Something Nice,Someone Nice
REMI RELIEF

FEATURE | volume.3
10年間、なぜ年を重ねるごとに
<レミレリーフ>が愛され続けてきたのか

デニムの産地、岡山県児島市に自社工場を構え、2008年にスタートした<REMI RELIEF(レミレリーフ)>。
「今のところインディゴ染めできないものはなかった」という10年を、改めて振り返ります。
設立時とともにバイイングしてきた<BEAMS PLUS>にとって、ここのインディゴを加工する技術と熱意は、欠かせないものとなりました。
10年間、なぜ年を重ねるごとに<REMI RELIEF>が愛され続けてきたのか、その理由はものつくりの姿勢と、
デザイナー・後藤豊さんの優しく謙虚で、どこかお茶目な人柄にありました。
児島の工場の風景、後藤さんの言葉を紡ぎながら、魅力の核心に触れていきます。

構成・文小澤匡行写真山本あゆみ
後藤豊(Yutaka Goto)
国内ブランドの企画を経て、2007年に独立、2008年の春夏より<REMI RELIEF>をスタート。ブランド名は「REMI=工夫、創造」、「RELERF=省く」を組み合わせた造語からなる。デニムの産地として知られる岡山県児島市に自社工場を設立し、素材の染色から加工までを一貫して行う。古着のように自然に加工された素材とモダンなシルエットの組み合わせが、幅広い人気を集めている。
http://www.remirelief.jp/
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設立時のこと、
<BEAMS PLUS>との関わりについて
「2007年の8月に<REMI RELIEF>を立ち上げましたが、その前は量販系のアパレル会社で企画をしていた普通のサラリーマンです。独立したばかりだったので、最初はどこか気に入ってくれるところがいたらいいな、と思っていたくらい。で、サンプルが20点くらい上がり、その次に上がるまでに時間があったらから、BEAMSへ営業しに行ったんです。電話だと電話越しに断られちゃうから、直接行ってみようかなって。でも会社に着いたものの、どこに行けばいいかわからなくて。受付の女の人に「バイヤーさんいますか?」って聞いたら、当時バイイングをされていた方が出てきたんですよ。「あれ、後藤さんどうしたんですか?」って。<BEAMS PLUS>の立ち上げの時に、前職でちょっとだけスウェットのお手伝いをしたことがあったんで、多少の面識はあったんです。で、「ブランド始めたんでちょっと見てください」って言ったらその場で見てくれて。今じゃあね、あんまり考えられないことですけど」
「僕、ただの一般人としてBEAMSを見ていたんで、その中の詳しいレーベルとかよくわかってなかったんです。<BEAMS PLUS>だけ、なんとなくわかってたから、むしろ<REMI RELIEF>とは合わないかな、って思ってました。<BEAMS PLUS>は1960年代のオーセンティックでトラディショナルなイメージだったので、シルエット的にちょっと違うというか。扱ってもらえないかと思ったんです。うちは西海岸がベースにあるので、細くてシュッとしているでしょ」
<REMI RELIEF>は最先端のトレンドを追い続けるようなブランドではないんですよ。<BEAMS PLUS>は変わらない良さを大事にするレーベルだから、いいものをコツコツと作り続け入れば、ちゃんと評価してくれるところが、僕たちのスタンスに合っていました。
「最初にやったのは、確かロンTでした。7分袖くらいの、白とネイビー、杢グレーもあったかな。名古屋から東京に出てやろうと思ったのには理由があってね。東京ブランドを見ていると、みんな服飾の専門学校とか出ているから、布帛を作るのはうまいんですよ。デニムとかもちゃんと加工してたりする。でもカットソーとかの加工なら東京ブランドと勝負できるんじゃないかって。で、加工やるなら自分で工場を持っていないとってことになって。他所に頼って生きてる感じって嫌じゃないですか」
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なぜ、児島に工場を持ったのか
と言う問いに対して
「その工場でなにかできても、そのレシピは結局その工場のものになっちゃうから、他のメーカーがお願いしても作れちゃうし。加工って、やっぱり経験なんです。失敗したことがデータになって。蓄積されて。これをやったらダメで、この数値ならこうなるって。失敗の数が多ければ多いほど、成功する確率はどんどん高くなるんですよ」
「工場を構えた最初の半年は準備段階で、その間は世に出すものは作ってなかったです。ずっとデータを集めていた感じ。自分たちがやりたい加工はこのくらいの時間がかかって、このくらいの枚数は現実的に作れるとか、そういうのがある程度分かってからスタートした感じですね」
「自分たちで将来のプランや目標を具体的に立てたところで、その通りに行くわけじゃないけど、ものつくりを頑張る、品質を高めるとかは自分でできるじゃないですか。できるところだけ一生懸命やって、あとは出たとこ勝負でしょ。ものがよければ買ってもらえる、そんな気持ちでやっています」
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インディゴ染めへのこだわりについて
「スウェットを、もっと古着っぽい雰囲気で表現したいっていう<BEAMS PLUS>からのリクエストがあって。じゃあちょっと古着の原理を調べて、同じ色落ちをさせてみましょうかってことになりました。古着には染料が乗ってるんですけど、染料って自然物質じゃなくて、化学物質なんです。それを自然の綿にくっつけるのは、”つなぎ”がいるんですよ。あとはフィクサーっていうアミノ酸でできた糊みたいなものが必要で。綿に入っているのがセルローゼっていうアミノ酸で、染料をくっつける接着剤がセルラーゼっていうアミノ酸。それが熱と酸化結合でくっついているんです」
