NAKAMURA’S NOTEBOOK
この春は、軽やかな気分で。中村 達也のトレンド解説〜2025年春夏編〜
"MR_BEAMS"とは、ファッションをきちんと理解しながらも、
自分の価値観で服を選べる
"スタイルをもった人"のこと。
と同時に、決して独りよがりではなく、
周りのみんなからも「ステキですね」と思われる、
そのスタイルに"ポジティブなマインドがこもった人"のこと。
今回立ち上げたオウンドメディア#MR_BEAMSには、
私たちビームスが考える理想の大人の男性像と、
そんな理想の彼が着ているであろうステキな服、
そしてMR_BEAMSになるために必要な
洋服にまつわるポジティブな情報がギュッと詰め込まれています。
本メディアを通じて、服の魅力に触れていただいた皆様に、
ステキで明るい未来が訪れますように……。
NAKAMURA’S NOTEBOOK
マーケティングやトレンド予想、流行サイクルの分析などではけっして見えてこない、ファッションの本流。
その源流は人々のマインドにあります。
クリエイティブディレクター・中村達也の仕事は、そんな人々の心を読み解くことでもあるのです。
「世界規模で長年進行してきた“ビジネスでスーツを着ない”という傾向は、コロナ禍で加速したといえます。それでもスーツを着たいというスーツ好きは一定数おり、トレンドもそういったビジネススタイルとは違ったところで形成されています。オンタイムではハードルが高い、ツイードやコーデュロイ、ホームスパンなどが注目されているのも、そんな傾向の表れ。ファッションとしてより自由にスーツを楽しんでください」
スーツのトレンドカラー、グレーの生地はピアチェンツァ社の「ノーブル フランネル」。ウールカシミアでハリがありつつソフトな肌ざわり。アンコン仕立てで軽やかです。
サステナビリティを考慮したデルフィノ社の生地「ハニーウェイ」のグレンチェック生地は、天然の蜜蝋を用いた加工で柔軟な仕上がり。ベージュ×オレンジのウィンドウペーンもモダン。
今季注目のヘリテージパターンのひとつがヘリンボーン。メランジグレーでクラシックな表情ながら、柔らかなナポリ仕立てでかっちりせず、現代的な雰囲気で着こなせます。
ツイードを得意とするディ・プレイ社のホームスパンを使用。ウール100%でしっかりとしたハリがありながらも、上質なファインウール製ゆえ着心地はいたって柔軟かつ軽やか。
「大きな流れとして、ヴィンテージというキーワードがここ数年フィーチャーされているタイ。それは2022年秋冬も継続していますが、ツイードやコーデュロイといった旬のスーツに合う、ヴィンテージ柄やタータンチェックなどの存在感のあるパターンが多くなっています。色調も全体的にややくすんだヴィンテージ調のカラーが主流。こうしたタイの傾向も、ビジネススタイルとは違ったファッションを楽しもうというマインドによるものです」
「昔から“ファッションは繰り返す”と言いますが、まさにその言葉通りなのがタッターソールのシャツです。’80年代のブリティッシュアメリカン、’90年代のブリティッシュの流行の際に人気となった柄ゆえ、私の世代にとっては少し古く感じますが、若い世代にとっては新鮮に見える。こうした言わば“ 流行のひと周り”は、クラシックスタイル全般で起きています。やはりツイードやコーデュロイのスーツに合わせたいですね」
右_オフホワイトベースにパープルやブラウンなど相性いいカラーの柄色が洒脱。
左_落ち着きのあるグリーンとネイビーの配色で、タッターソール初心者に最適。
下_マルチカラーの大ぶり柄で個性的ながら、オフホワイトベースで合わせやすいはず。
ブリティッシュトラッドの定番的なVゾーンである、タッターソール&ペイズリータイの組み合わせも今季リバイバル。柄×柄で難しそうに見えますが、柄色のグリーン&ブラウンを拾うことで落ち着いて見えます。タブカラーも今季的です。
「数年前から続くオーバーサイズシルエットの流れは、広く浸透した感じがあります。その反動でオピニオンたちが採り入れはじめたのがショートブルゾンです。流行のオーバーサイズロングコートに対し、スポーティで軽快に羽織れるのが特徴で、シンプルな合わせが正解。フライトジャケット系やバーシティジャケットなどアメリカンテイストが多いですが、アメカジにならないようスタイルをミックスするのが鉄則です」
今季より新展開の〈アルタクルーナ〉のブルゾンは、上質なラムレザーとマイクロファイバーのリバーシブル仕様。
ショートブルゾンの名作ヴァルスタリーノも今季復活。しっとりとしたナッパレザー製は高級感も申し分なしです。
今季マストなMA-1タイプ。ダウンブルゾン「オソド」は表地にナイロンウールを用いており、上品さと耐久性を兼備。
大人気の別注ライダーズを微調整した新型「ジュリ ビームス 3」。着丈が長くなり、スマートで現代的な雰囲気に。
完全別注モデルのバーシティジャケットは、オールブラックの配色と洗練された美シルエットで、モダンな佇まい。
ディテールを極限まで削ぎ落とし、きめ細かなゴートスエードでアレンジした大人のMA-1。端正なシルエットも秀逸。
「被り物をクラシックスタイルに採り入れる傾向は長らく続いてきましたが、主流はやはり〈ボルサリーノ〉などのハットでした。全体的にスポーティでカジュアルの基調が強まっている今季は、ハットに取って代わって注目されているのがベースボールキャップです。ただし、コーデュロイやフランネルなど上品な素材でアレンジされたものに限られ、綺麗めな装いのアクセントとしてコーディネートするのがお勧めです」
