ビームスのラインナップには、いろんな「表情」がある。モードにアメカジ、トラッドにドレス。その日の気分に合わせて店を訪れれば、思いがけない一着と出会うこともある。今年、そんな個性的なウィメンズのレーベ ルを横断して、服と人、人とカルチャーとの「あいだ」を自由につなぐ「エディトリアル」という考え方がスタート し、秋にはその象徴となる新ブランド〈MAAI(マアイ)〉がスタートする。近すぎず、遠すぎず。服と人、店とお客さまにとって、ちょうどいい距離ってなんだろう。今回覗き見するのは、ビームスウィメンズチーム4 名が考える、新しい 「間合い」のハナシ。
PROFILE
杉本学子
スタイリスト。雑誌や広告、ブランドビジュアルなど、幅広い分野で活躍。ビームスウィメンズの新たな取り組みにアドバイザーとして参加し、スタイリングやビジュアル制作に携わる。
長塚理紗
2009年入社。2018年に5代目の〈Ray BEAMS〉ディレクターに就任。現在はウィメンズ統括ディレクターとして、ウィメンズ全体のブランディングを担当。
塚本知絵
2010年入社。数々のビームスのウィメンズレーベルで経験を重ね、2026年秋にデビューする新ブランド〈MAAI〉のディレクターに就任。
佐藤美樹
2019年入社。〈Demi-Luxe BEAMS〉のショップスタッフとして培った販売経験とお客様視点を生かし、〈MAAI〉のアシスタントディレクターを務める。
– いまのビームスのウィメンズって?
⻑塚
2025年の春に体制が変わって、ウィメンズがひとつのチームになりました。それまではそれぞれのレーベルが自分たちの世界をしっかりつくってきたのですが、今度はその魅力を横につないでウィメンズ全体として新しい提案ができるのではないかと考えるようになったんです。これまで〈Ray BEAMS〉、〈BEAMS BOY〉、〈Demi-Luxe BEAMS〉と、それぞれ違う女性像を追求してきました。その多彩さはビームスの大きな魅力。そのアイデンティティを変えるのではなく、今まで以上にブランド間を自由に行き来できるようにすることで、これまでになかった新しいビームスのウィメンズの景色を見せられるのではないかと思いました。




– Ray、BOY、Demi-Luxe。それぞれ全然違うけれど、並べてみたらどうだった?
塚本
私が⻑く携わってきた〈Demi-Luxe BEAMS〉はドレスの文脈だし、〈Ray BEAMS〉や〈BEAMS BOY〉にはカジュアルの文脈があります。それぞれが自分たちのコンセプトを突き詰めてきたからこそ、これだけ多様な世界観を持ったブランドが共存している。その個性を生かしたまま自由につないだ時に何が生まれるのか、確かにそこに新たなビームスのウィメンズの可能性があると思いました。
佐藤
私も入社して〈Demi-Luxe BEAMS〉に配属されてから、ビームスのウィメンズが持っている世界の広さを知りました。カジュアルだけでなく、ドレスもあり、そのなかにもいろいろなスタイルがある。知れば知るほど、自分の興味も広がっていきましたね。
– 外から見たビームスのウィメンズって、どんな感じ?
杉本
ビームスには、どんな時も「カルチャー」と一緒に自分たちのスタイルをつくっている会社という印象がありました。それもあってなのか実際にそれぞれのブランドのみなさんと話をしてみると、レーベルごとの文脈の違いがとても明確なんです。モードなファッションカジュアルならRay、アメリカンカジュアルならBOY、端正なドレススタイルならDemi-Luxe。それぞれに独自の普遍的な世界観があって、そのスタイルをカルチャーを起点に深く掘り下げている。それがビームスのウィメンズならではの面白さだと感じました。その一方で、お客さまは必ずしもレーベルだけで服を選んでいるわけじゃなく、店内を自由に歩いてその時の気分に合うものを横断して選んでいますよね。そういうブランド横断的な買い物そのものの楽しみ方をより魅力的に提案するにはどうしたらいいだろうと。各レーベルの個性はしっかりと残したまま、それらを俯瞰で見て、新たなテーマや視点を起点に再編集してみたら面白いアプローチができそう、そんな気づきから今回の取り組みが始まりました。
混ぜるな危険?
混ぜてみたら、意外と合う!
– 意外な発見はあった?
