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Mitsumasa Ikeda
Ikeda Kasuri Kobo
#KURUMEKASURI #CATHRI
Mar.16. 2020
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Mar.16. 2020 / #KURUMEKASURI #CATHRI

33 Mitsumasa Ikeda
Ikeda Kasuri Kobo

& Sachiko Sato(BEAMS Planets Director / CATHRI Director) Photography & Text: BEAMS 1957年、木綿では初となる重要無形文化財に選ばれた久留米絣(くるめかすり)。括りとよばれる技法であらかじめ染め分けた糸(絣糸)を用いて製織し、文様を表したその織物は、まさにアートそのもの。そんな久留米絣を取り入れたブランドがこの春デビューします。それが<CATHRI(カスリ)>。今回は、久留米絣協同組合の理事長を務める池田光政氏と<CATHRI>のディレクターである佐藤幸子によるスペシャルトーク。久留米絣の歴史から、<CATHRI>が生まれた経緯、そして今後のビジョンをお二人に語っていただきました。

久留米絣の美しさを日本だけでなく世界中に広めたい

Mitsumasa Ikeda(以下、M.I):
今回この<CATHRI>というブランドをきっかけに、佐藤さんと一緒に取り組みをさせてもらってますが、そもそも佐藤さんが久留米絣を知ったのはいつ頃ですか?
Sachiko Sato(以下、S.S)
2年前です。2018年の秋に福岡のマリンメッセで「KOUGEI-EXPO」という全国の工芸品が一堂に介すイベントが開催され、私は博多織を見たくて来場していました。で、色々な工芸品を見て回ったんですが、絣の工程を披露していた久留米絣のブースがとにかく面白くて1時間くらいそのブースから離れなかったんです(笑)。絣ができるまでのロングストーリーや、作品自体の素晴らしさに感動しちゃって、色々な話を聞かせていただいたんです。それが久留米絣との最初の出合いでした。その時はそれで終わったんですが、昨年の夏頃にうちのスタッフから「福岡県が久留米絣を広めるためのアイデアを募ってる」と聞いたんです。絶対に私がやらせてもらいたいと思い、プレゼンをさせてもらったら、見事に選ばれました。それが、この<CATHRI>です。
M.I:
この<CATHRI>という名前はどうやって生まれたんですか?
S.S:
あまり奇をてらう名前は嫌で、シンプルなものがいいなぁと漠然と思っていたんです。で、久留米絣の絣ってワードの響きがいいなぁと。他にも色々と考えたんですが、それ以上のワードが出てこなかったのでカスリという名前にしました。ただそのままだとつまらないので、アルファベットの場合は「KASURI」ではなく「CATHRI」にしています。
M.I:
わかりやすくて、とてもいい名前ですよね。で、ブランドをやることが決まったその翌月に生地の選考があり、福岡に来ていただいたんですよね。
S.S:
はい。久留米絣を作られている20人くらいの織元さんが生地をご用意してくださいました。どれも素晴らしかったんですが、その中から3社の生地を選ばせていただいたんです。で、その中のひとつが池田さんが代表をされている池田絣工房さんだったんですよね。でも池田さんとはお会いできず…。
M.I:
そうでしたね。息子に託して、私はラグビーワールドカップを観に行ってました(笑)。

10代から90代までと幅広い世代に愛されるデザインが私の理想

S.S:
(笑)。そもそもの話で恐縮なんですが、久留米絣というのはどうやって生まれたのでしょうか?
M.I:
今からおよそ220年前に井上伝(いのうえ・でん)さんという13歳の女の子が創製しました。幼い頃から白木綿(しろもめん)を織り上げて販売していたそうなんですが、ある時、着古した藍染めの着物に白い斑点の模様があることに気づいたんです。それは擦れて生じた単なる染めむらだったのですが、文様として織り上げたいという思いが強くなり、着物を解いて織り方を調べたそうです。それによって文様入りの織物を織れるようになりお伝絣(おでんかすり)と呼ばれるようになりました。その柄の入った織物は当時高値で売買されるようになり、そうなると織り方を学びたいという人も増えていくわけです。商売になるから。その井上伝さんが凄いのは、惜しげもなくその技術をみんなに教えたことです。多い時には2000人のお弟子さんがいたそうなんですが、全員にお伝絣の技術を伝授しました。そんな子供の好奇心から生まれたのが久留米絣なんです。
S.S:
13歳の女の子が着物を解いて織り方を調べたという時点で驚きますが、その技術が久留米の一大産業にまでなったことがまた凄いことですよね。
M.I:
そうですね。1957年には木綿で初めて国の重要無形文化財に選ばれたのもそうですし、こんな素敵なブランドが生まれたのも井上伝さんのおかげです。この<CATHRI>を作る上で、コンセプトなどはあったんですか?
M.I:
長年久留米絣を作り続けてきていますが、全く想像もできないデザインでした。もちろんそれはいい意味で。とても感動しましたね。その時に、久留米絣の可能性がもっともっと広がると思いましたし、より多くの人に久留米絣の存在を知ってもらえると確信しました。佐藤さんは商品をデザインする上で、こだわったことはありますか?
S.S:
今回のコレクションは細部に、手織りと機械織りの異なる久留米絣を使うことで、それぞれの柄に目が止まるようデザインしました。細部のみに使用している理由としては、元々久留米絣は高価なものなので絣を多く使ってしまうと、日常着として気軽に着ることができなくなってしまうということもあります。あとネームタグにもこだわりがありまして、<CATHRI>の文字をブルーのグラデーションにしてるんですが、これは藍染めを表現しています。納得のいくグラデーションを出すためにネーム屋さんに協力してもらい何回もサンプルを作り直しました。またこのタグはプリントではなく、久留米絣同様、織りで仕上げています。

