1976

Paris のサンドイッチ屋と、
Tokyo のテニスショップ。
友達だったから、⼀緒にやった。
それだけで⼗分だった。

BRAND

text: Ryo Sudo(Jeep Creative Department)

TokyoのテニスブランドとParis生まれのカフェ。一見不思議な組み合わせだけれど、その「よくわからなさ」こそが、この店の面白さそのものだった。7月4日千駄ヶ谷にオープンした「Setinn / paperboy」では、Setinnブランドのフルラインナップが並び、奥のカウンターではパリのpaperboyで人気のマンゴーシェイクやピーナッツバタークッキー、バナナブレッドが提供される。paperboyオーナーのJames Dridi、Setinnのディレクター新井伸吾、事業責任者の原宗平。今回、「戦略」より「友情」、「ビジネス」より「面白そう」、そんな関係性から生まれた新たなプロジェクトのハナシ。

– そもそも、paperboy のJames との出会いって?

新井: パリにはスニーカーショーなどでよく行っていて、paperboyという店があることはずっと知っていました。けど実際にJamesたちと会ったのは2016年。フランスの友達からの紹介でパリから遊びに来るJamesをあちこち案内するようになったのがきっかけでしたね。英語もフランス語もあんまり得意じゃないけど、当然「気合い」でコミュニケーション。たいていの場合、それでなんとかしてきたし(笑)。一緒に時間を過ごす中で、お互いファッション好きで「ねえ、これよくない?」という感覚がすごく近かったから、一緒にいる時間が自然と長くなっていきました。

– paperboy Paris ってどんな場所?

James: 最初は本当に小さなサンドイッチショップだったんだ。でも気づいたら、若いクリエイターやスケーター、音楽をする人たちなんかが、自然と集まるコミュニティになっていった。今ではブランドとのコラボレーションやイベント、ケータリングまでやっているよ。美味しい食事を楽しむ場所でもあるけど、世界中のファッション関係者やクリエイターがふらっと立ち寄って、また次の何かが始まる場所のひとつになってて、面白い人たちや新しいアイデアが集まるコミュニティ、という感じかな。ちなみに僕も、もともとNIKEとのコラボレーションとか、日本のビームス発のプロダクトが大好きだったんだよ。

 

新井: とにかくスタッフみんな、面白いヤツばかり。例えばDJだったりイラストレーターだったりデザイナーだったり。みんなそれぞれ違うカテゴリのプロとしても活躍していて、僕は勝手にそのメンバーを「OGメンバー」って呼んでます(笑)。

– ビームスとpaperboyのコラボが始まったのは?

新井: 最初はパリのメンズファッションウィークでポップアップをさせてもらったこと。友達だったし「ねえ、一緒に何かやってみない?」って、本当にそんな感じだったんです。戦略とかビジョンとかより、とにかく面白いことがしたかったんです。そしたらそのイベントが想像以上に盛り上がりました。パリの小さな街角の店が、もうすごい人と熱量で(笑)。ビームスのメンバーもpaperboyの仲間もみんなで「これいったいどうなってんの?」っていうくらい盛り上がってましたね。

 

James: その時のことはよく覚えてる。そのイベントこそが、その後paperboyがパリのファッションウィークでさまざまなブランドが発信するムーブメントの中心地になっていったきっかけになったと思ってるんだよ。

 

原: それからはpaperboyの別注品を僕らがディレクションする、みたいな関係がスタートしました。ビームスがNEEDLESと別注をやっているのを見て、Jamesも「やってみたい」って。それをビームスでも取り扱うようになって、それが気づいたら、paperboyというキャラクターやブランドがどんどん大きくなっていきました。

 

新井: 実は今年でちょうど僕たちが出会って10年目。それとBEAMSの50周年のタイミングが重なったのが、今回のSetinn / paperboyプロジェクトが実現した一番のきっかけですね。

 

James: この10年間、伸吾(新井)とは本当にいろいろなアイデアを話してきたよね。あれもやりたい、これもやりたい。10年目を迎えて、「それならSetinnと一緒に日本でpaperboyをやってみようよ」って流れになったんだよね。

 

原:そうそう。もちろんこれはビジネスではあるんですが、このプロジェクトの根っこにあるのは「友達だったから」ということなんです。だから今回だって「paperboyのお店を日本で始めて、お互いビジネスしようよ」みたいな会話はほとんどなかった。「なんか一緒に面白そうなことできそうだよね」っていうお互いのフィーリングだけで、自然に生まれてきたプロジェクトなんです。面白いものを見つけて、大きなムーブメントに変わるまで自分たちらしくあちこちで発信して、そのプロセスごと自分たち自身が楽しむ、それが僕たちのスタイルなんだと思います。

ずっとトモダチ、
だが時は経ち♪

– テニスとカフェの合わせ技!!