⻑塚
これまではそれぞれのレーベルが自分たちの世界をとにかく深く掘り下げることに集中していました。届けたいお客さまや表現したいスタイルも違うので、それぞれが「自分たちのやるべきこと」を徹底してきたんです。でも、ウィメンズ全体を俯瞰して見渡してみると「このテーマって、隣のレーベルともつなげられるかも」というような気づきがたくさんありました。全然違うものだと思っていた中に、同じ気分やカルチャーを持っているものが、実はたくさんある。その発見はすごく面白かったですね。
塚本
どのブランドも世界観は全然違っているけど、ものづくりのアプローチはとても似ているんです。ディレクターが毎シーズンテーマを立て、「自分たちが本当に面白いと思うもの」をとにかく深く突き詰めていく。各レーベルが、それぞれ異なるカルチャーのプロフェッショナルであるような感覚かもしれません。
杉本
それと面白いのが、ビームスはものづくりに関わる人と、それを表現する人との境界が曖昧なこと。服のデザインだけじゃなくて、撮影するビジュアルやデザイン、店の空気感まで含めて、関わるみんながそれぞれの場所からひとつの世界観をディレクションしている感じ。そしてなによりも「何を一番売りたいか」よりも前に、まず「こういうイメージがかっこいいよね」という「感覚や熱量」からスタートする姿勢は、すごくクリエイティブなプロセスだと感じます。
⻑塚
もちろん、たくさんのお気に入りを見つけていただいて、多くのお客さまに楽しんで欲しい。でも、それと同じくらい「自分たちらしいものってなんだろう」と考え抜くことにも力を注ぎたいんです。そのカルチャーを本気で好きな人にしか気づかれないような細かいディテールにまで、みんなで本気でこだわり抜く。確かにそういうマインドはどのレーベルにも共通しているかもしれません。
– 「エディトリアル」ってどういうこと?
⻑塚
先ほど杉本さんがおっしゃっていた「編集する」という考え方です。それぞれのレーベルを横断して、あらたなテーマや視点を起点に「ビームスのウィメンズの世界観」として再編集しお客様に提案する。レーベルごとの個性を新たな組み合わせとして編集してみることで、また違った面白さや魅力を見つけていくんです。そしてそれはスタイリングやビジュアルづくりだけではなく、その感覚を店頭でも体験していただけるように、立体的に展開していく予定です。
杉本
だからこそ今回、スタイル、デザイン、ビジュアル、あらゆる提案の中に、ビームスらしい「遊び」の提案を入れ込むことを強く意識しました。それぞれのレーベルの服をミックスしてスタイリングする時も、ただきれいに整えるだけじゃなくて、必ず意外な組み合わせ方や着こなし方を提案する。ひとつひとつのアイテムの質がいい、というのはいまの時代、もう当たり前になってきています。その先に、お客さまにどんな付加価値をお届けできるのだろうと考えたときに、ビームスらしい「カルチャーの深掘り」や「私たちはこれが好きなんだ」という熱量といった、ビームスにしかない「スタイル」が垣間見えることがなによりも大切だと思ったんです。
⻑塚
お客さま自身は、ひとつのスタイルだけで毎日を過ごしているわけじゃないと思うんです。仕事で大変な日もあれば、のんびりとリラックスしたい日もある。少し新しい服を着てワクワクしたい、という日だってある。そんな時も「エディトリアル」という考え方なら、一人の女性のいろいろな場面や気分に寄り添うような自由で軽やかな提案ができるかなと。


– 一人の女性にいろんな気分がある?
⻑塚
さまざまな経験を重ねていけば、当然ですが自分の居場所も増えていくものだし、その時々ごとに大切にしたい自分自身の気分もどんどん豊かに広がっていく。「今日は大切な日だから、この服が着たい」「この場所へ行くなら、こういう気分でいきたい」という感じで。ひとつの個性や限定した女性像を追求するよりも、しなやかに変化し続けるひとりひとりの感性にどう寄り添っていくか、ということを大切にしたいと思っています。
– 「感覚」じゃなくて「感性」?
⻑塚
私のなかでは、感覚は「なんとなく好き」「なんとなくかわいい」という感じのもの。感性には、そのときめきと共に、自分なりのもう少し深い理由がある、というイメージなんです。その服を身に纏う時に、「なぜこれを選ぶのか」という文脈を大切にしながらも、自身の気分をポジティブに、そして鮮やかにしてくれるような「ときめき」に素直でいつづけたい、そんな女性に届けたいなと。
杉本
女性ってそのときの自分自身の気持ちや、なりたい姿に合わせていつだって変化していくものだと思うんです。だから髪形を変えたいと思ったら、思い切って美容室そのものを変えちゃうことだってよくありますよね。ひとつの決まったスタイルやプロセスに当てはめるんじゃなくて、つねに好奇心を大切にしながら、そのときの自分の感性に合うものを選び直して欲しい。個性的で多彩なレーベルを持ったビームスなら、そんな変化に応えられるブランドの奥行きを持っていると思っています。
– ただトレンドを追いかけるわけじゃない?
