出会えた好きを大切に。

    COLUMN & ESSAY

    She is
    調査隊コラム
    つめをぬるひとが爪一筋で独立するまでの、愛に導かれた行動力

    「調査隊コラム:好きなものの愛し方は人の数だけ。」vol.1

    TSUMEWONURUHITO
    インタビュー・テキスト:松井友里撮影:小林真梨子編集:野村由芽

    Mar 18.2020

    つめをぬるひとさんが読者から集まった「好き」を形にするためのお悩みに答える

    ここからは、She is読者の方々から送っていただいた「好き」にまつわるさまざまな質問に、つめをぬるひとさんにお答えいただきました。


    Q. 好きなものを仕事にした時、好きなものを嫌いになってしまいそうで怖いです。

    A. 自分にとって音楽がそういう存在であるからこそ、爪のことを仕事にする怖さはあまり感じなかった。

     

    好きなものを仕事にした時、好きなものを嫌いになってしまいそうで怖いです。爪をぬることを仕事にする時怖い気持ちはありましたか?

     

    つめをぬるひと:私の場合、音楽に対してそんな風に思っていたんです。小さい頃ピアノを習っていたし、もともと映画音楽の仕事をやりたくて上京しました。でも、いつからか自分には音楽の仕事はできないと感じるようになって。

    雑貨屋でアルバイトをしていたときに、いろいろなことがあって、雑貨のことを嫌いになりそうになったんです。その当時、自分にとって一番好きなのが音楽だったので、仕事にすることでそんな風に嫌いになったら嫌だなと思って。だから音楽に関しては、仕事にせず好きでい続けようと思っていますし、自分にとって音楽がそういう存在であるからこそ、爪のことを仕事にする怖さはあまり感じなかったです。

     

     

    Q. 好きなことが多すぎて絞れません。
    A. 好きなものは、多ければ多いほど強みになる。

     

    つめをぬるひとさん初めまして! いつも可愛いネイルに癒されてます。私はいつか好きなことを仕事にしたいのですが、好きなことが多すぎて絞れません。でもいつかは一つのことを突き詰めるプロになりたいです! つめをぬるひとさんが今のお仕事についたきっかけなどあれば教えていただきたいです!

     

    つめをぬるひと:好きなものは、多ければ多いほど強みになると思います。私も絞らなかったおかげで、爪を通じて音楽や映画に関わることができているので、絞る必要は多分ないです。まずはなんとなくやりやすかったり、環境的に合っていると思えるものを選んでみたりして、それからほかの好きなものを組み合わせていったら楽しいのではないかと思います。

     

     

    Q. すきを仕事にしてから、それまでと変わったことはありましたか?
    A. 「一日中爪のことだけしていいんだ!」って感動しました。

     

    すきを仕事にしてから、それまでと変わったことはありましたか?

     

    つめをぬるひと:独立してからの話で言うと、今年の4月からフリーになったので、自分だけが変わったというより、世界が(新型コロナウイルスの影響で)変わったような感じで。

    前職のリモートワークを経て、現在も家で仕事をしていることで、仕事の環境自体には変化があまりなく、自分自身の変化にもあまり気づけていないんですけど、爪のことだけに時間を使えるようになったことは、すごく幸福感がありました。「一日中爪のことだけしてていいんだ!」って感動しました。

    塗りすぎて疲れたり、「肩がやばい」と思うことはあるんですけど、つけ爪をつくりたくないと思ったことは一度もないんです。休みの日には、爪のことを考えるのはよそうと思うんですけど、好きなことだから、どうしても考えてしまいます。コロナの影響で商品を委託している店舗が営業自粛や閉店になったり、イベントが中止になったりしましたけど、その分オンラインで買ってくださる方が増えたり、文章を書く機会や配信イベントなど、これまでやってこなかった仕事はかえって増えました。

     

     

    Q. 「好き」の方向に大きく舵を取れた理由としてどんなものがあるか伺いたい。
    A. どうしても自分でやりたいと思うことは、他の人では代わりが効かない。

     

    はじめまして、こんにちは。いつもTwitterを拝見しております。 私は文章を書くのが好きです。今の仕事は忙しすぎるしやめちゃいたいな、そう思いながら、帰りの電車ではいつも縋るように拙い文章を書いています。もっと書けるようになりたい、そのために努力したい。そう思いつつ、どうしても仕事をやめる勇気が湧いてきません。好きなことを、それも(こんな言い方しかできずに恐縮ですが)一般的に挙げられる「仕事」の形態から少し外れたことを仕事として選ぶのは、とても覚悟がいることなのではないか、と思います。 もともとは別のお仕事をされていたそうですが、「好き」の方向に大きく舵を取れた理由としてどんなものがあるか伺いたいです。

     

