BEAMS PEOPLE

  • ビームス窪 浩志
  • ビームス
    クリエイティブ
    竹中 智博
  • シンガー
    ソングライター
    槇原 敬之

「好き!」「楽しい!」そんな気持ちを原動力に活躍するBEAMSのスタッフは、人との出会いから生まれるモノやコトに自ら進んで挑戦しています。
グラフィックデザイナーの竹中智博もそのひとり。商品や販促物のグラフィックを担当していますが、今回、シンガーソングライターの槇原敬之さんのCDジャケットをデザインしました。槇原さんからのご指名です。その経緯やデザインの裏話を、槇原さんのツアー衣装を手がけるクリエイティブディレクター、窪浩志を交えて3人で語ります。

どういう化学反応が起きるのか、とても興味がありました

ビームス
10月10日にリリースされた『記憶』は、約2年ぶりのニューシングルですね。
槇原
今回は「実際に触れ合うことの大切さ」をテーマにつくりました。SNSの発達でコミュニケーションを取りやすくなりましたが、実際に「ここぞ」という時に心に効いてくるのは、ハグしてくれた時の温もりだったり、クリームを顔にぬってくれた時の手触りだったりします。作詞家の僕が言うのも何ですが、触れ合った時に「言葉にならない情報」が絶対にあるのだと思います。会話もそう。電話よりも実際に会ってしゃべった方がすごく弾みます。ですから「もっとみんなで触れ合って行こうよ」という気持ちでつくりました。
ビームス
その『記憶』のジャケットデザインを、うちの竹中に任せていただいた訳ですが、BEAMSがCDのジャケットをやっていることはご存知でしたか?
槇原
<ビームス レコーズ>は知っていましたが、BEAMSのスタッフの方がジャケットデザインを手掛けられているとは思いませんでした。
竹中
特に公表はしていませんので、ご存知なかったと思います。今回のきっかけは、槇原さんが中川翔子さんのCDジャケットをご覧になったからだと伺っています。
槇原
そう!見た時に「すごくいいジャケットだな」と思いました。今の音楽業界には無い、昔のジャケットの良さみたいなものを感じたので、「これ誰がデザインされたんですか?」って聞いたら竹中さんでした!
竹中
ありがとうございます。思い返せば、僕が槇原さんと出会ったのは「ビームス ジャパン」のオープニングを控えた頃でした。
槇原
僕は<ビームス ジャパン>のロゴマークの選考をやらせていただいたのです。そもそも、コンサートの衣装をBEAMSさんにお願いしてきた中で「もう一歩踏み込んだ活動ができれば」という気持ちが僕にはありました。「BEAMSのどなたかがCDのジャケットをデザインしてくれないかな」と強く思っていたところに竹中さんの名前が出たので、「絶対に次のシングルはやってもらう!」って決めたのです。
ビームス
レコード業界以外の人にデザインをお願いされることに抵抗はありませんでしたか?
槇原
とんでもない!僕はずっと、これまでのジャケットに無い雰囲気が欲しかったのです。
たとえば加工食品のデザインばかり手がけている人にやってもらうなど、まったく異なるジャンルの人たちが自分の音楽に触れた時にどういう化学反応が起きるのか?昔から非常に興味がありました。
ビームス
デザインにあたって、槇原さんは竹中にどのような指示を出されましたか?
槇原
オーダーは丸投げでしたよね。打ち合わせも1回だけ。ビジュアルものに関して、僕はあまり口を出しません。「曲を聴いてどう思ってもらえるか」というところでの化学反応が楽しいと思っているので。
竹中
おかげ様でヌード以外は自由にやらせていただきました(笑)。
槇原
ヌードはちょっと…まだ機が熟していないので…(笑)
「まだ」ですか(笑)?!
竹中
ご指名をいただいた時はめちゃくちゃ嬉しかったです。やりたくても出来ない人がたくさんいる中で、BEAMSにいるからこそいただけたチャンスだと思っています。僕の本業は、コラボレーション企画や<ビームス ジャパン>などに関するグラフィックデザインですが、このような社外の仕事も引き受けられる職場環境はありがたいと思いました。本当に「なんて楽しそう!」と自分の気持ちに火が点きました。
お尻にじゃなくて(笑)?
竹中
両方です(笑)。今回、デザインさせていただくにあたり、まずは楽曲を聴いてそして詞を読みました。その際に余計な知識を入れずに、真っ白な自分に「ぽんっ」と入ってくるようにしました。3案つくらせていただきましたが、僕は槇原さんご自身に出ていただきたかったので、すべて槇原さんをモチーフにしました。そしてタイトル通り「記憶」に残るジャケットとなるように、顔を使ったシンプルなレイアウトにもこだわりました。デザイン案のうち2つは温もりとか匂いとか「体温が感じられるもの」になるように手書きのイラストで、残りのひとつは槇原さんの子供時代と今の写真を組み合わせました。
槇原
その3案を「ばんっ!」と見せられた時の印象は本当に「面白い!」でしたね。僕のジャケットをつくってくれる人って、今までの曲や僕に持っている一般的なイメージをデザインに重ねてくれる人も少なくないのですが、竹中さんはすごくフラットに、今回の楽曲に基づいて出してきてくださった。すごく嬉しくて、ちょっと興奮しましたね。3つの中からすぐに写真を組み合わせた実際ジャケットになったものに決めたのですが、ひとつだけ引っかかりました。「鈴江(すずえ)からの写真提供が必要なのか…」って。
槇原さんのお母様!