杉本
そうです。入り口は「なんかいい、かわいい」という直感。でもその奥に、素材や着心地といった品質と、起点になったカルチャーやつくり手の想いが必ずある。なぜこのサイズなのか、なぜこの色なのか。強く説明しすぎなくても、すべてにちゃんとした「理由」がある。そこがビームスのウィメンズらしさなんだと思います。
⻑塚
自分たちが好きなことや考えていることを、きちんと服で表現したい。やっぱり一番大切にしたいのは、服と出会った時の喜びと、服に腕を通した時の高揚感。ビームスに足を運べば、その1日が少しだけ楽しくなる。ここで買った服を着たら、なんだか気分が上がる。そんなファッションの「ときめき」を届けたいんです。
「なんか好き」って、
けっこう大事です。
– そのウィメンズの考え方を象徴するのが新ブランドの〈MAAI〉?
塚本
ある意味そうですね。実は最初から「こういうブランドをつくろう」という戦略的なゴールがあったわけじゃないんです。社内外のいろいろな女性に話を聞きながら、「いま女性はどんな服を着たいと思ってるのか、どんな服が日々に寄り添ってくれるのか」ということをシンプルに追求していきました。そこでなんとなく見えてきたのが、カジュアルとドレスの「あいだ」にある新しいスタイルだった。仕事にも着ていけるけれど、きれいにまとまりすぎない。上質で程よくトレンドを感じられるけれど、肩の力を抜いて着こなせる。都会で軽やかに生きる大人の女性に向けて、そんなふうに曖昧な「あいだ」に存在する新しいスタイルを提案するブランドがあったらいいのかもしれないなと。〈MAAI〉の“RELAX BASIC”というブランドコンセプトは、そんな考え方から生まれました。

– カジュアルとドレスの「あいだ」って?
塚本
どちらかだけにきっちり分けられなくてとても曖昧だけど、どんな人のライフスタイルにも必ず存在するシーンのことでしょうか。女性があたり前の毎日のなかで、ごく自然にリラックスして着られるけれど、ちゃんと素敵に見える。そんな微妙なバランス感覚を表現しています。


– アイテムのラインナップは?
塚本
ジャケットやシャツ、デニム、スラックスといったベーシックなアイテムを中心にしながら、シルエットや素材、色にいまの気分を取り入れています。きちんとして見えるけれど、頑張りすぎていない。仕事にも着ていけるけれど、休日にも自然になじむ。服そのものが強く主張するのではなく、着る人らしさが垣間見える「余白」をなによりも大切にしています。
– 〈MAAI〉って「間合い」?
塚本
人と人、服と人、空間と時間。その絶妙な距離感、そしてどんな時も余白を大切にする日本人に脈々と受け継がれてきた美意識から名づけました。コレクションも、できるかぎり黒を使わずに、白でも黒でもない、その「あいだ」にある繊細な色づかいにしています。服そのものが強く主張するのではなく、着る人らしさ、その人自身が美しく見える「余白」を大切にしたいからです。

– 「大人の女性」って、どんな人?
佐藤
〈MAAI〉がイメージしている大人の女性は「自分と向き合う時間をちゃんと持っている人」のことかもしれません。家に帰ってゆっくりと香りを楽しむ時間を作ったり、自分にはいま何が本当に必要なのかを考えることを大切にしていたり。強い意志を持つ、ということよりも、自分の好きなものを理解していた上で、「ふっと力を抜く場所」をちゃんと知っている人。
– 「力を抜く場所を知っている」、いい言葉!
杉本
大人の女性を考えるうえで、そういう余白って、とても大切なことだと思います。自分を強く見せることだけが自信を持つってことじゃない。いつも目の前の日々としなやかに付き合いながら、自分自身を見失わないように呼吸できるような余白を持っている。〈MAAI〉の服は、そんな佇まいを持っていると思っています。
– いちばん〈MAAI〉らしい服は?
塚本
ジャケット、シャツ、デニム、スラックス。ラインナップは、誰もがすでに持っているようなベーシックなアイテムが中心です。でも、シルエットや素材、色をいまの気分に更新することで、一枚だけでもスタイルが生まれるようなものにしたい。シーズンごとにトレンドを追いかけるんじゃなくて、「その時代に合ったベーシック」を提案していきたいんです。
– ベーシックだけど、普通じゃない?
杉本
例えば同じジャケットでも、Rayなら少しモードでデザインが効いているかもしれない。BOYならトラッドで、Demi-Luxeならより端正なものかもしれない。その中で〈MAAI〉は、一見ベーシックだけれど、少しオーバーサイズだったり、袖をまくってラフに着られたり。きれいなシャツのボタンを少し多めに開けて、襟をくしゃっとさせるような「服や着方を知っているからこそ楽しめる遊び」があります。その抜け感が、余裕とか余白といった佇まいとつながっていくんです。
佐藤
私は実際にお客様と接するなかで感じてきたことを、〈MAAI〉のものづくりに持ち込みたいですね。〈Demi-Luxe BEAMS〉で販売を経験してきましたが、個人的には古着も大好き。異なるカルチャーを見てきた経験を生かして、違ったものをどう編集したら新しく、ワクワクするようなものになるかを考えていきたいです。
「あいだ」が一番おもしろい!
