1984年に〈Ray BEAMS〉が生まれ、98年に〈BEAMS BOY〉、2003年には〈Demi-Luxe BEAMS〉がスタート。服も、女性の生き方も、伝え方も、時代とともに大きく変わった。でも、本気で面白いと思ったものを、自分たちらしいやり方で編集して、熱量高く届ける。そのスタイルだけは、不思議なくらい変わっていない。今回、過去のカタログを前にビームスのウィメンズに深く関わる5人のメンバーが集まった。ビームスのウィメンズが「変わること、変わらないこと」、そんなハナシ。

PROFILE

南馬越一義
1984年入社。「レイ ビームス 渋谷」の店長を経て、04 年からウィメンズ全体のクリエイティブディレクター。現在は大学教授も務めている。

増子雄一郎
1999年、「ビームス ボーイ 原宿」のオープニングスタッフから。07年に〈BEAMS BOY〉バイヤー、21年からウィメンズカジュアル統括ディレクター、マネジメント職を経て、現在はBtoBや社外案件などをメインに担当。

浅山風子
2013年入社。〈BEAMS BOY〉の販売員、バイヤーを経て、23年から〈BEAMS BOY〉ディレクター。

長塚理紗
2009年入社。18年に5代目の〈Ray BEAMS〉ディレクターに就任し、今年卒業、現在はウィメンズ統括ディレクターとして、ウィメンズ全体のブランディングを担当。

目黒越子
2005年、「デミルクス ビームス 新宿」にスタッフとして入社。ショップスタッフ・マネージャー、スーパーバイザー、プレスを経て、24年春〈Demi-Luxe BEAMS〉ディレクターに着任。

– では時代順に。84年、〈Ray BEAMS〉がスタートの頃はどんな空気だった?
南馬越
実際は僕も84年に入ったばかりだったので詳しくは分からないんです。でも、たしかユニセックス寄りのイメージとフレンチカジュアルを掛け合わせたような形でスタートしたんだと思います。その頃のお客さんはファッションコンシャスな人が多くて、雑誌でいうとオリーブのような雰囲気だった。

1984年に誕生した〈Ray BEAMS〉。ユニセックスの感覚とフレンチカジュアルを掛け合わせたスタイルからスタート。
– 80年代後半の「渋カジブーム」の中で〈Ray BEAMS〉は?
南馬越
よく覚えているのは、スペイン坂にあった伝説のセレクトショップ「ルイセット」のケーブル編みのパーカーがめちゃくちゃ売れていたってことですね。当時ルイセットは坪効率が本当にすごかったと噂に聞いていました。当時の〈Ray BEAMS〉のお客さんも基本はアメカジ。女の子でもハーマンのブーツを履いたりして、渋谷店に来るお客様はそんな感じだったかな。

80年代後半、渋カジブームを象徴した紺ブレスタイル。〈Ray BEAMS〉でもアメカジが支持されていた。
– そして94年、〈X-girl〉との出会い。
南馬越
ニューヨークに行ったとき、あるショールームでソニックユースのキム・ゴードンが「ブランドを始めるよ」って話しているのを聞いたんです。それが〈X-LARGE〉のレディースラインらしいと分かって、日本に戻ってから「ぜひやろう」って。それがめちゃくちゃ当たったんです。当時はアメリカのガーリームーブメントの影響を受けた日本の子たちがたくさんいましたね。このあたりで、〈Ray BEAMS〉のコアに「アメリカのストリート」という軸がはっきり刻まれた気がします。

