BEAMS的日本遺産有松の巡り方

BEAMS meets 日本遺産・有松のヒト・モノ・コト BEAMS meets 日本遺産・有松のヒト・モノ・コト

ダーシェンカ 藏

商家の古い蔵の中に、
小さなパン屋が凛と佇む

旧・絞り商家「神谷半次郎邸」の蔵の中に、ひっそりと小さなパン屋が一軒。おいしくて安心安全、手作りの薪窯焼きパンが常時40種類程度揃っています。和の趣ある店内に、ふわりと香るパンの甘い匂い。そこにいるだけでやさしい気持ちになれる不思議な空間です。

名古屋市緑区有松2304
☎︎052-624-0050
10:00~17:00 月・火曜定休 http://ishigamapan.jp/

cucuri

〈cucuri〉ドレスシャツ30,800円、ストレッチパンツ29,700円

今の時代と絞り文化を、
密接につなぐ

有松の地で卸製造業を3代続けている「山上商店」が、若手女性デザイナーとともに打ち出したアパレルブランド〈cucuri〉。絞り、くくりのデザイン的面白さに着目し、現代のライフスタイルへと自然に落とし込まれたファッションアイテムが揃います。

名古屋市緑区有松2408
☎︎052-625-1202
10:00~16:00 無休(年末年始のみ休み)  https://www.cucuri-shibori.com/

資料もない、誰も技法も知らない。5年の歳月をかけて復活した豆絞り

鵜飼小百合さん(張正)

――明治30年に有松へと移り住み、布張り、絵付けの仕事を経て、有松・鳴海絞りに携わるようになった「張正」。今では、華やかで繊細な伝統柄「雪花絞り」で有名ですが、実は「張正」は昭和30年、幻と言われた「豆絞り」の復活に成功した歴史的な場所なのです。それは、ある新聞記事から始まったそう。
鵜飼「昭和24年の中日新聞に〝幻となった豆絞り〟という記事が載ったそうで、その記事を読んだ大阪の手ぬぐい屋が有松(竹田嘉兵衛商店)へと豆絞り復活の話を持ち込んだのが始まりです。ただ、有松には豆絞りを行っていた実績も資料も何もなく、うちは当時から〝板締め〟の雪花絞りがメインだったので、祖父が板締めで豆絞りを再現する方法の模索を始めました。と、ある日。知多(布土)の海水浴場に行った祖父が偶然、豆絞りの手ぬぐいを持っている海水浴客を見つけて、初めて豆絞りの実物を手に取る機会に恵まれたそう。取り組み始めてから5年、昭和30年に板締めによる豆絞りの再現に成功しました」。
佐野「その新聞記事には、有松・鳴海絞りという記載があったんでしょうか?」
鵜飼「記事の写真の豆絞りは〝綿〟だったそうで、綿の絞りであれば有松(絹であれば京都)。もしかしたら有松で作られたものなんじゃないかと話を持ち込んだそうです。江戸時代の浮世絵に歌舞伎役者が豆絞りを首に巻いている絵柄があるので、江戸時代に豆絞りがあったのは間違いないですが…当時の技法は誰にも分かりませんし、もしかしたら1点ものだったのかもしれません。ただ祖父は、豆絞りを〝量産すること〟を念頭に置いて再現を試みたため、5年の歳月が必要だったんだと思います」。
佐野「新聞記事があって、中日新聞を大阪の人が読んで、有松へと話を持ち込んで、海水浴場で豆絞りに出合って…そのすべてのコトがつながったことで、今の時代にも、目の前に豆絞りの生地(反物)が実在する。その偶然、話を聞けば聞くほど不思議なご縁ですよね」。
鵜飼「現状は跡継ぎがいないので、祖父がやっとの思いで復活させた豆絞りも、継ぐ人がいなければ途絶えてしまうものです。私の気持ちとしては、この有松という場所で守っていってもらいたい。有松で生まれたものなので、〝有松のヒト〟に受け継いでいって欲しいです」。