「じゃあ何で色が落ちるのって話に戻ると、空気中の水素が(洋服にある)セルローゼに反応して付着するんですけど、太陽熱や温度があると、水素の方に(接着剤にある)セルラーゼのアミノ酸がくっつきます。それが酸化結合すると加水分解して、朽ち果てちゃう。それが古着の原理なんです。で、それを大きな釜の中に服を入れてやるとなったら、空気だけじゃ足りないから液体水素を入れて、水素濃度をすごく高くするんです。日常の大気の水素が1とすると釜の中は100くらいかな。で、80度くらいまで温度をどんどん上げる。すると日常の倍以上の速度でどんどん水素が結合するので、5年、10年分の時間を短縮することができるんです。スペシャルな加工ってのはそうやって生まれているんです」
「BEAMSのバイヤーさんはいろんなもの見てるしご存知だから、リクエストのレベルが高いんです。『ナイロンをインディゴに染めてくれ』とか、普通染まらないですからね 笑 いつも難しいお題を与えてくれるので、結果的に僕たちの技術が上がって、新しいものが応用できるようになっていくって感じですかね」
「まぁでも答えられないとプロとしてカッコ悪いじゃないですか。『やれますか?』って聞かれたら『やれます・やります』としか言えないのね、僕は」
「通常の展示会で出している洋服には、僕たちの半年間が詰まっているんです。そこで新しいものを展示会で提案しているんですが、その時点で割と限界まで頑張ってきてるんですよ。ただ<BEAMS PLUS>との別注って、基本的にそれを見た上で、さらにアイデアを出し合っていいものを作っていくスタイルなので、なるほど、その手があったのか!と感心させられる一方で、そのアイデア、先に言ってよ!って思うんです 笑」
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REMI RELIEFのターニングポイントを聞いて
「ブランド始めた頃はシャンブレーシャツがブームでした。でも3年位ずっとデニムのウエスタンシャツは売れなくてもずっと作っていたんです。次第にトレンドがデニムに移行していった感じ。気づいたらうちしか作ってなかった、みたいになって注目してもらえるようになって。いわゆる普通のウエスタンシャツよりも<REMI RELIEF>はすっきりというかオシャレに見えます。これは若いお客さんがすごい小さいサイズを着ていて。前が閉まらないじゃんって思ったのがきっかけ」
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デニムへのこだわりについて
「児島でものつくりをしていながら、デニムはこのピッチじゃないといけない!とかヴィンテージだけにこだわっているわけではないんです。時代に合わせればいいと思うので。こだわらなければいけないオファーがあれば、もちろんあれですけど」
「デニムウエスタンシャツ=<REMI RELIEF>ってなりがちですけど、僕もどっちかっていうとインディゴっていう染料を武器にしているだけで、別にデニムじゃなくていいんですよ。カットソーでもいいし、ジャージーでもいい。インディゴの使い方次第で、いろんな提案ができれば」
「そうですそうです。うちはデニムメーカーじゃないんですよ。ジャケットやニットだってちゃんと糸から作りますし。もしうちがデニムだけしか扱わなくなったら、逆にブランドの個性が薄まってしまうと思うんですよねー」
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苦労した加工のエピソード
「インディゴ染めのナイロンって、つまり自然のものを化学繊維に乗せないといけないわけ。自然の繊維って髪の毛みたいなキューティクル構造なんですが、化学製品ってストローみたいなもの。ツルツルとした隙間にインディゴを付着させるって、構造的には難しいんです。自然物質同士の結合は、つまりアミノ酸同士を結合させます。だからだいたいのものはくっつくんですけど、片方が化学繊維のポリエステルやナイロンだとアミノ酸がないんですよ。じゃあ何でつなげるかといったら、どんな物質にも絶対に存在するイオンに注目したんです。マイナスイオンの力を上げることを「アニオン化」、プラスイオンの力を上げることを「カチオン化」といいます。それぞれを強力にすると、アミノ酸とか関係なく、磁気パワーでくっつくんです。で、その後中性化すると同じ物質になるってことも勉強したんで、何回も実験したらできた。最初は染まり具合も薄かったんですが『もっと濃くして』って言われてまた頑張って。すると『ポリエステル、インディゴに染められますよーーー』ってなって」
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自社工場のメリットについて
「うちは工場があるから、そのスピード感でできるんです。失敗してもやり直せるから。これが人の工場で『ちょっと違うんだよね』ってやりとりしていたら絶対に間に合わない。自分のところだから、ここ弱いね、とか、この数値あげようかとか。そうやって成長させてもらっているんです」
「職人さんとやるときは理屈よりも感覚を大事にしています。ニュアンスって伝わりにくいから。だからうちの職人は「感覚を言葉で伝えられる人」を集めています」
「ありがとうございます。ありがとうございます」
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<BEAMS PLUS>は<REMI RELIEF>との継続的な付き合いの中で、
インディゴ染めのポケットTシャツやウエスタンシャツといった定番アイテムを確立し、
レーベルを象徴する欠かせないピースとなりました。「これをインディゴで染めたらどうなるか」
―――― 時には無理を承知の<BEAMS PLUS>のリクエストに対して、後藤さんは常に研究に研究を重ねて答えてくれます。
そんなインディゴのマイスターはこの10年を振り返り「結局、これまで染められなかったものはなかった」そうです。
児島の自社工場は、ゆっくりとした時間が流れていました。
職人たちはサーフィンやスケートボードを趣味に持ち、カルチャーを感じるあれこれがそこかしこに。
一般的なデニム工場とは違う、どこかのびのびとした光景に、インディゴの可能性が広がっていました。

今季の別注は、アウトドアをテーマに、ジャカード織り柄のフリースジャケットやラグモチーフのジャケット、
ナイロンのベストなどにインディゴ染めを施したアイテムなどをラインナップ。
どれも一筋縄ではいかないこだわりが生み出した芸術的な加工に、ぜひ注目してください。

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