#004 | 2011.11.20-12.25 Interview

Q. 作品が持っているメッセージが、ものすごくたくさんの人に広がっていくことを
 ある程度目指しているところはありますか?

うーん……たくさんの人に伝える為に、分かり易いことを目指すのとは違います。結局、表現というのはチームでやっていても孤独な冒険というか探検しているみたいなもので、それがどこまで深くとか高くとか行けるかというのは、個の感覚、判断でないと、最後のダイブやジャンプが出来ないですよね。まわりに了解を得て行くみたいなものではなくて、いきなりやってしまわないと次にいかないんです。

美術館での個展は、たくさんの人に観てもらうとか、いろんな年齢の方が観るとか、現代美術目当てじゃなくてジブリ展を観に来た人が観に来るとか、そういうところまで考えだしたらリサーチワークになってしまう。今回のように、「入りやすさ」を優先させた個展はそういう危険を孕んでいたと思います。もし次があるとすれば、その反動のようなものが出てくるんじゃないでしょうか。

Q. 2008年にビームスのクリスマスキャンペーン「BEAMING ARTS」というプロジェクトに、
 「PixCell」シリーズで参加していただきましたが、それ以降、いわゆる「美術」以外の場所での
 取り組みが増えています。この期間中にも西武渋谷店や〈アニエスb.〉など、名和さんの作品や
 アプローチに触れる機会がありましたね。その辺の思惑や意図があれば教えてください。

「BEAMING ARTS」や〈ユニクロ〉のTシャツも、作品と社会を直接繋ぐ、みたいな大げさなことは考えていませんでしたが、アートを社会化する機会ではあるなと思っていました。それをちゃんと活かした方がいいなと。それは今でもあまり変わっていません。やはり日本で現代美術がまだまだ浸透してないし、子供も知らない。ひどいのは、この間高校生だった子が美大に入っても「現代美術って何?」っていう状況なので、そこはもう少し学校も頑張らないといけないんです。じゃあ、アーティストとして何が出来るのか。作品を発表するのはギャラリーか美術館、あとは海外のプロジェクトをこなしているという現実があります。アートを社会化するのはアーティストの本来の仕事ではないのかも知れませんが、できることがあるんだったらちゃんとやるべきだと。

Q. それは責任を持ってということですよね?
 ぶつけっぱなし、壊しっぱなしではなくて、何かしらヴィジョンなりとか。

そうですね。あくまで現代美術のフィールドでの活動がメインなんですけれど、そのフィールドのことを知ってもらう機会にも繋がれば尚良いです。

Q. 無作為に人が入って来て偶然作品に触れる機会や場所があるというお話に関しては、「B ギャラリー」での
 展示はすごく親和性があって、先程おっしゃっていた事からするとベストな感じに思えました。

「グリッド」は、ホワイトキューブで蛍光灯の光でフラットに見るのが一番良いのですが、このギャラリーではちょっと難しいと思ったんですね。だからひとつの壁だけに光を集めて、スタジオで沢山のドローイングを壁に貼って乾燥させる時のような展示にしました。

Q. 作品の中には、一瞬で出来るようなアプローチの作品もあるかもしれないし、
途切れ途切れでまた繋がっていってずっと時間が継続していくっていうものもあると思います。
時間という概念についてはどう考えますか?

時間がなくて追われている事が多いんですけれど(笑)、制作している時の時間の流れ方って全然違って、記憶のされ方も全然違うんです。昔からそうです。頭の中での時間の流れ方がチグハグなんですよ(笑)。ひとつのタイムラインに乗ってないというか。作品のカテゴリーが多いのもチャンネル替えるみたいに、時空間みたいなものが全部違っていて、それぞれのカテゴリーではそれぞれの質感と時間が流れている。そこにはタイムラグがあんまりなくて、引き出しを開けてまた同じところから始めるみたいな感じです。それはビーズのシリーズとかグルーガンの作品でもそうなんです。非常に時間が掛かる作業を一つのプログラムで走らせる、そこからはずーっとそのテンションの時間が続く。ニュートラルな意識のままやってる感じです。プログラムが安定的に走っている間に他に出来そうなことをどんどん入れてしまう。空白の時間を作るのが苦手で、空白が怖い(笑)。だから休暇のつもりで旅行した時なんか逆にアイデアが膨れて「こんなことしてて良いのか」みたいになってしまう。「早く帰らないと!」って(笑)。