張正

名古屋市緑区鳴海町米塚40
☎︎052-621-1044 https://siboriharisyo.jimdofree.com/

わいん商アン・ベロ

ワインを通して、
人と人をつなぐ場所

自転車(アン・ベロ)でフランスのワイナリーを巡ったオーナーが営む、ワイン専門店。実際に生産者と向き合ってきたオーナーが選ぶのは、名前や価格ではなく、オーナー自身が心を動かされた1本ばかり。ワインを挟んだコミュニケーションが生まれる場所です。

名古屋市緑区有松2624
☎︎052-621-0027
12:00~18:00(バル営業は金曜19:00~23:00、土曜18:00~) 日・水曜定休  http://www.envelo.co.jp/

有松・鳴海絞会館

歴史を知って学んで、
改めて魅力に気づく

歴史的にも工芸的にも価値のある貴重な製品や資料を展示しているほか、地元の職人たちによる実演を通じて、地域に根付いた絞りの文化を発信しています。有松・鳴海絞りの歴史とその魅力を、未来へと伝えていく情報発信拠点。

名古屋市緑区有松3008
☎︎052-621-0111
9:30~17:00(実演は~16:30) 無休(臨時休館あり) https://shibori-kaikan.com/

早恒染色

生地を開いたときの、
素晴らしい感動を

60年以上続く染色工場「早恒染色」では、所要時間1時間程度の気軽な絞り体験から、糸と針を使う本格的なものまで、時間や経験に合わせて選べるメニューが用意されています。ハンカチや手ぬぐい、Tシャツに、自分なりの有松・鳴海絞りを表現して。

名古屋市緑区有松1034
☎︎052-621-3705
9:00~17:00 日曜、祝日定休

――有松で絞りを営む家系に生まれ、5代目にあたる村瀬弘行さんは、20歳の時にアーティストを志し海外へと留学。日本から離れたことで改めて家業(有松・鳴海絞り)を見つめ直し、2008年にドイツで会社を設立。下請け業を軸としていた家業を、オリジナルブランド〈suzusan〉へと大胆にシフトチェンジさせました。デュッセルドルフ在住の村瀬弘行さんに、オンラインでお話を伺いました。
佐野「私も出身は名古屋ですが、今は東京から名古屋を見ています。村瀬さんもやはり、外から有松を見たことが大きかったのではないでしょうか?」。
村瀬「モノの場所を移すことで価値は変わる。自分が内(有松)にいたときに見えていた有松・鳴海絞りのイメージが大きく変わりました。ヨーロッパの人たちの反応を見ていると、(有松・鳴海絞りは)カッコイイものなんじゃないかと」。
佐野「場所を移すことで価値を変えて、そこに新たなストーリーを付ける。村瀬さんの経歴を見ていると、これからの有松・鳴海絞りもおもしろいな、可能性があるなって期待してしまいます」。
村瀬「この2年、コロナウイルスによって世界経済が止まり、それによってモノの価値の見直しも行われていると感じています。同じモノを大量に早く作ることが正しかったのか?世界が足を止めた瞬間だったのかもしれません。そんな中で、(手仕事による)不均等なものに新たな価値があるのではないか。〈suzusan〉の取り扱い店舗は日本が13%、ヨーロッパが75%を占めていますが、こちらのお客様は、そこ(不均等さ)を面白いと感じてくれています」。
佐野「僕らにもその役割があると思いますが、もっと日本でも、海外で評価される有松・鳴海絞りとして広げて欲しい、伝えて欲しいですね。日本人は〝逆輸入〟のようなストーリーのあるモノが好きだと思いますし、何よりも〝モノ〟に説得力が生まれる」。
村瀬「5年間は日本で販売しないと決めて始めたブランドだったのですが、それは新しい価値を認めてくれる新しい使い手がいなければ、難しいだろうなと思っていたからです。パリの有名なセレクトショップで取り扱われている、有名ブランドとコラボした、そんな事実こそ新しい使い手に目を向けてもらえるキッカケになる。新しい使い手となる今の若い子たち(Z世代)は、驚くほどに情報収集能力が高いですしね」。
佐野「10年以上にわたって有松・鳴海絞りを外から見続けていて、もっとこうしたい、もっとこうしたらいいのにと思うことはありますか?」
村瀬「モノを海外に出す(場所を移す)ことのスタートラインには立てたので、次はモノを通してのヒトの循環、文化の循環を生んでいきたいなと思います。ひとつの例としては、パリのセレクトショップで〈suzusan〉の商品を購入していただいたお客様が、後に有松を訪れてくれたことがありました。海外の方が名古屋を訪れる、ましてや有松を訪れるなんて人生で数回、1回あるかないかのことだと思いますが、それが思い出となって残っていく。あのときのあの服、みたいに記憶されていく。そういう循環を生んでいきたいですね」。