「自分」という人間の本質が現れている写真が多かった

槇原
槇原鈴江っていうのがうちの母なのですが、鈴江がどこを狙って写真を出してくるのか不安でいっぱいでしたね(笑)。でも「上手くいったら、甘くない、良い意味で違和感のあるジャケットになるなと」思っていたので、ちょっと鈴江の出方を見てみました。
いや、お母様のセンスはすごく良かったですよ。メチャ可愛いかったですよね。
竹中
お母様が写真をいれてくださった封筒も可愛いかったです。
槇原
そう、封筒に動物のシールがたくさん貼ってありましたよね(笑)。僕はほんとドキドキで、「使えないものばかりだったらどうしよう」って思っていたのですよ。素っ頓狂な写真やボケボケの写真だったら竹中さんが困ってしまうし、そもそも、あんまり幼少の時の写真が無いんですよね。…この会話、なんか暗い影を落としますね(笑)。
竹中
僕も子供の頃の写真は少ないです(笑)。写真の枚数に関しては、「2枚以上お願いします」とお話ししたので、もし2枚しか来なくてAかBの選択だったら結構難しいなと思っていました。ところが、すごく大量に届いて選び放題だったのでとてもありがたかったです。「これはいいものになる」と感じて、デザインするのがさらに楽しくなりました。
すごく良い写真ばかりで、さらに保存状態も良くて、なかなか選べなかったよね。最終的にどうしてこの写真になったの?
竹中
単純に「可愛い」というのがパンッと入ってきました。さらに写真の構図や色合も良くて。ほかにも良いポーズの写真はたくさんあったのですが、顔がメインになる今回は「これで行きたい」と思いました。この写真は何歳ぐらいの時ですか?
槇原
3、4歳の頃に撮影したものだと思います。ほんとに澄んだ目をしていますよね、僕(笑)。まだ肝臓も綺麗だったんだろうな(笑)。それにしても(今回撮り下ろしたカットと)見事に色が合いましたね。撮影では目線が合うように僕の視線の位置を決めてくれたり、みなさんが準備をしてくれましたよね。僕には良いものができる時のセッションの予感というものあって、この時も「これはうまくいくな」っていう匂いがプンプンしていました。
竹中
撮り下ろした写真と合成するにあたり、子供の頃の写真はゴミや傷を取らずに、あえてそのまま使わせていただきました。綺麗にツルツルにして何もかもサラリとしてしまうのは嫌だったんです。僕はアナログ感という「ノスタルジック」が「記憶」と密接だと思っていて、意図的に当時の汚れとか傷を残しました。
槇原
なるほどね!僕は「自分の顔って変わり果ててしまったな」と思っていたんですけど、今回のジャケットを見て「パーツは一緒なんだ!」と思いましたよ。こんなにじっくりと自分の顔を見たことがなかったのですが、改めて見ると「おっ、目とかそのままなんだな!」って。鼻も一緒ですよね。ぜんぜん変わらない。
ぜんぜん変わらないですよ。ほら今の顔、子供の頃の表情と一緒です(笑)。結果的にたくさんのお写真がお母様から届きましたが、それらを見て槇原さんはどのように感じましたか?
槇原
「親はこういう風に僕のことを見ていたんだな」って思いましたね。メチャ可愛く撮れているものもあるんだけど、意外におちゃらけている写真も多かったので、「こんな風に捉えていたんだ」と親の目線がわかりました。そして「自分」という人間の本質が出ている写真が多かったですね。「すごい、鈴江やるじゃん!」と思ったら、そこから急激に母親と仲良くなりました(笑)。今では朝にFaceTimeで話したりします。
ビームス
改めてお伺いしたいのですが、槇原さんはこのデザインのどんな点が良かったのですか?
槇原
このデザインは思い付かなかったですね。仕事をやっていて何が楽しいかっていうと「はぁ〜、自分ではこんなこと思い付かないよ」と驚かされる瞬間です。もちろん「思い付かなかったよ」プラス「出来が良い」が前提。思い付かないけど「何じゃこりゃ?」みたいなものは世の中にいっぱいあります。「このジャケットでCDを出したいよね」「みんなに見せたいよね」と思えることが大事。それがこのデザインには集約されていて、本当にお願いしてよかったと思います。この流れで次のアルバムもぜひお願いしたいと思っています。
竹中
ありがとうございます!