    つめをぬるひと:企業で働くことも、本人が納得できているのなら、それが正解だし、誰からも否定されるべきことではありません。でも一方で、どうしても自分でやりたいと思うことは、他の人では代わりが効かないですよね。だからこそ、好きだと思うことに舵を切れたと思います。

    もう一つの要素としては、会社員時代に積み重ねてきたことはフリーになっても絶対に活きると思ったからです。たとえば、請求書を発行したりするような、経理的なこともまったく苦じゃないですし、イベントでお客さんと話すことが好きだと思えるのも、営業事務の仕事をしていた影響があると思います。企業に属したこともあれば、フリーランスとして働いたこともある人生というのは、波もあるし奥行きも出て面白そうだなと思っています。

     

     

    Q. 何からやったらいいかわからない。
    A. 見てくださる方とのやりとりみたいなことをやってみてもいいのかな。

     

    私は最近、商業的にできるかわかりませんが3姉妹の各々好きでやってることがあることに気づいてそれをまとめて何か世の中に発信できないかと考えてます。だけど、何からやったらいいかわからないです。爪さんがこういうことをある種仕事にしようと思ったときどのように考えましたか。

     

    つめをぬるひと:私の場合は最初、とりあえずTwitterに描いた爪をアップしていったんですけど、そのときは仕事にしようとは思っていなかったんです。基本的にSNSが好きでやっていただけだったので、コツのようなものはわからないですけど、以前、Twitterで「好きなお寿司のネタを教えてください」と書き込んで、リプライ欄に「玉子」とか「いくら」とか、お寿司屋さんみたいに注文が来たものを爪に描いていって、10本分描いたらアップするということをやっていたんですよ。そうやって、見てくださる方とのやりとりみたいなことをやってみてもいいのかなと思います。

     

    Twitterで「好きなお寿司のネタを教えてください」と書き込んでリプライがきたネタを爪に描いた様子

     

     

    Q. 好きなものを相手が認めてくれないと不満。
    A. 「期待しないくらい」がいい。

     

    好きなものを相手が認めてくれないと不満に思います。どうすればいいでしょうか。

    つめをぬるひと:たとえば、私がつくっている爪って美容的ではないんですよね。だからネイルが好きな人にとっては「なんだこれ」と思われて当然くらいの気持ちでやっています。そもそもつけ爪というのも、知らない人からしたらとっつきづらいですよね。だから私自身はあまりそういうことは思わないのですが、「期待しないくらい」がいいのかなと思います。

     

    She is 読者の方から募集した「好き」なものを描く:「青いバラ」の塗り方

    最後に、She is読者の方から募集した「好き」なものを、特別に爪に描いていただきました。つめをぬるひとさんが選んだのは、「子供の頃から母が庭でよく花を育てていたことや、青いバラの研究に興味を持ったことから、花、特にバラの花が好きになりました。将来も花に関わる仕事がしたいと思っています」という投稿。青い薔薇の画像を見ながら、ベースを重ね塗りし、細い筆に持ち替えて、薔薇の花をささっと手際よく仕上げていきます。

    つめをぬるひと:赤い薔薇は前にも描いたことがあったんですけど、青い薔薇は初めてだし、実物は見たこともないので、画像を調べちゃいました。ベースにグレーのネイルを塗ってから、OSAJIの「Sorekara〈それから〉」という名前の青みがかったキラキラしたネイルを重ね塗りして、背景の青味がかったグレーを表現しています。

     

    青いバラを描くために用意したネイルたち

     

    ベースにグレーのネイルを塗った後、OSAJIの「Sorekara〈それから〉」を重ね塗りすることで、青みがかったグレーを表現

     

    細い絵筆でちょんちょん、とバラを描いていく

     

    続けて茎や葉を描く

     

    青いバラの完成!

     

    「いわゆる『ネイル』をやっている人らしくないことを、今後も爪で続けていきたい」と話していた、つめをぬるひとさん。先入観や既成概念にとらわれず、まずは「やってみる」ことで「好き」にまつわる可能性を広げていくようなスタイルを持つつめをぬるひとさんのあり方は、「好き」に対して焦ったり、迷ったりしたときの手がかりになるかもしれません。たくさんの「好き」があることは、どんな道に進んだときにも、きっと背中を押してくれるはずです。

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    PROFILE

    TSUMEWONURUHITOつめをぬるひと

    爪作家。CDジャケットやイベントフライヤーのデザインを爪に描きそのイベントに出没する「出没記録」、「身につけるためであり 身につけるためでない 気張らない爪」というコンセプトで爪にも部屋にも飾れるつけ爪の制作、爪を「体の部位で唯一、手軽に描写・書き換えの出来る表現媒体」と定義し、 身体性のあるファンアートとして、DOMMUNEの配信内容を描く「今日のDOMMUME爪」。これら活動を並行しながら年に数回、人に爪を塗る「塗る企画」を TONOFON FESTIVAL2017等の音楽フェスやその他イベントにて実施。

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