– お店では、どんな体験ができる?
塚本
〈MAAI〉は、服だけじゃなく、食や花なんかを含めた空間で世界観を表現しています。アイテムそのものだけではなく、その場の空気感や接客の佇まいも含めて、たくさんの女性に好きになっていただけるブランドを目指しています。
佐藤
そもそもビームスには、それぞれのレーベルの世界を深く追い続けてきたスタッフがたくさんいます。だから〈MAAI〉も含めてお客さまには接客を通して、「この人が好きなものと自分が好きなことが、どこかでつながっているかも」と思っていただけたらうれしいです。
杉本
例えば同じような服が、同じような価格で並んでいたら、最後は「誰がつくっているのか」とか「誰から買うのか」がとても大切になると思うんです。ビームスには、本当に服が好きで、自分らしい個性的なセンスを持っている人がたくさんいる。そしてそれはファッションのセンスだけじゃない。例えば言葉を選ぶセンスだったり、人とコミュニケーションするセンスだったりする。そんな人たちとの「間合い」を楽しんでみるのもいいかもしれないですね。
⻑塚
今回、杉本さんとウィメンズ全体のルックを制作した時のことです。たくさんのスタイリングを並べてみながら、みんなで「私はこれが欲しい」「これを着たい」と自分の“推し”を挙げていったんです。それがめちゃくちゃ楽しくて。エディトリアルという新しい考え方をスタートしながら、私自身も少し迷っていた時期だったんです。けど、その「あ、こうやってみんなが“好き”を本気で追求する感じって、全然変わらないな」と感じました。自分たちが好きなものだからこそ、お客さまにも好きになっていただきたい。一方的に押し付けることなく、誰かの好きと誰かの好きをつなげていく。それがビームスのDNAかもしれないですね。
杉本
そうそう。まずは自分たちが本気で楽しむことが大切なんだと思います。楽しんでいる人から生まれたもののほうが、人は心を動かされるしワクワクする。自由に好きなことを追求した結果、その服やカルチャーのことをもっと好きになれる。そのときめきがお客さまにも伝わるような新しいビームスのウィメンズを表現できたら素敵ですね。
誰かの好きが、
一番気になる。
SneakPeekNotes.

気になる服を見つけたら、すぐに手に取ることもあれば、少し離れてみて考えることもある。服と人がパートナーになるまでには、それぞれの人にとってのちょうどいい距離がある。人と人も、たぶん同じ。ショップでスタッフと話していたら、なんだか自分では選ばないような服が気になってきた。旅をテーマにしたルックを見つけたら、なんだか旅に出たくなってきた。そんな感じで、誰かの「好き」と、自分の「好き」が、ふと重なる。服を買う楽しさって、案外そんなところにあるのかもしれない。今回、ビームスのウィメンズがスタートする「エディトリアル」という考え方は、そんな、服との新しい「出会いかた」を提案する試み。レーベルごとの個性の「間」を自由に行き来しながら、これまでになかった新鮮な組み合わせを提案する。そして、その新しい試みのまんなかに、新ブランド〈MAAI〉が加わる。カジュアルとドレス。ベーシックと、いまの気分。きちんとすることと、力を抜くこと。白でも黒でもなく、その間にある繊細な色。どちらかひとつに決めなくても、その日の自分にちょうどいい場所は、きっとある。服と服。服と人。つくる人と、着る人。少し近づいたり、離れたり。その間を行ったり来たりしているうちに、本当に好きな服との出会いが生まれる。これからのビームスのウィメンズには、そんなゆるやかでポジティブな「間合い」が流れている。
INFORMATION
MAAI
日本人が古くから大切にしてきた美意識のひとつである「間合い」に由来する、ビームスの新しいウィメンズブランド。キーワードは“RELAX BASIC”。主張しすぎない色、シルエット、素材にこだわり、上質でタイムレスでありながら、いまの気分を感じられるワードローブを提案する。2026年9月19日(土)にデビュー。同日から9月23日(水)まで、東京・富ヶ谷のギャラリー『CONTRAST』でPOPUP SHOPを開催。10月1日(木)より全国14のビームス店舗および公式オンラインショップで展開予定。
MAAI : @maai_tokyo
ウィメンズ公式インスタグラムのアカウントを開設。
ベーシックを愛しながら、ひとさじの遊び心を加えたい大人の女性へ。ビームスのウィメンズ視点で自由に編集したスタイルを提案します。
BEAMS for WOMEN : @beams_women