僕たちがかっこいいことをやらないと、若い人は大人になりたがらない

ビームス
BEAMSでは2010年から槇原さんのコンサートツアーの衣装を担当させていただいています。今年の「Makihara Noriyuki Concert 2018 "TIME TRAVELING TOUR" 1st Season」のステージ衣装は、前回からガラッと雰囲気が変わりました。
槇原
今回は「BEAMSさんらしさ」の中でも、レーベルで言えば<インターナショナルギャラリー ビームス>のモードでしたよね。僕自身、昔から山本耀司さんや<Comme des Garcons>が好きなのですごく楽しかった!90年代の混沌とした部分を窪さんと共有できました。
この前のツアーは、槇原さんの1990年のデビューから今までの歴史をたどる楽曲がメインだったので、幅広い時代を表現しようと思いました。そして90年代は音楽も混沌としていたので「モードっぽいものが良いですよね」という話になりました。すべてをうまくミックスはできないけど、昔からのファンから新しいファンまでが楽しめる世界観を持たせつつ、90年代を感じ取ってもらえればと思いました。僕は、コンサートでファンの方たちが一番喜ぶのは、槇原さんのテンションが上がっている時だと思うんです。ですから、いつも一番に目指すのは、槇原さんがパフォーマンスをする上で気に入ってくださることです。
ビームス
衣装デザインのテーマやコンセプトの擦り合わせはどのようにやられていますか?
おもにLINEや電話です。「この映画のイメージだから」とか、「こういうセットリストになったから、こういう匂いがする感じで」と連絡が来るんです。「さすが詩人だなぁ」と思ってしまいます。結構、急に思い立ったように電話されることもありますよね(笑)。
槇原
失礼と思いながらも、忘れちゃいけないと思って(笑)。突然連絡してしまうのは、ちゃんと受け止めてもらえるとわかっているからです。
ありがたいです。そういうLINEや電話のやり取りが溜まって衣装のイメージが固まっていきます。槇原さんは非常に洋服に詳しくて、そして思い付いたものを全部言ってくださるので、作り手としては楽ですね。
槇原
窪さんは、いつも思いを超えて形にしてくれるので凄いなと思います。あと洋服を着る楽しさを奪っていないところが凄い!「衣装」なのに「服」として着る楽しさがバッチリ残っているので、バンドのみんなも毎回本当に喜んでいます!ありがとうございます。後ろにいるメンバーがかっこいいと真ん中の人も良く見えたりするんですけど、そこに気付いていない人って結構多いんですよね。周りを引くほど、真ん中が立つと思っているようですが、実はそうじゃなくって、後ろがかっこいいほどミュージシャンってかっこ良く見えるものなんですよ。ジャズバンドを見てもそうです。そういうところを窪さんにすごく支えてもらっている感じがします。
まさに今回の槇原さんの黒い衣装は、そういう気持ちでつくったのです!メンバーさんを色で映えさせる一方で槇原さんを真っ黒にして、逆に際立たせるイメージでした。それをちゃんと受け止めていただいたんですね。
槇原
ちゃんと伝わっています。ツアーが終わって、ビデオや写真で改めて自分たちの姿を見ると本当に感じることが多いですね。「この衣装じゃなかったらどうなっていたのだろう」と思うぐらいかっこ良く魅せてもらっているので、見直していてもワクワク、ウキウキします。
ビームス
これだけ長い間、ひとりの方が槇原さんの衣装を手掛けたことはあるんですか?
槇原
ないですね。ほんと、もう他の人では無理です。「やっと見つけた!やったー!」みたいな感じです。
ありがとうございます。でも、僕はいつも「きっとこれで最後だ…もう終わりだ…」と思ってやっているのですよ(笑)。
槇原
いや、もう素晴らしいですよ。だって、メンバーさんも含めて、こんなに素敵な格好をしている人たちが映っているライブ映像ってなかなか無いですよ。大人がかっこいいことをやっておかないと、若い人は大人になりたがらないですからね。それはデザインだったり、洋服だったり、音楽だったり。僕たちはそこを担っているのだから、「僕たちを見て!」「僕たちに憧れて!」ということをやらなくてはならないのです。

