「レコードバー」って聞くと、なんだかちょっと緊張する。でも、韓国・ソウルで人気のスポット「Kompakt Record Bar®︎」は、もう佇まいからちょっと違っている。いい音が流れて、おいしいお酒があって、とにかく居心地がいい。DJやクリエイター、ファッション関係者が集まる場所なのに、妙に気取った感じが全然ないのだ。そんな大注目のKompakt Record Bar®︎の海外初拠点が、東京・池尻でスタートした。今回は、韓国でKompakt Record Bar®︎をスタートしたJinmooさん、日本の店舗で運営を担う平野正樹さん、そしてプロジェクト全体をプロデュースするBEAMSの事業責任者・井上博喜。仕掛け人たちの立ちバナシを覗き見してみた。
– Kompakt Record Bar®︎ってどんな場所?
Jinmoo:もともとは、自分が純粋に「こういう場所が欲しい」と思ったことが始まりでした。僕はアートディレクターですが、音楽が好きでDJもするんです。クラブでプレイする時はどうしてもその場に合うジャンルや空気感がある。でも僕は本当は、ジャズも、ソウルも、ブラジル音楽も、レゲエも、その時自分が聴きたい音楽を自由に流せる場所が欲しかった。だからKompakt Record Bar®︎は、まずはなによりも「音楽」が中心にある場所。ちゃんといい音で音楽が聴けて、そこに人が集まって、自然にコミュニティができていく。ありそうでないんですよ、そういう場所って。だからそんな空間を自分で作ってしまおうと。

– なんで“KOMPAKT”なの?
Jinmoo:“KOMPAKT”は、小さい、コンパクトという意味のドイツ語です。僕はもともと大きな店よりも、小さくて「密度」のある空間が好きだったんです。だから自分でやるなら、大きな箱で派手に、というより、近い場所で音楽が鳴っていて、人と人の距離も近くて、空間全体にちゃんと密度がある。そういう場所にしたかったんです。CではなくKを使ったのは昔ドイツに留学していたことがあったというだけなんだけど(笑)。
コンパクト。
でも、
ちゃんと濃い。
– 韓国ではどんなお客さんが?
Jinmoo:僕の職業もあって、最初の頃はクリエイティブに関わる人たちが多かったですね。でも今は、若いDJやお客さんがたくさん来てくれています。昔から音楽に関わっている人たちと、新世代のDJたちが同じ空間に自然にいるのが面白いところです。大人だけの場所でも、若い人だけの場所でもない。音楽というカルチャーをハブに、いろいろなジャンルや世代の人たちが自然に集まる場所になっています。

(写真左から)韓国の「Kompakt Record Bar®︎」のオーナーJinmoo、「Kompakt Record Bar TOKYO」の運営を担う平野正樹さん、BEAMSの事業責任者・井上博喜。
– そもそもは平野さんの遊び場だった?
平野さん:そうなんです(笑)。もともとは2019年くらいに、当時勤めていたメディアで韓国ストリートの特集をやった時にKompakt Record Bar®︎を紹介したのがきっかけです。単純に「めちゃくちゃかっこいいな」と思いましたね。韓国には他にもレコードバーはあるんですけど、昔ながらのジャズバーやクラブのような場所とは違って、もっとファッションやカルチャーと自然につながっているムードがあったんです。音のチョイスも、DJも、内装も、機材も、全部含めて、とにかく「空気感」がいい。音楽好きだけに向けた場所というよりも、どんな人でも「その場にいること」が心地いいと思える感じ。「あ、これって今までありそうでない場所だな」と思いました。
韓国の店舗
– 東京に出店することになったのは?
平野さん:オーナーのJinmooとはすっかり意気投合して友達になっていて、コロナもあって会えない時間もありましたがずっと関係は続いていて。そんなゆるやかな関係性の中で「これって、東京でやったら面白いよね」という話が少しずつ現実になっていった感じですね。
– なぜBEAMSが関わることになったんですか?
井上:Kompakt Record Bar®︎としてTシャツやキャップなど、アパレルやグッズを作りたいという時に、平野さんを通してお声がけいただいたのがきっかけですね。BEAMSは音楽やストリートカルチャーがルーツのひとつにありますが、ファッションをコアにしているからこそ、プロダクトのディレクションで一緒にできることがあるんじゃないかって。ただいろいろ話していくうちに、ごく自然な感じでプロダクトだけじゃなく「東京の店そのものも一緒に作っていきませんか」という話になりました。それもフランチャイズというより、それぞれが互いの強みを持ち寄りながら「東京らしいKompakt Record Bar®︎」を新たに編集する、という新事業として。
平野:そうそう、コピーじゃなくて、再編集する感じ。韓国の店の空気感がすごく良かったからこそ、なにもかもそのままコピーするのではなく、東京でどう成立させるかを考えながら進めていきました。
井上:僕はBEAMS側の事業責任者としてこのプロジェクトに関わっていますが、単に事業をマネジメントするのではなく、Jinmooさんや平野さんたちと連携しながら「どういうコンセプトでこの場所を設計し、成長させていくか」を議論しながら進めていくことを大切にしてきました。バーをまるごと作るというのは簡単なことではありません。お酒の値段設定、運営、音の出し方、空間の作り方、どれもアパレルとは違う経験値が必要になりますから。ただ、BEAMSのスタイルを語る上で、音楽やお酒って、実はすごく自然なテーマでもあるんです。すべてのコンテンツが音楽というカルチャーを通してゆるやかにつながりながら、ひとつの世界観になっていく。このプロジェクトに関わるほどにKompakt Record Bar®︎が発信するカルチャーと自分たちの仕事が自然につながっていく感覚がすごくありました。
国道246沿いの街の気配を感じながら、いい音と会話にゆっくり浸れる。コンパクトだけれど窮屈ではない、絶妙な距離感が魅力。
– 空間づくりのコンセプトは?
平野さん:ずばり「居心地」です。もちろん音も大事ですし、内装も大事なんですが、最終的には「その場にいたくなるかどうか」。コンパクトだけど窮屈ではなくて、音楽がちゃんと聞けて、でも会話もできる。韓国のお店も、いつも扉が開いていて、自由に外に出たり入ったりできるような開放感がありました。日本では音の問題もあるので同じようにはできないですが、閉じた感じにしないように、外とのつながりや、抜け感のある雰囲気は大事にしました。
– ちょっと駅から離れてる?
井上:少し大人な雰囲気であること、少し歩けば無理せず来店できること、そしてなにより一階の路面店であること。それが場所探しのポイントでした。ここは元々駐車場だった場所なんですが、音も出せて、都会的かつ雑多なイメージの「国道246前」というエモい環境も含めてベストな場所でしたね。街や人とごく自然につながるような路面店からスタートして、どんどん独自のコミュニティが広がって行った初期のBEAMSと同じような感覚かもしれません。
– どんなお客さんに来て欲しい?
平野:お酒はもちろん大事だけど、やっぱり「音楽」が先にあるお店にしたいですね。でも、音楽に詳しい人しか来られない場所にはしたくない(笑)。ご飯を食べたあと、「もう一軒行こうか」とふらっと寄れるような感じ。そこにたまたまいい音楽が流れていて、気づいたらなんだか楽しくなっている。それくらいのゆるやかな感覚がいいな、と思っています。流す音楽も「俺の選曲どう?」って感じじゃなくて、その場にいる人や空気を見ながら、どうしたらその場が心地よくなるかを考える。それがKompakt Record Bar®︎らしさですかね。
いい音楽。
いいお酒。
もう一軒、行っちゃう?
– Jinmooは、日本のお店に何を期待してる?
Jinmoo:そうですね、日本には音楽に対する深い関心を持っている人が多い。レコードをコレクションする文化もありますし、音楽を深く聴くことへのリスペクトもある。Kompakt Record Bar®︎が東京でスタートすることで、音楽をハブにいろいろな人たちが集まって、新鮮で面白いコミュニティが次々と生まれていくことを期待しています。
– 3年後、5年後の野望は?
井上:一回来て終わりじゃなくて、何度も通いたくなるような場所であることと、韓国と日本とが別々じゃなく常に一緒に新しいこと、面白いことを生み出していけるような距離感であり続けたいですね。ここで生まれたコミュニティを中心に、音楽はもちろん、ファッションでも、スポーツでも、あらゆるカルチャーがKompakt Record Bar®︎のフィルターを通して新たなコンテンツとして編集されていく。それで、そのコンテンツを自分たち自身も一緒になって楽しめる、というのが最高ですね(笑)
Sneak Peek Notes.

