下町情緒あふれる温かい相撲の街・両国エリアには、両国国技館はもちろん、相撲部屋も多く、「気は優しくて力持ち」な力士たちに守られています。ひとたび歩けば、あちこちに相撲ゆかりの銅像や看板、建物などが見受けられ、まるで江戸時代にタイムスリップしたかのようです。
両国といえば、やっぱりおいしいちゃんこ鍋! 老舗から新店まで、数多くのちゃんこ屋が並んでいます。ちゃんこのレシピ本『おすもうさん直伝!かんたん家ちゃんこ』(パイインターナショナル)を執筆・出版した相撲ライターの飯塚さきさんと一緒に、街を散歩しながら、冬にぴったりのちゃんこ屋3軒を訪ねてみました。
JR両国駅からすぐの両国国技館
鍋は1種類で勝負!
寄せ鍋スタイルの上品な味わいに酔いしれる
まずは、JR総武線両国駅からすぐにある、言わずと知れたちゃんこ鍋の名店「ちゃんこ霧島」へ。店名を飾るのは、昨年3月で日本相撲協会を定年退職し、現在は音羽山部屋で指導する元大関・霧島の前・陸奥親方。同店は、今月でオープン29年を迎えた老舗だ。通常のちゃんこ鍋は、しょうゆ、塩、味噌などと味が数種類あるが、同店はなんとこの3つを合わせた「霧島味」の1種類のみ。鹿児島県出身の霧島関が大好きなとんこつと、鶏ガラ、そして柚子胡椒で作る出汁が味の決め手となる。海鮮や野菜、鶏肉に豚肉と具材がさまざまな寄せ鍋スタイルで、一口食べれば複雑なうまみが口の中に広がっていく。柚子胡椒のピリリとした辛みもアクセントで、あっという間に体が温まる。
8階建ての広い店内は、霧島関ゆかりの貴重な品々に囲まれ、まさに相撲一色。接待にも、家族や友人との宴会にもぴったりな同店。国技館を眺めながら、上品な味を楽しみたい。
ちゃんこ霧島 両国本店
〒130-0026 東京都墨田区両国2-13-7
営業時間:ランチ11:30〜15:00(14:00LO)、ディナー17:00〜22:00(21:00LO)
定休日:月(6〜8月は月・火休、年末年始1月1〜3日休)
電話:03-3634-0075
公式サイト:https://j-kirishima.com/
Instagram:@chanko.kirishima
街の至る所で見られる相撲文化
鍋のデカさは両国イチ!
おなかいっぱい食べたいならここ
続いては、駅から靖国通りを渡って、両国公園からほど近い甘くてジューシーな「もち豚」を扱う豚肉のお店「わとん」へ。筆者は阿炎関から教えてもらった店で、かれこれ7年ほど通っている。店主の常光弘泰さんは、阿炎関が子どもの頃に通った草加相撲クラブの恩師。事前予約で注文できるこちらのちゃんこ鍋は、店主が「両国イチのデカさを自負しています」と胸を張る通り、驚愕の大きさ。この日は大量の団子が目を引く塩ちゃんこだったが、「わとん」のちゃんこ鍋は味噌、しょうゆに加え、トマト、カレー、チゲ、もつ鍋、魚介(いわしのつみれ汁)など多岐にわたる。「小学生から家で料理をして、大学相撲部でも率先してちゃんこ番をしていました」と言う常光さんが、その日の仕入れに応じて腕を振るってくれる。
こだわりの詰まった出汁で、シメの雑炊や麺と、最後まで楽しめて大満足! 鍋のほか、自慢のもち豚で作るトンテキやとんかつも絶品。お腹いっぱい食べたい人は、ぜひはらぺこで「わとん」へ。
わとん
〒130-0026 東京都墨田区両国4-30-17
営業時間:11:00〜13:00、18:00〜23:00(21:00LO)
*お昼はお弁当販売のみ、なくなり次第終了
定休日:日・祝
電話:03-3652-5344
たくさんの有名飲食店が立ち並ぶ横綱横丁の看板
元力士・現俳優が作るちゃんこ鍋
ケータリングでも活躍
駅を背に南下し、歩いておよそ10分。「Riverside Ryogoku」は、店名の通り川沿いに位置し、元幕下・祥映斗の両國宏さんが経営するお店だ。現在は、ドラマ『水戸黄門』や人気漫画原作の舞台『刃牙』などに出演する俳優の一面も持ち合わせる。知り合いからの予約が入ったときのみ、不定期で営業するまさに隠れ家。両國さんが力士時代から引退後に磨いた料理の腕で、主に塩ちゃんことトマトちゃんこを振る舞う。飲食店経営と俳優業の二足の草鞋で、明治座でのちゃんこ販売や撮影現場へのケータリングなども経験していることから、役者たちにも大好評の鍋だ。この日はスタンダードな塩ちゃんこをいただく。昆布出汁、塩、鶏ガラを3~5時間かけてじっくり煮込んだ、塩気が絶妙に効いた優しい味に舌鼓。友人や仕事仲間を呼んでこの鍋を囲みながら、両國さんと近況報告をしあうのも、この場所に来る醍醐味になっている。相撲の話にとどまらず、舞台や撮影の話にまで花が咲く。
店内はおしゃれなバーの雰囲気。10人がゆったりと座れる奥のテーブルで、ワイワイつつく鍋は格別である。カウンターに座って、静かにお酒を楽しむのもまた一興。筆者が「本当は教えたくない店」であり、力士への取材・撮影でもお世話になっている。
店内には舞台やドラマのポスターもずらり
リバーサイド リョウゴク
〒130-0026 東京都墨田区両国31-12 ラブレアビル1F
営業時間:18:30〜23:00
定休日:不定休
寒さが深まるこの季節、大切な人と囲む鍋ほどホッとさせてくれるものはありません。冬のごちそう時間を求めるなら、本場・両国でいただく温かなちゃんこ鍋がおすすめ。年が明けたら大相撲初場所の幕開け。相撲の熱気に包まれたこの街で味わう一杯は、観戦後の余韻をより引き立ててくれるはずです!
Photo:Yuichi Sugita
Text:Saki Iizuka
Edit:MANUSKRIPT