洋服を買いに行くって、いい気分を買いに行くこと

ビームス
槇原さんは BEAMSのショップでお買い物をされる時、スタッフについてどのように感じていますか?
槇原
どういう格好をしていても、みなさんちゃんとしているから好きなんですよね。ノリで色々なことをやっているように見えるんだけど、ちゃんと芯にひとつ自分の好きなモノがあって、「そこからは外れないよ」って伝わってくる。そんな人には、僕も何かを聞いてみたくなるのです。洋服でも何でもそうなんだけど、結局は店員さんの魅力で買っているので、その人がブレブレのノリノリの人だとダメ。正直に言って、僕たちが洋服を買いに行くって、いい気分を買いに行くんですよ。間違いなくワクワクした気持ちで買いに来ているのに、「何でその夢を覚ますようなことを言うの?」っていう人がいるところには行きたくないですね。BEAMSさんは販売スタッフさんであっても、会社の中の人たちであっても、みなさんすごくワクワク感を持っているじゃないですか。みんな楽しそうなんだけどノリで楽しいんじゃなくて、何かを追い求めているから楽しい。そんなところが魅力ですね。
ビームス
そんなスタッフたちとの仕事も楽しいですか?
槇原
ほんと楽しいですね!僕は「やっと座りの良いメンバーが見つかったな」って思っています。BEAMSさんと一緒にやっていると、「おっこれは!」「そうかもな!」みたいなことがたくさんあるのです。刺激がありますよね。これからもよろしくお願いします。
ビームス
窪・竹中
こちらこそ、よろしくお願いします!
原宿のBEAMS本社には、ミーティングやランチ、仕事など、スタッフが自由に使える共有スペースが各フロアにあります。中でも、1カ所だけ特別に設けられたバーカウンターでは、金曜日の18時以降に、ビールやリキュールといったアルコールやソフトドリンクを無料で楽しむことができます。部署を超えてスタッフが集まってくる時間です。普段は接することのない人と人とのコミュニケーションからは、新しいアイディアが生まれています。
各種イベントのスタッフTシャツから(株)ビームスの社内案件まで、竹中は幅広くグラフィックデザインを担当しています。道後温泉の入浴客用の浴衣や横浜DeNAベイスターズのグッズなど、異業種とのコラボレーション企画を手掛けることも多く、中川翔子さんのアルバム『9lives』ではジャケットのアートディレクションを担当しました。スタッフの名札を模した求人POPや、扇子をイメージしたインビテーションなど、ヒネリを効かせたデザインも。
『記憶』はNIVEAブランド2018年CMソングに書き下ろしたものです。「CD盤のラベルは、槇原さんからのアイディアを元にニベアクリームの缶をイメージしてデザインさせていただきました」(竹中)

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Profile

シンガーソングライター 槇原 敬之

シンガーソングライター

槇原 敬之

槇原 敬之

シンガーソングライター

シンガーソングライター。1990年デビュー。1991年の『どんなときも。』で自身初となるミリオンセラーを達成。その後も『もう恋なんてしない』『SPY』『Hungry Spider』などヒットを連発。2010年には自主レーベル「Buppu Label」を設立して、ミュージカルへの楽曲提供やテレビの情報番組への書き下ろしなど、精力的に活動の幅を広げている。これまでにシングル48枚、オリジナルアルバム21枚をリリースし、『世界に一つだけの花』(SMAP)など、さまざまなアーティストへ多数の楽曲を提供する。1969年、大阪府高槻市生まれ。

ビームスクリエイティブ 窪 浩志

ビームス

窪 浩志

窪 浩志

ビームス

(株)ビームス ディレクター。大学入学と同時にBEAMSでアルバイトを始め、卒業後に入社。これまでに「インターナショナルギャラリー ビームス」ショップマネージャー、<ビームス ボーイ>初代ディレクター、メンズカジュアルの統括、ビームス創造研究所クリエイティブディレクター、社長室室長などを歴任。数々のコラボレーション企画や新規ブランドの立ち上げに携わる。神戸芸術工科大学客員教授、(一社)日本流行色協会「JAFCAファッションカラー」選考委員。1962年、神奈川県横浜市生まれ。

ビームスクリエイティブ 竹中 智博

ビームスクリエイティブ

竹中 智博

竹中 智博

ビームスクリエイティブ

(株)ビームスクリエイティブ デザイナー。絵を描くことが大好きで20歳の頃にグラフィックデザイナーになると決心。専門学校での学びを経て広告プロダクションに入社。その後、複数のデザイン会社を経験して2013年にBEAMSへ。<ビームス ジャパン>のロゴをはじめ、同レーベルで展開されるコラボレーション企画や各種イベントなどのグラフィックを担う。趣味は水泳とスキンダイビングで、毎年、沖縄の離島を訪れては水深20メートルのディープポイントまで潜っている。1973年、神奈川県川崎市生まれ。

New release

Single

「記憶」

品番:BUP-50007
価格:1,200円(税別)

DVD・Blu-ray

「Makihara Noriyuki Concert 2018 “TIME TRAVELING TOUR” 1st Season」

2018年11月14日(水)発売予定