
同い年コンビの洋服談義〜今シーズン欲しいもの、気になるもの〜【Part 2】
〈BEAMS F〉バイヤーの村瀬と〈Brilla per il gusto〉ディレクターの小林。同い年でタイプの違う二人の洋服好きが、今シーズンのラインナップについてそれぞれの視点から欲しいもの、気になるものを語り合います。バイイングした経緯やアイテムへの拘りはもちろん、仲の良さが垣間見られる自然体なトークも見逃せません。

小林:前編に続いて後編です。まだまだご紹介したいアイテムがずらっとありますからね。
村瀬:だね。終わるかなぁこれ。(笑)
小林:力尽きるまで行きましょう。

小林:それではさっそく。まずはこちらの〈アソース メレ〉のカシミヤマフラーです。このニットマフラーは自分がどうしても作りたかった一品。昨今の流れから、ダウンブルゾンなどのカジュアルなアウターに合わせる巻き物が欲しいと思い、ずっと探していました。メンズのドレスブランドで展開しているものですと、少し真面目に映りすぎる気がしてあまり理想のものに出会わなかったんです。ただ、当初はイメージしか持っておらず、どのブランドでというのも全く決まっていませんでした。そこで弊社クリエイティブディレクターの中村に相談したところ、ウィメンズブランドで雰囲気の合うものを探してきていただき、それがズバリしっくりきましたのでバイイングに至っています。

小林:このマフラーのポイントは上質な素材とホール編み。ふわっと滑らかで、極上の肌触りを有するカシミヤを贅沢に用い、それをホール編みという手間のかかる手法で仕上げています。筒状で編み上げることで立体的に、美しい曲線が生まれ、他にはない柔らかなニュアンスを表現できます。また、ニットマフラーの難点である、端の方から丸まってくるようなことも少ないので、カジュアルながら見え方も上品です。インラインではウィメンズとして展開されており、大判だったのでメンズが使いやすいようサイズを変更し別注しました。

村瀬:確かに。ホール編みで仕上げたマフラーは新鮮だね。ウィメンズブランドらしい綺麗な発色も良い感じ。
小林:そうなんです。この絶妙な柔らかいトーンはメンズにはあまりない感性だと思います。それでいて派手な感じはなく、品良くアクセントとなってくれる。〈ブリッラ ペル イル グスト〉が提案する大人の男性の色気というものを上手く引き出してくれるアイテムです。

小林:ではそのまま流れで次に行きます。個人的にも好きなブランド〈ティージャケット〉の一着です。

小林:ストライプのジャケットは数年前に一度大きな注目を集めていましたが、それ以降あまり提案がなく、バイイングもほとんどしていませんでした。ただ、先シーズンから少しずつストライプジャケットというものがキーワードとして出てきており、その流れをいち早く取り入れたいという思いから今シーズン展開しています。きっちりとしたテーラードジャケットですとやや堅い印象があり難しいので、軽い仕立てのイメージでしたが、この〈ティージャケット〉はまさにそれ。柔らかな空気感がイメージ通りでした。ストライプジャケットにまだまだ馴染みのない方でも取り入れやすいよう、ベーシックなネイビーチョークストライプのパターンをチョイスしているところもポイントで、普段の装いにさらっと合わせるだけでサマになると思います。

小林:そしてやはりなんといっても、この軽さと取り扱いがイージーな点は非常に魅力的ですね。副資材を用いず、シャツのように仕立てられたジャケットはストレスフリーな着心地。デイリースタイルにはもちろん、旅行や出張などのシーンにも非常に心強く、おすすめできます。そんな軽い仕立てながらきっちりと見せてくれるのはブランドの技術があってこそ。軽く、リラクシーな着心地ながら都会的で端正な表情。そこがこのジャケットの魅力です。

村瀬:小林さんに負けていられないので次は自分が。〈イガラシトラウザーズ〉からシャークスキンのパンツをご紹介します。

村瀬:〈イガラシトラウザーズ〉は数シーズン前より取り扱いをしており、毎シーズン人気を博すブランドですが、元々はビスポークのみのパンツ専業メーカー。ただ、”この素晴らしいトラウザーズをなんとか皆様に試していただきたい”という想いから、〈ビームスF〉別注のモデルを既製品でオーダーさせていただいたという経緯があります。日本人の体型に合わせたパターンから生まれる、ビスポーク由来のシルエットの美しさは言わずもがな。既製品だからクオリティが落ちるということは一切なく、まるでオーダーしたかのようなフィッティングを叶えてくれます。

村瀬:その美しいシルエットを活かすため、ハリのある英国生地をなるべく選んでいるところもポイントですね。今回は英国の老舗生地メーカー〈ウィリアム ハルステッド〉のシャークスキンを載せています。がっしりと目が詰まっていながらも、綺麗なドレープで落ちてくれる生地は仕立て映えするとともに扱いやすさも抜群。比較的シワにも強く、タフなところも魅力です。
小林:グレーのトーンがほんのり明るくて、シンプルだけど存在感がありますね。このブランドのパンツはディテールも特徴的ですよね?
村瀬:そうです。よりビスポークの雰囲気を味わっていただく為に、凝ったディテールを採用しています。大きめのサイドアジャスターや太く、長めにとったウエスマンなど、見た目的にも唆られるポイントが詰まっています。

