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22
Vincenzo Attolini
STILE LATINO Director
#NAPOLI #SARUTORIA
Oct. 11. 2017
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Oct. 11. 2017 / #NAPOLI #SARUTORIA

22 Vincenzo Attolini
STILE LATINO Director

& Tatsuya Nakamura(BEAMS Creative Director) Photography : Niki Takehiko スーツもジャケットも、新作のほとんどが店頭に並ぶ前に「予約完売」してしまうほど、ビームスのメンズドレス部門で一大人気を誇るブランド、<スティレ ラティーノ>。ナポリの名門アットリーニの長男として、幼少期からナポリ仕立てに精通し、腕を磨いたヴィンチェンツォ・アットリーニ氏が立ち上げたブランドだ。「着たときの、肩から首へかけてののぼりの吸い付きの美しさ、袖を通したときの快適さ、そして美しいシルエットは完璧」と、クリエイティブディレクターの中村達也も太鼓判を押す。その作りの全貌を、この目で見てみたい!という中村のリクエストにより、2016年に移転拡大したばかりというラティーノ自慢の工場に初潜入! “最高の着心地“の背景を、ヴィンチェンツォ氏と中村の話を交えながら特別に公開!

「ラティーノの工場」をやっと見ることができました

Vincenzo Attolini (以下、V.A.):
Buongiorno Sig.Nakamura !!! Welcome to Napoli, Welcome to our factory!!! ようこそ、我がスティレ ラティーノの工場へ!もう知り合ってかれこれ20年くらいなのに、ようやくナポリ(カサルヌオボ)まで来てくれて嬉しいよ!
Tatsuya Nakamura (以下、T.N.) :
私も、長らく「ラティーノの工場」を見たいと思い続けてきたので、やっと実現できて嬉しいです。見るからには、隅から隅までじっくり視察したいと思っていたので、今日は1日時間を取って工場見学をしたいと思います。エントランスの写真は、若かりし日のヴィンチェンツォさんと息子さんたちですね。息子さんたちは、こんな小さい頃から、工場に遊びに来ていたんですか?
V.A.:
そうですね。ナポリのサルトリアは、代々、父から息子へ技術を継承していくものだから、子どもたちは幼い頃から父の仕事を見て育ち、自身も知らず知らずのうちに技術を肌で覚えていくんです。私も、9歳の頃から、父について工場に入って生地を触ったり縫うのを見たりして、工場の空気感を肌で感じて、その後15歳でモデリストの学校に入って服作りを学んでいましたよ。
T.N.:
そうして、2005年1月に自身のブランド<スティレ ラティーノ>のファーストコレクションが出来て行ったのですね。ビームスでは、ブランドが始まった当初から取り扱っていますが、
とくに当時のイタリアブランドのジャケットと比べると、英国のヴィンテージ的な生地を取り入れたりして、生地のコレクションが他とは全然違うなという印象でした。ナポリのクラシックなテーラードを、モダンにした"スタイルのある服"というのが他にはなくて、とても新鮮でしたし、注目していました。
V.A.:
そうですね。生地のリサーチは、昔から熱心に行っています。今や色々なブランドで人気が出て、名前も有名になった「フェルラ」の生地なんかも、私は随分早い段階から取り入れていたんですよ!
T.N.:
工場に入ってみて、まず驚いたのは、コンパクトな空間の中に整理整頓がされていて、とてもクリーンだなと思いました。
V.A.:
毎朝、8時には必ずマシンのチェックをして、糸のテンションやスピードなどが狂っていないか、整備をきちんと行っています。1日に、4,5回は掃除もしていますよ。
T.N.:
職人さんは総勢何人くらいいるんですか?
V.A.:
約60人くらいですね。長い人では、工場長などは勤続30年という人もいます。裁断も、手縫いやマシンの部分、アイロンの部分とパート毎に行程は分かれていますが、働く職人の7割は、1人で丸縫いをできるほどテーラリングの技術をしっかり持っているんです。それも、いいジャケットが作れる秘訣の1つです。
T.N.:
なるほど。各々が高い技術を持っているから、それが着心地に反映されているのですね。1日に、どれくらい着数を作っているんですか?
V.A.:
日産30~32着というところですね。ハンドの部分はもちろん、マシンの部分も丁寧に縫っているので、1着完璧なものを仕上げるには、かなり時間を要します。

「第2の皮膚のような着心地」を実現する

T.N.:
なるほど!工場に入ったときの第一印象は、「音がほとんどしない」ということでした。仕事柄、イタリアで北から南まで、たくさんのジャケット工場を視察してきました。大量生産でマシンを多様する工場では、通常、「ダダダダダダッ……」と、ミシンで縫う音が工場中に響き渡るところが多い。ところが、スティレ ラティーノの工場の音は、とても静か。これは、手縫いとマシンを使い分けながら、マシンの部分もゆっくりとテンションをかけずに縫っている証ですよね。100%ハンドメイドの工場以外で、こんなに静かなところは他に見たことがありません。この仕事っぷりだったら、1日に量産できないのは納得できますね。