(2011年7月14日/B ギャラリーにて)

photo by Nobutada Omote (SANDWICH)

名和晃平 Kohei NAWA

1975年大阪府生まれ。2003年京都市立芸術大学大学院美術研究科博士(後期)課程彫刻専攻修了。京都造形芸術大学准教授、2009年京都伏見区に立ち上げたクリエイティブプラットフォーム「SANDWICH」ディレクター。2011年、東京都現代美術館で個展「名和晃平—シンセシス」開催。その後も2013年の瀬戸内国際芸術祭、あいちトリエンナーレなど、数々の国際展にてサイトスペシフィックな彫刻作品を発表する。同年、韓国チョナン市に大規模な屋外彫刻 “Manifold” を設置。ビーズ、プリズム、発泡ポリウレタン、シリコーンオイルなど様々な素材とテクノロジーを駆使し、彫刻の新たな可能性を拡げている。現在、京都を拠点に活動。

主な個展

2008年
「The poetry of bizarre」ミロ美術館(バルセロナ、スペイン)
2009年
「Transcode」ギャラリーノマル(大阪)
「Cell」GALERIE VERA MUNRO(ハンブルグ、ドイツ)
「L_B_S」メゾンエルメス8階フォーラム(東京)
2010年
「Synthesis」SCAI THE BATHHOUSE(東京)
2011年
「GRID_Synthesis」Bギャラリー(東京)
「名和晃平—シンセシス」東京都現代美術館(東京)
2012年
「Kohei Nawa | SANDWICH」阪急うめだギャラリー(大阪)
「Kohei Nawa – Trans」アラリオ・ギャラリー(チョナン/ソウル、韓国)
2013年
「名和晃平 – SCULPTURE GARDEN」霧島アートの森(鹿児島)
「Kohei Nawa : garden」ギャラリーノマル(大阪)

主なグループ展

2006年
「アート・スコープ2005-2006 -インターフェース・コンプレックス」原美術館(東京)
「Banquet : A Feast for the Senses」Pacific Asia Museum(カリフォルニア)
「アミューズランド2007 ビューティフル・ドリーマー」北海道立近代美術館(北海道)
2007年
「アート・スコープ2005-2006」Daimler Chrysler Contemporary(ベルリン)
「六本木クロッシング 2007」森美術館(東京)
2008年
「Great New Wave : Contemporary Art from Japan」Art Gallery of Greater Victoria、 Art Gallery of Hamilton(カナダ)
「パラレル・ワールド」東京都現代美術館(東京)
2009年
「Animamix Biennial – Visial Attract & Attack」台北現代美術館(台湾)
「第6回 アジア・パシフィック・トリエンナーレ」クイーンズランド・アートギャラリー、クイーンズランド近代美術館(クイーンズランド、オーストラリア)
「自宅から美術館へ 田中恒子コレクション」和歌山県立近代美術館(和歌山)
「neoteny japan 高橋コレクション」上野の森美術館(東京)
「MOTで見る夢」東京都現代美術館(東京)
「VOCA展 2009 ―新しい平面の作家たち―」上野の森美術館(東京)
2010年
「第14回アジアン・アート・ビエンナーレ・バングラデシュ 2010」(ダッカ、バングラデシュ)
「釜山ビエンナーレ 2010 “Living in Evolution”」(釜山)
「Frank–Suss コレクション展」サーチギャラリー(ロンドン、イギリス)
「Great New Wave: Contemporary Art from Japan」グレーター・ビクトリア美術館(ブリティッシュコロンビア、カナダ)
2011年
「Bye Bye Kitty!!! Between Heaven and Hell in Contemporary Japanese Art」Japan Society Gallery(ニューヨーク)
2012年
「Parallel Japanese Worlds」A4 Contemporary Arts Center(成都、中国)
2013年
「あいちトリエンナーレ2013」(愛知)
 犬島「家プロジェクト」F邸(岡山)
「KOHEI NAWA|SANDWICH」EYE OF GYRE(東京)
2014年
「ミッション [宇宙×芸術] —コスモロジーを超えて」東京都現代美術館(東京)
「Making Links: 25 years」SCAI THE BATHHOUSE(東京)

作品の問い合わせ先

SCAI THE BATHHOUSE

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