1994年、ニューヨークで耳にしたキム・ゴードンのひと言から〈X-girl〉との仕事がスタート。アメリカのガーリームーブメントとストリートカルチャーが新たな軸に。
– カタログ作りも、かなり自由だった?
南馬越
そうですね、今では考えられないかも(笑)。ソフィア・コッポラに写真を撮ってもらったり、フォトグラファーのランキンに頼んだり、イラストレーターのバリー・マッギーに描いてもらったこともあります。その原画、今どこにあるか分からなくなっちゃったんですよね。今あったら何百万するか分からないのに(笑)。サンフランシスコでファッションイラストレーターや女優として活躍していたエイミー・デイビスにイラストレーションをお願いしたカタログもありましたね。ニューヨークの雑誌でコレクションを全てイラストで紹介しているのを見て、「これ、面白いな」と思ったんです。それでエイミーを探し出して、僕がニューヨークで買い付けていたブランドを全部イラストで描いてもらったんです。
当時は「売る」ためのメディアというより、「アート」に近い感覚で作っていたんですね。秋冬のカタログなのに、こだわりすぎて完成が 12月になったこともあったかな(笑)。とにかく「このクリエイター面白いな」とか「この人と何かしたい」で仕事にしちゃう。売れるかどうかより、まず「自分たちが面白いと思うかどうか」が先でした。そういう「なくてもいいところ」に命をかける感覚は、たぶん今も変わらず受け継がれているような気がしますね。
「何かしたいね!」を、
仕事にしちゃう。
– 時代は進んで98年、〈BEAMS BOY〉が誕生!
増子
そうですね。窪さんが立ち上げて、そこから歴代のディレクターに受け継がれて、今は浅山が引き継いでいます。〈BEAMS BOY〉は、時代によって変化する〈Ray BEAMS〉に比べると「これがブランドの正解」というように、伝えていきたい「スタイル」がずっとはっきりしているブランド。でもBOYとRayは同じ部署、同じチームでやっていた時期もあったりして、「カジュアル」という文脈でいうと、もともと地続きというのが面白いところですね。
浅山
私もアメリカンカジュアルスタイルというルーツを、トラッド・アウトドア・ワーク・ミリタリー・スポーツの5つのカテゴリーで整理して、そこからははみ出さないように心がけています。時々ルーツに立ち返って、少しずつ軌道修正したり。歴代の〈BEAMS BOY〉ディレクターの中には、ルーツをとにかく掘り下げまくって、最終的にアメリカを超えてヨーロッパまで行き着いてしまった先輩ディレクターもいました(笑)。とにかく掘りすぎるくらい掘る。その徹底したこだわりは、「男性的な女性らしさ」という視点とセットになっていて、それがこのブランドらしさになっているんだと思います。

〈BEAMS BOY〉の軸となるのは、トラッド、アウトドア、ワーク、ミリタリー、スポーツという5つのカテゴリー。アメリカンカジュアルのルーツを掘り下げながら、時代に合わせて少しずつ更新している。
– ビームスのブランドってとにかくポジティブ。
増子
そうなんです。とにかくディテールにこだわったり、バックボーンのカルチャーを掘り下げたりはしまくるけれど、そういう「思想」が見えすぎるのはあまり好きじゃない。とにかく自分たちが面白いと思うものを、たくさんの人に伝えたい、という熱量がすごい。当然ですが、マゴさん(南馬越さん)が言っていた通り、カタログ制作やイベントなんかの時のスタッフの熱量もすごい。もうみんな心から楽しみにしてるんです。そうしたマインドは、たぶん昔からずっと変わってないですね。

– 2003 年、〈Demi-Luxe BEAMS〉!
目黒
2003年に新宿ルミネの中に初めて「〈Demi-Luxe BEAMS〉」という名前のお店ができました。それまでは〈Lapis BEAMS〉という名前で、エレガンスなものを扱っていたんですけど、もう少しリアルクローズで、働く女性のためのものが必要だという流れからスタートしました。当時、ちょうど女性の働き方がどんどん変化していった時代 で、その時に社長が「いま必要なのは、ストリートコンシャス、デザインコンシャス、モードコンシャスのそれぞれを繋ぐ為のシンプルでさりげないクオリティコンシャスなエレメント。これがビームスのウィメンズの幹に加わることによって、更にスタイリングの幅と提案性が広がり、ウィメンズ全体がさらに光を増すことはまちがいない。」というコンセプトでそのルーツいまも大切にしていますカジュアルじゃない、でもコンサバでもない新しいカテゴリ。でも気難しくなくって、「ミーハーでいいんだよ」って言う社長自身の考え方が、ビームスらしいなと思います」。

