗ならではの「強み」でもあった。しかし、もともとは一軒の専門店だった店も、店舗数の拡大が進むにつれて「専門知識を持つマスタークラスの下で育てられた次世代の職人」ののれん分けだけでは技術の伝承やクオリティの維持が難しくなってくる。結果として、現場任せで自然継承を待つだけでは間に合わないので、そもそも感覚的なものである「暗黙知」を、言語化した「形式知」に変換する事でコツや勘の共有を広く図るようになるのである。

「ドラゴンへの未知(または志望遊戯)①」からの続き、後編のスタートである。

結局のところ、個人の有する非言語情報は「~な感じ」と言うだけでは他人に共有しづらいので、理論的に明文化することで知識の共有化を進めていこうとする。例えば、ALAN FLUSSERによる名著「DRESSING THE MAN」はドレス部門スタッフのバイブルであるが、これも言わば「暗黙知」を「形式知」に変換させたもの。例えばベテランの仕立屋が「君は顔が大きいから襟元が詰まった三つボタンよりも、Vゾーンが広い二つボタンの方がいいと思うよ」とお客と話していたような「暗黙知」を集積してまとめた内容である。より正しく美しい服飾文化を世界中のドレッサーと共有したい、というFLUSSERの想いが込められた一冊だろうか。そして弊社・統括ディレクターの中村による「中村ノート」もある種の「形式知」である。30年もの間、ファッションの本場を定点観測してきた中村が自身の「暗黙知」を分析・逆算する事で「次のシーズンはそろそろコレが来ます」と提示する編集型の「形式知」レポートである。

しかし、ドラゴン…いや、その破天荒教師が言うところの数学的暗黙知とは「ひとつひとつ計算しながら答えを導き出していく解き方ではなく、数字を見た瞬間に分かっちゃうような感覚」のものであり、それを高める為には徹底的な反復が必要とされるのである。100問を3分で解けるようになるためには、書き込みながら答えるような反射的スピードが求められる。プロ野球の好打者が言う「自然と(ひとりでに)バットが出てきた」感じに近いのか。そのスイングが終わるまでの、0.2秒間で「あのとき〇〇コーチに言われたボールの下をバットで擦るような感じで脇を閉めてコンパクトにぃ…」なんてことを長々しく考えていたら、次に聞こえるのは「ライトスタンドの大歓声」ではなく、背後に聞こえる「バスッ」というキャッチャーミット音と「ストライッッ!バッターアウッ!」というアンパイアのコールだけだろう。

ということで、ここから先はもうほとんど全国のビームススタッフに言っているような感じになってしまうが、ファッションも結局は反復に尽きるのである。洋服屋ならば人に課せられなくとも(好きが高じて)一般的な人の10倍くらいは様々な種類の洋服を自然と触ってきた/着てきたことになる。つまり、触ってきた/着てきた洋服の量/質に比例して暗黙知が身に付くと言ってよい。写真で見ただけで手触りがなんとなく分かるし、コーディネートする前から合うのが分かる。シャツを選びながらソックスの色が決まっていたり。お客様に「このスーツに合うVゾーンは?」と聞かれてから考えるよりも、スーツを触っている時点でネクタイのイメージが反射的に思い浮かんでいる方が理想だ。そういった考え方のヒントになるのが参考書としての「中村ノート」であるが、中村は別に参考書を見ながらノートを書いたわけではない。「暗黙知」とは洋服に言い換えれば「経験の積み重ねが生み出すセンス」ということである。将来、洋服屋を志望する若い方や目利きバイヤーを目指すスタッフは、少しでも多くの洋服を(できればネット上ではなく)着て、見て、触って、コーディネートして、を反復しておくと有利かもしれない。21世紀の今も洋服が「現物」である以上(寿司職人が魚を触るように)その点は、結局昔とあまり変わらないのではないか。

ジャンルが何であれ、志望校に受かるかどうかは「暗黙知」がキー問題になると思う。これは音楽ライターを目指す人がレコードを聴きまくることや、アートキュレーターを志す人が休日になると美術館を巡り歩くことにより発現する「暗黙知」と同様である。一般的に「センスがいい」と言われる人は、一定数以上の「量」を体験していることと、体験の際の集中力が高いという点をクリアしている人が多いような気がする。3分間100問テストに慣れない受験生たちは「あぁ、まだこんなにある」「間に合わない…」「あれ?さんしちって21…だっけ?」などと考えながら問題を解いていくが、目指すは「考えるな、感じろ(Don’t think, Feel!)」の領域なのだ。加えて、それらの領域を「形式知」に変換できる人には「~に詳しい」という世評もオプションとして付いてくる。

ということで、「ドラゴンへの未知(または志望遊戯)①」で披露した鶴田のコーディネートを自己採点してみる。朝の5分間で考えて着替えて靴を履くまでが完了しているので、時間内に解答欄はすべて埋まっている。素材や色は適度にズラシているので、20年以上かけて培ってきた「洋服屋の暗黙知」は一応発揮できているようだ。強いて言うならばネクタイとシャツの柄合わせがちょっとBusy(忙しい)な感じに見える。とは言え及第点の89点くらいかな…?なんて思っていると、解答欄に書き込む字のクセがすごいという理由で61点だったりして。数学のテストなのに回答を漢数字で書いたのがいけなかったのかなぁ(笑)。そこはお前、感じなくていいから考えろよ、という。

 

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