Kompakt Record Bar®︎と一緒にBEAMSがここでやろうとしているのは、ファッション、音楽、人のつながり。そういうあらゆる面白そうな熱量が、音楽を通してゆるやかに混ざり合える「場」を作ること。いい音楽が流れて、おいしいお酒があって、面白い人がいて、誰かと誰かの会話が心地よく聞こえてくる。気づいたらなんとなく長居していて、なんとなくまた来たくなる。でも、そこに「これがイケてるカルチャーです!」みたいな力みはない。むしろ、その「間口の広い心地よさ」こそが、Kompakt Record Bar TOKYOのコンセプトそのものなんだと思う。
INFORMATION

Kompakt Record Bar®︎
韓国・ソウルで高い支持を集める「Kompakt Record Bar®︎」が、海外初拠点となる「Kompakt Record Bar TOKYO」を池尻・大橋エリアにオープン。アナログレコードを軸に、音楽・ファッション・アート・デザインなど、さまざまなカルチャーが自然に混ざり合う場所としてソウルで人気を集めてきたミュージックバー。東京店でも、本国同様にアナログレコードのみを使用したプレイスタイルを採用。国内外のDJやセレクターによる選曲を通して、クラブともラウンジとも違う、「音楽と自然に向き合える時間」を提案。空間デザインはLandscape Productsが担当し、音響にはOJAS × NNNNによる「ON8 Small Club System」を導入。さらに、カウンター照明には韓国を拠点に活動するデザイナーKwangho Leeを起用するなど、音・光・素材を含めた空間全体の体験設計にもこだわっている。Tシャツや手拭い、コースターなどの限定アイテムも展開中。
Kompakt Record Bar TOKYO
ADDRESS:東京都世田谷区池尻3-23-1 1F
OPEN HOURS:19:00~3:00 / 不定休
PROFILE

Jinmooさん
韓国・ソウル発のミュージックバー「Kompakt Record Bar」のオーナー兼グラフィックデザイナー。韓国を代表するDJクルー「360sounds」共同創設者でもあり、ソウルのローカルDJシーンを築き上げ、東京のレコードカルチャーと密接につなぐ橋渡し役として注目を集めている。

平野正樹さん
「Kompakt Record Bar TOKYO」の運営を担う株式会社SKO EXTEDIT代表。ファッション、アート、カルチャーなど幅広い分野でコンテンツの企画制作やブランディング、事業開発を手掛けている。都内を中心にDJとしても活動し、JinmooとはDJ活動を通じて交流を深めた。

井上博喜
兵庫県出身で生粋の神戸っ子。18歳の時に店舗スタッフからBEAMSキャリアをスタート。その後メンズカジュアル部門の統括VMDに長らく携わり、ビジネスプロデュース部の発足からプロデューサーとして従事。2025年より、ビームスクリエイティブにて事業開発を担当。