女性の働き方が大きく変わり始めた2003年、〈Demi-Luxe BEAMS〉が誕生。カジュアルでもコンサバでもない、働く女性のためのリアルクローズを提案してきた。
– 〈Ray BEAMS〉が、直近10年くらいで大きく変わったのが、「ミックススタイル」?
長塚
そうですね。ひとつのスタイルだけを追求するんじゃなくて、何かと何かを自由に掛け合わせることで新しい価値観を生み出す、という考え方のこと。トレンドってそのまま取り入れるだけじゃ、どうしてもただ消費して終わってしまう。そこで、例えばあえて対極のムードを掛け合わせてみて、そのちょっとした「違和感」を楽しむ、みたいなイメージです。その感覚はこの10年くらい、ずっと大事にしてきました。実際、こうしてカタログを振り返ってみると、40周年のときの雑誌『フルーツ』とコラボだったり、〈Ray BEAMS〉が提案してきたスタイルも常に変化し続けているなと感じます。目黒さんが言う通り、トレンドや流行は大好き。でも、ただ流行っているから着るというより、それをどうやって自分らしく着こなすかを楽しむ感覚です。「正解は一つじゃなくていいじゃない」、そんな感じです。
スタイルは十人十色。
正解はひとつじゃない。
– レーベルの垣根を越えて見えてきた発見は?
長塚
レーベルのディレクターをしていたときは、Demi-LuxeとBOY、RayとDemi-Luxeすごく距離があるものだと感じていました。でも実際にフラットにブランドを俯瞰で見てスタイルを組んでみると、合わせられるアイテムがたくさんあって。レーベルごとの個性は残しつつも、そういう視点でスタイルの幅を広げていくと、ひとつのレーベルだけでは出せないビームスらしい魅力が見えてくるなと。
目黒
それ、すごくわかります。Rayは、どちらかといえば女性の気分、つまり「マインド」がディレクションの起点になっていることが多いけれど、〈Demi-Luxe BEAMS〉はよりパブリックな場所での女性の佇まいというような、「社会性」が起点になっていることが多いのかも。だけど、実際はどちらのブランドも根っこは似ていて、どこにフォーカスしているかという違いなのかも。実際以前のカタログでは〈Demi-Luxe BEAMS〉だけでスタイリングされているものって、意外と少なくて、RayやBOYと混ぜてスタイリングすると面白く見えることもあるし、お客様にもミックススタイルが新鮮に感じてもらえるときもあるのかも。
目黒
私も基本的には新しいものが大好きです!ただ、やっぱりどんな時も誰かっぽいではなくて自分らしさを大切にしたい、っていう気持ちがあるから、長塚さんが言うようなミックススタイルはこれから楽しみです。
増子
でもそれでも、レーベル一つ一つの個性はちゃんと立てたいんです(笑)。だから当然「これだと完全にBOYっぽいよね」とか「これは Demi-Luxeっぽいよね」とか、スタイルの線引きの話は、自然と出てきます。
浅山
そうそう、BOYはBOYで絶対に譲れないところがある(笑)。どれだけミックスしても、そこだけはしっかりさせないと、レーベルがある意味自体がなくなっちゃう。


– ビームスウィメンは大きく変化してきた?
増子
いや、実はウィメンズの世界観やディレクションそのものがドラスティックに変わった瞬間があったかというと、それはなかった気がしています。ディレクターが変わるタイミングでブランドの色が変わることはあっても、どのブランドも根底にある「ビームスらしさ」そのものは変わらないまま、時代に合わせて少しずつ変化してきたという感 じですね。