原: 僕たちとしてまずSetinnの旗艦店を作る、というのが前提としてあったんです。でもSetinnはテニスブランドとして認知を拡大していることもあって、Setinnだけの店舗だとテニスを好きな人たちだけの小さなコミュニティになってしまう懸念があったんです。その点、「カフェ」という業態は間口がすごく広いですよね? テニスファン以外のお客さまとのゼロイチの関係性を作れるカフェという存在はすごく魅力的だったんです。で、そう考えたときには、僕たちの中で「paperboy」以外の選択肢はありませんでした(笑)。で、出店を決めてから実現まで1年半くらいかかって、物件探しも難航したけれど、全員が「どうしても実現したいから、どうやったらできるかを考える」っていうスタンスでずっとプロジェクトを進めていました。

 

James: 僕は、この場所はひとつの新しい「コンセプトストア」だと思ってる。カフェとテニスブランドが一緒になっている店なんて、みたことないもの(笑)。

 

新井:僕は、いつだってみんなの想像を超えたアイデアで「えっ、こんなのアリだったの?」って言わせたい派だから(笑)。いろいろ理由はあったけど、「Jamesたちと友達だったから一緒に面白いことをしたかった!」というのが本当のところかも(笑)。

– お店がとにかく広い!

原:実はパリのマレ地区にあるpaperboyって間口が横に広いからか、外から見た時に人がごった返している感じが見えづらいんです。それがいいな、と思っていたから物件探しの段階から「間口の広さ」にはかなりこだわりました。あとは、原宿みたいにたくさんの人が流れ込んでくる場所よりも、駅から少し離れているくらいがちょうどいいなと。わざわざ「あの店いこうよ」と思ってもらえるような店にしたかったんです。

 

新井: そうですね、ただのテニスショップやカフェじゃなく、来てくれた人がSetinnとpaperboyの世界観をちゃんと体感できるような特別な場所にしたかった。今はデジタル上で何でも見られるし、たとえその場所に行かなくたって何かを体験したような気分になれてしまう。そんな便利な時代だからこそ、その場所でしかみられないもの、体験できないことがある場所に価値があるんじゃないのって僕は思う。例えば古着屋に行った時に、表に並べてあるレアなアイテムたちよりも、店主こっそりあれこれ隠してるカウンターの奥の方がつい気になっちゃう、みたいな感じ(笑)。そんなふうに、『何ここ、来てみたらめちゃくちゃ面白いじゃん』ってお客さまが思えるような驚きと人間臭さがある「名店」を目指しています。で、僕はそこで「名物店主」みたいな存在を目指したい(笑)。

続きは、
お店で♡

– カフェスペースの方の大きな席についても、実は賛否があった?

原: そう、ありました(笑)。特に日本だと「グループごとに別々に座れるほうがいい」という意見もあったし。でもpaperboyらしさって、知らない人同士が隣に座って、なんとなく自然にコミュニケーションが始まることなんです。そこでたまたま知り合って人たち同士の会話から、そこから新しい企画やプロジェクトが生まれたり。そういうコミュニティの中心としてカフェがあることの意義って、僕はすごく大きいと思っています。

 

James: うん。人が心地いい時間を過ごしたくなる場所にしたいよね。それと、やっぱりクリエイティブな人たちが自然と集るような場所になったらいいなと思う。僕たちがパリで育ててきたようなコミュニティを、東京でも少しずつ作っていけたらうれしい。もちろん、僕たちのルーツであるサンドイッチや、美味しいドリンクを気軽に楽しんでもらいたいのはもちろんだけどね。

– ビームスと一緒にものづくりするのは?