村瀬:次にこの〈レ ユッカス〉のチャッカブーツ。これは個人的にもかなり欲しいアイテムです。

村瀬:一見シンプルなチャッカブーツですが、なんとヒール部分をシームレスで仕上げています。広く取られたアッパー部分も特徴的で、足首でキュッと縛って履きこなす、すごく洒落の効いた一足。自然と生まれるフロントの皺の表情がこなれていて、ブランドらしい上品な柔らかさというものを表現できます。滑らかでソフトなスエードを、ハンド仕立てで丁寧に仕上げることによってさらに屈曲性をプラスしており、包み込んでくれるような履き心地も魅力です。


小林:皺をあえて作るというところが新鮮ですね。独特のニュアンス感が他にはない表情。確かに、履き心地もすごく良いです。
村瀬:こういう柔らかな色気は女性のデザイナーならではだよね。メンズだとこういった空気感はなかなか出せない。これを大人の男性が普段のリラックススタイルにさらっとこなすと、たまらなく格好良いんです。

小林:そうこうしているうちにもう最後です。ということで、トリは私が務めさせていただきます。
村瀬:スムーズに最後持ってくね。そういうとこ本当上手い。(笑)

小林:こちらはイタリアのミリタリーウェアが得意なファクトリー〈ミダ〉の一着です。ベースはアメリカ軍のフィールドジャケット、所謂M-65タイプ。元々ブランドが提案されていたものではなく、一から細かいディテールまで拘って作り上げていったモデルです。私物として所有していたヴィンテージをベースにデザインはオリジナルに忠実に倣いながら、素材感、シルエットをモダンで都会的な印象にリファインしています。

小林:特にシルエットの見せ方には苦労しました。ヴィンテージ感があるのに大人が綺麗に着こなせる。この絶妙な空気感を出す為にボディから腕周り、襟の高さまで細かな修正を何度も行なって完成した一着です。カジュアルアウターとしてはもちろん、こういったジャケットの上から着用するスタイルも良いですね。それこそ自分が入社する15年ほど前などは、スーツの上からM-65を合わせるなんていうコーディネートがとても流行っていました。ミックススタイルが主流となっている昨今、また新鮮に映るのではないでしょうか。
村瀬:あったね。その時はイタリアブランドが提案するタイトなものが多かったイメージ。
小林:そうですよね。こちらはその頃のものとはまた違った、リラックスした雰囲気で着こなせるので古臭く見えることはありません。

村瀬:これ生地は何を使ってるの?軽いのにミリタリーっぽさが感じられていいね。
小林:生地にはコーデュラナイロンとオーガニックコットンをブレンドしたものを使用しています。ナイロンならではの頼り甲斐のある機能性と軽さに、ナチュラルで素朴なオーガニックコットンの風合い。無骨なのに上品。そんな相反する空気感を同居させたような、それぞれの良さを引き出せる絶妙なミックスです。また、古着のようなこなれた表情を出す為にフラップ部分にロープを仕込み、洗いをかけることで着込んだようなアタリを表現しました。語ればこだわりが尽きないアイテムです。(笑)

小林:本格的な冬用のコートは持っているけれど、秋や冬の入り口あたりに羽織るアウターがない。そういう方も多いと思います。このM-65はまさにそういったシーンをきっちりとこなしてくれます。もちろん巻物などを合わせていただければ、より長いシーズン愉しんでいただけますね。意外とこういった羽織りものの方が汎用性が高く、頼れたりしますから。
村瀬:確かに。春先も着れて重さがない分、着ていて楽だし持ち運びも便利。使い勝手はすごく良いよね。丁度良いミリタリー感も気分。
小林:はい。お買い上げありがとうございます。
村瀬:お客様優先だからなぁ。
小林:大丈夫です。来年の分個人オーダーしておきます。
村瀬:〈ミダ〉貯金しないと・・・。(笑)

Profile
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〈BEAMS F〉バイヤー
村瀬 太郎 Taro Murase
〈BEAMS F〉バイヤー
村瀬 太郎 Taro Murase
1983年生まれ。ビームス歴18年。ビームスFやビームス 銀座で販売員、ショップマネージャーを経験し、昨年9月から〈BEAMS F〉バイヤーに就任。正統派なドレススタイルから品のある大人のカジュアルスタイルまで、幅広い提案が魅力。
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〈Brilla per il gusto〉ディレクター
小林順平 Junpei Kobayashi
〈Brilla per il gusto〉ディレクター
小林順平 Junpei Kobayashi
1983年滋賀県生まれ。琵琶湖のほとりで幼少期を過ごし、大学卒業後は洋服の青山に就職。その後、ビームスへ。神戸店のショップスタッフからスタートし、ドレス部門のPRやイベントプランナーを経て昨年9月より現職に就任。着こなしのモットーは「高感度より好感度」。自身のインスタグラムでも日々のコーディネートや洋服への熱い想いを発信中。