右_オーストラリアのハット&バッグブランドのキャップは、同色のコーデュロイとベルベットでリッチ&モダンな表情。
中、左_ジーロンラムウールを用い、丁寧に起毛させたフラノ製オリジナル。深さや細部もこだわった大人のキャップです。
「世の風潮として、いまやジャケットすら着なくなったという流れは昨年あたりから顕著になっています。では、ジャケット代わりに何を着るかというと、最も多いのがリラックス感があり、エレガントに見えるニットカーディガンです。この秋冬はショールカラーや久々登場の襟付きなど幅が広がっており、それが強い傾向の裏付けとなっていますが、大きめのボタンフロントや広めの前立て幅など、アウターとしてきまりやすいデザインが特徴です」
インラインにはない完全別注のVネックカーディガン。アウターとしてだけでなく、ジャケットのインナーとしても着られるサイズバランスです。
久々に登場した襟羽根付きのカーディガンは、新規展開ブランド〈ビブリオテカ〉への別注品。イタリア製ウールカシミア糸使用で肌ざわりも抜群。
いまや定番のショールカラーカーディガンは、リラックスした雰囲気の演出に最適。軽量で肌ざわりも申し分ないメリノウールの5ゲージニット。
「軽く動きやすい羽織物を求める傾向は、カジュアルアイテムにも見られます。Vゾーンができるカーディガンがジャケット代わりなのに対し、颯爽とした襟周りが際立つスタンドカラーニットは、言わばブルゾン代わりです。カーディガン同様、アウターとしてさまになりやすいボタンフロントが主流ですが、ショートブルゾンと同じように着丈は短めで、スポーティかつ軽やかな雰囲気。秋口に快適に羽織れるニットです」
イタリアの高級ニット工房〈バフィー〉に完全別注したスタンドカラーニットは、トレンドのケーブル編み採用で一枚でもさまになります。程よいボリュームのミドルゲージですが、スマートなシルエットで着膨れ感も抑え、真冬はコートのインナーとしても活躍。
クラシックなドライビングブルゾンのデザインをそのままニットへ落とし込んだ別注モデル。スタンドカラーの高さやフラップポケットの大きさ、リブ幅など、細部までベストバランスを追求した自信作です。
「歴史的な背景やルーツのあるトラディショナルなアイテムが注目されている近年。なかでもニットはフェアアイルやアーガイルなど英国の伝統的なものが増えており、とくに今シーズン多くのサプライヤーが提案しているのがケーブルニットです。アランセーターのようなトラッドなものからモダンにアレンジされたものまで揃っていますが、どれも高品質で柔軟な素材で編まれており、軽く快適なので、旬のインナーとして活躍します」
パターンから起こした完全別注のスタンドカラーニット。ミドルゲージのケーブル編みにすることで、クラシックでアウターとしての存在感も十分な一着に。
繊維が細く柔らかい、ジーロンラムズウールで編み立てた定番アランセーターに、新型のモックネックモデルが登場。一枚でスポーティモダンにきまります。
5ゲージのメリノウール糸で編み立てたクルーネックセーターは、大ぶりのパターンがコンテンポラリーな表情。立体的な編み地の表現力は見事の一言です。
「色にもトレンドは少なからずありますが、この秋冬のクラシックスタイルにぜひ採り入れたいのがグリーンです。グリーンと一言で言っても、鮮やかなケリーグリーンと、渋みのあるオリーブグリーンという2種類に分かれるのが今季の特徴であり、前者はインナーに効かせ、後者はアウターに用いるのが全体的な傾向。手持ちのクラシックアイテムとコーディネートしても新鮮に見えるので、ぜひトライしてみてください」
「冬にホワイト系の服は、暖かさを感じにくく、取り入れづらいもの。それでもあえて着ることで、着飾って積極的に外出しようという意思表示にもなる。そんな点こそホワイトが注目されている理由です。なかでもノーブルで上品なオフホワイトが、着やすくてお勧め。着こなしのポイントは色数を抑え、ワントーンに近い合わせにすること。色の統一性をもたせたいわゆるトーナルコーディネートにすることで、上品さが引き立ちます」
既存のハーフジップ型をフルジップへ変更した、別注ウールカシミアニット。
英国の新進ニットブランド。襟付きカシミアニットはイン&アウトに活躍。
エクスクルーシブのバンドカラーシャツ。柔軟なウールリネンネル製です。
オフホワイトのフラノパンツは今季活躍必至。生地は柔らかなカノニコ社製。
「今季のオピニオンやサプライヤーの動向を俯瞰すると、印象的なのが明るく鮮やかな色使いです。コロナ禍の少し前、クラシックスタイルではモノトーンがトレンドでしたが、その後はコロナで外出が減り、シックで落ち着いたカラーが基調に。そんなマインドも今季ようやく外向きになり、明るい色使いでポジティブな気分を体現するようになったのです。多彩な色が揃うので、ぜひ採り入れて気分を変えてみてください」
ゼニアバルファ社のメリノウールを用い、ふっくらと編み上げた12ゲージニット。裾はリブなしゆえ一枚でも着やすいはず。
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この春は、軽やかな気分で。中村 達也のトレンド解説〜2025年春夏編〜
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中村達也が考える 2024-25年秋冬の10の真実 Nakamura’s Notebook
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今季のトレンドはぜんぶココに集約 中村達也的、春の10個の太鼓判