James: 僕たちは好きなものや感覚もすごく似ているんだ。いつも同じ方向を向いているから、一緒に何かを作るのが難しいと感じたことがないかな。それに特に伸吾(新井)と僕は、まだ子どもみたいなところがそっくりかも(笑)。だから今でも一緒に夢を持ちながら、新しいことを考え続けられるんだよね。

 

原: 2人の関係は横から見ていても面白い(笑)。僕⇄James、僕⇄新井さん、新井さん⇄Jamesって、バラバラにやり取りすることもあるんですけど、それでもなんとなくお互い言いたいことが分かってる感じがあって。

 

新井: 「よーし、これでお金を稼ごう」みたいな話は、本当にしたことがない(笑)。僕にとってpaperboyとの関係性は、面白いことを考えてそれを一緒に楽しむ大切な仲間でもあるけど、もういまやどちらかと言えば「ファミリー」という方が近いかも。ファミリーの誰と会っても、いつだって刺激をもらえるし楽しい。

 

James:僕たちにはひとつだけルールがある。それは、まずなによりも「自分たち自身が楽しむ」ってこと。楽しみながら仕事すると、不思議といいものができる。それがなにより大事だよ。Paperboy Parisもそうだけど、スタッフが楽しそうにしてると、その空気がお客さんにも伝わって自然と居心地いい場所になる。この店もそうなったらうれしいよ。

 

新井: 僕はこの店にデスクを置いてますから、楽しそうにしている僕に会いに来てくれたらもちろんうれしい(笑)。でもそれだけじゃなくてこの店で生まれていくコミュニティの誰かに気軽に会いに来て、それが新しい面白いことを生み出したり。そんな感じで、ここを訪れるみんなが主役になれるようなコミュニティが生まれたらいいですよね。

 

原: 僕がやっぱり一番うれしいのは、お客さまに「ワオ!!」って驚いてもらうことですね(笑)。

 

新井:実際、テニスショップとカフェをつなげる意味ってそこまで重要じゃなくて、「友達だったから一緒にやった」というのが本当のところかも(笑)。でも、それくらいシンプルな理由の方が、案外面白いものが生まれる気がしています。

「何これ?」が
やっぱり最高。

Sneak Peek Notes.

理由なんて、あとからついてくる。「友達と、自分たちが面白いと信じることを一緒にやった」。3人の話を聞いていると、それくらいシンプルな理由のほうが、プロジェクトは案外長く続くのかもしれないと思えてくる。店や場は、つくって終わりじゃない。この場所で誰かと出会い、コミュニティが生まれ、その関係性からまた新しい面白いことが生まれていく。何年かあとに、この場所を起点にまた新たな「面白いこと」がスタートしていたら最高だ。その続きのストーリーまで含めて、この店の魅力なんだと思う。

Setinn / paperboy

ビームスが手掛けるテニスコンセプトブランド「Setinn」と、2014年にジェームス・ドリディがパリ・マレで始めたカフェ「paperboy」が、東京・千駄ヶ谷に共同店舗をオープン。Setinnにとって初の実店舗であり、paperboyにとってもパリ以外で初となる常設店舗。店頭ではSetinnのフルラインナップとともに、マンゴーシェイクやバナナブレッドなどパリで人気のメニュー、両ブランドのコラボアイテムも並ぶ。

 

ADDRESS:東京都渋谷区千駄ヶ谷3-51-10 1階

OPEN HOURS:10:00〜19:00 

定休日:不定休

INSTAGRAM:@setinn_flagshipstore @paperboy_tokyo

PROFILE

James Dridi(ジェームス・ドリディ)

paperboyオーナー。料理をはじめ、写真やモデル、スタイリスト業など。さまざまな分野での仕事を経験。その後、幼少期からのクラブサンドイッチ好きが高じて、2014年にパリのマレ地区にカフェ兼コミュニティスペースのpaperboyを立ち上げる。

新井伸吾

Setinn ディレクター
BEAMS メンズカジュアルバイヤー

2003年にショップスタッフとして入社。「ビームスT 原宿」の店長を経て、2017年にメンズカジュアル部門のバイヤーに就任。2024年春夏シーズンより、オンコートとオフコートをつなぐスタイルを提案するテニスブランド〈Setinn〉を始動。幼少期の頃からテニスに励み、学生時代にはインカレ出場を果たすなど、実力も折り紙付き。

原宗平

BEAMS CREATIVE
チーフプロデューサー

2005年にアルバイトスタッフとしてビームスに入社。メンズ、レディース、雑貨など、幅広いレーベルでショップスタッフを経験した後、bPr BEAMS、BEAMSメンズカジュアルのバイヤーを歴任。多彩なカテゴリーと現場で培った知見を横断し、現在はチーフプロデューサーとして、ビームスならではの視点と価値を、さまざまなプロジェクトを通じて発信している。

...Sneak

「ルーツ」も「いま」も「あした」のことも。
知れば知るほど、⾯⽩い。
少し未来の「ビームス」のハナシ、
覗き⾒します。