浅山
増子さんが言うように、ディレクターが変わったタイミングで、前と違う色を出すとき、それを「面白いじゃん」って受け止めてくれる懐の深さがこの会社にはありますね。ブランドの世界観そのものは変わらないけれど、ディレクターの個性によってそのアウトプットが変化するからこそ面白いんだと思います。
– 一ブランドの魅力の伝え方には課題も?
増子
はい。伝え方は難しいですね。「うんちくを語って売る」とか「似合いますねって言って売る」みたいな時代でもないですし。それと、材料費が上がって、昔より全体の価格が高くなっているのも難しいところです。安さを売りにするブランドも増えているから、選択肢も多いですし。
浅山
ブランドのものづくりそのものを大きく変えるというよりも、「どうその価値を伝えるか」の方が大事だと思うんです。
長塚
アウトプットの手段を少しずつ増やしている感覚です。世界観そのものを変えるんじゃなくて、アナログ、デジタル、いろいろな手段があるなかでそれぞれの価値をどう伝えていくか、ということを常に意識しています。ただ、どれだけ伝え方が増えたとしても、遊び心やひねりのある提案を絶対に忘れないというのがビームスっぽいのかも。 「ポジティブで新しいもの好きだけど、めちゃくちゃ天邪鬼」という面白がりかたはずっと変わらないですね(笑)。
南馬越
大学でファッションビジネスを教えていて難しいな、と感じるのは、学生が見ているTikTokなんかのプラットフォームとRayやBOYの世界とは正直ちょっと違うな、ってこと。プラットフォームが多すぎる故に、点で一瞬興味を持ってもらったとしても、その先につながりにくいような気がしています。それでも、学生たちの多くが、実際に ビームスというブランドをちゃん知ってもらうとみんな面白がってくれる。だからこそ正しくビームスの価値が伝われば、新しい世代にも好きになってもらえる自信はあります。
まっすぐで天邪⻤、
が、いい感じ。
– 50年分のアーカイブを振り返って?
南馬越
今のビームスのウィメンズを俯瞰で見てみると、自分がしてきたことの「匂い」を強く感じるかと言うとそんなことはありません。つまりそれって、ちゃんとその時代時代に合わせてブランドがアップデートされているってことだと思う。だから「今のRay」がこれまでで一番素敵だと思うし、今のBOYがこれまでで一番かっこいいと思いま す。ビームスってやっぱり、いつだって「いま」が一番面白いんだと思いますね。

– 結局のところ、ビームスウィメンズらしさって?
浅山
一言でって言われるのが一番困るやつ(笑)。やっぱり「色」があるってことだと思います!いつの時代でも、ブランド、ディレクター、それぞれに個性的な「色」があるから、ビームスのウィメンズって面白いんだと思います。
目黒
確かに。「混ざるけど、混ざらない」。そのバランスが面白いですよね!
長塚
「BASIC & EXCITING」って私たちはよく言うんですが、どの時代でもベーシックを理解しながら「ワクワクするような遊び心」を提案することをなによりも大切にしています。ただし、確かにブランドごとにそれぞれの「効かせ方」が全然違う。半年に1度全国のスタッフが集まる次シーズンのラインナップ説明会の内容やおすすめスタイルはレーベルごとに全然違うのに、どのブランドもやっぱり「ちゃんとビームス」なんです。
増子
それ、めちゃくちゃわかります!混ざる時もあれば、それぞれの個性が立つ時もある。その息の合わせ方が、なんかビームスらしいんですよね。
南馬越
ファッションビジネスの世界だと、普通は「マーケットイン」がいいとされるんです。でもビームスは、昔も今も、各ディレクターが「これが最高にいいと思う」という提案をする。つまり「プロダクトアウト」ができる会社。それをやり続けられる企業って、実はあまりないと思っています。
Sneak Peek Notes.

今までのカタログを振り返ると、ちょっと考えられないような話が次々に出てきた。ニューヨークでの噂から〈X girl〉との仕事が始まり、ソフィアやバリーと一緒にアートブックのようなカタログを制作したり。〈Ray BEAMS〉は正解をひとつに決めずいつだって天邪鬼で、〈BEAMS BOY〉がルーツを掘りまくってヨーロッパまでたどり着いて、〈Demi-Luxe BEAMS〉は働く女性の「気分」に徹底的に寄り添って。どれもこれも、効率だけで考えたらたぶん「やらなくていいこと」なのかもしれない。けれど、5人の話を聞いていると、そういう「なくてもいいけど、あったら最高に面白いこと」を追求する熱量にこそ、ビームスウィメンズらしさがあるのかも、と思えてくる。それぞれ方向は違っても、一番最初にあるのはいつだって「自分たちは、これがいいと思う」という感覚。どんな時にもそれぞれのブランドの「色」があって、それは混ざるけれど、混ざりきらない。誰かが最初に用意したそのひとつのキャンバスに、時代ごとにまた誰かが好きなように違う色を重ねて、自分たちらしく編集していくのが得意技。だからマゴさんが言ったように、ビームスウィメンズがいちばん面白いのは、やっぱり「今」なのかもしれない。