suzusan factory shop

名古屋市緑区有松3026
☎︎052-693-9624
11:00~17:00 水・木曜定休
〈公式ウェブサイト〉 https://www.suzusan.com/ja/ 〈公式オンラインストア〉
www.suzusan-onlinestore.com 〈Instagram〉 @suzusan_factoryshop

服部家住宅

時代を超えた建物だけの、
力強くてやさしい空気を

寛政2年(1790年)に創業した絞り問屋で、屋号は「井桁屋」。主屋や座敷からなる店舗並居住部、井戸屋形、客室部、土蔵計6棟、門並門長屋計2棟が県指定有形文化財になっています。有松の町並みを形成する重要な建物のひとつ。

名古屋市緑区有松2313
☎︎052-623-1235(井桁屋)
10:00~17:00 不定休

手打ちめん処 寿限無茶屋

コシの強い手打ちうどんを、
古き良き旧家で

築100年を超える旧家の雰囲気にくつろぎながら、本格的な手打ちうどんを味わえます。ここの名物は、3年間熟成させた自家製梅干しを使った「梅おろしうどん」。手打ちならではの圧倒的な麺の“コシ”の違いを存分に味わって。

名古屋市緑区有松2339
☎︎052-624-5006
11:00~15:00(LO14:30)、17:00~21:00(LO20:30) 木曜、第3水曜定休  http://www.mc.ccnw.ne.jp/jyugemu/

革絞り専門店 くくる

革を絞るという、
絞りの新たな表現方法を

有松・鳴海絞りの技法を革に施すことにより、絞りの新たな可能性に挑戦。括りはもちろん、染色、デザイン、縫製に至るまで自社で行うこだわりにより、オリジナリティ溢れるアイテムを次々に生み出しています。

名古屋市緑区有松1035
☎︎050-5437-4136
10:00~17:00 金・土・日曜のみ営業 https://kukululeather.com/

日本遺産(Japan Heritage)とは?

日本遺産とは、文化財や伝統文化に対して、その歴史的経緯や、世代を超えて受け継がれている伝承・風習など含め、それらをひとつの「ストーリー」として遺産に位置づけるもので、文化庁により認定と支援の取り組みが行われています。有松のまちが歩んできたストーリーは、2019年5月に、文化庁から日本遺産に認定されました。

日本遺産 STORY♯72

江戸時代の情緒に触れる絞りの産地 ~藍染が風にゆれる町 有松~

どこまでも広がる藍色の空の下、藍で染められた絞り暖簾が風にゆれる古い商家の落ち着いた佇まい。絞りの町「有松」には、江戸時代の浮世絵さながらの景観が今も静かに広がっています。
「ほしいもの 有松染めよ 人の身の あぶら絞りし 金にかえても」この歌を詠んだ『東海道中膝栗毛』の主人公の弥次さんは、絞りの素晴らしさに魅せられて手拭いを買いました。旅のお土産として、世界に知られている有松の絞りはいかがですか。四百年の歴史を持つ有松の江戸文化は、今も多くの人々を魅了しています。

EVENT INFORMATION

3月 第3日曜有松天満社春季大祭・祈年祭
菅原道真公の命日の時期に合わせて行われる天神様のお祭り。
五穀豊穣を祈る祈年祭も同時開催。
6月 第1土・日曜有松絞りまつり
400年以上に渡り脈々と受け継がれてきた絞りの技が、東海道の町並みを舞台に披露されます。
10月 第1日曜有松天満社秋季大祭・有松山車まつり
豪華絢爛な山車3輌(布袋車・唐子車・神功皇后車)が、からくりを披露しながら東海道を曳行されます。
10月中旬〜11月中旬晩秋の有松を楽しむ会
有松の町並みに文化とアートが融合するイベント。生け花やお茶席、町家ライブなどが開催されます。

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