さらに工場の内部へ入ってみましょう……。各パートの中でも、ヴィンチェンツォさんが最もこだわっている部分は、どこですか?
V.A.:
全パートに情熱を注いでいるけどね(笑)、でも、強いて挙げるならば、
「ネック、ショルダー、スリーブ」だと思います。これは、いわばジャケットの「ハード」の部分だから。
T.N.:
なるほど。でも本当にそうですね。これは、スティレ ラティーノのジャケットを着れば、誰にでも分かることなんです。肩から首への吸い付きがとにかくよくて、腕も動かしやすい。そして胸周りのドレープも、非常に美しく立体的になっています。この着心地と立体感を作る秘密は、どこにありますか?
V.A.:
「第2の皮膚のような着心地」_それが、スティレ ラティーノのジャケットの目指すところです。いいジャケットは、着ているけれど着ていないくらいに軽く、皮膚と一体化するような着心地があります。それを実現するのは、数々の重要な行程があります。たとえば、肩線と胸には、本縫いの前にしっかりしつけをしています。本縫いの前段階のしつけも、きちんと手で縫っているので、より仕上がりが立体的になります。ここでは言えない、企業秘密のテクニックできれいな立体感を出す工夫もしているんですよ。また、襟裏のカラークロスのしつけも、マシンでなく手縫いにしています。見返しの内側にもしっかりパイピングをするなど、見えない部分にも手間をかけているんです。
T.N.:
アイロンも、プレスマシンを使わずにハンドアイロンで、とても立体的にかけていますね。
肩もしっかり前肩になるようにアイロンがけがされています。
V.A.:
あとは、芯地にもこだわっていますよ。生地と芯地の相性というのは双子みたいなものですから、生地の厚さや、作るジャケットのサイズによって最適なものを選ぶようにしています。職人も、ハ刺し(生地と芯地を添わせるためのしつけ)をかけて巧くいかなかったら必ず解体してやり直します。その結果、ドレープやシルエットが美しくなるんです。
芯地は、製品としては見えない部分ではありますが、ビルの基礎の骨組みと同じようなものですから、かなりリサーチもしていますよ。パーフェクトなジャケットを作るには、とにかく見えない部分にも注力する情熱が大事なのです!
T.N.:
外から見えない部分に、どれだけこだわっているか?というのも、良いファクトリーの証ですよね。生地の裁断まですべて1枚1枚手で裁断しているのにも、大変驚きました!
V.A.:
大量生産の工場ですと、マシンでレーザーカットするところも多いですが、スティレ ラティーノは全てに手裁断にこだわっています。これにより、柄のズレなどもなくなりますから、美しい仕上がりのスタートは、手による裁断といえると思います。

ビームスは「Best shop in Japan」

T.N.:
生地のコレクションも、毎年毎年センスがよくて驚かされます。どのように、セレクションを行っているのですか?
V.A.:
「ミラノ・ウニカ」(イタリアの生地展覧会)などで、先のトレンドを見ながら、自身の好みと合わせて選びます。若い人たちのセンスも重要ですから、最近では息子たちも連れて行って、選んでいます。
T.N.:
スティレ ラティーノでは、早くから取り入れていますが、やはり英国的な雰囲気のある生地は、今年も注目ですね。最近では、お客様からもとても人気があります。10月に開催するポップアップストアでは、通常取り扱いのないものが多数並びますから、色々と着比べてみて欲しいですね! ビームスのお客様に、ヴィンチェンツォさんから是非メッセージをいただけますか?
V.A.:
ビームスは、私がブランドを始めたころからの付き合いですが、「Best shop in Japan」の1つだと思っています。スタイルがあって、店の雰囲気もよくて、スタッフの皆さんも服に熱心で知識がある。だから、お客さんももし、選びに迷ったら、スタッフの皆さんに、たくさんリコメンドしてもらうのが良いと思います。是非、たくさん買ってくださいね!(笑)
T.N.:
今日、工場に来て、スティレ ラティーノの着心地が何故こんなに良いのか、その舞台裏をしっかり見ることが出来て、本当に良かったです!
是非、またビームスにも遊びに来てくださいね!
Vincenzo Attolini
Vincenzo Attolini
(STILE LATINO Director)

ナポリの名門アットリーニ家の長男として生まれ、幼少期から工場へ出入りしナポリの仕立てに自然に触れ育つ。15歳からテーラーの技術を学び、その後モデリストへ。2005年より自身がディレクションを務める<Stile Latino>のファーストコレクションをスタート。そのハイクオリティーな素材使いと、熟練職人の手による縫製で人気を博している。

Tatsuya Nakamura
Tatsuya Nakamura
(BEAMS Creative Director)

1963年新潟市生まれ。母の実家は羅紗屋(生地商)、父方の祖父は靴職人という環境に生まれる。大学在学中にビームスでアルバイトを始め、卒業と同時に入社。ビームス 渋谷、ビームスF店長、ビームスFバイヤーを経て現在ビームスのドレス部門を統括するクリエイティブディレクター。

オフィシャルブログ『ELEMENTS OF STYLE』(https://ameblo.jp/beams-class/)
オフィシャルインスタグラム『beams_nakamura』(https://www.instagram.com/beams_nakamura/?hl=ja)

<Stile Latino>MORE VARIATION開催

「ビームス ハウス 丸の内」「ビームス ハウス 六本木」にてビームスでは初となる<Stile Latino>MORE VARIATIONを開催いたします。通常取り扱いのあるモデルに加え、会期に合わせてご用意したキャメル素材を用いた贅沢な素材使いのコートやビジネスシーンにも活躍するシックなデザインのスーツなど豊富なラインナップをご用意。至極の一着に出会える貴重なこの機会、是非店頭に足をお運び下さい。
詳しくはこちら

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BEAMSにまつわるモノ・ヒト・コトをあらゆる目線から切り取り、
ヒトとヒトとのお話から”今気になるアレやコレ”を
紐解いていく連載企画 【TALK】。

洋服のデザイナーからバイヤー、フォトグラファーやモデルなどなど。
様々な職種のプロフェッショナルから
”今気になるアレやコレ”を伺います。

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