伝統を継承し、そして継続するためには、変化が不可欠

M.I:
このネームタグ、素敵ですよね。今後、この<CATHRI>というブランドをどうしていきたいですか?
S.S:
丁寧に作り続けていきたいと思ってます。丁寧というのは、久留米絣を作り続けている方々に対して、という意味です。今回の取り組みは久留米絣の将来を担う若い世代の方々とやらせていただいてるんですが、新しいアイデアが生まれると、逐一その方々に「お父さまやおじいさまにも聞いてみてください」ってお願いしています。それは久留米絣の変えてはいけないところと変えても大丈夫なところを確認したいから。これまで久留米絣に関わっているすべての世代の方々が「それ、いいね」と思っていただかないと意味がないと思っているからなんです。私自身まだ久留米絣を熟知しているわけではないので、<CATHRI>を通して色々と学びながら一歩一歩進んでいきたいと思ってます。そして、最終的には久留米絣の素晴らしさを日本だけでなく、世界の人に知ってもらいたいですね。海外のカルチャーとミックスさせることで、今までにない化学反応を起こせたら面白いのではと。それが私の役目であり、<CATHRI>というブランドの役目だと思っています。
M.I:
伝統産業というのは、その時代その時代で変化していきます。むしろ変化しなければいけないと思ってます。着るものだって、着物から服に変化をしましたよね。であれば伝統も変わらないといけないのです。もちろん頑なに変えないという人がそれはそれでいいと思います。私がこの業界に入ったのはおよそ50年前なんですが、その当時は久留米絣を手がける機屋が120社ありました。でも、今は6分の1の20社しかありません。その一番の原因は、時代に対応できたか、どうか。その伝統を継承していくことはもちろん重要なんですが、時代の変化に対応していく、つまりは売れないと意味がないんですよね。でないとその伝統も、そして産地も滅びてしまいます。なので、佐藤さんに久留米絣を使って私たちが想像もつかないアイデアをこれからも具現化し続けていって欲しいですね。
Mitsumasa Ikeda
Mitsumasa Ikeda
Ikeda Kasuri Kobo

池田光政/1952年生まれ。100年以上に渡り、久留米絣製造・販売をする『池田絣工房』の3代目代表。22歳から家業の久留米絣製造に従事し、24歳の時に重要無形文化財久留米絣技術伝承者に認定。63歳の時には重要無形文化財久留米絣技術保持者に認定される。同年より久留米絣協同組合理事長に就任し、日本中に久留米絣の素晴らしさを伝え続けている。

Sachiko Sato
Sachiko Sato
(BEAMS Planets Director / CATHRI Director)

佐藤幸子/1974年生まれ。1995年にBEAMS入社。ショップスタッフを経て、1999年より雑貨に特化したレーベル<bPr BEAMS>のバイヤーに。その後、2010年より<Ray BEAMS>のディレクターとなり、2014年からは“ニュースタンダードキオスク”をコンセプトにした<BEAMS Planets>のディレクターに就任。それと並行し、今シーズンデビューしたブランド<CATHRI>のディレクターも兼務。
INSTAGRAM: @cathri_official
INSTAGRAM: @beamsplanets

Information.

重要無形文化財である久留米絣を取り入れた
ブランド<CATHRI>がこの春デビュー



詳しくはこちらよりご確認ください。



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BEAMSにまつわるモノ・ヒト・コトをあらゆる目線から切り取り、
ヒトとヒトとのお話から”今気になるアレやコレ”を
紐解いていく連載企画 【TALK】。

洋服のデザイナーからバイヤー、フォトグラファーやモデルなどなど。
様々な職種のプロフェッショナルから
”今気になるアレやコレ”を伺います。

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